喫茶鉄血   作:いろいろ

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コラボのお話を書いていただけるのって、とてもモチベーションが上がるんですよね。感想も評価もそうですが、この作品を読んでいただけてるという証ですから。


というわけで今回は、『chaosraven』様の『裏稼業とカカシさん』とのコラボ!
・・・・まぁコラボというよりも、こっちの世界のレイとスケアクロウのお話を書いていただいたというものですが。
また、この話は後書きのような感じのものです。メインのお話を先に読むことをお勧めします。
https://syosetu.org/novel/194706/6.html




注)今回はかなり重い内容となっております。苦手な方、お呼びでないという方はブラウザバックをお願いします。


第百七十五話:傭兵とカカシさん

天気良し、気温良しないたって普通の平日。いつも通り主婦やご老人で賑わう喫茶 鉄血だが、心なしか暗く重たい空気が漂っている。

従業員たちは人形ゆえ表情などは明るく努めているが、見る者が見ればどことなく表情が暗いと気づくだろう。Dの笑顔は空元気のように見えるし、マヌスクリプトとゲッコーもまだなにもやらかしていない。

そして何より、代理人が時々上に上がっては浮かない表情で戻ってくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・レイ」

 

 

ベッドの横に持ってきた椅子に座り、スケアクロウはそっと声をかける。もしかしたら、返事が返ってくるかもしれない。微妙に意地悪なレイのことだから、寝たふりなだけかもしれない。

だが、そんな淡い希望も、ものの数分としないうちに霧散する。変わらない呼吸と心電図、そして身動ぎすらせず死んだように目を瞑る想い人・・・・・レイが昏睡状態となって、すでに一週間が経過した。

 

 

コンコン

「スケアクロウ、入りますよ」

 

「あ、はい」

 

 

マグカップを手に持った代理人が様子を見にくる、これもいつものことだ。椅子をもう一つ持ってきて、スケアクロウの隣に座る。

 

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

 

会話はなく、ただ沈黙が流れるだけ。代理人はなにも言わないが、スケアクロウが考えていることはおおよそ把握していた。

一週間前、瀕死の重傷を負ったレイの治療に当たった医師の言葉・・・・人形の人工臓器を移植、植物状態の可能性、そして

 

 

(安楽死・・・・ですか)

 

 

もう二度と目覚めることがないかもしれない。いや、その可能性が高い。医師らはその診断結果をもとに、彼女にそう提案した。

人形にとっては無縁に近い『死』、それを親しい人物を通して突きつけられたスケアクロウは、あれからずっと悩み続けている。もちろん、彼女だってレイを諦めたくはない。だが同時に、二度とその声を聞くことができないのかもしれないという不安を抱え続けるのにも限界はあると感じている。

その心労からか、最近の彼女は人形なのにやつれて見えるくらいだ。

 

 

「・・・また夕方、様子を見にきます。 あなたもたまには外に出てみては?」

 

「・・・・はい」

 

 

返事は返すが、これで実際にそうなったことはない。朝から晩まで、文字どおり付きっきりなのだ。

これ以上かける言葉も見つからないまま、代理人は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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明くる日も、そのまた明くる日も、スケアクロウはレイのそばに居続けた。そして刻が経つにつれ、彼女のメンタルモデルもすり減ってゆく。

後悔と懺悔、そして言い表せないほどの自己嫌悪。

あの日、自分が不覚を取らなければ・・・もっと状況をよくみていれば・・・・・あるいは、()()()()()()()()()()()()()()()・・・・・・

 

 

「レイ、私は・・・・私は・・・・・・」

 

 

震えるその手が、レイの頬に触れる。まだ暖かく、生きていることを実感させてくれる。

だが、それだけだ。もうこの目は開かない。もうその声を聞くことはできない。もう、あの笑顔を見ることは叶わない。

それならいっそ・・・・触れた手がゆっくりと下に降りる。やがて彼の首までたどり着くと、包み込むように添えられた。

 

 

「ごめんなさい・・・・・レイ・・・・・・」

 

 

