此岸にて刹那の花に愛を込めて   作:紅島涼秋

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 当作品は、「小説家になろう」投稿作品である「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」の二次創作となります。

 作者である硬梨菜様の作品、いつも楽しく拝読しています。


【注意事項】
 ペンシルゴン可愛すぎかよぉぉぉぉという気持ちで書きました。天音永遠とサンラクの恋愛SSです。他は妹以外は出てこないです。
 ヒロインちゃんとのあれこれはありません。
 原作である「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」とは一致しない設定などもありますが、ご容赦願えればと想います。
 基本的なゲーム部分は無いので、人間関係の設定だけ目をつむっていただければ幸いです。
 ペンシルゴン可愛いけど、ちょっと性格が難しいですね……。

 ハーメルン初投稿のため不手際等ありましたら申し訳ございません。随時理解次第改善していきますので、ご容赦願えれば幸いです。


此岸にて刹那の花に愛を込めて

 彼女は眼下に広がる光景をその整った顔立ちについた瞳に映していた。

 荒廃した大地に立つ城の窓。NPCの手により玉座よりもなお豪華に整えられた部屋は、外界との隔絶を示す。

 その部屋へ飛び込んでくる影があった。

 彼女はその武器を構え、相対する。戦いはあっという間だった。

 

「これで終わりだ! 『反理想郷の女帝』魔王鉛筆戦士!」

「魔王なのに戦士とは」

 魚っぽい名前のプレイヤーが発言したので、ちょっとだけ空気が腑抜ける。ロールプレイ中に気の抜ける発言するの止めない? そんなことを思いながら、ゴホンと咳払いをして、武器を構える。

「くっ。この私がたかだか二人にやぶれるとはっ」

 

 彼女は苦しそうな声を作ってノリノリであった。

 自分が勝てると、端から彼女は思っていなかった。彼女のその手は最後のスイッチを握る。

 勝利を確信していた目の前の二人の表情が、歪むのが分かった。

 とてもいい! すごく良い!

 そう誘導したとはいえ、まさか二人だけで乗り込んでくるとは思ってもいなかった。そして、そんな二人に負けてしまう。だから、彼女は楽しい。

 彼女は高らかに歌う。そこに憂いは無い。

 

「さー、パーッと行こうか!」

 

 鉛筆王朝の滅びは、彼女にとって手放すことのできない出会いをもたらす福音だったから。

 

    φ

 

 懐かしい夢を見た。私は眠りから覚めて、まぶたを開ける。

 強い冷え込みが襲う冬でも、降り注ぐ朝の日差しがカーテンの隙間から部屋をすっかり明るくしていた。

 ベッドから、起こさないように静かに降りて早々に準備をする。食事はほぼお互いに別々だ。だってあいつは基本的にカフェインとごはんとかいうえげつない生活をすることが多い。

 はぁ、学生って良いな。

 そして、私としてはモデルとして食事は気をつけたい。たまに一緒にする食事は、主にあちらが作ってくれる。

 ……なぜあれほどゲームをやりこんで私よりも作るのがうまいのかは不満に思っている。しかもなぜか私が好みそうな味を作り上げてくるのだ。そんなに上手なのに、どうしてカフェイン(ライオットブラッド)とごはん(魚の焼き物)、とかいう生活をチョイス出来るのだろう?

 そんなことを思いながら静かにご飯を作る。

 ……ついつい一品増えてしまい、多めにお米を炊いてしまった。私はせっせと多めに作ってしまったおかずを皿に盛ってラップをかけ冷蔵庫へ入れる。

 

 食事を終えて、紅茶をゆっくりと飲み終わっても、遅くまでゲームしていたあいつは起きてこない。うーん、知ってた。

 今日のゴミ出しは向こうが担当だからちょっと困る。こんな綺麗な私がいそいそとゴミ出ししてる姿とか、幻滅じゃない?

