当作品は、「小説家になろう」投稿作品である「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」の二次創作となります。
時系列はJGE会場場面の妄想SSです。かなり短いです。
作者である硬梨菜様の作品、いつも楽しく拝読しています。
【注意事項】
天音永遠尊すぎかよぉぉぉぉという気持ちで書きました。時系列は前の二次SSとは別物です。
原作であるシャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~とは一致しない設定などもありますが、ご容赦願えればと想います。
基本的なゲーム部分は無いので、人間関係の設定だけ目をつむっていただければ幸いです。
優先チケットの入場者たちが今か今かと待ち望む、そんな彼らに向けた準備に慌ただしく騒がしい会場内を私は時折振られる手に木漏れ日から差し込む光みたいに気まぐれに笑顔と手を振り返した。
そして、今回のJGEメインブースであろうシャングリラ・フロンティアにたどり着く。その瞬間ゆっくりと構築されていく巨大な金色の龍が私を睥睨していた。
『我が名はジークヴルム。英雄よ、ここに集え!!!』
ゲーム内で聞いた咆哮が、あたかもここがシャングリラ・フロンティアの世界の中であるようにフロートの地面を揺らした。スタッフが慌てたように機械をいじり、ジークヴルムの姿はかき消える。
PVが流れる大画面のモニターには、あまたの花がたった一人の少女とともにジークヴルムを穿つシーンがBGMとともに流れている。
ジークヴルムの装置を別の人に託したのだろう、ブースの前に戻ってきた女性のスタッフに努めて気さくに声をかける。
「こんにちは、いきなりの大音量に驚きました」
「こんにちは、天音永遠さん!! ようこそ。天音さんを驚かせてすみません。私どももいきなりの展開に驚きました」
「あは、開発会社さんのサプライズなんですね」
女性のスタッフさんと数分会話をこなしていると、いつの間にか女性スタッフがすごいテンションが上っていた。使っている指輪が私が最近CMで出ていたブランドの物で、雑誌で小指につけていた限定物と同じだったのでそれを尋ねたら異様に彼女が盛り上がってしまった。私はなるべく温厚に会話を一段落させて本題に移る。
「今回別のブースにお仕事でお邪魔していて、JGE開催時間中にシャングリラ・フロンティアのブースに来れないのが残念で来ちゃいました。お邪魔してごめんなさい! どんな物があるんですか?」
「天音永遠様もシャングリラ・フロンティアをされてるんですか!?」
「有名でしたし、周りの皆もよく話していて、ちょっと話題についていけなくて寂しくってついついプレイしちゃいました。でも、時間がなくてほんのさわりだけでログインできてないんですけd」
「はぁぁぁぁ、私が天音永遠様と同じ時間を共有できていたなんて」
「あら? ……まぁ、いいや。それでどんなのが今回ブースで並んでるのか見たくt」
「よよよよ、よろしければぜひ物販もお買いください。いえ!!! 私から永遠様にプレゼントさせてください!」
「えぇぇぇ…………、と。どんなのがあるんですか?」
彼女がまずは、と物販を案内してくれる。良いのかな? うーん、いっか! ゲーム内のNPCが描いた画集とそのサンプルが並んでいた。うーむ、見覚えがある。必死に爆笑しそうな顔の筋肉をモデルの笑顔に保つ。「墓標の乙女(笑)」に「剣の覇者(廃)」がツボに入りすぎて、
「あら、この鎧の女性の横顔そういえば?」
「あ、この画集のコンセプト、すごく面白いですね! ぜひこの画集買いたいんですけど、大丈夫ですか!? 良いですか!?」
「え、永遠様に記念すべき1冊目をお買いいただけるなんて、そんなありがたくも恐れ多い、わ、わた、私! 私が!!」
「サイン! こんな素敵な物を真っ先に買わせてもらえるなんて光栄だなー、ぜひそんな幸運をくれたあなたにサインを」
「っっっっっっっっっっっっ」
女性スタッフはあまりの感動で倒れて、即起き上がった。笑顔が怖い。それからありがたくも画集を購入し、さらに面白そうな物を教えてもらった。
「こちらはゲーム内で出会ったエネミーなどを加えて自画像を作れるシステムです。シャングリラ・フロンティアで特に要望が多くスクリーンショットを自由に撮りたいという希望に対して、開発側がゲーム性を壊したくないということで、今回のJGE限りの特典になります」
「へ、へー。すごいですねー」
「個人アカウントでログインするため極めてプライベート性が高いものなので、もちろん外部からは見えないようにしています。スタッフは呼ばれてARグラス画面を共有しない限りわからないのでご安心ください。ぜひ一枚、どうですか?」
本来ならば物販を買うことも、この装置を開催前に操作することもできないだろう。けれど、彼女の厚意で操作させてもらうことになった。
さて、どんな物が作れるんだろう。ARグラスを専用のマシンと無線通信で接続する。VRでログインする時にもよく見るシャングリラ・フロンティアのタイトル画面が流れて、メニューが一つだけ並んでいる。「Autoritratto」、確か自画像のイタリア語だったかな?
空中に浮かぶその文字を私はタッチする。指は何も触れていないはずなのに、私はそこで指からこぼれ落ちる桜の花びらを撫でた感触を覚え、
そして私はそれを見た。
眼の前に並ぶ文字にゆっくりと触れ、それは拒絶することなく私の操作に応えた。
最初は真っ白な背景に私のキャラがそのまま居た。私はすぐに自身のキャラをチェックから外していた。私が押したのはたった3つだ。配置など何もいじることなく。
『千紫万紅の樹海窟-秘匿の花園&反転の墓標』
『ウェザエモン(天晴攻略ver)』
『遠き日のセツナ』
ARグラスによって一瞬で、けれどとても長い時間をかけて広がる世界を、私は指を震わせて待った。
眼の前からこぼれ落ちる桜の花びらが視界の端を流れていく。
月から注ぐ光を、朱色を帯びた花を満開に咲かせる一本の樹木が受けていた。
木のそばで静かに佇む女性と、向き合うように立つ薄い煙が立ち昇る鎧武者。
月光によって地面に落ちた二人の手の影は、離れることなく重なり合っていた。
私は女性スタッフに笑顔でホログラムスタンドを購入するのを伝えれば、女性スタッフは快く対応してくれた。女性スタッフはとてもいたずらっぽい顔をして、秘密ですよと笑ってみせた。
JGE開催はもう目の前だが、私はお仕事のブースへ戻る前にちょっとだけ寄り道する。専用の控室でホログラムスタンドを起動した。
女性スタッフがARグラスと無線通信で共有する専用のパスと操作を教えてくれた。彼女は一体何者だろう?
まずシャングリラ・フロンティアのタイトルが現れ、ゲームタイトルが砂の粒のように崩れてから文字に戻っていく。作成した自画像のタイトル名だ。画像を決定する際にタイトルを付ける必要があったため、少し悩んでこれにした。
眼の前に広がる桜の中に、私はこれを望みたい。
『願わくは』
終
ねがわくは花の下にてのぞむれば千代のさきにて満ちるつきかげ
天音永遠さんガチすぎてやば可愛いですよー。