そしてoldsnakeさん、大変待たせしました!
いままでヤベーやつも何人かいたけどこいつも色々ヤベーですね笑
導入部分はこちらから!
https://syosetu.org/novel/180532/420.html
平和も平和、血なまぐさい争いなどほぼ皆無に等しいここS09地区に、ピリピリとした緊張感が走・・・・・っていたのはつい先ほどまで。今ではすっかり平和な日常を取り戻していた。
時間にして一時間ほど前、街を警備する自警団の人形の一人からの連絡が途絶えた。不審に思った仲間の一人が最後に連絡があった場所を中心に調べること十数分、薄暗い路地裏に全裸で横たわる同僚を発見し即通報した。証言ではボロ布をまとった少女が抱き着いてきたと思ったら倒れていた、という実に不明瞭なもので、加えて職場でのこの人形の評価が『変態』であったことから、この件は
しかしその一方、そこからそう離れていない路地にうっすらと赤黒い染みが残っていることに、誰も気づくことはなかった。
「・・・・・・・・容体は?」
「間一髪、ってとこかな。 いきなり連絡がきたからびっくりしたよ」
「申し訳ございません、急に呼びつけてしまって」
「いいよいいよ、こういう時のために私がいるんだから」
路地の裏にひっそり・・・・という範疇を超える賑わいを見せる喫茶 鉄血。その三階部分、従業員用の部屋の一つにあるベッドを囲むように座るのは、店長の代理人と鉄血工造エンジニアのサクヤ。ふぅ、と一息ついてコーヒーを飲む姿は大変絵になるが、その周囲もベッドも赤く染まっている中ではむしろホラーにさえ見える。これらはすべて人形の人工血液だ。
その持ち主、ベッドの上に横たわる一人の人形を見やり、代理人はサクヤに問いかける。
「・・・サクヤさん、この子は」
「言いたいことはわかるけどね代理人ちゃん、残念だけどこの子のことは知らないよ。 さっきアーキテクトちゃんに頼んで調べてもらったけど、一致するデータはなかったみたい・・・・設計段階のものも含めてね」
サクヤの言う通り、この人形に関するデータは一切見当たらなかった。外観はイントゥルーダーに似た顔に長い白髪、そこそこの胸と、どことなく鉄血ハイエンドの詰め合わせに見えなくもない。しかしこの人形が持っていた武器も該当する資料はなく、文字通り降って湧いたような感じだった。
そしてもう一つ、代理人たちにとって無視できないものがある。
「ではサクヤさん、こちらは・・・・」
「うん、こっちは見覚えがあるよ・・・・というか、見覚えしかないんだけどね」
「私も同感です・・・・本当に彼女なのでしょうか?」
今ではすやすやと眠るこの人形は、発見当時はもはや手遅れレベルの重傷だった。おそらく何らかの戦闘があったようで全身に傷があり、そして何よりその腹に深く突き刺さっていたモノが、手遅れ一歩手前にまで追いつめていたのだ。
色白の腕と、そこに握られた特徴的な近未来形状の銃・・・・・こんなものを扱う人形はほかにいない。
「・・・・まぁいいでしょう。 あとは直接聞いてみましょう」
「わかった・・・じゃあ私はこれで帰るけど、何かあったらまた連絡してね」
「えぇ、その時はお願いしますね」
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・・・・・沈んだ意識が浮かび上がる、というのはこういうことをいうのかもしれない。本来であれば『生』も『死』もない人形がそういうのもおかしいが、例えるならそんな感じだ。
もう動かないと覚悟した指先がピクリと動き、瞼がゆっくりと開く。そこに映っていたのは荒廃した大地でも吐き気がするほど白い研究室でも、ましてや自分の根城でもない・・・・・このご時世では絶滅危惧種のような小綺麗な天井だった。
ぼぉっとしながら天井を眺め、ゆっくりと体に意識を向け始める。いくつかのダメージこそ残るがおおむね正常で、同時にそれがとんでもなく異常であることに気づき、少女は跳ね起きた。
