どうも、作曲者兼声優兼ゲーム実況者の結月ゆかりです   作:極普通の狂人

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天瞥を得て水を得た魚ようにピチピチとはねたので初投稿です。


どうも、作曲者兼声優兼ゲーム実況者の結月ゆかりです

 どうも、わたくし作曲者で声優でゲーム実況者な結月ゆかりです。で、中身は神様を名乗るよくわからないものに転生させられた一般人(大嘘)です。

 

 そう、あれは大雨の日でした。私はちょうどその日に届くはずの『VOICEROID 結月ゆかり』さんをお迎えするためジャージで町を走り回っていました。もう遠い記憶で細かいことは思い出せませんが客観的にみて不審者そのものであったのは間違いないです。

 

 まあ、そんなことをしていれば事故るのも無理はない話で。

 私は若くしてトラックに轢かれることで命を落としました。そして、気がつけば『結月ゆかり』になっていて、そのときにいろいろと失ったのでしょう。不思議と性別が変わったことや姿形といままで積み上げたものが崩れ去ったことに対するショックはありませんでした。むしろ、よく"馴染んだ"くらいです。まるで、それが本来の姿であったかのように。

 

 目覚めた場所は"今"の私の家で、近くにはB5サイズのコピー用紙とノートパソコンがありました。そのB5用紙には

 

「神様が君に新たな器と力を与えた。ここは創作の中の世界だ。君は超人的身体能力を得、音に関する君が記憶する便利な技能を得た」

 

 と書かれていたのです。実際に私はVOCAROIDとしての能力、歌唱と作曲やVOICEROIDとしての能力、声色を自由に変えられたり同じ音量で喋ったり、ステッキを使った音撃(オンゲキ)など便利?な能力を使うことができます。

 

 前からゲーム実況動画をサイトへ投稿していたこともあって転生してからすぐに動画投稿を始めました。ゆかりさんの声を自由に出せる(というか地声なんですけど)のでもとからやっていたゆっくり実況ではなく生声(ボイスロイド?)実況へとシフトすることになりました。

 

 当初は特に何も考えずにメジャーなマイクラ実況や青鬼、霧雨の降る森などのタイトルを『VOICEROID実況』のタグをつけてniyaniya(通称ニヤニヤ)やYONGTUBE(通称やんつべ)へと投稿していたのですが初回の投稿から数日で数千回数再生されるという偉業を達成し、さらにはその数日後に一万再生突破。結果、コメントで「VOICEROIDってなんだよ」「結月ゆかりって誰?」というようなコメントを大量に頂戴し、初めて気がつきました。

 

 この世界、VOCAROIDもVOICEROIDも存在しないのです。正確には、人の声を元にした人工音声という概念が存在しません。しかしながら『ゆっくり音声』と呼ばれるものは確かにあるので人工音声自体がない訳ではないのです。

 

 ただ、私という存在のせいかそういった業界がまだ存在していないし、結月ゆかりもいませんでした。そう、つい最近までは。

 

 ここで私の動画の第一声を確認してみると

 

「どうも皆さんこんにちは。結月ゆかりです」

 

 当然ながら私のアカウント名は『結月ゆかり』ではない。ゆかりさんにちなんで『パープルラビット』と名づけた。じゃあ結月ゆかりってなんだよとなり

 

 

『【結月ゆかり】最近期待の新人パープルラビットの動画に登場するオリキャラ結月ゆかりについて語るスレ part1【可愛い】』

 

 

 なんてものまでできる始末。コメント返信の際に

 

Q.コレ主の声ってマジ?声優さんでも雇ってるの?聞いたことない声だけど。

A.地声です。ゆかりさんになりきってます。

 

Q.結月ゆかりって誰?

