おかげでカビが生えそうなほどゴロゴロしっぱなしの作者です
では、今回はこの4本で。
・とある隊長の一日
・上には上がいる
・ダイナゲートの可能性
・新素材
番外43-1:とある隊長の一日
グリフィン特殊部隊 404小隊。
以前まではまるで都市伝説のように語り継がれ、その姿を見た者は死ぬだとか、なかったことにされるだとかいろんな噂があった。中にはかの有名な都市伝説『MIB』と同一視されることもあったという。
そんな404小隊が表舞台へと出て久しく、今ではグリフィンの頼れる特殊部隊として認知されている。
だが、認知されてはいるがその実態を知らない人形が圧倒的多数を占めるのが現状だった。
仕事が終われば即帰還、繊細かつ大胆に任務を遂行し、それが当たり前だと言わんばかりに平然としている。
常に不敵な笑みを浮かべる隊長、どんな状況でも笑顔なその妹、反対に一切笑うことのないやつに、眠たそうにしながらも正確無比に撃ち抜く小柄なやつ・・・・・最近では常にハイテンションなやつや、眠たげなやつのでっかい方とか呼ばれるやつも加わっているが、誰もその実態を知らないのだという。
今日はそんな部隊の隊長、UMP45の一日を覗いてみよう。
「おはようUMP45、早速だが仕事が溜まっているぞ」
「・・・・・え? 何この量?」
「昨日の分が四割、残りが今日の分だ。 サボったツケが回ってきたな」
「こ、これを一人でやれっての!?」
「当然だ、これも隊長の仕事だからな・・・・・まさか今まで全てカリーナに丸投げしているとは思わなかったが」
UMP45の一日はデスクワークで始まる。ジェリコの言うとおり以前は
カリーナが代わりに行っていたのだが、特殊部隊ゆえに任務も少ないので返してもらったらしい。
「せ、せめて応援を・・・・もしくは9がいてくれるだけでも・・・・」
「UMP9なら非番だ、そしてHK416と共に出かけている」
バタンッ
「じゃああたいが手伝「甘やかせるな!」……ハイ」
そして昼。
やっとのことで書類仕事に一区切り(終わりではない)つけた45を待つのは、気分転換という名の射撃訓練である。
「貴様・・・なんだこの命中率は?」
「SMGは弾幕と陽動がメインなんだからしょうがないでしょ!」
「だがそれにしても酷すぎるぞ。 まさか新兵時代に逆戻りとは言うまいな?」
「ちょっ、それ誰から聞いたのよ!?」
「G11だ。 着任初日に話してくれた」
「G11ぃぃいいいいいい!!!!!」
45の怨嗟と絶望の声に、どっかでG11が笑った気がした。
時間が進み、夜。
これでも優秀な人形である45はなんとか1.5日分の書類作業を終え、自室へと向かう。自室と言ってもG11との相部屋で、そして少し前からジェリコとも相部屋ではあるが。
「はぁ、疲れた・・・・」
部屋に入ると同時にドアも閉めずに脱ぎ始める。と言うかベッドに向かいながら脱ぐせいで、入口からベッドまでスカートやらシャツやらストッキングやらが一列に並んでいる。
そして上下とも下着になると、部屋着に着替えることもせずにそのままベッドイン・・・・・・やがて心地よい微睡がまぶたをゆっくりと閉じさせていき
「UMP45っ! なんだこの有り様は!!」
「ピィっ!?」
「生活習慣の緩みは気の緩みだ、今すぐ片付けろ!!」
「も、もうやだ〜〜〜〜!!!!」
45が再び逃げ出す日は、そう遠くないのかもしれない。
end
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番外43-2:上には上がいる
「は、はじめまして! 重装部隊『BGM-71』です!」
『よろしくお願いします!!』
「隊長のM4A1です、ようこそ特殊遊撃部隊へ」
隊長のM4がそう言って手を伸ばし、握手を求める。それに一瞬ビクッとなったBGM-71たちだが、恐る恐る一番近くにいた子が手を握った。
S09地区へと配属された彼女たちは、今日からM4率いる部隊へと合流したのである。
「じゃ、こっちも自己紹介しましょうか。 AK-12よ、よろしく」
「ANー94です」
「改めてだけど、AR-15よ」
再びビクッとなるBGM-71たち。その様子にM4が怪訝な表情を浮かべる。
「・・・・・何をしたのAR-15?」
「私は悪くないわよ」
そう言うと、BGM-71たちも首を縦に振って肯定する。が、それでも怖がられているのに変わりはないようだ。
微妙に悪い幸先にため息をつくと、M4は気を取り直して話を進めた。
「では、まずは皆さんの能力を見せてもらいたいので、演習場にいきましょう」
「あら、じゃあ私たちは用無s「またサボる気ですかAK-12?」・・・・冗談よ」
知らぬものが見れば優しげな笑顔、知っているものが見れば鬼のツノが生えていると錯覚する笑顔でそう言うM4。
