此岸にて刹那の花に愛を込めて   作:紅島涼秋

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 天音永遠(ペンシルゴン)と陽務楽郎(サンラク)の恋愛SS。
 大寒波が襲った年末、天音永遠(ペンシルゴン)は陽務楽郎(サンラク)の家へと訪れた。いつもなら家族で過ごす年末年始のはずがペンシルゴンの策略に陽務瑠美が乗ったためいつもとは違う日が彼の下へ訪れる。

 当作品は、「小説家になろう」投稿作品である「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」の二次創作となります。
 作者である硬梨菜様の作品、いつも楽しく拝読しています。
【注意事項】
 ペンシルゴン可愛すぎかよぉぉぉぉという気持ちで書きました。天音永遠とサンラクの恋愛SSです。他は妹以外は出てこないです。
 ヒロインちゃんとのあれこれはありません。
 原作である「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」とは一致しない設定などもありますが、ご容赦願えれば幸いです。
 基本的なゲーム部分に詳細な物は無いので、人間関係の設定だけ目をつむっていただければ幸いです。

 ハーメルン投稿未熟のため不手際等ありましたら申し訳ございません。随時理解次第改善していきますので、ご容赦願えれば幸いです。


刹那の魔王は永遠の月へ微笑む

 吐き出した息は真っ白で、年末の大寒波による寒さを実感する。見上げた空は冬らしい晴れ渡った空で夕暮れによって赤く染められていた。ゆっくりと歩いて目的の家を見つける。

 チャイムを鳴らすと瑠美ちゃんが出迎えてくれた。事前に聞いては居たが、ちゃんと瑠美ちゃん名義で両親を年末の素敵な温泉旅行に送り出せたらしい。中学生に無理を言ってごめんね。

 計画通りにことが進んだようで、私は彼女にお礼を告げて家に上がった。

 

    ◆

 

「やあやあ、楽郎君、元気?」

 

 胡散臭いくせに誠実さを宿したと称された笑顔を向ける。私の挨拶に彼はすごい驚いた顔をして私を見ていた。

 陽務家のリビングで妹ちゃんと話して彼が夕食を食べに来るのを心優しい私は待っていたのだ。

 

「な、なん」

「え、ナンが食べたい? ごめんねー、今日は和食なの。大晦日だからね。そばだよ」

「永遠お姉様の作られる食事に不満なんて持つはずありません!」

「瑠美ちゃんは優しいなー。ありがとう」

 

 頭を撫でて上げると、イヤリングが目につく。

 

「お、それこの前私が雑誌に出た時の奴じゃん。買ってくれたの?」

「もちろんです!」

「本当に瑠美ちゃんはいい子だなー」

 

 さらによしよしと頭を撫でて上げると瑠美ちゃんは感極まった顔をしてフラフラとリビングのソファに座り込んでしまった。

 やれやれ、これから三人仲良く食事にする予定だったのに、瑠美ちゃんったら。

 

「楽郎君、早くダイニングに来なよ。めふんも買ってきたからあるよ? これちょっとグロくない?」

「……いやいやいやいや、大晦日に何でここに居るのか言えよ」

「年越ししてから初詣行こうよ?」

「は?」

 

 その瞬間、彼の顔に走っている感情を読み取ると、裏が無いか探っているのだろう。心外だなぁ。

 

「裏なんて無いよ。お姉さんは優しいからね。さあ、夕食にしよう?」

 

 納得させるために何度か軽く言い合いに近いようなことになったけれど、楽郎君は最後は、「私が妹ちゃん経由でご両親に旅行をプレゼントしました」と笑顔で言うと今の状況を作り上げたことに納得できたのか、仕方ないという感じで椅子に座った。

 まだソファに座り込んでいた瑠美ちゃんを目覚めさせて合流させた。主に瑠美ちゃんからの質問に私が答えていく形で進行したのは残念だったけれど、瑠美ちゃんの手腕で楽郎君がちゃんと出かけてくれるかどうか決まるので瑠美ちゃんをないがしろにするのはよろしくない。

 でも、案外かわいい子だった。楽郎君と二人きりだと思って外道会話をしていたのを聞かれてしまったのに、キラキラしたままなのは困惑したけど。

 楽郎君がそれに対して邪教徒と評したのは、私が邪神みたいじゃないかと怒っておいた。妹ちゃんにお願いして、私と腕組みをした写真を撮っておく。

 楽郎君に笑顔を向けた。

 

「これでいつでもSNSで恋人発覚イベントで盛り上がれるね」

「ダメージ受けるのそっちでは」

「ノーダメージなんだよねぇ」

 

 楽郎君には理由がわからないみたいだった。私はモデルだけど、アイドルじゃないんだなぁ。

 

    ◆

 

 私達が神社につくと、楽郎君がすぐにげんなりした顔をしてしまった。分からないでもない。目の前に広がるのは、人の列だ。

 カウントダウンも終え、新年を迎えて夜も遅いにもかかわらず神社は人でごった返している。

 

「帰らないか?」

「おっと、公式SNSに写真がアップロードされそうだった、危ないねー」

 

