というわけで年末怒濤のコラボ回、その二!
今回はchaosraven様の「裏稼業とカカシさん」とのコラボです!
あちら側の視点はこれ↓
https://syosetu.org/novel/194706/4.html
ちなみにこの話は第百三十二話(クリスマス回)の後になります。
ユウトたち三人による聖夜の大告白を終え、誰も居なくなった店内で店じまいをすすめる代理人たち。入り口にも『CLOSED』の掛け札を吊るしていたのだが、その扉が割と勢いよく開け放たれた。
入ってきたのは両脇に見覚えのある人物を二人ほど抱えたアーキテクトで、思わず拭いていたグラスを落としそうになったがそこは冷静に対処した。
「アーキテクト??? 何の連絡もなしにいきなり・・・あら? その頬骨にある傷、もしかして”異世界”のレイさん達ですか?」
「あ、ああ。それよか、グラスは平気か?」
「ええまぁ。・・・どこかの誰かのせいで、危うく割ってしまいそうでしたが」
ギロリとアーキテクトを睨み、とりあえず何かしらの罰を与えようと決める代理人。アーキテクトもそれを察して逃げ出そうとしたのだが、それよりも先に
「ぎゃっ!?」
「とりあえず、逃がさない様に協力させて頂きますわ」
想定外のところからの妨害にアーキテクトはあえなく御用となり、イェーガーらに連行される。ようやく落ち着いたところで、代理人は改めて二人に声をかけた。
「・・・とりあえず、帰るタイミングが来るまでここで何か飲んでいかれますか」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レイとスケアクロウ、この二人は以前もこの店にやってきた『異世界』の人物である。裏稼業の何でも屋とその相棒とも呼べる間柄で、この店の大切な客である。
初来店時にはちょっとした騒ぎこそあったが、どうやら今回は心配しなくてもよさそうだ。
ちなみにこの世界にもレイとスケアクロウがいて、なおかつ二人であるという点も同じではあるが、レイの場合は頬骨に傷があるかないか、スケアクロウの場合は単純に口数で判別できる。
・・・・・二人の中が良いのは両世界での共通のようだ。
「・・・・では、今回もまた?」
「あぁ、寝て起きたらまただ」
「デジャヴかと思いましたわ」
そんな彼らが迷い込んだ理由は、ただ単純に「目が覚めたら違う世界でした」というやつだ。迷い込んでくる理由は人それぞれだがよもや寝るだけで世界線を変えることになろうとは夢にも思うまい。
とりあえず前回と同じものを出し、お代は皿洗い(店じまいの手伝い)ということになる。
「ふぅ・・・やっぱり美味いなここのは」
「ふふっ、お褒めにあずかり光栄です」
「・・・あのバホ姉にも爪の垢を飲ませたいくらいですわ」
スケアクロウがボソッと言った。その「バホ姉」とやらが誰かは知らないが、鉄血のハイエンドたる彼女が姉と呼ぶ存在はそう多くはない・・・・・というかほとんどいない。
もしや、別の世界の私はかなり迷惑なことをしでかしているのでは?
そんなそこそこ当たっていることをぼんやりと考えていると、ふと今日が何の日かを思い出し、ついでに二人に聞いてみることにした。
「そういえばお二人とも、今日はどのようにお探しの予定でしたか?」
「今日? あぁ、クリスマスか」
「特に何も考えてはいませんでしたわ」
というクリスマスにはあまりにも寂しい言葉が出てきたがそれは予想の範囲内、というかあっちの世界の情勢を聞きかじっている限りではそんな余裕もなさそうだ。
なのでここは気を利かせて少しでも楽しんでもらおう・・・・・と思っていた代理人だったが、それよりも早く動いた奴がいた。
「クリスマスに、男女揃って何もしない!? そりゃないよ二人とも!」
「そうそう! むしろナニがあってもいい日なんだよ!」
「「うわ、出た」」
「二人とも、プレゼントはお説教がお望みですか?」
突然現れたマヌスクリプトとアーキテクトというダブルトラブルメーカーが鼻息を荒げながら熱弁し、代理人の額に青痣を浮かべさせる。レイたちも以前訪れた際にマヌスクリプトの手によってコスプレ喫茶をやらされたため、総じて面倒な人形という認識に落ち着いている。
「まぁまぁ代理人、落ち着かなよ」
「どうせ代理人も何かしてあげようとか思ってたんでしょ? なら一人でやるよりも三人の方がいいって!」
「すげーな、半ギレのエージェントに物怖じしてねぇぞ」
「鋼のメンタルですわね」
