煌めく隠岐紅音の世界から   作:紅島涼秋

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きまぐれ。
このような更新がとても前の作品を読んでくれた方、ありがとうございます。


それはありきたりな煌めく花嫁の写真であれば

 風が気持ちいい春の終わりな夏の始まり、私は首をかしげながら問いかけました。

 

「なんですか、これ?」

 

 私が疑問に思いながら瑠美ちゃんが手渡してきた物を見る。何かのパンフレットらしい。土曜日の午後、部活終わりに瑠美ちゃんのバイトが終わってから遊びにいかない? という誘いに素直に乗った私は、某有名コーヒーチェーン店で冷たいフラペチーノをズズズッと飲みます。

 めったにできないですけど、土曜日の部活後の甘いものはとても美味しくてニコニコしてしまいます。瑠美ちゃんは私が頼んだサイズを見て、ぶつぶつとカロリーカロリーとその時呟いていました。今もちょっとおののいています。美味しい。

 そう思いながら、瑠美ちゃんがテーブルの上に置いたパンフレットを覗き込めば、

 

「バイト先で今話題になってるんだよね。永遠様が!」

 

 あ、長くなるな。私はそう思いながら、笑顔で瑠美ちゃんの天音永遠様のお話を聞いてうなづいていきます。最近の流行であるビッグシルエットをあえて拒否したりする永遠様が眩しいということらしいので、私は自分の姿を見返しました。

 その視線を目敏く瑠美ちゃんが気づきます。ラフなパーカーにショートパンツにスニーカーは瑠美ちゃんと一緒の街歩きだととても歩きやすいのですが、瑠美ちゃん的にはパーカーのデザインに鋭い目を向けてきます。

 

「買いに行く?」

「私は動きやすいほうが良いので」

「紅音はさー」

「はいっ」

 

 瑠美ちゃんとここはどうしても一致しないところなのですが、彼女は迷って、しょうがないといった顔をしました。

 

「それで永遠様が珍しくこんな仕事を受けるって話題になったのよ!」

「はい、そんなに珍しいんですか」

「そりゃ普通コスプレみたいなものになるし、年齢考えたらウエディングドレスなんて強すぎるでしょ」

「何がですか?」

「ちょっと狙いすぎでしょ」

「そうなんですか?」

「そりゃねー。やっぱりファッションモデルなら流行りの服を着こなす姿を求められているわけで、こんなもうほとんどの人にとってたった一度のイベントの衣装を着たら、ファンだって困っちゃうっていうか~。えぇ、まさか考えていますか!? とか、」

「あぁ、裏を考えちゃうんですね!」

「そう! 気にしちゃうの。永遠様、私達を導いて」

 

 納得しました。あと瑠美ちゃんが変なことを言っていますが、定期的に起こりますのであまり気にしなくなりました。

 まじまじとその数枚のページで作られたパンフレットを手に取ります。

 

「はぁぁぁ、私が男だったらなぁ」

 

 やっぱり変なことを言っています。男だったら尊敬する永遠様と一緒のお仕事ができなくて、それはそれで瑠美ちゃんのアイデンティティが大崩壊だと思います。それとも、

 

「男子だったらおっかけになるんでしょうか」

「何言ってるの!」

「いえ、もしもの話ですから」

「ふ~ん、そんなこと言っちゃうんだ。私は、一緒に映りたいような、でも違うような、だけどおそばに居たいの。そんな尊い気持ちなんだよ? でも永遠様は美しいから! で!」

「あ、はい!」

 

 これからが本題といった具合に瑠美ちゃん健康を考えたカロリーがほぼ無いコーヒーを飲んで、ずずいっと私に顔を寄せます。

 

「これね、私に無理やり渡されたの」

「……? なんでですか」

「永遠様の同じようなショットでも撮ってきたらって、あの女、全然全然全然わかってない!」

 

 口惜しいといった具合に瑠美ちゃんがぐわんぐわんと頭を振ります。あの女とは多分たまに彼女のバイトで話すのを見かけるお友達だと思います。お友達だけど、こうたまに話に聞くと永遠様関連でカイシャクフイッチというのが有るらしいです。

 