 化粧をいつもとは変えているが、さすがに人が密集していれば無遠慮に覗き込んでくるやからも居るため、私はマスクを着けていた。ごめんね、綺麗な顔を君に見せてあげれなくて。

 楽郎君はさらにげんなりした顔をしてしまったので、……うーん、上手くいかないなぁと、そんなこと私は考えていた。

 もうちょっと脳内で考えていた時は上手く回せたはずだった。なのに、気づけば何故か脅h――お願いばかりをしてしまっている。

 

 ゆっくりゆっくりと進む参拝までの道中を、彼の最近気になるクソゲーの話題を聞くことでつなぐ。たまに出てくる武田氏は本当に何者だろう。

 彼はいくらか話し終えて、そして、騒がしい周りに対して私達二人の間には沈黙が落ちた。

 空を見上げれば、冷たく澄んだ空にぽっかりと真っ白な月が輝いている。

 ああ、失敗だったかなぁ。本当にそんなことを思った。12月そして年末は忙しかった。

 クリスマス、誰かと過ごした? って聞きたいけど聞けなかった。妹ちゃんから最近斎賀さんがよく楽郎君と過ごしているのを見ていると聞いていたからだ。

 百ちゃんに探りを入れようかと思ったけど、冗談風にしてもきっと百ちゃんは見抜いてくるそんな予感があった。恋愛力皆無なのに、なぜかさとい時があるんだよね。

 自分の周りにいる人達に向けて発揮したほうが良いと思う。

 

「なあ、なんで両親追い出したんだ」

「クリスマスは一人ぼっちだったの? 楽郎君」

「ん? ああ、家族で過ごさないとゲーム出来なくなるから家族で食事して終わりだったな。終わったら即ゲーム。なんかストーリークソゲーとかいうジャンルがあるらしく、行きつけのゲームお店でこれやってみない? って進められたんだよな。『-雪に出逢いし思い出は-』って奴」

 

「それはお店側からすると在庫処分じゃない?」

「ちっげーよ。俺が買うかもって思うから仕入れてるんだぞ? 岩巻さんは俺のゲームの好みわかってるから、最低限ゲーム性は高いからって勧められた。秒単位で差し込まないとフラグを取りこぼしたりするらしい。でも、苦手なんだよな、ノベルロールプレイタイプ」

「あー、私も苦手。いくら最低限のカンペは出るとはいえ、外すと進行延々と止まり続けるし。

 でも、ずっと前にファンの子達が映画が感動しましたおすすめですって書いてきた『-雪に消えゆく面影は-』っていうの原作がゲームだったから、無視すると悪いかなぁって思ってゲームをワンプレイしてみたんだけど、もっとひどいんだよ。

 バッドエンドはちゃんとあるのに、チャプター進行度がそこまで行ってないと、クイズ番組でよく聞く不正解のブザー音がなってチャプター進行度表示されて即終わるの。

 開幕で廊下にいるモブ生徒にカンペ外のこと言った瞬間に終わったからやる気なくなっちゃった」

「ほー、なんか面白そうだな」

「え、耐えられるの? 演技できる?」

「あ、無理です」

 

 だったらさっき言っていたそのクソゲーも出来ないのでは? と思ったけど、彼が一度手を出したクソゲーはとりあえずクリアする主義だったはずだ。だから、きっと頑張ったのだろう。

 結局、また彼のゲームの感想を聞く話の流れになってしまったけれど、彼が生き生きするのはこっち方面だから、きっとこれで良い。三人でやったゲームを振り返って今さらながら話すのもとても楽しかった。

 ようやく神殿の賽銭箱と綱が垂れ下がる場所へたどり着いて、一息付いてから参拝をする。

 

『これからこいつに殴り込みします』

 

 と神様に報告し、彼を連れて帰り道から外れた場所へ行く。そこは昼ならば観光のために人が集まりそうな場所だが、年越し初詣客には興味をそそられない場所らしく、全く人が居なかった。

 ほっと息をついたが、対象的に私に手を繋がれて半ば無理やり引っ張られて連れてこられた彼は困惑した顔をしていた。

 最初は私に外道大喜利をしかけていたが、私は拳を握ってなんとか耐えた。今ここで流されたら、年末年始とかいうとても高かった旅行費用のお金と妹ちゃんに協力してもらった意味がない。彼の両親がいて、家族が揃っていたら私が顔をだすなんてことも不可能だったから。

 私は彼が逃げ出さないように手を繋いだまま、彼に向き合った。マスクを外してコートのポケットにしまう。

 私の行動が分からないのか、彼はとても困惑していたけれど、大丈夫。

 押せばいけると妹ちゃんは言ってたから行けるよ!

