喫茶鉄血   作:いろいろ

83 / 279
変態の利点はその立ち直りの早さと頭の回転、そして驚異的な行動力。


第六十三話:共同戦線、夏の陣!

「触手プ◯イって、良くない?」

 

「・・・・・・・・え?」

 

 

場所は鉄血工造、アーキテクトの研究所。

開口一番にそんなアホなことを言い放ったのは、一部からは鉄血ハイエンドの面汚しとまで言われる変態「マヌスクリプト」である。あのアーキテクトですら一瞬言葉に詰まることをさらりと言ってのけるが、その顔はマジである。

 

 

「触手プレ◯って・・・良くない!?」

 

「二度も言わんでいい!!」

 

 

大事なことなのでry

ゲーガーのツッコミにも冷静に対処し、なお語り続けようとするマヌスクリプト。そんな鉄血三人娘がワイワイやっている隣で、こちらもまたなんとも言えない空気に包まれていた。

 

 

「・・・で、あなたもですかヘリアンさん。」

 

「フッ、愚問だな。」

 

「なんでそんなにドヤ顔なんですか・・・」

 

 

ため息をこぼすサクヤの正面、顔のいたるところに絆創膏やガーゼを貼っているヘリアンがいい笑顔で座っている。先日ペルシカに再起不能寸前までボッコボコにされた(瀕死、もしくは半殺しともいう)彼女だが、相変わらず懲りていないようだ。

 

 

「まぁ流石にAR小隊や404小隊のネタは控えるがな。」

 

「辞めはしないですね・・・・・」

 

「私に死ねと?」

 

「そんなにですか!?」

 

 

一応彼女のために行っておくが、平和になっても彼女のような中間管理職は大変なのだ。何をしでかすかわからない部下と、ポンコツやパワハラセクハラ上司、それに挟まれた彼女にはストレス発散材料が必要だった。それがたまたま同◯誌だったというだけである。

 

 

「・・・・・で、今回は何をご所望ですか? 言っておきますが直接危害を加えるものは作れませんよ?」

 

「じゃあ、直接じゃなかったらいいんでしょ?」

 

 

マヌスクリプトとヘリアンの目がキラリと光る。そしてその目が向く先は、鉄血が誇る『天災』アーキテクト。思い当たる点があるのか目をそらす。

 

 

「仮想空間スキン。」

 

「な、なんのことかな?」

 

「とぼけても無駄だぞ? 我々の情報収集能力を舐めてもらっては困る!」

 

「それは仕事で発揮してほしいかな!?」

 

 

珍しくアーキテクトがツッコミに回る。色々とやらかすことの多いアーキテクトだが、この変態どもとは相性が悪い様子。

さてその仮想空間スキン(第五十六話参照)だが、これを要求する理由は二つある。

 

 

「R18MODがあったな?」

 

「確かに作ったけど使う気は無いよ!?」

 

「外部操作可能よね?」

 

「あ、あれはいろんな娘の要望を聞けるようにしてるだけだよ!?」

 

「「じゃあ外からあんなことやこんなこともできるな! しかも仮想空間なら実害もない!」」

 

「助けてゲーガーちゃん!!!」

 

 

実際目が血走っているヘリアンとマヌスクリプトは怖い。鼻息まで荒げていて恐怖すら感じる。

黙らせるのは簡単だが確実に復活するのが目に見えているので使わせるほかないのだが、問題は誰を犠牲にするかだ。

 

 

「まぁそんなに難しく考えなくてもいいわよ。 私らが中を作り変えるから、VR訓練とでも言って集めてくれれば十分よ。」

 

「いや、うちの評判が下がるんだけど・・・」

 

「普段から貴様が下げきっているから問題ない。」

 

「かはっ!?」

 

 

ひどい言われようだが擁護のしようがない。

しかも・・・・・

 

 

「そんなに言うなら二人が入ったら?」

 

「えぇ!?」

 

「はぁ!?」

 