レイとスケアクロウが変なところで感心する中、今すぐ店の奥に連行したい気持ちを抑えて二人の話を聞く代理人。まぁ言っていること自体は間違いでもないし、なんだかんだこの二人は道を外れない程度に暴れるだけ。レイたちも次また来られるとは限らないのなら、何か二人に残せるものをあげたいとは思っていた。
「・・・・・いいでしょう。それで、何か案でもあるのですか?」
「外のモンスターマシンあるじゃん? あれをちょちょっと改造してプレゼント!」
「「「却下で」」」
「えぇ〜〜〜!?」
論外である。というかアーキテクトがただ弄りたいだけの話なので切り伏せる。
「普段着ないような服でクリスマスを過ごす!」
「お前が着せたいだけだろ?」
「そんなこと言ってぇ・・・前にこっちの君が着た時は興味あったんじゃない?」
「またいかがわしい服でも用意しているんでしょう?」
「ん〜? いかがわしい服ってのはどんな服のことなのかな〜スケアクロウちゃん?」
「そ、それはその・・・・・い、いかがわしい服はいかがわしい服ですわ!」
初心い反応に心底楽しそうに笑うマヌスクリプト。その脳天に代理人の拳骨が落ちる・・・・・直前にふと何かを思いついた代理人はマヌスクリプトにそっと耳打ちする。
「マヌスクリプト、ーーーーーーーー」
「え? まぁあるけど、それでいいの?」
「えぇ、構いません。 ではレイさん、スケアクロウ、少々お待ち下さい」
ニコリと笑って何やら店員たちに指示を出し始める代理人に二人は首を傾げ、それでも代理人なら大丈夫だろうと思い大人しく待つ。
だが二人は知らない。他の面々が派手にやるせいで知られにくいが、代理人もやる時は結構大胆にやる方なのである。
「では、よろしくお願いしますね・・・・・始め!」
『確保ーー!!!』
「なっ!? おわぁあああああああ!!??」
「ちょっ!? いきなりなんですのおおおおお!!??」
代理人の合図で店員たちが一斉に散る。パワーに秀でたマヌスクリプトとゲッコーが二人を店の奥へと連行し、マヌスクリプトお手製の衣装に着替えさせる。
その間に代理人らは店のテーブルを一つと椅子を二つ残し、他は端に寄せて空間を広くする。テーブルクロスを敷き、蝋燭を立て、ついでに店内にも蝋燭を設置して店の照明を落とす。
二人が着替え終わるまでの間に全てを終わらせた店員たちは、代理人を残して従業員用の部屋に引っ込む。そのタイミングで、着替え終えた(無理矢理着替えさせられた)二人が戻ってきた。
「まったく、なんなんだ一体・・・・ん?」
「エージェントがまさかこんなことをするなんて・・・・あら?」
それぞれ別口から出てきた二人は、互いの格好にピタリと止まる。レイの服はタキシードに蝶ネクタイというパーティースタイル、スケアクロウも黒のパーティードレスで、胸上や肩の露出に少々落ち着かない様子だ。
だが二人の感想は大体同じで、端的にいえば一瞬見惚れてしまったのだ。
「ふふふ、お二人ともよくお似合いですよ」
「おいこらエージェント、なんのつもりだこれは?」
「まさかあなたもバホ姉の同類だとは思いませんでしたわ」
面白そうな代理人とは反対に面白くなさそうな二人にちょっと、ほんのちょっとだけ申し訳なさそうにすると、代理人は二人をテーブルへと案内した。
「突然このようなことをしてしまったことは謝罪します。 ですがせっかくこういう日に来ていただいたので、私たちからのおもてなしです。 今日はお二人の貸し切りですよ」
それが合図だったのか、今度はDが二人分の皿を持ってきてテーブルに並べる。上に乗った蓋を取ると、小さなクリスマスツリーの砂糖菓子が乗ったケーキが現れた。
驚く二人の前にカップを置くと、代理人は紅茶を注いで一礼する。
「ではお帰りの時間まで、ごゆっくりお過ごし下さい。 メリークリスマス」
ニコリと笑う代理人につられてレイとスケアクロウも笑う。
そんなクリスマスの、不思議な一夜。
end
あと一話詐欺みたいになってるけど、これで本当にあと一話だよ!
chaosravenさん、あとは任せた!(丸投げ)
時間的に厳しいかなとか思ったけど色々時間を削ったら書けるんじゃね?とか思ってたら間に合いました笑
こういうリレー形式のコラボも、書いていて面白いです。
では、今回のキャラ紹介!
レイ
何かと幸薄な裏稼業の人。毎回寝てるだけで異世界に来るのはある意味強運かも?
スケアクロウ
喫茶 鉄血に入る前になんかいい雰囲気だったみたいだけどアーキテクトに邪魔された。
まぁその、頑張れ!
代理人
閉店後でも店を開けてくれる。