「撮りたくないですか?」

「撮りたいけど、撮りたくないの。分かんない!? この乙女心!」

「わからないです!」

「うん、紅音に聞いた私が悪かった。でもさ、もらったらもったいないじゃん。永遠様が協力したこのキャンペーンのチケットが!」

「は、はい」

「このキャンペーンのチケットが私が使わないことで、うわ、永遠様せっかくお願いしたのに数字がなーとかさせたくないじゃん!?」

「確かに、陸上でも応援来てねって言ったのにスカスカだとモチベがなくなるって人いますね」

「それは、それでどうなの?」

「その人は声援で足が早くなるタイプと自称してるので」

「と・り・あ・え・ず。はい、紅音行くよ。これ、今から」

「い、今から!? なんで私なんですか」

「このチケットの予約で使える日が今日だからに決まってるじゃん。だから、気合入れてきたらって言ったのに」

「気合、入れてきました! 動きやすい、走りやすい!」

「あー、はいはいはい。それで後悔するのは紅音だから私しーらなーい」

「はい?」

「とりあえず、行くよ。全部さっさと飲んで、カロリー爆弾を」

「は、はい」

 

 瑠美ちゃんがいきなり急かすので一気に飲むと、カロリーと言いながら立ち上がってわざとらしくドン引きされてしまいました。

 

「走れば減ります!」

「走る前なんてする前からちゃんと計画してるの、私は」

 

 飲みきった甘いフラペチーノのプラスチックのカップをテーブルに置けば、小気味良い音が響いて私は立ち上がりました。

 

 

 ◆◆◆

 

「いやー、若い人が来てくれるなんて! すごい嬉しいです。それじゃあ、まずは彼女さんから」

 

 スーツを着た男の人がとても笑顔で私達にそう話しかけます。私は顔を赤くするのを必死に誤魔化しながら、あはははと笑うだけでした。

 瑠美ちゃんはいません。それで一人だったら私もこんな気持になりませんでした。でも、まさか。

 

「か、彼女さんでは、無いので」

「お、俺も彼氏さんではないので」

「ああ~!!!! これは失礼しました。なるほどなるほど!」

 

 楽郎さんが私の横で視線をそらしながらそう言います。楽郎さんも花婿のような衣装を着てかっこいいです。

 視線をそらしつつ楽郎さんが器用にこそこそと私の耳元に口を寄せて話しかけます。くすぐったくて恥ずかしさとは違うドキドキがしますっ。

 

「なんで紅音なんだ」

「私じゃだめ、ですか?」

「そ、そういうことじゃなく、瑠美に呼ばれて来てあれよあれよと連れてかれて、彼女さんはこっちですって言われたら紅音がいるから」

「か、彼女さんではないですが」

「俺に言われても」

「わ、私も瑠美ちゃんに連れられて時間が無いから! っと言われて着替えに時間かかってたら、楽郎さんが」

「な、なんて言われて来たんだ?」

 

 笑顔の男性が私達を微笑ましそうに見ながらも、ちらりと時計を見て声をかけてきました。

 

「お熱いお二人が仲良くしたいのは分かるんですが、申し訳ないですが、時間が押してますので!!! ぜひ、こちらへ」

「あ、ひゃい!」

「ささ、まずは彼女さんこちらへ」

「か、彼女では無いので」

「おっと、これは失礼! まずは花嫁からが一番ですから!」

 

 そう言って、私はどう経てばいいか迷いました。つい緊張で棒立ちすれば、カメラを担当する人が苦笑いをしています。陸上のポーズならと考えて、陸上のポーズって何? と緊張で変なことを考えてしまいました。ついつい両手をおろおろとさせていると。

 私が困っていることに気づいた楽郎さんがスーツの男性に何かしら声をかけて、

 

「紅音!」

 

 こういう時、楽郎さんはかっこいいなぁと思います。さっきまで目をそらしたりとか恥ずかしそうにしていたはずなのに、私が困っていると思ったら、すんなりアイディアを出して助けてくれる。

 そんな楽郎さんが――。

 

「やっぱり大好きです、楽郎さん」

 

 青と白のバラを中心にしたブーケを受け取り私は笑顔で、そう言った。

 

 あなたと居る世界は、こんなにも煌めいている。

 

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