「・・・・あら、目が覚めましたか?」
「気分はどうだ?」
少女の目に映るのはかつての上司と、記憶の中で最後に殺し合った人形・・・・・代理人とアルケミストだ。その二人が並んでこちらを見つめていることに呆然とし、そして徐々に本来の感情と表情を取り戻す。
「アルケミスト・・・・・・」
「む、その様子だとやはり私が分かるようだな」
「というより、相当な恨みを買っているように見えます・・・・・アルケミスト、本当に何もしていないんでしょうね?」
「何度質問しても同じだ代理人、私はやっていない」
「やってしまった人は皆そう言うんですよ。 あの腕と武器だけならともかく、こうまであからさまに敵意を向けられるのでは信じようもありません」
「大人しく自首するべきではないのかなアルケミスト?」
「ええい黙れ、何と言われても私はやっていない・・・・というかなぜ貴様がここにいる!?」
「我が主が下で怠惰に酔いしれているのでな、私もこうして自由を謳歌しているのだよ」
足元にいる無駄に渋い声のダイナゲートに殺意やら敵意やらをごっそり削がれてしまうが、結果として少女は冷静に状況を見直すことができた。どうやらこのアルケミストも代理人も自分を知らない様子で、気を失う直前に見ていた不自然なほど平和な世界と合わせ、少女の混乱は深まるばかりだ。
そんな少女に、代理人はマグカップを差し出す。ほわっと湯気の立つそこからは、ココアの甘い香りが湧きたっていた。
「私の見立てが正しければ、あなたは今の境遇に困惑しているはず・・・・一先ずこれを飲んで、ゆっくりでいいので話していただけませんか?」
「・・・・・・・・『
マーダーと名乗る少女は、マグカップを受け取りチビチビと飲み始める。人形故、そして自身の性格や戦闘スタイル故にまともなものを口にしてこなかったが、このココアが美味しいものであることはすぐに分かった。熱いのを我慢しながら飲んでいると、少し微笑む代理人と目が合う。
(ちっ・・・・やりづらいわね)
「? どうかしましたか?」
「いえ、何でもないわ」
感じたことのない居心地の悪さに舌打ちするも、とにかく今は相手の出方次第だと様子をうかがう。今しがた気づいたがどうやら傷は修復されているらしく、武器こそ没収されているが動く分には問題ないようだ。
あとはどうやってここを出て、そこから先をどうするか・・・・・そもそもここがどこで、なぜこの二人がこうものんびり過ごしているのか。
一方の代理人も、すでにマーダーが
「マーダーさん、これから話すことが信じられないかもしれませんが、よく聞いてください」
「何よ改まって・・・・・」
「その必要があるということです」
代理人が口を開き、マーダーの置かれている状況を語る。それを聞いたマーダーの手から滑り落ちたカップが、音を立てて割れた。
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「うぅ・・・・どうしてこんなことに・・・・・」
トレーを持ったままカタカタと震えながら、少女は涙目で扉を見上げる。この奥にいるのは、名は体を表すという言葉通りの危険な人形・・・・その気分一つで少女の命運は決まるといえるだろう。
「9、F9・・・・帰ってこれなかったらごめんね(泣)」
少女・・・・ノインは遺言(?)を呟きながら扉を開いた。
事の発端は数時間前、自身の置かれている現状を知ったマーダーが自暴自棄になり始めたことに起因する。突然異世界だの平和な世界だのと言われれば、ましてや理性やタガが外れているマーダーにとっては居心地が悪いなんてものではない。いったんは大人しくしていたマーダーだったが、それがいつ強硬手段に走るかわからなかったのだ。
そんな一触即発ともいえる状況に、代理人とアルケミストはしばらくそっとしておくということで意見が一致、再度落ち着いた頃合いでまた話をしようと決めたのだ。