 うそうそ、ちゃんと罰ゲームBOXは用意してあるので、そこから一枚ドローする。その結果を写真に撮って、別の写真と一緒にあいつの妹ちゃんへ送っておいた。

 今日の罰ゲームは妹ちゃんの財布になる罰ゲームです。

 メモ紙にライオットブラッドばっかり飲んでんじゃねーぞ、冷蔵庫見なかったら後悔するからと、可愛い文字で書き込んでダイニングテーブルの上に設置。

 手早く着替え鏡の前に立てば、自然とバッチリなアングルで鏡に映り込む。

 今日も世の中のティーン女子を歓喜させるのに申し分なくだ。

 

 もぞもぞとようやく起き出す気配を作ったあいつへ、優しくカーテンを全開にして布団をはいでおく。吸血鬼が光を浴びるみたいな声を上げるが、大学の講義がある日にギリギリまでカフェインをキメてゲームをするやつが悪いのだ。

 私は優しい。だから、目覚ましは止めておいてあげた。

 ぎりぎりにモーニングコールだ。

 

 マネージャーが車を回して現れ、私は、「はいはい」とそれに答えて乗り込んで仕事へ向かう。

 今日は何時にログイン出来るだろうって考えながら、SNSにはこれからお仕事です♪ と書き込み、朝ごはんの写真と一緒につぶやいて世のファンたちからのいいねに満足した。さらにたくさんの書き込みがあるが、一番多いのは「クリスマスイブにも仕事なんですか!? お疲れ様です! 今日の永遠様のお姿拝見出来るのを楽しみにしています!!」という可愛らしい応援だ。

 ふぅーとため息をつく。マネージャーに今日の仕事の終わる時間を聞くが、当然遅くなる。走る車の窓の向こうで流れる退屈な風景をサングラス越しに見つめながら、携帯端末が指定した時間を告げた。

 モーニングコールをかけると、思ったよりもすぐに相手が通話に出る。お姉さんちょっとびっくり。

 

「グッモーニン♪ 起きた?」

「ええ、それはもうお優しい善意で寝不足の目にあれだけ太陽の光と、光量マックスの室内灯を受ければ起きるわ」

「ふふーん、だって今日は朝から講義でしょう? お姉さんは不良学生にならないよう全力を出して上げたの」

「……なんか妹からメールが来てるんだが?」

「今日の罰ゲームが妹さんのファンの前で妹にクリスマスプレゼントを贈る心優しい兄ってシチュエーションになったから」

「いやいやいや、妹のモデル活動に悪影響だから」

「いやいやいや、ちゃーんと君が妹さんのお兄さんだって言うのは世に拡散済みだから大丈夫なんだよね。おめでとうノーフェイス。君は気づいてなかったかもしれないが、とっくに君の顔は妹ちゃんのファンにしっかり売れているのさ、はっはっは」

 

 電話の向こうで叫び声があがる。でも実際問題、妹ちゃん自身の私生活ガードが思ったよりもゆるいから、僕はお兄ちゃんだよって顔出しておいたほうが良かったんだよねぇ。

 妹ちゃんって私のことに対してはガードがしっかりしてるんだけど、自分のことになると、うっかり転ぶのが多い。忘れ物したわー、お兄ちゃんちょっと助けてーとか。それは駄目だよ妹ちゃん……。さておき、まだ彼の顔が売れて無かった頃に、妹ちゃんのわがままで荷物を届けに行ったせいであわや炎上とかになりかけたし。そういうの考えてほしいなぁ。

 とか思いながら、彼が落ち着くのを待って、声をかける。

 

「うるさーい。電話越しに叫ぶのはマナー違反だよ」

「勝手に売られた気持ちがわかるか」

「いやー、自然と私は顔が売れちゃってるからさー、わかんないかなー?」

「ぶっつぶす」

「おやおや、ご飯を用意してあげたお姉さんにそんなことを言って許されるのかな? 君のSNS上のリア友たちになぜか私のSNSと比較した朝ごはん風景画像が届いてしまう気がするよ。不思議だよねぇ、そろいの食器だなんて」

「YA・ME・RO」

「おっと、マネージャーからもすごい形相で止められちゃったー」

 