そして幸か不幸か、BGM-71たちは前者だった。
「さて、今日の訓練はここまでにしましょうか」
「皆さん、お疲れ様でした」
『お疲れ様でしたー』
陽も沈みかけてた頃、ようやく今日一日が終わることにBGM-71たちは安堵の表情を浮かべる。
演習場で性能チェックをするまでは良かった。だがこの部隊の隊長はやや優秀すぎたらしく、早速重装部隊を交えた戦術と訓練メニューを考えてしまったらしい。そこにAR-15とANー94も乗っかり、結果として入隊初日からガッツリ訓練漬けになってしまった。
では宿舎に戻ろう、と思っていると後ろから声をかけられる・・・・・AK-12だ。
「お疲れ様、このあと時間あるかしら?」
「え? は、はい」
「大丈夫ですが・・・・」
「そう。 じゃあついて来て」
そう言われて案内されること数分、やって来たのは予備宿舎の一室・・・・・使われていないはずなのに何故か冷蔵庫や机が置いてある奇妙な部屋だった。
部屋に入ると、慣れた様子で冷蔵庫から酒とつまみを取り出して並べるAK-12。さながら、立食パーティーのような形式の出来上がりだ。
「じゃ、改めて・・・・入隊おめでとう」
「あ、ありがとうございます!」
「ふふっ、そんなに硬くならなくていいのよ・・・・それじゃぁ乾杯!」
『乾杯!』
一口飲むと、冷えた酒が疲れた体に染み渡る。塩加減もちょうど良いつまみには自然と手が伸びてしまい、気がつけば結構お酒が進んでしまっていた。
「ぷはぁ! やっぱり仕事終わりにはこれよね!」
「とっても美味しいです!」
「今度は皆さんも誘いましょう!」
「人は多い方が楽しいですから!」
「あ、いやぁ、彼女たちはまたの機会に・・・・ね?」
「え? どうしてですか?」
「それはその・・・・なんと言うか・・・・サプライズ?」
「ええ本当に、確かにサプライズですねこれは」
酔いが覚めるとはこのことを言うのだろう。ちょうどAK-12は部屋の入り口に背を向けている形となっているため、声を発した人物の表情は窺えない。
だが、たとえ顔が見えずともわかる・・・・・・絶対やばい。
「重装部隊の子が誰も宿舎に戻っていないと聞いて探してみれば・・・・随分と楽しそうですね、AK-12?」
「あ、M4隊長!」
「隊長も一杯いかがですか!」
「ふふ、ありがとうございます。 ですが今日はこの辺りにしておきましょう。 明日もありますからね」
「そ、それじゃあ私はこれで・・・・・・」
ごく自然に出口へと向かうAK-12。その首根っこを、M4はガッと掴んで言った。
「AK-12、少し私とお話ししましょう」
「え? いや、今日はもう遅いし・・・」
「時間なんて気にしなくて大丈夫ですよ、だって・・・・・・
朝までですから」
「 」
『 』
その日見た顔を、BGM-71たちは一生、メンタルを初期化されても忘れないだろう。
パッチリ開いた瞳に光はなく、釣り上がった口角はピクピクとひくついている。例えるならば、極東のとあるお面そっくりな顔だったという。
「じゃあ皆さん、おやすみなさい」
『お、おやすみなさい!!』
翌日、げっそりとやつれたAK-12を見たBGM-71たちは、M4だけは怒らせないようにと肝に命じたのだった。
end
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番外43-3:ダイナゲートの可能性
鉄血工造の量産型機械鉄血兵・ダイナゲート。
低コストで高生産性、小柄で走破性も高く武装も可能、偵察に強襲にと幅広く活躍できるのが売りである。鉄血工造のベストセラーといえばイェーガーだが、機械兵では間違いなくこのダイナゲートだろう。
そんなダイナゲートは、その見た目もあって軍用民生用問わず人気が高い。一部ではペットのような扱いになっていたり、街のいたる所で徘徊する監視カメラのようだったりと、その運用は多岐に渡る。
そしてライバル企業であるはずのIoPも、このある意味完成された兵器を愛用しているのだった。
「えーというわけでD-15、君のボディはメンテしておくよ」
『というわけで、じゃないわよペルシカ! その代替機がなんでこれなのよ!?』
その四肢が健在であれば助走をつけて殴りにかかっていることだろう。しかし今のD-15にあるのは手足ではなく、4つの脚なのだ。
そのD-15を見下ろすペルシカの顔は、それはそれは楽しそうであった。
「仕方ないでしょ、あんたが塞ぎ込んでる間にメンテ期間に入っちゃったんだから・・・・で、代替のボディの相談もなかったから勝手に決めたってわけ」
『だからって・・・・・これはないでしょこれは!!!』
