転生者が見る人理修復(更新停止)   作:完詰岩志

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オルレアン開始。


邪竜百年戦争オルレアン
第1特異点、突入


 サーヴァント召喚から三日後。

 立香とマシュがエミヤやクーフーリンたちと親睦を深め、半場と両儀式が信長とバンドの調整をしている時に、ロマニから連絡が入る。

 

 

 

『新たな特異点が見つかったよ。今から3時間後、ブリーフィングを始めるから、準備はその間に済ませておいてほしい』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 とうとう来たか。邪竜百年戦争オルレアンが。

 待ちすぎて両儀式のリコーダーが吹奏楽レベルになっちまったぜ。ホントに便利だなぁ根源接続スキル。

 

「今回見つかったのは、百年戦争の最中のフランスだ。はっきり言って特異点としての規模はさほど大きくはないけども、後々の歴史を考えればここも重要な転換点だからね」

 

 確かに。ゲーム内ではフレ頼りで余裕で突破できる特異点だけど、現実的に考えたらあそこも重要なんだよな。

 マシュがぐだおに百年戦争を説明するという微笑ましい姿を見ながら、俺は言った。

 

「情報は現地で収集するのか? 今分かってる範囲での特異点の動きとかは?」

「済まない、それは分からないんだ。用意できたのも、せいぜいレイシフト先の地図くらいで」

「いや、それも重要なことだ。藤丸、受け取っとけ」

「半場さんは?」

「後でデータを転送してもらう。今からでも読んで予習しといた方が良い」

 

 分かりましたと返事して、早速ぐだおは地図と睨めっこを始めた。

 オルガマリーが本当にいいのかと聞いてくるが、構わない。俺は俺でちょっとした情報収集手段があるからな。あと俺が正規ルートを辿るわけないし。

 

「それじゃ、俺は先にコフィンの中に入っとくわ。だから前置きは今頼む」

「よし、それじゃ」

 

 代理所長、ロマン。

 彼はただこう言った。

 

 

「藤丸立香、不知火半場に、特異点フランスの修復を命令する!!」

 

 

「おう、任せとけ」

 

 それだけ言って、俺は持ってきたバッグを担ぐ。

 そして、両儀式とノッブのもとに向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 1組の少年と少女。二人が降り立ったのは、遮蔽物など何一つない原っぱであった。

 

「……レイシフト完了。無事転移できましたね」

「うん」

 

 見渡す限りの草木。立香にとっては見慣れたソレは、マシュにとっては感動を覚えるモノだ。

 

「綺麗です……先輩」

「きっと、これからも見えるよ」

 

 返答にマシュは笑みを浮かべ───

 

「フォウフォウ!」

「わっ! フォウさん、また付いてきてしまったのですか?」

 

「そろそろいいかね」

 

 声をかけたのはアーチャー・エミヤである。

 二刀使いである以前に弓兵である彼なら、辺りの様子もよく見えるだろうと。ちなみにクーフーリンは暇そうに座っていた。

 

「ひとまず見渡したが、誰もいなかったよ。ただ人の気配は感じられた。おそらく休戦中の兵士たちだろうな」

「で、ではその人たちから話を聞きましょう」

 

 目的は定まった、さぁ出発───というところで、彼らは気づく。いるべき人間がいないことに。

 その直後だった。カルデアから通信が入ったのは。

 

『───よし、ひとまず繋がった! 早速だけどキミたちに悪いニュースだ!』

「はい、わたしたちも薄々気づいていますが、なんでしょうドクター!」

 

 

 

『原因不明のシステムトラブルにより、半場くんたちが別の場所に転移している! しかも回線が開かない! 今すぐにキミたちも動いてくれ!』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 煤けた髪の毛、輝かしくも獰猛な金色の瞳。黒い鎧に煤けた旗。

 少女という言葉だけでは表せない。これは憎しみと怨念がなければ形作られない。それが彼女───ジャンヌ・オルタであった。

 

「───今日は、どこの街を焼きましたか?」

「ここから西の街よ。でも、少女が少ないのが残念だったわね」

「逃げたのだろう。狩りを楽しむ時間ができたと思え」

 

 ジャンヌオルタの周りには、なんと6体ものサーヴァント。当然である。彼女『たち』は聖杯を所持しているのだから。

 

「それでは、明日は東に向かいましょう。確かあちらにはまだ街がありましたね───それでいいかしら、ジル」

「もちろんですともジャンヌよ」

 

 キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェ。今はジャンヌオルタにより狂化を施されている───が、その目に宿る狂信は本物である。

 

「連れて行くサーヴァントは……そうね。バーサーカー、アサシン、セイバー、ライダーにしましょう」

「よろしい。それならば問題など何一つない」

「そうね、むしろ過剰かしら。───いいえ、まだ、まだ足りない。この国には、もっと深い恐怖が必要だわ」

 

 ジャンヌオルタの笑みは、まさしく邪悪のそれであった。それを見てますます、ジルは深く喜ばしげな表情になる。

 取り巻きのサーヴァントの反応は多様であった───と言っても、大概が楽しげか無表情である。共通なのは、そこに英雄の面影などないということだけ。

 

「ふふ、ふふふ。今から笑いが止まらない。見てなさい、わたしを見捨てたフランスよ。もはや、この国に救いなぞ───」

 

 直後、ドン、と。

 

 

 扉の近くの物入れが、大きな音を立てて揺れた。

 

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 なにかかっこよく決めようとしたところを邪魔されたジャンヌオルタに、サーヴァントたちから憐れみの視線が向けられる。それに対し顔を若干赤くしながら、ジャンヌオルタは物入れに近づいた。

 