ところが、二人が去った後に残った一匹が余計なことをしでかした。
「というわけで我が主、何か料理をふるまってやれ」
「いや意味が分からないよ!?」
ノイン専用ダイナゲートによって告げられたのは、ある意味死刑宣告のような言葉だった。どうやらこのダイナゲートはマーダーとある程度の会話ができたようで、出自や趣味、嗜好、何が欲しいかなどを聞き出していた。その過程で、主であるノインのこともばっちり喋っていたのだ。プライバシー保護の欠片もない。
「マーダーはどうやら腹が減っているようだ。 好みはオーガニックなものらしいぞ」
「いや、だからなんでそれが私なの!?」
「そうです、それなら私が作った方が」
代理人の提案ももっともだ。ノインも料理は人並みくらいにはできるが、腕前なら代理人には遠く及ばない。あえてノインを指名する理由などないはずだ。
が、それにはマーダーの好みが関わっているらしい。
「ちなみにマーダーは『カニバリズム』でもある・・・つまりはそういうことだ」
「それって私が食われるってこと!?」
意味深な方ではなく物理的なものである。要するに、出されたものに満足しなければ運んできた者を食えばいい、ということらしい。マーダーの情報を引き出すためとはいえ、かなり強引な条件だった。
「な、何とかならないの・・・・?」
「ふむ、逃げても構わんだろうがその場合・・・・代理人に迷惑がかかるだろうな」
「うぅ・・・・・・」
「だ、大丈夫ですよノインさん、私も手伝いますから」
こうしてとにかく食べられるもの、ついでに言えばだれが作っても大体安定した出来になるものを作り、ノインは死地へと旅立っていったのだ。
「・・・・・ど、どうぞ」
「あら、ありがとう・・・・あなたもあなたで美味しそうね」
「ヒィッ!?」
生きた心地がしない中、ノインが差し出したトレーに乗っていたのはカレーライス。ちょっと野菜が多めのいたって普通のもので、あるものとノインの腕前で作れるものといえばこれくらいしか思い浮かばなかった。代理人も手伝ったので味に問題はないはずだが。
カチャカチャという食器の音と、マーダーが食べ続ける音しか聞こえない。その間ずっと待つしかないノインはすでに限界近くに達しており、緊張と恐怖とストレスで胃がマッハなのだ。
やがてマーダーが皿を平らげると、ようやく解放されると思いほっとする・・・・・が、世の中そんなに甘くない。
「おかわり」
「・・・・・・・え?」
「聞こえなかった? おかわりって言ったの」
ずいっと差し出された皿に、ノインは再び涙目になる。わずかな希望を抱いてマーダーを見るも、嘘や冗談には見えない。
仕方なく皿を受け取ろうと手を伸ばすが、何を思ったのかマーダーが突然皿を引っ込めた。
「そうだ、こうしましょう・・・・・さっきのダイナゲート、いるんでしょ?」
「クックックッ・・・・どうした? 我が主がなにか粗相でもしても私には関係ないぞ?」
「誰のせいでこうなってると思ってんのよ・・・・・」
主を主とも思わない発言と行動はいつも通りなのでもう気にしない。それはそれとして、マーダーが呼んだのには一応理由がある。
するりとノインの横に移動し、ダイナゲートに皿を突き出しつつノインの肩を抱いた。
「おかわり、急いで持ってきて。 遅かったらこの娘をつまみ食いしちゃうかもね♪」
「ヒィィィイイイイイ!!??」
「ほぅ、よほど気に入られたようだな我が主、交友を広げるのも重要な「いいから早く行ってよ!!」
すでに半泣きの状態で叫ぶノインだが、結局この後マーダーが満足するまで解放されることはなかった。ついでにおかわりを待つ間に何度か耳や首筋を舐められたり甘噛みされたりして、そのたびに命の危機を感じることになるのだった。
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「ふぅ、満足満足♪」
「それは何よりです・・・・・が、あまり彼女をいじめないであげてください」