「うむ、名案だ。」

 

「待って、それは私が認めn

 

「サクヤさん、ダメ?」ウルウル

 

「ゔっ・・・・・今回だけ、よ。」

 

「「サクヤさん!?」」

 

 

ここに来てサクヤの過保護が発動、結局二人が入り込むことになった。

怪しげな笑みを浮かべる二人と冒頭のセリフ・・・二人は生きて出ることを誓って仮想空間に身を投じることを決めるのだった。

出撃まで、あと三日。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「なぁマヌスクリプト。」

 

「ここではペンネームで話そうよヘr・・・『向日葵』。」

 

「なるほど、ではどうする『写本』。」

 

 

今、二人の目の前にはデザイン画が大量に散らばっている。VR訓練の環境設定のための資料なのだが、精査を重ねた結果二つに絞られた。すなわち・・・・・

 

 

「洞窟風のダンジョンのようなものにするか、近未来な施設にするか。」

 

「前者なら生物的な触手、後者なら機械の触手だね。」

 

「甲乙つけがたいな、いっそどっちもと言いたいところだが・・・」

 

「まぁ最初は機械の方でいいんじゃない? 謎の施設に調査に行った二人が見たものとは!? とか。」

 

「そうだな、ダンジョンは続編で謎の転送装置によって飛ばされたことにしよう。」

 

 

一体二人の頭はどうなっているのか、ペルシカ並みの頭脳を持つサクヤをもってしてもわからない。二人の間から見える画面には、白を基調とした部屋のいたるところからウネウネと細長い機械が現れ、モデルとして用意した棒人間に絡みつく。

その先端には、一体何に使うのか検討もつかない、と言うより考えたくないような機械がくっついている。棒人間なので今はなんともないが、後々二人がこれに出会うと思うといたたまれなくなる。

 

 

「機械といえば電気だと思うのだが?」

 

「刻印レーザーとかもありかな?」

 

「ちょっとファンタジーよりじゃないか?」

 

「エロけりゃいいのよ。」

 

(ゲーガー、アーキテクト・・・本当にごめんなさい。)

 

 

できるなら今すぐ止めたいが、この二人はそのあと何をやらかすかわからないので止めるのも怖い。

ならば機械を、とも考えたがこれはアーキテクトの自信作なので壊したくはない。

結局、この二人を止めるすべはないのだ。

出撃まで、あと二日。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ど、どうにかならないかなゲーガーちゃん!?」

 

「わ、私に聞くな! そもそもお前が作ったシステムだろ、なんとかしろ!」

 

 

実験(という名の資料提供)を明日に控えた二人は、ここに来てなんとか回避しようともがいていた。昨晩サクヤから『ごめんなさい。』とガチで謝られたのが不安な拍車をかけ、きっととんでもないことになると察し始めた。

 

 

「さ、サクヤさんは何を見たんだろ?」

 

「・・・きっと世にもおぞましいものを見たに違いない。 そうだ! ペルシカに頼んでみるのはどうだ!?」

 

「無理だよ・・・・・だって今回のことはペルシカに許可をもらってるらしいから。」

 

 

許可、というがその実態は『認めてくれないと超過激なM4本を書いちゃうゾ☆』という脅迫である。AR小隊の癒しであるM4をこれ以上汚すわけにもいかず、というかAR小隊と404小隊がネタにならなければ割とガードが緩い。

そんなわけでペルシカの助力は期待できないのだ。

 

 

「そ、そうだ! 明日その時間に会議を入れれば・・・」

 

「そんなことをしてみろ、昼は会議で夜は地獄のVRになりかねんぞ。」

 

 

まさに打つ手なし。その日二人はヤケクソ気味に酒を飲み、泥のように眠ったという。

出撃まで、あと一日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう二人とも! 待っていたぞ!」

 

「ついでに私らは待ちきれなくて一睡もしていないわ!」

 

「・・・なんでこんなに元気なんだ。」

 

