転生しても僕だった件——凍結中—— 作:らんらん
何というか、予想以上に反響があり作者はとても驚いています。
この話の内容は当初私が予定していた物と大きく逸脱してしまいました笑
なので結構亀更新になると思いますが、何卒よろしくお願いします!
いや、嘘だろ?咄嗟に岩陰に隠れたが、それでも冷や汗は止まる事なく流れ続けていた。だって目の前に、ドラゴンがいるのだから。
ドラゴン。大抵のファンタジーの創作物の中でも特に強敵として描かれ、その圧倒的とも言える強さに大抵の人間が魅了される存在。そんな物が、僕の目の前にいるのだ。冷や汗どころか、ちびってしまっても仕方がないと思う。
そして現代の日本に、というか世界にこいつがいなくて良かったと心の底から安堵した。もしいたとしたら、人類なんて1週間もあれば絶滅してしまうだろうから。
それ程までに圧倒的な存在感。
この時点で心臓バクバクであり幻の6人目の様に気配を消そうとしていたのだが、次の瞬間に起こった出来事を目の当たりにした時、僕は思わず声を上げてしまった。
「なっ……」
ドラゴンを、あの巨大なドラゴンをそれ以上に巨大な膜になったスライムが包み込み、取り込んでしまったのだ。数瞬後にはスライムは元の大きさに戻り、まるで元々ドラゴンなどいなかったかの様にプルプルと震えていた。
一体なんなんだ、この場所は。スライムやドラゴンがいたと言うだけでも御伽噺の様なのに、更にスライムがドラゴンを飲み込むなんて。
これは夢だと片付けられるのなら良かったのだけれど、僕の直感が夢ではないと告げているせいで夢だと思い込むことすらできない。
一体どうし—————
視界が大きく変わっていた。
スライムと目があった様な気がして、反射的に全力で後ろに跳躍してしまったのだ。冷や汗ではなく、脂汗がにじむ。
どうやら僕は予想以上に危険な事をしていたらしい。
ともかく、とりあえずの目標は決まった。あのスライムにかち合わずにこの洞窟を脱出する。そして人を見つけ、ここがどこなのか、そしてここはなんなのかを調べる。その4つだ。
そうと決まれば行動は早い方がいい。すぐさま今跳んできた方向とは逆に足を向け、歩き出した。
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歩き始めて多分大体1ヶ月。僕が立てた目標は、予想以上に難しい物だった。
端的に言うと、めちゃくちゃスライムと出会う。スライムが僕の事を探しているのかどうかは分からないが、角を曲がればスライムが居てその度に全力跳躍。そのせいで今自分がいる位置が分からなくなり、ただでさえ難航するであろう出口探しが更に停滞していた。
それに加えて、この洞窟内で不可解に思う事が2つあった。
1つが、全く生物が存在しない事。この1ヶ月間、洞窟内を徘徊し続けて居て一度たりとも虫はおろか地面に生えている草以外の植物すら見た事がない。
そしてもう一つが、これだけ何も食べずに歩き続けているにも関わらず疲れもしないし眠たくもならない、そしてこれっぽっちもお腹が減らない事だ。いくら吸血鬼と言っても、限界が来れば腹は減るし眠くもなる。だとすると、限界が来ていないと言う事なのだろうか。
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの眷属とまでなれば1ヶ月程度の不眠不休飲まず食わずは平気なのだろうか。
答えは否。そんな訳がない。なぜなら、あの地獄の春休みで僕は少しずつだが空腹になっていったのだから。ならば、なぜ腹が減らないのか。
結果としてだが、その疑問が洞窟中で解決されることはなかった。長い間徘徊してやっと、明らかに人工物である扉を、出口を見つけたのだ。
ようやく出られる、と思いつつも左右を確認してあのスライムがいないかどうかを確認する。
よかった、どうやらいないようだ。
僕が意を決して扉を開けようとすると、
「やっと開いたか。錆付いてしまって、鍵穴もボロボロじゃねーか…」
「まあ仕方ないさ。300年、誰も中に入った事がないんだろ?」
「入ったという記録は残っていません。それよりも、本当に大丈夫なんでしょうか?いきなり襲われたりしないですよね…?」
扉が開き、3人組の冒険者らしい人物が入ってきた。
スライム、ドラゴンときて今度は冒険者か。僕は本当に、ドラゴンクエストのような世界に来てしまったらしい。
「がはははっ! 安心しろ。300年前は無敵だったかどうか知らんが、所詮大きなトカゲだろう!俺はバジリスクをソロで討伐した事もあるんだっ。任せろ!!!」
「それ、前から思ってましたが、嘘ですよね?バジリスクってカテゴリーB+ランクの魔物ですよ?カバルさんにはソロ討伐なんて無理ですよね?」
「馬鹿野郎!俺だってBランクだぞ!でかいだけのトカゲなんざ、敵じゃねーんだよ!」
「はいはい。解りましたから、油断しないで下さ………誰?」
このまま仲間内でずっと騒いでいてくれれば良かったのだが、どうやら僕に気づいてしまった様で。三者三様、それぞれがそれぞれの武器を手にとって即座に構えた。のだと思う。多分。
というのも、3人が武器を構えるのがとてもゆっくりに見えたのだ。おそらく武器を取るという動作に反応して、僕が注視してしまったせいなのだろう。
恐ろしく遅い。
平仮名にしてみると、おそろしくおそい。
こうしてみると、特に意識していないのにも関わらず韻を踏んでいるような気がして来るYO!