ゆっくりと、その手に力を込める。フルパワーであれば両手どころか片手で握り潰すことすら可能だ・・・・・が、それは数ミリも進まないうちに動かなくなった。

決して人間を攻撃できないようなプログラムは積んでいない。だがどれだけ力を込めようと思っても、まるで腕だけが制御から外れたようにいうことを聞かなくなってしまう。

 

そしてついにスケアクロウは手を離し、そのまま彼の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。何度も何度も名前を呼びながら、日が暮れるまで泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「・・・・・ん、ぅん・・・? ここは・・・?」

 

 

()()()()()と、そこは見知らぬ街だった。見覚えのあるようなないような、そんな街である。

なぜこんなところにいるのか?自分は確か・・・・・

 

 

「スケアクロウを助けに行って・・・ボコボコにされて・・・・・代理人が来てくれて・・・・・・」

 

 

そこから先が思い出せない。だが少なくとも入院が必要なほどの重傷を負っていたはずである。それが何の傷跡もなく街のど真ん中に突っ立っている・・・・・・ということは。

 

 

「あ、夢か」

 

 

そう直感した男・・・・レイは、どうせ夢だからと見て回ることにする。不思議なことに、もしくは夢だからなのか、すれ違う人々は誰もレイには気付いていないようだった。

随分と都合の良い夢があるな、と思いながら歩いていると、急に視界が開ける。どうやら大通りに出たらしい。

 

 

「さて、どっちに行くか・・・・ん? うぉっ!?」

 

 

何の注意もせずに一歩踏み出し、次の瞬間に猛烈な勢いで突っ込んできたサイドカー付きバイクに慌てて飛びのく。

もはやバイクとはいえないほどの巨体だったためかなりビビったが、その直後に別の意味でビビる。その化け物カーに乗っていたのは二人、一人は自分の雇用主そっくりな女性で、もう一人は自分そっくりな男だった・・・・・違いがあるとすれば、左頬の傷だろう。

 

そう、いつぞやに出会った『異世界のレイたち』である。

 

 

「え? ちょ、おい・・・・うわっ!?」

 

 

慌てて呼び止めようとし、急に周りがぼやけ始めたためその場で固まる。グニャリと歪んだ世界は色彩を変えながら形を取り戻し、そこはさっきまでいたはずの街ではなくなっていた。

いや、それどころか()()()()()()()()()()()

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

文字どおり中に浮いたままのレイ。いくら夢だからといってもこれはやりすぎではなかろうか。しかも浮いているのになぜか安定感はあるし、思い通りに動くこともできる。

夢であることをいいことにフラフラと宙を漂っているレイの足元、さっきとは打って変わってなにもない荒野が広がっている。よく見るとなにやらテントのようなものや車両、それに人の姿も見える。小さくて見えないので下まで降りようといたその時、轟音と共に視界の隅で何かが爆ぜた。

 

 

「っ!? な、なんだありゃ・・・・・」

 

 

視線を向けると、断続的に地面が爆ぜて土煙を上げている。これでも傭兵であるレイは、それが地雷であると瞬時に判断する。と同時に、ここが戦場であることも。

だが、この夢はどこまでも突拍子のないものらしい。爆煙と土煙の中から現れたのは、人型の『ナニカ』だった。例えるならゾンビに近いだろうそれは猛烈な勢いで地雷原に突っ込み、そして弾け飛ぶ。それでも数が多く、地雷がなくなった道を踏み抜いていく。

その後も砲撃や狙撃、はてはレーザーのようなものまで使ってゾンビもどきを駆除していくが、今度は不気味な咆哮と共に異形にまで変貌したゾンビもどきが現れる。

 

 

「おいおい、どこのB級映画だよ・・・・ん? あれは」

 

『ちょ、まさかC級に挑むつもりですの?』

 

 

自身のすぐ真下、見慣れない格好の見慣れたやつがそこにいた。フルフェイスシールドを被ってはいるが周囲を舞うビットから、それがスケアクロウだとわかる。

そして彼女の少し前に、化け物を真っ直ぐ見据えた野郎がいた・・・・・()()()だ。

 

 

『無事に生き残れますの?』

 

『一重で生き残れると思う』

 

『かっ、紙一重!? しかも生き残れると”思う”!?』

 

 