 やいのやいの一通り楽しく話して通話を切る。あ。と思ったが、止めておいた。見ればメッセージが飛んできていたのだ。冷蔵庫から出されたおかずがテーブルに並んでいる。

 ふふっと笑ってから、良きに計らえと送っておいた。

 そんなことを考えて、今日は楽しく仕事ができそうだと、キリッとした顔で目的地に着いて止まった車から降りる。

 今日は短いながらも公開生放送もある。VRが広まったとはいえ、直に見ることができるというレア感は今でも大事にされている。

 しかもクリスマスイヴ。これはもう彼氏いないアピールばっちりだね。

 いつもよりも少し大きめの鞄を持って、晴れた寒空の下、歩き出した。

 

    φ

 

 俺は妹に振り回されていた。モデルの妹の仕事終わりに公開クリスマスプレゼント。なんだこれは。しかも、なぜかスタッフや妹のファンから拍手されるし。

 SNSを見るのが怖い。だが、そんなのを無視して、妹がほらーとプレゼントを渡すシーンの動画やファン達がお兄ちゃん優しいーとか書き込んでるのを見せてきていた。ヤメロオオオオオ。

 仕事が終わって、妹に連れられて"なぜか予約済みの店"で食事を取って、当然金は俺が二人分払った。……すげー高い。

 

「……生活のための金が足りなくなるんだが」

「だいじょーぶ。今日はお姉様からお兄ちゃんからいくらでも搾り取ってもいいよって許可出てるから。多分バイト頑張るからダイジョブだよって」

「大丈夫じゃないぞ」

「え、大学生って暇なんでしょ?」

「どの時代の大学生だよ」

「今の時代のだよ。雑誌で女子大学生の一日スケジュールでバイト6時間、サークル活動4時間、自由時間4時間、講義時間3時間、他睡眠等とかだったんだけど」

「その大学生は不良品だ。捨てたほうが良い」

 

 講義時間すくなっと内心でもツッコミながら、いかに苦労して大学生活を送っているか懇切丁寧に説明しつつ、夜も進んだクリスマスイヴの街並みを妹と歩く。なんか悲しい。

 

「瑠美はデートとか良かったのか」

「うーん、お姉様からお願いされたら私は当然優先するから。あと彼氏いないし。ほら、私に彼氏が出来ると世のファンが悲しむからさ。あと、無料って素晴らしいと思う! これでまたお姉様とお買い物行けるっ!」

「……他人の金で食う飯は美味いか」

「とっても!」

 

 やばい、奴と関わる時間が増えたせいか妹がどんどん毒されている。やはり奴と出会わせたのは気の迷いだったのでは。そんなことを思いながら、俺は妹がどこへ行くか知らずにいた。

 そこは不思議と人通りが途絶えていた。まるで、意図的に別の空間に有名な物を設置してわざと人に見つからないようにされたような。

 妹がほいっと何か手渡してくる。それはオーグメンテッド・リアリティ(AR)端末のグラスだ。しかも確かかなり高性能品の物だ。今はVRが主流だが、リアルな生活上にARも当然展開されていた。だが、VRが高性能になるにつれ、AR端末は逆に手頃に購入出来るのが流行りになった。だから、とてもめずらしい品だ。

 妹はさっさとつけろと言って、そして、ドンと俺の背中を押して、拡張現実で構成された空間へ押し込む。

 背後を振り向けば、そこはあたかも閉ざされた洞窟のようになっていた。妹はいたずらが成功したように楽しそうに手を振ってはやく進めとジェスチャーしてきた。

 ちなみにその笑顔はバイト代が入った日のお金が充実した時の顔だ。買収済み。善意ゼロ。

 

 うっすらと光る苔が生えた密集した木々。樹海を押し込めた作られた洞窟のような風景が目の前に広がっており、その道を歩く。ARだと道だが目の前は壁とかいう外道トラップは無かったようだ。

 そして――。

 

「……なるほど」

 

 彼はそんなことを思いながら、その壁に触れる。わかりやすく矢印が在ってよかったとか思ったのは許してほしい。昔、一度通っただけの道順とか覚えてないから。

 

 上り坂ではないことは残念だが、わずかに光が強くなっている出口を抜ける。

 