 

「私と付き合ってくれない?」

「え」

 

 時間が凍った。まさか、うんとかすんとかじゃなくて、ノータイム戸惑いで返されるとは、さすがの私も見抜けなかった。

 寒々しい風が吹いた。バカにされてるみたいで悔しい。

 

「なぜ?」

 

 彼は端的に尋ねてきて、私はちゃんとその答えを持っている。

 

「君は私の刹那をいつも終わらせてくれるから」

「そこは恨まれるところでは?」

「違う。違うよ、楽郎君。私はね、その一瞬が楽しければいいんだよ。その楽しい一瞬を楽しみたいの。だから、その一瞬を作るためにコツコツ積み上げていく。でもね、君はもっと楽しくしてくれる!

 私の裏も表も知って、だけど、私の言いなりになるわけでもなく、なのに、私を排除するわけでもなく、でも、私を楽しくする。君にとってはどうかは分からないけど、私は君といると楽しくて幸せだから、君が好きだ。君と一緒にいたい」

「お、おおう。でも、一緒にいたいって言われても」

「大学って、こっちに出て来る予定んでしょ? 今私の住んでるところ広いから来なよ!」

 

 ぐいぐい押せばいいですよーって妹ちゃんが気楽に言っていたのを思い出す。多分、ここでゲーム内でやるような会話に逃げたらダメだ。全部壊れてしまう。冗談だと思われてしまう。縋るように空を見れば、あの日ゲームで見た時と同じ輝きを持ったような月が私を見下ろしている。楽郎君と魚臣君を呼ぼうと決意した時と同じ輝きだと私は思った。

 私は思いっきり息を吸って、叫ぶみたいにもう一度声を発した。

 

「君が好きだ。私と付き合ってほしい。私と一緒にいるのはダメ?」

 

 見つめた彼は、とても真剣な顔をしていた。もう全部ぶちまけて言い終わった私は先程までと違いとても冷静になって彼の表情の裏にある思いを考えようとして、すぐに「あ、これゲームでものすごく考えてるときと同じ顔だな」ということに気づいた。

 だから、こんな顔をしている時はなんだかんだ言って、どんな手段であれ解を出してくれると分かっているから、私は待った。まるでライブラリが作ったシャンフロのwikiみたいに中々応答が返ってこない彼をじっと待つ。とても長い時間が経った気がしたけれど、後から振り返れば本当はそんなに長くなかった。

 彼がゆっくりと迷うように口を何度か開いては閉じて、――魚かな? って違う!

 迷いを終える彼の言葉を待つ。

 

「好きかどうかは、今言われて初めて考えたばかりだから、分から、ない。だから、今すぐは答えが出ない」

 

 ああ、それはもうフラれたようなものでは。そんな思いから私は膝から崩れ落ちそうになって、けれど、なんとか押しとどまって覚悟を決めた。

 

「わからないなら、考えてほしい。わからないじゃなくて、私は答えが欲しい。だから、もう一度2月14日に答えを聞きに来るよ、約束して?」

「そ、そこまで言うなら分かった」

「ありがとう。じゃあ、帰ろうか」

 

 彼の答えに、でも私は嫌われているわけではないことにほっとして、帰宅のために歩き出そうと彼が歩き出したタイミングで、私は握ったままの彼の手を引っ張った。

 ちょっとぐいっと。

 いきなり強く引っ張られるとは思わなかった彼の姿勢が僅かに傾いて、私は彼のコートの胸元を掴んでさらに引く。懸命に転ばぬように脚に意識を向ける彼の顔はもう目の前に在って、私は顔を近づけ。

 

 私の唇が彼の唇を塞ぐ。

 

 冷たい空気に身体の熱が奪われる中で、本当に、身体全体から見れば本当に僅かな面積だけれど、熱と熱を触れ合わせる。

 お互いに感じる唇の柔らかい感触に。そして、とても驚いた顔をした表情をする彼を私はまっすぐ見ていた。

 彼は私がまさかそんなことをしてくるとは思わなかったようで思考が止まっているのか動こうとしない。

 だから私は、私の唇で楽郎君の唇の感触を満足するまで感じてから身体を離す。

 彼が口を開いて何か言おうとするのを、その唇を指で押し留めた。

「魔王からは逃げられないから、覚悟しなよ、楽郎君」

 

 私は君が好きだ。

 だから、2月14日のその日までに、君を落とすために積み上げてみせるよ。

 

    ◆

 

 彼のファーストキスだったのは帰り道で不満げに言われたため知った。何が不満なのかわからないなー。

 初詣が終わり楽郎君の家に返ってから妹ちゃんを交えて時間まで話する。彼らの朝食を作り起きしてから、電車が動き出したタイミングで、今日はもう帰るよと告げて帰る私を、彼はとても悩むような表情をして見送ってくれた。

 またなと言われたので、私はもちろん"またね"と返して帰る。

 

 そして、翌日1月2日、私は彼の家へともちろん遊びに行くと、すごい顔をした彼が出迎えてくれたのが、とても楽しかったのは言うまでもない。

 出迎えた彼に私は笑って告げる。

 

「言ったでしょ。魔王からは逃げられないって」




時系列的には此岸にての前になりますが、おまけ程度の気持ちで書いた物なので、読まなくても大丈夫なよう2話目に置いておきます。
少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。お読みいただき、まことにありがとうございました。
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