転生者が見る人理修復   作:完詰岩志
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まだ集まらず

城を脱出してから、もう夜が明けた。

俺たちは霊脈に辿り着き、カルデアとの通信回線を開く。

 

『あっ。やっと繋がった! 大丈夫かい半場くん!?』

「あぁ、俺の体に異常はない。そしてサーヴァントたちも全員揃っている」

『そうか! 立香くんたちも心配ないよ!』

 

言ってロマニは、並列に映像を出した。そちらにはぐだおたちの姿が。まぁ今回は単純に俺のミスだし、何の心配はいらない。

 

「何があったか、結論から言うぞ。敵サーヴァントと思わしき連中の本拠地に突入した」

『何だって!? 本当に大丈夫なのか!?』

「所長も元気だぞ」

『わたし見てないのだけれど』

 

霊回線でオルガマリーを起こす。レイシフト直後はスキルを使えないので仕方のない。いやむしろオルガマリーは見なくて良かったな。

 

「場所はオルレアンで一際目立つところだ。なにせワイバーンが大量にいるからな」

『半場先輩。サーヴァントの様子はどうでしたか』

「数は7騎、クラスは不明。ひたすら逃げたから城内の様子もほとんど確認できていない。悪いな」

『いや。それだけ分かれば十分だよ』

 

それでぐだおたちの方は、と問おうとしたら、次の瞬間にどこまで進行したのか分かった。

 

『そちらの方がもう1人のお仲間? わたしはマリー・アントワネットよ!』

『マリー。画面ギュウギュウですよ』

 

ライダー・マリー、ルーラー・ジャンヌ。なら画面外にはアマデウスもいるだろう。

そのメンバーがいるとすると……邪ンヌとの遭遇イベントはスキップされたんだな。俺のせいで。

それより、今はジャンヌだ。ここで何か言っておかないと怪しまれる。

 

「……あんたが、ジャンヌ・ダルクか」

『……あなたは、もう1人の私に会ったそうですね』

「ああ。でもあんたとはまるで別人だ。あっちが偽物と言われた方が納得できそうだ」

『そこまで違うのか……』

 

事実あいつ贋作だし。ジルの偶像(アイドル)みたいなもんだしな。

俺の言葉でジャンヌが若干ショックを受けている。うーんこれは実際に会わない限り分からんだろうな。

 

「まっ。俺は藤丸やマシュたちが言うんなら信じるよ。それにあのマリー・アントワネットとアマデウスがあんたを信じてるんだしな」

『ありがとうございます……』

 

さて、あとはいつ合流するかだ。

俺としては、今すぐ合流するのは避けたい。しかし案の定、オルガマリーやロマニが提案してくる。

 

「却下だ」

『何でよ。この状態で敵が総がかりしてきたらどうするの!』

「それはない。むしろ相手は俺たちが合流の動きをするまで動かないだろう」

『うん? どうしてそう思うんだい?』

 

それを説明するために、まず俺は両儀式に呼びかける。

両儀式にはさっきから見張りをさせている……よし、敵はいないか。

 

「敵陣から逃げ出す際、俺は黒ジャンヌを挑発した。それもかなり派手に。やつは激怒した。にもかかわらず、未だに追跡してこないんだ。正確には、見つけてないんだろうな」

 

おそらく、ジルの指示だろう。一旦追跡網から逃げた以上、サーヴァントを1騎2騎で捜させるのは無意味。みすみすやられに行くようなものだと思っているに違いない。事実その通りだ。俺なら令呪をきってでも確実に潰している。

 

「だからあいつらとしては、俺たちの位置が確定し、自分たちが万全の準備を終えた時点で襲いかかるつもりなんだろうさ。そんな状況で下手に動けば、俺たちはすぐさま全戦力投入で潰されかねない」

『待った。仮にキミの推測が全て正しいとして、相手が襲いかかってこないのはおかしい。黒ジャンヌはルーラーだ。そしてルーラーはクラススキルでサーヴァントの位置を割り出せる。キミたちの居場所には気づいてるはずだ』

「あ、それなら潰した

『……は?』

 

俺のサーヴァント以外の全員が唖然となった。もちろんちゃんと説明する。

逃亡する際、俺はシュールストレミングを使った。そして、あれはただのシュールストレミングではない。

実はこの特異点に突入する前、俺たちは少し細工を施していた。

 

「その細工とは……サーヴァントのクラススキルを一時的に使用不可能にするものだ。とびっきりの素材を使ったから、量産の目処は立たない代わりに効果は抜群。黒ジャンヌはまだ今日くらいはルーラー特権を使えない」

 

原作で邪ンヌがルーラースキルを明確に使った描写はなかったと思うが、それでも念のためだ。

 

『ならますます合流した方がいいじゃない!』

「いいえ。俺はまだやることがある。もっと言えば捜索」

『……まさか』

 