通常、ボディの中長期メンテナンスの場合は代替のボディを用意することになっている。普通の人形であればダミーを流用するが、AR小隊は少々特殊である。そのため全く違うボディで過ごすことになり、そのボディをどうするかは毎回相談の上で決めているのだ。
「ま、いいじゃないD-15、隊員の境遇を理解した方が指揮にも役立つでしょう(適当)」
『そうですよD-15、それによく似合ってますから・・・・フフッ』
『RO・・・・あなたの仕業ね!?』
振り向き、独特なカラーリングのダイナゲートを見る。とある作戦で損傷を負ったためにこのボディを使うことになっている、RO635だ。
そしてそのレンズには変わり果てた自分・・・・・彼女と同じダイナゲートになってしまったD-15が映っている。
ベースはそのままに武装を外し、指揮用のアンテナや外付け通信機を載せた、いうなれば指揮特化型ダイナゲートである。
カラーリングは青みがかった黒に、なぜか玩具銃のようなAR-15がストラップのようにぶら下がっている・・・・・ノリノリでこの機体を用意していたことが窺える。
『うぅ・・・こんな姿、ハンターに見せられない』
「・・・・・その手があったか」
『ご安心をペルシカ、すでにアーキテクト経由で伝えています』
『いやぁぁぁああああ!!!!』
そして翌日以降、また自室に引きこもってしまうのだった。
end
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番外43-4:新素材
異世界からのバカップル夫婦が帰った翌日のこと。
彼女らが持ってきてくれたコーヒー豆やら卵やらは、先方の希望通りこの店のメニューを構成する一つとなっている。卵などはともかくとして、面白いことにコーヒー豆はかなり味が違うようだ。育つ環境で味が変わるのはよくあることだが、世界が違えば味も違うらしい。
そして、そんな贈り物の中でも一際異彩を放つ品・・・・・それがこのミルクである。
「・・・・・甘いね」
「・・・・・・甘いですね」
Dと代理人がそれぞれ一口飲み、なんともいえない表情で感想を呟く。D08地区産・特濃ミルク、そんな仮称をつけたこれだが、その実は彼女らの母乳である。
人に限らず、乳というものは栄養価がとんでもなく高い。それだけでカロリー消費の激しい赤子を養うのだから当然といえば当然だが、本来子をなすことにないはずの人形が出す母乳も、同様であるらしい。
そしてその成分は、動物によって大きく異なる。要するに、牛乳や羊乳と同じ感覚では使えないということだ。
「初めて飲んだけど、独特だよね」
「えぇ、これは中々の難題ですね」
生まれた時からこの姿で、母乳などというものを全く経験したことにない二人は困惑し、しかし同時にこの未知の材料に心躍らせていた。
調べてもこれを使ったレシピなど出てくるはずもなく、文字通りゼロからの出発となる・・・・・探究心が刺激されてやまないのだ。
「とりあえず、まずはこのまま使ってみましょう。 幸い、量はありますから」
「そうだね・・・・どうやってこんな量が用意できるかは知らないけど」
「案外、彼女たち以外にもいるのかもしれませんね、母親が」
二人は知らない、あの二人どころかまだまだいることを。
二人は知らない、こんな話をしているうちにも、さらに一人母親になった者がいることを・・・・・ちなみにその名をドリーマーという。
「ってよく考えたら、原材料に母乳って色々言われそうじゃない?」
「それに関しては伏せておきます」
「・・・・・ガッツリ法に触れてる気がするけど?」
「ばれなければ良いのです」
さらっととんでもないことを言ってのける代理人に、Dも苦笑いしながら付き従う。
その後、紆余曲折を経て『特性ミルクチーズケーキ』というメニューが誕生する。
数量限定で少々クセのある味だが、概ね好評だったという。
end
ログイン絵の416が可愛すぎんか?
というか浴衣姿ってだけでもう辛抱たまらん!
やはり浴衣は良い文化である!!
・・・・・てなことは置いといて各話の紹介
番外43-1
隊長って書類仕事もあるはずだよね、という思いつきから。
原作45なら特に苦もなくやれそう、もしくは適当に言いくるめて416に丸投げしてそう。
番外43-2
BGM-71たちの中でAR-15<M4になったっ瞬間。
そしてまたやらかすAK-12・・・・・どうあがいても私は威厳あるAK-12を書けないらしい。
番外43-3
ROのちょっとした復讐。
誰か各人形をモチーフにしたダイナゲートを描いてくれないかなぁ(チラッ)
番外43-4
コラボ回のその後。
ちなみに母乳を使ったレシピは調べると結構出てくる・・・・・作らんけど。
ドリーマーの出産は、あちらでのお話↓
https://syosetu.org/novel/199919/48.html