「もうやだおうちかえる」

 

 

当日、仮想空間用のポッドの前に集まったアーキテクトたちは、仕様の前に簡単な注意だけ話す。

まず、仮想空間とはいえ入っているのは本人のメンタル部分だ。よって危険な状況なれば強制停止させること・・・・・まぁ命の危険は皆無だと思うが。

次に、この実験は社外秘であること。これはこの装置の評判を下げない以外に、二人のあられもない姿を晒さないためでもある。というかそっちがメインだ。

そして最後に、一応口出ししないがサクヤの指示には従うこと。二人に任せると絶対にやりすぎるからだ。

 

 

「よし、では始めようか!」

 

「二人とも頑張ってね〜!」

 

 

こうして二人は、なんの事前情報もないままに未開の魔窟へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あーあー、聞こえてる?』

 

「あ、うん、聞こえてるよ・・・・・で、この格好は何?」

 

 

二人が立っているのはどこかの施設っぽい部屋。休憩室なのかロッカーや棚があり、誰かの服っぽいオブジェクトもある。

微妙にこだわっているところがよくわかる。

 

 

『それは私が説明しよう。 今回二人の設定だが・・・施設に潜入した捜査官ということにしている。』

 

『潜入といえばやっぱりピッチリスーツだよね!』

 

「ふざけるな! というか武器はこれだけか!?」

 

 

二人の腰にあるのは消音器がついた拳銃が一丁、予備のマガジンすらない。そして端末から地図を開くと、この部屋をスタート地点としてほぼ一本道となっている。

・・・・・明らかに怪しげな部屋が並んではいるが。

 

 

『まぁ安心しろ、回避できないほどの難易度ではない。』

 

『じゃ、頑張ってね〜!』

 

「ちょっ、待って! せめて何が出てくるかだけでも教えて!」

 

 

アーキテクトの叫びも虚しく通信が切られる。余談だがこの仮想空間装置、そんじゃそこらのゲームなんかよりもよっぽど自由度が高く、マップはもちろんNPCも自由自在、つまり何が出てくるかは作った側にしかわからないほど多様性に富んでいる。

 

 

「うぅ、ゲーガーちゃん、頑張ってきて。」

 

「それでも構わんがその次はお前一人になるぞ?」

 

「・・・・一緒に行く。」

 

 

そう言って恐る恐る扉を開き、変態どもの魔窟に足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁああああ!!!」

 

「なんて悪趣味なんdうおっ!?」

 

「私も大概だと思ってたけどこいつらより断然マシだよ!」

 

「間違いない。 今までバカとか変態とか言ってきたけど訂正するぞアーキテクト!」

 

 

 

 

 

『ううん、これも避けられたか・・・。』

 

『二人のステータスも弄るべきだったかな?』

 

『捕まるのも時間の問題だろう・・・まぁ避けてもネタにはなるんだがな。』

 

『お主も悪よのぉ。』

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで二人は危なっかしくも無事進み、なんとか最後の扉の目前まで来ていた。これを越えれば脱出できるのだ。

 

 

「だ、大丈夫か、アーキテクト。」

 

「ひぃ、ひぃ、あのまま捕まってたら・・・どうなってたか・・・」

 

「連中のネタになるのは間違いないだろう・・・・・くそ、誰か奴らを止められんのか。」

 

 

悪態をつきながらもなんとかここまで来れた二人。だが道中で武器を失い、そして最後のこの部屋でこれ見よがしに置いてあるバカでかいコンテナ。これまでの経験から、絶対にロクでもないものであることがわかる。

そして、そのコンテナが今、ゆっくりと展開した。

 

 

「ひぃ!?」

 

「な、なんだこいつは!?」

 

 

現れたのは、巨人としか言いようのないデカブツだった。身長は3メートルをゆうに超え、筋肉むきむきのボディを持つ。

そしてそいつの背中から大量に生えているのは、なんかヌメッとした粘液を帯びた無数の触手だった。

 