 吹き抜けのドームになって、夜空が見える天上。空からはARではない現実の満月が覗く。赤い花畑が作られた空間に、風が抜けていく。

 電子で構成された燃えるように赤い彼岸花たちが、現実の風に揺れていた。

 そして、その先に、満開に咲き誇り、イルミネーションの光がARによって美しく屈折して輝く、桜の木があった。

 背を向けている女性の髪が風に揺れる。照らされた彼女は、俺の気配を感じたのか振り向いた。整った顔立ちが淡紅色の光に照らし出され、凛とした空気に締め付けられるような美しさがあった。

 前に立つ人物が俺の名前を呼んで。

 

     φ

 

 気配を感じて振り返って、彼の名前を呼んだ。赤い彼岸花の中に立つ彼をわずかに盛り上がって作られた土台の上から見下ろす。ふー、見下ろすって。おっと、今はこんなノリじゃなかったね。

 

「私、全力でお金をかけてしまったよ」

「開口即お金の話しか」

「冗談だよ冗談。ただね、懐かしくなったから、やってみたくなったんだ。綺麗でしょ?」

「コノキモチ……コレガ、ココロ?」

「そのネタ、前にやってるから」

「ちっ」

 

 私は思わずくすくす笑ってしまう。楽しいなぁ。そんなことを思いながら。

 ああ、その通りだと私も思った。懐かしいなんて嘘だけどね。

 

「私、丸くなったと思わない?」

「……いや?」

「えぇ、そこは同意しようよ。君、彼氏だよ?」

「世紀末鉛筆王朝その5を、少し前に別ゲーで作り上げて盛大に爆破した人間のどこが丸くなってるんだよ」

「えー、それは仕方ないよ。そんなゲーム調整にするほうが悪い。潰しに来たのはサンラクっていうプレイヤーなんだよねぇ」

「ま、その方がペンシルゴンっぽいさ」

「今は天音永遠でーす」

「はいはい」

 

 彼に手でこっちへ来るようジェスチャーすると、思ったよりも素直にこちらへやってきて段差に上がって来る。

 その段差に爆弾が仕掛けられていたらどうするつもりだい?

 私の不穏な考えを読み取ったのか彼が一歩踏み出すのをやめようとしたのに対して、私は無垢な瞳を向ける。うそうそ。逆に胡散臭くなっちゃうよねー。

 ……段差に上がるときにさりげなく手をつないだ。彼の視線が桜の木に向けられる。私も満足の出来な桜の木を見た。高い買い物をしたかいがあった。

 電子の花が舞い落ちて、踊る。静かな時間がしばし流れて。

 ……やばい。

 ものすごく緊張する。穏やかに見上げたのは良いけど、これからの行動を思うとものすごく動悸が激しくなってきた。

 いやいや、私は天音永遠。こんなので緊張なんてするはずないから。

 右手でごそごそとある箱を手にする。ああ、買う時に「素敵ですね」とか思いっきり押せ押せ!だった女店員さんが思い出されて、私は背中を押された気がした。

 

「あの、あのさ」

 

 桜から視線を動かせば、ものすごい近くに彼の顔があった。さっきまで冷静沈着クールビューティーなつもりだった私の頬がものすごく赤くなっている気がする。なぜかというと、とてつもなく暑い。

 それを珍獣でも見たというような表情をしているのがすごく気に食わない。というか、クリスマスイヴで男女の性別的に考えて本来立場が逆では?

 いやいやいやいや、違う。私、ステイ。

 向こうからは絶対に押してくるわけないんだから、こっちが行かなきゃ駄目なんだ。

 そうしないとクソゲニウムにカフェインを合成して摂取し、たまに神ゲーをするとかいう、ゲームと必要な日常生活以外はからっきししないサンラクムーブをかますのだから。

 いや、それでも私ばっかりが押すのはちょっとどうなの?