A.私の考えた最高にかわいいオリキャラです。

 

 なんて苦しい嘘をついたばかりに『結月ゆかり』はいつの間にか歌って踊る私の動画に出てくるかわいいキャラクターという位置づけになってしまい。知名度が上がるにつれて私は外に出れなくなっていき(お金と食料はなぜか十分にあった)、約一年。とうとういくところまでいってしまいました。

 

 動画を投稿すれば一日でミリオンに行きそうになり、なぜか一つのジャンルとなっており、企業から作曲の依頼が来てメールでやりとりをしたり、ゲームやアニメの声を担当したり、テレビへの出演もしたりしました。

 

 外部への露出の際に動画の立ち絵そのものであることがバレてお祭り騒ぎになったこともありましたね。一躍有名人です。

 

 そんなこんなでいろいろあったのですが、なぜ今、こんなことをやっているのか自分でもよくわかりません。

 

「あ、ゆかりさん。それそっちね」

「はい、まりなさん。…これちょっと重くないですか」

「そりゃドラムセットが入ってるわけだし重いでしょ」

「へ?ドラムセット?そんなものを女の子に持たせてたんですかまりなさんは」

「はいはい、口は閉じて手を動かす」

「…はい」

 

 なぜ私はライブハウスのバイトなんてしてるんでしょうか。

 

 

 

 

~~~

 

 

「いらっしゃいませ。友希那さん。Roseliaの予約は今日は入ってませんが」

「あなたと話をしに来たのよ。結月さん」

「ゆかりでいいといつも言っていますが」

「私が許さないのよ。…それに、先達は敬うべきでしょう」

「そうですか…それで、話とは」

 

 湊友希那はこの町で活動するガールズバンド『Roselia』のリーダーです。ボーカルで、つまりは私と同じ役割で歌う人です。なんでも私を尊敬しているらしく、いつかは隣へ、そしてそのさらに先の頂点を目指しているそうです。 彼女はこうしてときどき私のところへ来てはもう引退した私に歌わせるのです。そして「そういうことなのね。わかったわ」などとしたり顔で頷き去って行きます。

 よくわかりませんがこの町の要注意人物の一人でしょう。

 

 彼女が所属するバンド『Roselia』は他にも無理やりマックに連れていきポテトをたかる不良やなんだかちゃらちゃらとした不良の取り巻きその1と「闇の力で汝を滅してくれる…」と私を脅す取り巻きその2、おどおどしていてなにが言いたいのかわからないけれどRoselia唯一の良心リンリンがいます。

 

 暴力団体みたいなものです。正直あまり関わりたくないですね。

 

「…度言えばRoseliaは遊びではないと……聞いているのかしら。結月さん」

「もちろん聞いていますよ。それは困ったものですね」

「そうなのよ!まあ、止められない私にも責務はあるのかしら……結月さん、一曲、歌ってくれないかしら。またなにかわかるかもしれないことだし」

「いいですけど、部屋に空きはありませんよ?」

「ここでいいわ。頼むわね」

 

 そら来ました。店のカウンターで歌う?外にはカフェが併設されているんですよ。どんな羞恥プレイですか。…でも湊さんの鋭い眼光が怖いのでやるしかありません。

 いつでも歌えるようにか、私の能力には小道具を呼び出す能力があります。これでマイクやステッキを召喚できるわけです。どんな能力ですかそれ。

 

「それでは一曲。どうか皆さんに安らぎのひと時が訪れますように。♪~~~~♪____♪ーーーーー」

 

 歌。神様から与えられたものらしいこれで人に負けることはありません。なにせ文字通り次元が違うのですから。

 何千回歌おうとも、声は枯れずに音は変わらず、質が上がったり下がったりすることはないです。

 何回歌っても同じものしか歌えないのはやはり機械だからか。変えることはできません。

 

 私はそれに限界__もとからそんなものありませんが__を覚えました。引退し、ライブハウスにいるのはそれが原因だったりします。この町のガールズバンド、彼女たちになんらかの可能性を見出したので私はここにいます。

 

 彼女らが止まらないように、手助けをします。あなたたちが止まらない限り、私も止まりません。

 

 だからよ、止まるんじゃねえぞ……。

 

 




べっ、べつに続かないし

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