暫しやりとりがあり、やがて『俺』は珍妙なブレードのようなものを取り出し、地を蹴った。

スケアクロウに心配させるあたり、結局どこまで行っても俺は俺なんだろうと思った。

 

 

「ん? またか・・・・・」

 

 

再び視界がグニャリと歪み、場面が変わる。そこはどこかの工場のようで、しかし室内の至る所に血痕がついている。探すまでもなく血の持ち主に遭遇し、その白衣に描かれたエンブレムを見て舌打ちする。

『鉄血工造』、もはや見慣れきった社名だ。

 

 

ドゴオオオォォォォォ……

「っ!? 今度はなんd・・・・・・」

 

 

轟音と揺れを感じて振り返り、絶句する。そこにいたのはこの夢では三度目となる例の二人、そして下半身がタコという異形の女。

傷だらけで口から血を流す『俺』を、スケアクロウが抱えながら逃げ回っている。

 

 

『・・・貴方は私が必ず連れて帰る。”私達”を助けてくれた貴方への恩を、今ここで返しますわ!』

 

「っ!」

 

 

その声、表情から、彼女がどれほどの信頼と恩を感じているのかがよくわかる。そしてその姿に、自身のパートナーを重ねる。

 

ぐっと拳を握り、目を閉じる。

夢の音が遠くなり、やがてなにも聞こえなくなる。

 

 

(きっと、心配かけてんだろうな・・・・・さっさと戻ってやらねぇと)

 

 

そう強く思い、目を開ける。あたり一面真っ暗で、今立っているのか浮いているのかもわからない。

まるで、お前は夢から覚めることはない、と言われているような気さえするが、レイに焦りはない・・・・・必ず還る、そう決めたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・レイ・・・・・・レイ!

 

「っ! 聞こえた!」

 

 

微かに聞こえた彼女の声に向かって、レイは走り出す。

起きたらとりあえず謝らないとな・・・・小さく見え始めた光に向かって走りながら、レイは口元を緩めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・ん・・・・ぅん・・・・」

 

 

目をうっすらと開ける。さっきまで暗闇の中だったからか、部屋の照明がやけに眩しい。そしてなにやら腕から・・・・というか身体中から伸びたチューブとそれに繋がれた機器が、自身の重症っぷりを雄弁に語っている。

さて、とりあえず彼女に一言声をかけないと・・・・とレイは目を動かし、部屋の隅で喉元にナイフを突きつけるスケアクロウを発見して跳ね起きた。

 

 

「ちょっ、待っ、YOUなにしちゃってんの!?」

 

「ひゃっ!? レ、レイ・・・・・?」

 

 

なんだその表情は・・・・というか危ないから今すぐ手を下ろせ!

そう言ってベッドから降りて向かおうとして・・・おそらく長いこと寝ていたせいだろう、足元からガクッと力が抜ける。というか全身チューブだらけだったのを完全に忘れていたせいで、それらで雁字搦めになって無様にこけた。痛そうだ。

 

 

「レイっ!? 大丈夫ですか!?」

 

「イテテ・・・・ま、まぁ一応」

 

「スケアクロウ! 今の音は・・・・っ!?」

 

「Oちゃん、どうしt「D! すぐにお医者様を!!」え? う、うん!」

 

 

一気に慌ただしくなる中で、スケアクロウはチューブを丁寧に解いていく。なぜかやたらと丈夫で、あれだけ盛大にこけたのにチューブも機器も無傷だった。

そんなどうでもいいことを考えるレイに、スケアクロウが抱きつく。突然どうしたと声をかけようとして、彼女の啜り泣く声を聞いて黙って頭を撫でた。

 

 

「よかった・・・もう目を開けてくれないと・・・・・本当に、本当に・・・・・・!」

 

「スケアクロウ・・・・すまなかった・・・・・」

 

「レイ・・・・・レイ・・・っ!」

 

 

代理人が医者たちを連れてくるまでの間、二人は抱き合ったまま互いの存在を実感しあったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイが目を覚ましてから数週間後。

臓器の一部が人形のもになっていると言われて驚いたり、データのバックアップによって帰ってきたダイナゲート1号たちと再会したり、ほぼ一ヶ月近くも置きっぱなしにしていたオンボロを引き取りに行ったりと慌ただしい日常が戻ってきた。