韻を踏むといえばラップだが、僕はラップがあまり好きではない。あの、『僕たちいけてるでしょ?ね?ね!』と他人に強要する雰囲気がどうも好きになれないのだ。いや、訂正しよう。ラップは好きだ。ただ、調子に乗ってるラッパーがあまり好きではないだけだ。あいつらに伝えたい。ラッパーと言うものがカッコいいのではなく、かっこいい奴がラップをやっているのだからかっこいいのだと。
それと、クラスに一人はいるであろうなんか調子に乗ってるやつは大抵ラップをやっていた事があると思う。確証はないけれど。
え?僕がそれを知っている訳がないって?いや、僕はあれだよ。人間強度が下がるとか云々言ってた時期にクラス全員の趣味とか住所とかを書いたノートを作ったりとかして人間観察していたから知っているんだ。
とまあ、そんな無駄な思考が出来るくらいにはゆっくり見えて。
ようやく彼らが武器を構え終わった時には、初めに僕が抱いていた焦りはかけらも無くなっていた。
「おい、お前。お前は、なんだ?なんでここにいる」
さて、お前はなんだと聞かれても。世の情けで答えてあげたいのだが、あいにくこの男が納得する答えを提供できる気がしない。
阿良々木暦?
吸血鬼の眷属?
転生者(疑問)?
そもそも僕自身を一言で表せという方が無理難題なのだ。人間の人生には一日に二十四時間分の時間が蓄積されており、僕の場合は十八年間生きている訳なので大体十五万七千六百八十時間が蓄積されている。その十五万七千六百八十時間を一言で表すなんて到底無理だろう。
それでも何かを言わなければならないので、僕は一つとぼける事にした。
「分からないんだ……僕も。気がついたらここにいたんだよ、その前の事も……思い出せない……」
嘘である。
真っ赤な真っ赤な嘘である。
「な……そうか。なら、あー」
なんて言えばいいのか迷っているらしく、俺に質問をしてきた金髪の男はそれ以上何も言ってかなかった。というか、よく信じたな僕の苦し紛れの言葉を。
まさかこんな所で普段からでかい方の妹を騙していた事が生かされるとは全くもって予想だにしていなかった。
それはともかく、金髪が言葉に詰まっている時、僕は金髪の男を見ていた視界の端で青い何かが動くのを確認した。視線をそちらの方に向けると、スライムが岩陰に隠れながら外に出ようとしているではないか。
「そいつをここから出したらダメだ!」
気がついたら叫んでいた。再び脂汗が出てくる。クソ、ここからじゃもう間に合わないか……
「おいあんた、スライムがどうした?」
金髪が僕に聞いてくる。心底不思議そうな顔をしながら、怪訝な目を僕に向けて。どうやらこの世界においてスライムという生物はそこまで警戒する相手では無いらしく、焦る僕とは裏腹に金髪やその取り巻きは一向に焦る気配がなかった。
「あのスライムは、この中にいたドラゴンを取り込んだんだ!この目で見たから間違いない!」
金髪達の態度が変わる事は無かった。余裕を持って、それでも一応確認しておくかと一番小さい女の子が光弾を一つスライムに向かって放つ。その光弾はまっすぐスライムへと向かっていき、スライムが吐き出した何かによって弾かれた。
あれは、水か?
スライムが吐き出した水は光弾を弾くとその場で落ち、水たまりをつくった。なるほど、スライムは色に違わず水属性なのかな?
金髪達の態度は目に見えて変わった。まさかスライムに自分の攻撃が弾かれるとは思っていなかったのか、小さくてとても可愛い女の子は呆然と立ち尽くして、金髪の男ともう一人の茶髪の男は直ぐにスライムに向けて攻撃をした。
だが二人の攻撃がスライムに入ることはなく、スライムはすいすいと外に出て行ってしまう。
僕はその間何もすることができずに、蛇に睨まれた蛙よろしく固まっていただけだった。
「なあ、あんた。さっき言ってたスライムがドラゴンを取り込んだって話、詳しく聞かせてくれ」
金髪はこちらを見て、そう説明を求めてきた。