 直後、そこから人の声が。

 

『ごはっ、イタタタ。どこだここ? なんか暗いな』

『……ひょっとして、物入れの中じゃないかしら』

『え、マジかよ。……ってことは今俺たち三人ギュウギュウ詰め?』

『そのようね』

『いたっ。ちょっ、誰じゃわしの足を踏んだの!』

『叫ぶなよ気づかれるだろ』

『マスター、なら早く出た方がいいんじゃないかしら』

『んじゃ……おっ、これか扉』

 

 何か軽薄そうな男性の声が聞こえた後、女性2人の声が。

 そして、物入れの扉が開かれた。

 

「いやー狭かった狭かっ……」

『……』

 

 瞬間、空気が凍る。

ジャンヌオルタたちは対面した……何故か物入れの中にレイシフトしてきた半場たちと。

 最悪の初対面である。何せ男女3人が揃って物入れから一緒に出てきたところで遭遇したのだから。

 半場たちにとっても最悪である。現場が現場な上に、敵の目の前に現れたのだから。

 冷や汗を浮かべて、半場の言い訳が始まる。

 

「い、いやー! 今日は良い天気ですねー!」

『……』

 

「しかも気温もちょうどよくて、絶賛のピクニック日和!」

『……』

 

「あっ。みなさん団体ですけど、あれですか? これからパーティの準備とかそんな感じ?」

『……』

 

「いや、それは申し訳ないことをした。勝手にお邪魔しちゃって……」

『……』

 

「それじゃ、俺たちはこの辺で失礼しまーす」

 

 そう締めて、半場たちはそそくさと立ち去ろうとする。

 その前方。ちょうど半場の鼻の先。そこに、黒い炎が立ち上った。

 

「逃すと思ってるのかしら」

「デスヨネー。───行くぞお前ら!!」

 

 瞬間、半場の指示により、信長が扉を蹴破る。そして3人は回転移動しつつ廊下に出る。

 その跡に、焔が突き刺さる。

 

「逃がさないわ。追いかけなさい!」

「中々狩りがいがありそうだ」

「ではわたしは、あの少女の方を」

 

 サーヴァントの脚力を持って、2騎のサーヴァントが半場たちを追いかける。

 不利なのは、マスターが人間である半場たちである。

 

「追いかけてきたぞ、どうするマスター!」

「やつらの本拠地で追いかけっことか意味ねぇ! 適当に扉でバリケードを作りつつ上に上がるぞ!」

「ガッテン承知のすけー!」

 

 がしゃんがしゃんと派手に破壊しつつ、半場たちは上に駆け上がっていく。途中フェイントとかT字路とかあったが、そんなものは一時的な足止めでしかない。

 

 やがて、半場たちは追い詰められていく。

 たどり着いた場所は城の最上階。映画でなら追い詰められた場面だ。

 

「ここが最上階ね」

「なんでもいいからその扉守っといてお願い!」

「分かったわ」

「ノッブ! お前は窓を開けろ!」

 

 その命令に、信長は大いに違和感を抱いた。

 

「『開けろ』? 壊せじゃのうて?」

「ああ。壊したらこいつが使えなくなるからな」

 

 半場は鞄から、何か缶のような物を取り出し見せた。

 それを見た信長は、ウゲェと信じられないような顔をする。

 

「それ本気でやるつもりか!?」

「当然! だからノッブは先に出てくれ!」

 

 マジかーと敵を憐れみながら、信長は格子を破り窓を開ける。

 それを見て頷いた半場は、両儀式に言う。

 

「脱出だ両儀式! 着地任せた!」

 

 両儀式が時間稼ぎの強化をしたのを見届けつつ、半場は持っていた缶を開けて放り投げた。そして窓から飛び降りて器用に閉めた。

 その直後、ジャンヌオルタたちが突入してきた。

 

「開いたッ」

「行きなさい!!」

 

 思い切り扉を押していたのか、なかば雪崩れ込むような形で入ってきた。勢いよく、全員部屋に入る。

 

 彼らのミスは、相手を追い詰めていると思って追いかけていたことだろう。実際はその真逆。彼らは追い詰めているのではなく誘導されていたのだ。

 そう、半場の作戦は成功した。

 その内容は簡単。相手を目一杯引きつけて、屋上から飛び降りて逃亡するというもの。

 

 そして、その要たる『引きつける物』とは。

 

 

 

 

 

 シュールストレミングである。

 

 

 

 

「ぶはっ、くっっっさァァァ!?!?」

「おふっ、な、何よこの臭いくさっ!?!?

「ちょ、貴方たち押さないで、臭い!?!?」

「おぉジャンヌ───グバァッ!?!?」

「ジル──────!?!?!?」

「オボロロロロロロ」

「おい吐くなァァァ!!」

「今すぐ換気しろおおおォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターよ。水着に臭いついたらどうしてくれるんじゃ」

「まぁつかない可能性もあるしな。分かった、ファブリーズしておく」

「マスター、それ意味ないと思うわ」

 

 近くの森で休息を取る彼らは、城内の惨状も知らず(というか無視して)にそんな会話をしていた。

 




はい今回の被害者はオルレアンで敵対していたやつらでしたー。可哀想に。


ちなみにレイシフト先を間違えた理由は

レイシフト前
半場「面倒だし城に爆弾しかけて逃げよ。んじゃレイシフト先を弄ろう」
システム「なんだこの入力雑すぎる。マスター保護のために修正、っと」

レイシフト後
半場「人生そう上手くはいかないよね(´・ω・`)」


こんな感じ。
物入れの中じゃなくてもよかったけど、初手から作戦成功じゃ面白くないしね(白目)

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