「あら、これでも理性的な対応のつもりよ?」
代理人が食後のコーヒーを持ってくると、ノインは逃げるようにして部屋を出て行った。何があったのかは知らないが、代理人の思う『理性的』な対応ではなかったのだろう。
「ダイナゲートから、あなたのことは聞きました」
「ふぅん・・・・・で、どうするつもりかしら?」
「別にどうも・・・・死んだわけではないのなら、そのうち帰ることができるでしょうから」
そう言い終えた頃合いで、部屋の扉が開く。やってきたのは何やら重そうな箱を持ったイェーガーとリッパーだった。
いきなりなんだと訝しむマーダーの前に置かれた箱を、代理人が開いていく。外箱の中から出てきた電子ロック式の箱にキーを打ち込み、ふたを開く。
「これって・・・・・・」
「可能な限りですが、修復はしました。 元の性能に比べれば心もとないでしょうが、無いよりかはましでしょう」
収められていたのは、ここへ来た時にはボロボロだった光学銃とスタンロッド。それが見た目はキレイに整備されており、電子回路もつながっている。それに加えてサバイバルナイフと小さなポーチも添えられていた。
「あなたを直した方からです。 あって困ることはないはずですよ」
「・・・・・・なんでここまでするのかしら?」
「さぁ、なぜでしょうか」
マーダーの警戒心も、代理人の前では暖簾に腕押し。純粋な親切心とは皆無なマーダーにとって、一番相性の悪い相手なのだ。
代理人も、それからこれを直したサクヤも分かっている。これを渡して帰らせれば、きっとまたマーダーは殺しを続けるだろう。あっちの世界がそういう世界なのだから、そうしなければ生き延びれない。だから放っておけなかったのだった。
「・・・・・礼は言わないわよ」
「えぇ、結構ですよ」
「ちっ・・・・やっぱ嫌いだわ、あんた」
「ふふっ、私はそれほど嫌いではありませんよ・・・・さて、今日はゆっくり休んでください」
代理人が部屋を出るまで、その背中を苦々しく思いながら見つめる。言いようのないもやもや感が胸の中に残り続けるが、ベッドに寝転がるとやがて眼を閉じ、小さな寝息を立て始めたのだった。
その後、彼女を見た者はいない。
翌朝にはすっかりもぬけの殻になっており、装備も何もかもまるで消えたかのようになくなっていた。眠ったまま元の世界に戻ったのか、はたまた黙って出て行ったのかはわからないが、代理人の経験上きっと無事帰ることができたのだろうと思う。
ついでにベッドの上には、走り書きに近い手紙が残されていた。
『世話になった
PS.あの娘に「美味しかった」と伝えてちょうだい』
なお、この手紙を見たノインがカタカタと震えだしたのは言うまでもない。
end
マーダーの狂気感を出したいけど、戦闘がないんじゃ難しいね。
マーダー×ノイン・・・・これは流行る(*´ω`*)
では今回のキャラ紹介
殺戮者/マーダー
oldsnake氏の『破壊の嵐を巻き起こせ!』の世界からやってきた鉄血人形。詳細はあちらの作品のキャラ紹介を。
狂ってはいるが正気を失っているというわけでもないらしく、今回は比較的おとなしめ。カニバリズムだが美食家。
Dカップ(ここ重要)
代理人
突然血まみれの人形が運ばれても動じない・・・・というか運ぶ先は普通病院だと思う。
がっつり戦闘向きのマーダーと戦っても勝ち目はないので、今回は結構危ない橋を渡った。
サクヤ
人形の危機と聞いて何もしないはずがない。
お節介もお節介だが、結局本人とは面識がないままに終わった。
アルケミスト
結局和解(?)もなかったが、お互い気にしていない。
ノイン
巻きもまれた幸薄少女。人形ではなく人間であるため、マーダーの食人嗜好に引っかかった。
マーダー曰く、「新鮮でおいしそう」
ダイナゲート
おなじみのCV.中〇。
一応これでも主の身を案じてはいるが、それがノインに伝わることはない。
最近の趣味はノインの成長(一部)を記録すること。