 悶々とものすごいフルスロットルで思考を回して、その結果私は諦めの境地で右手で掴んでいた箱を彼に見せる。

 ああ、こっ恥ずかしい。いや、本当。お遊びで出させてもらったドラマで告白される側シチュはあったけど(もちろんフッた)、告白する側シチュはなかった。

 ぎゅーっと彼が逃げ出さないようにか、緊張でめちゃくちゃ強く彼の右手を掴んでいたけど、自分の右手だけでは取り出した箱が開けられなくて、わちゃわちゃとつないでいた左手を離して使い、ちょっと硬い蓋を開ける。

 発する声は震えてしまって、もう演技出来るほどではなくて、ゲームで行ってきた不遜な声音も作れなくて。

 

「楽郎君、わた、――わ、私と結婚してほしい。私と一緒にいてください」

 

 ああ、言ってしまった。というか、くださいとか私のキャラじゃないと思うんだよね。私と一緒にいようぜ? いや、違うな。

 こんな綺麗な寒空の下で間抜け面を晒す彼の頬に軽くぺちんと平手を当てた。暴力じゃないよ?

 

「もしもし、聞こえてる? バグですかー?」

「はっ! おれはしょうきにもどった!」

「戻ってない」

「……びっくりしすぎた」

「えぇ」

 

 緊張がどんどんと抜けて、なぜだろう、私の気持ちがどんどんと沈み込んでいく気がする。どこへ? クソゲニウムへ。

 黒よりも暗いブラッククソゲニウムホールへ吸い込まれそうな気持ちを奮い立たせる。押せ押せだ。

 そう、サンラクムーブだ。前へ前へ!

 もう彼の手に嵌めてしまえ。

 箱から指輪を取り出すと、彼の左手をえいやっと掴んでその薬指に指輪をはめる。しっかり寝てる間にはかったからぴったりだ。

 くそぅ、やっぱりおかしい。性別的にこれはシチュエーションが逆でしょ?

 

「私は楽郎君と過ごすと楽しい! 確かにゲームと……一部リアルでも外道ムーブをするかもしれない、けど。駄目なのはわかるんだけど、裏も表も知って気楽にやりあえて、でも自分のやりたいことを優先できて、違うことがあれば我慢するんじゃなくて真正面から向き合えるのが嬉しくて、だから、私は、……その、楽郎君と付き合ってて、だから!」

 

 うぅぅぅぅと、唸るような声が自分の口から漏れていた。

 何度も何度も繰り返して考えてた言葉はとっくに頭の中から吹き飛んでしまっていて、もう自分が何を言っているのか分からなくなり、お酒に軽く酔っている状態のほうがまだマシだったかもしれなかった。

 

「ああああああもう!

 纏まらないんだけど!

 すごい考えたのに!

 もういろいろあって!

 楽郎君、大好きだから、結婚しよう!」

「結婚……結婚かぁ。出来るならしよう?」

 

 ああ、もう大崩壊だよ。すごい真面目に紙にまで書いたはずなのに、なんで外道ムーブとか言い出しちゃうかな私……ん?

 ふと、もう一度私は声を発する。なんだっけ、何回目のプロポーズだ?

 

「結婚しよう、楽郎君」

「ありがとう。結婚しよう、永遠」

「えぇ、外道ムーブするこんな私でも良いんですか、楽郎君」

「いや、外道ムーブに煽り返すこんな俺でも良いんですか、永遠さん」

「……さんづけ嫌い」

「はいはい。永遠、お互い自分を誤魔化さず過ごせる君と一緒にいたい」

「……はい、私も。楽郎君」

 

 ああ、決めるときは決めてくるんだよなぁ。ずるい。

 満月の下、赤い彼岸花に彩られた桜が散る。

 この桜は幻で、今この瞬間が終われば刹那に消えてしまうけれど、こんなに綺麗なのだ。これが私にくれたもの。君と出会えて良かった。

 あの時、君に声をかけなかったらどうなっただろう。

 あの時、君が話を聞きに来てくれなかったらどうなっただろう。

 あの時、ユニーククエストをクリア出来なければどうなっただろう。

 それは私にはわからない。

 あの時、こんな私にあっさり手を貸してくれてありがとう。

 あの時から、こんな私と一緒に表も裏も笑ってくれてありがとう。

 

 これからも私と一緒にいてくれてありがとう。

 

 彼の唇へ私から触れる。もう何度もベッドの上でも交わしたものだけど、それは初めて彼とキスした時よりもずっとドキドキして、そして、胸が熱くなっていた。

 

 ああ、こんなに君を愛してる。

 

 




少しでも楽しんでいただければ幸いです。
お読みいただき、まことにありがとうございました。

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