そう。この特異点には、明確に邪ンヌには属さないサーヴァントが存在する。マリーやアマデウスの他にもだ。

そいつらを捜す以上、どう動いても必ず別れる。なら今の内に捜した方が効率がいい。

 

「そっちはどうだ? マリーやアマデウスの他にサーヴァントは?」

『マリー、どうでしょう。他にサーヴァントの話を聞いたことは……』

『いえ。私たちは立香さんたちが来るまでずっとサーヴァントを捜していましたけれど、話は聞いていませんわ』

「ならもうそっちにはいないんだろう。あとはこっちだけだ」

 

合流はサーヴァントを確保した後。俺たちは邪ンヌの捜索を回避した上で、ぐだおたちは回り込みつつサーヴァントを捜す。そういう方向でこの会議は成立した。

 

『半場くん。言うまでもないけれど、今のキミはかなり危険な状況だ。決して無理はしないように』

「大丈夫だ。今日はあいつらも捜索しきれないし、今日中に終えてお前ら待っといてやるよ」

『すぐに向かいます!』

「おう藤丸。下手こいて見つかるんじゃないぞ」

 

最後にぐだおとマシュに激励をかけてから、俺は通信を切った。

さて、早速だが移動の時間だ。

 

「サーヴァントは近くにいないよな?」

「ええ。ワイバーンは相変わらずだけれど」

「まっ、やつらが黒ジャンに報告できんのが良いところじゃな。数は多いがわしらの敵ではないわ!」

『それじゃあ、早速移動するのね?』

 

もちろん、まずは街に向かう。

そして買い物だ。

 

『はぁ? サーヴァントを捜すんでしょう? なんで買い物するのよ』

「捜索がある以上下手に街に長居できない……ってのもあるが。ちょっとロープを買っときたいんだ。あとでかい肉」

「なんじゃ、それ。全く繋がりが見えんぞ」

 

いいや、繋がりならちゃんとあるさ。……このやり方じゃ確率は限りなく低いってのが難点だけどな。

だけどこれは必要だ。俺たちの戦力を考えれば乗り物は必須。だから買う。

 

「マスター。何をするつもりなの?」

「テーマくらいは言っとくよ」

 

両儀式とノッブ、あとオルガマリーに呼びかけるように俺は言った。

 

 

 

 

「果たして(ワイバーン)と人は心を通わせられるのか、だ」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

時間は夜。

 

ジャンヌオルタたちが根城としている城。

そこでは主であるジャンヌオルタと、数名のサーヴァントが同じ部屋で話をしていた。

 

「あの男はまだ見つからないのですか!」

「よほど念入りなのでしょう。ワイバーンと戦闘した様子さえなかった」

「チッ。ルーラー特権さえ使えれば……!」

 

忌々しそうに、ジャンヌオルタは髪を掻きむしった。

ジャンヌオルタたちは現在クラススキルを封じられている。あのシュールストレミングのせいで。

その上で、ジルはジャンヌオルタを落ち着かせる。

 

「ジャンヌよ、焦ってはなりません。焦ればなお、あの男はそれを利用するでしょう。今は落ち着いて、制限の解除を待つことが重要です」

「分かっていますジル。……でも、何の情報も得られないなんて!」

 

ふむ、とジルは顎に手を当てるポーズを取る。それは自分が余裕だから心配はいらないと始めたことであった。

 

「わたくしたちを嵌めた相手です、その程度のミスは起こすまい。しかしジャンヌ、焦ることはない。奴らには時間はありませんが、こちらには時間と聖杯があります。落ち着いてかかれば勝てぬ相手ではありません」

 

狙い通り、ジルの余裕な態度にジャンヌオルタは安堵の息を吐いた。

しかし彼女は知らない。その態度の裏に、燃え盛る業火のような怒りがあることを。

 

「(おのれ匹夫めが……! よくもあのような仕打ちを! 吐き気のすることです! 捕らえた暁には必ず我が手で殺す!!)」

 

ジルは見た。愛しいジャンヌオルタと、ついでに仕えてるサーヴァントたちの姿を。

 

 

みな一様に───鼻にティッシュを詰めていた

 

 

そう、結局シュールストレミングの臭いは取れなかったのである。洗えども擦れども臭いは取れず、結局諦めたのであった。

ちなみに臭い取りに聖杯が使われたがそれでも無理だった。恐るべしシュールストレミング。さすがは『最臭兵器』と言ったところか。

 

「(このような醜態、本来ならすぐにでもやめるべき……。しかし! あの匹夫めの恨みは決して揺らがぬようせねばならない! ならばこのジル耐えましょう! そして必ずや倍にして返す!!)」

 

そう意気込むジルだが、英霊たちにまでティッシュは強いる必要はない。それはあくまで『俺がやってんだからお前らもやれ』理論である。哀れ英霊。よもや死んでから社畜精神を味わうとは思いもよらなっただろう。

 

 

何やってるんだろう自分は。

サーヴァントたちがそう思っても何一つおかしくなかった。






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