 

『これが今回のボス、新型の生物兵器(という設定)だ!』

 

「ふっざけるな! あんなのと素手で戦えと!?」

 

「な、なんかヌメヌメしてるぅ!?」

 

 

そっち方面の知識に乏しい二人から見てもわかる、明らかにアブナイやつだ。

一応身構えてみるが、どう頑張っても勝ち目がない。やがてそいつがゆっくりと歩き始めると同時に、アーキテクトも泣き出した。

 

 

「やだぁ・・・助けてゲーガーぁ!!!」

 

「む、無茶言うな! 私だって怖いんだぞ!?」

 

 

万事休す、哀れ二人はこのままウス=異本のネタとなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思われたが、突如閉ざされた扉を蹴破る者が現れる。

 

 

「「!?!?!?」」

 

 

身を寄せ合う二人はいよいよダメだと覚悟を決める。だが土煙の中から現れたのは、二人のよく知るあの人物だった。

 

 

「「あ、アルケミスト!!!」」

 

「待たせたな、二人とも。 ・・・すぐに終わらせる。」

 

 

そう言ってアルケミストが地を蹴る。そしてその勢いのまま巨体を蹴りつけ・・・・・壁まで吹き飛ばした。

 

 

「「えええええええええ!!!!!」」

 

 

あまりにも衝撃的な光景に、開いた口が塞がらない。まさかあの巨体が吹き飛ぶとは。

実はごく単純なことで、この仮想空間では中に入った人形のステータスも自由自在。どこからか聞きつけ駆けつけたアルケミストはマヌスクリプトを締め上げたのち、サクヤの協力によってもはやチートクラスの強さになって助けに来たのである。

 

と、そんな説明をしている間にパパッと片付けたアルケミストは腰を抜かしたままの二人を支えて出口に向かう。

こうして、二人は無事脱出できたのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ネタの提供に協力するって言ったのに・・・・」

 

「だから提供してやっただろう? 『仲間の窮地に駆けつける』というヒーロー物のな。」

 

 

やれやれ、といった顔でマヌスクリプトを見下ろすアルケミスト。その横では特大のたんこぶを生やしたまま地に伏すヘリアンの姿が。

今回の件は、アルケミスト的にはまぁ悪ふざけの範疇であるようで、最後のアレ以外はそこまでお咎めなしらしい(一応避けれる程度だったから)。

それと、マヌスクリプトに鉄拳制裁がないのにはもう一つ理由がある。

 

 

「さて、二人が帰ってこれたんだ・・・お前も帰ってこれるな?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「返事は?」

 

「は、はいぃ!!!」

 

 

 

 

後日、マヌスクリプトは語る。

マジですまなかった、と。

 

 

end




・・・なんだこれ?
マヌスクリプトって書けば書くほどやらかすキャラになってくんですよね・・・まぁもともとそんな設定だけど。
そういえば、私はこの作品を書くにあたってほぼ実際にプレイした経験からしか書いてません。そんな中で先日知ったのが『イントゥルーダーは蝶事件後に作られた』・・・・・え?マジで?
まぁこの世界では一切関係ありませんが!


ではここらでキャラ紹介

マヌスクリプト&ヘリアン
ヘリアンはともかくマヌスクリプトに関してはそろそろまともな話を用意してやりたいと思う。でも今のマヌスクリプトが輝いているのも事実・・・うーんどうしよう。

サクヤ
マヌスクリプトの保護者的なひと。
こっちの世界ではある意味一人娘なマヌスクリプトに甘くなる時がある。
責任を取って仮想空間に入ろうとして全員から止められた。

アーキテクト&ゲーガー
今回の被害者。
アーキテクトに関しては巡り巡って返ってきた感じはあるが、ゲーガーはただのとばっちり。

アルケミスト
登場までの過程を一切書かなくていいくらい神出鬼没な人形。
今回も唐突に現れ、解決し、去っていった。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。