 

そして今日、あの日以来延期されていたショー再演のため、レイとスケアクロウは再びU02地区を訪れていた。あの時の記憶がフラッシュバックするが、今回は大丈夫だ・・・・・上空をテレビ局のヘリに偽装した運用ヘリが数機も飛んでいるのだから。

 

 

「・・・・・・・・レイ」

 

「ん?」

 

「・・・・改めて、申し訳ありませんでした。 私たち人形の問題に、あなたを巻き込んでしまって」

 

 

U02地区を一望できる高台の公園。そこで夕陽をバックに、スケアクロウは言った。背を向けているので表情はわからないが、彼女がどう言った心境であるかは十分伝わる。

 

 

「おいおい、その話はもう終わったんじゃ・・・・」

 

「い、いえ、その・・・・・まだ、続きがあります」

 

「え?」

 

「・・・・・きっとこれからも、あなたには迷惑をかけるかもしれません。 また危険な目に合わせてしまうかもしれません」

 

 

スケアクロウの声が、微かに震える。だがそれでも、彼女は続ける。

 

 

「それでも、私はあなたと一緒にいたい・・・・・レイ、これからも、私のそばにいてくれますか?」

 

 

声を振り絞るように言う。もし拒絶されたら、そう思うだけで逃げ出したくなるのを、スケアクロウはじっと耐えた。

そして、レイの答えは・・・・・

 

 

「・・・・・なにを言い出すかと思ったら・・・・当然だろ?」

 

「っ! レイ・・・・・!」

 

「第一、俺を雇ってるのはスケアクロウだろ? 勝手にいなくなるなんて契約違反だしな」

 

 

一瞬、言っている意味がわからなくなった。一拍おいて理解し、そして彼女の意味が伝わっていないことに気がつく。

平時であればビンタの一つでもかましてやりたいところだが・・・・そんなところも含めて、なのだ。

 

 

「・・・・レイ、あなたは本当に鈍いですね」

 

「???」

 

 

首を傾げるレイの気配に、スケアクロウは嘆息する。そして仕方ないとばかりに微笑むと、大きく息を吸い込んで振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイ、私はあなたのことが・・・・・・

 

 

 

 

end




言いたいことはわかってる・・・・シリアスは苦手なんだ。見るのが、ではなく書くのが、ってとこだけど。
ちなみに没案ではどこぞの狩人によって啓蒙を得て復活したり、デカパイ人妻たちのπビンタで目が覚めたりとか考えたけれど、夢の中でまで踏んだり蹴ったりなのはかわいそうなので・・・・ね?

さて、これでchaosraven氏とのコラボも完結!あちらで六話、こちらで一話というボリュームですがいかがでしたか?
他の方が描く自分のとこのキャラクターって、こう見えてるんだって感じで面白いし参考にもなりますね。
こんな感じで、コラボのお誘いは大歓迎です!長編短編ほのぼのシリアスグリフィン鉄血、なんでもウェルカムですよ!



では、今回のキャラ紹介!


スケアクロウ
精神的に危うくなっていた娘。あなたを殺して私も死ぬ、みたいなことをやろうとしたけれどどっちもダメだった。
彼女は絶対にハッピーエンドにしてやると心に決めていた・・・・イベントのデイリー10キルも詫びも兼ねて。

レイ
全身に傷跡が残り、臓器の一部を民生人形のものに置き換えた、いわば半サイボーグ化した男。
没案では人形化や臓器提供による完全復活、あるいはなんらかの障害が残るといったものがあったが、今回はこれでよかったんじゃないかな?

夢の内容
『裏稼業とカカシさん』より、対E.L.I.D戦と超事件のお話。コラボなのにあっちの二人を出さないのはいかがなものかと思ったので、こんな形で。
何気にこっちから世界を超えるという珍しいパターン。





ところで皆さん、もうすぐ7月ですね、夏ですね!
AK-12とANー94のスキンが出ましたが、皆さんはもう買いましたか?
私はいるの間にか溜まっていた4000ダイヤを使って買いました!・・・・・課金しなくても楽しめる要素が多いのはドルフロの魅力だと思います(信者)

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