俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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 ※注意
  他作品ネタあり


 用語解説:俺ームアームズ

 自分なりの改造、別FAやMSG等とのミキシングされたフレームアームズを指す言葉。
 ちなみに公式の呼び方。
 熟練の人ともなると、「どうすればこの発想が……!?」と戦慄するような作品も。
 気になるようならまずは某青い鳥のSNSへ。
 普通にカッコいいぞ。


壱:明けの明星 ーヴェスパーファルクスー

 気が付くと俺は、未来の世界っぽい一室で寝ていた。

 機械の棺桶のようなベッドから全裸のまま這い出て、装甲付きのウェットスーツみたいな服があったので着替え――そして、変なロボットに先導されているのが現状だ。

 

 おかしい。

 

 俺は普通に会社行って、帰りにプラモとDVDを買って、そんで賛否両論激しい鉄血のオルフェンズの一期二期を連続で観ようとした筈だった。

 しかしそこからの記憶は曖昧だ。

 これが夢なのか妄想なのか、それとも転生や転移なんかは解らんが、もし仮に後者だとすれば。

 

「……俺の、『ガンダム一気観しながらレイファルクス改造計画』は始まる前に頓挫したって事かよ」

 

 積みプラややってないゲーム、観てないアニメ、読んでないラノベや漫画だってあったんだけどなぁ。

 彼女? は・は・は。そんなモン生まれてこの方一度も出来たことないわ。

 

「――Pi!」

 

「ああ、はいはい。着いて来いってな」

 

 電子音を鳴らして催促される。

 誘導されるがままに白いライトに照らされた廊下を歩いていく。窓が無いせいで外の様子が見えないのが少し不安だ。

 まさかここ、地下や海の底とかじゃないだろうな。

 

 

 

 ――海じゃなくて、宇宙でした。

 

 

 

 

 デカいスクリーンのある部屋へと案内され、外部の状況を見せられた。

 黒い空間の至る処で瞬く星の輝き、浮遊している小惑星っぽい無数の岩。

 所謂小惑星帯(アステロイドベルト)の中に、この施設はあるらしい。

 何故か引力に引っ張られるように周囲に漂う岩。

 なんだろうな。

 見えない糸にでも引っ張られてるのかね?

 

 で?

 

 こっからどうしろと?

 

 スクリーンに文字が流れる。

 あらゆる国の言葉で『初めまして』の文字。

 雪ダルマみたいな形のチビロボが、俺の座ってるスクリーン前のパネル前に飛び乗り、ペンギンみたいなマニュピレーターで幾つかのボタンを指し示す。

 えっと、普通のテンキーと配置が同じなんかな?

 リズミカルにパネルを操作し、日本語を主文に。

 つーか俺、普通にここの機械を使えるようになってるな。

 取り敢えず立ち上げて、と。

 

『これより、当施設の所有者として(無記名)のバイタルデータを登録します。手を発光するパネルに置いて下さい』

 

 言われる儘に手を光るパネルに置くと文字が変わる。

 

『所有者の名前が登録されていません。貴方の名前を登録して下さい』

 

 ほいほい。

 えーと、本名でいいか。

 明星龍治(あけぼし・りゅうじ)、と。

 まるでラノベの主人公みたいな名前みたいだけどマジだしなぁ。お陰でゲームの実名プレイでも恰好悪くないのは有り難い。

 

『登録名:明星・龍治、で宜しいでしょうか?』

 

 ほいほい、決定。

 

『登録完了しました。これより当施設、都市内包型工廠戦艦――タカマガハラの全権限は貴方に帰属します』

「――は?」

 

 えーっと、工廠って工場の古い呼び方だよな?

 つーか、戦艦?

 あ、ログあんのね。

 ふむふむ。

 ……元は地球圏脱出用の戦艦をパクったのが最初か。

 前の所有者は……アグニカ・カイエル?

 ふーむ。

 さっぱり解らん。/どこかで聞いたような?

 

「モビルスーツのパイロットで厄祭戦の英雄、ねえ?」

 

 モビルスーツって事はここは宇宙世紀なのか?

 所詮スパロボでの知識しかない俺は、この英雄の名前は知らんな。

 つーか、厄祭戦?

 UCの時間軸じゃねぇのか?

 Gガンダムみたいなアナザーか?

 GレコみたいなUCの後の世界か?

 

 まあ、どっちでもいいわ。

 

 で、相手は……モビルアーマーか。

 どうやらこの世界だとモビルアーマーは、人工知能が搭載された殺戮機械の名前っぽいな。

 ふーむ。

 ……ところで、ココで何を造ってたんだ?

 そうチビスケ(ロボット)に訊ねると、コイツは体からコードを伸ばしてコンソールに接続して何かのデータを呼び出した。

 スクリーンに写し出されるそれを見て、俺は絶句した。

 

 フレームアームズ。

 

 俺が作ろうとしたプラモデルの名前だ。

 しかも、写し出されている機体は《LXー00 レイファルクス》だ。

 まさかこんなワケの解らん場所で見知った機体に出逢えるとは……

 ふと、俺はチビスケに訊いてみた。

 

「この機体、俺が改造しても、いいかい?」

 

 その問いにチビスケは、スクリーンにOKと表示した。

 ……そうか。

 ここがどこかなんて取り合えずどうでもいい。

 まあこんな設備でプラモが作れるのなら、このレイファルクスを俺が考えていた機体へと改造しよう。

 よし、翼兼兵装の背中のアーセナルアームズは増設しよう。

 いっそのこと六枚で。

 んー、背中が足りんなぁ……少し胴を増設しないといけないな。となると、手足も延長させんと釣り合いが取れんな。少しマッシブな位が丁度良いし、腕はゴツくしよう。

 マニュピレーターも一回り、いや二回りは大きいタイプのワイルドハンドに交換しよう。オーバードマニュピレーターもいいが、他の武装が持てなくなるしな。特に射撃系の兵装とか。まあ、オーバードマニュピレーターもTCSオシレーター風に改造するけどな!

 色も変えないと。

 元の色が白に金、そんでTCSオシレーターが紫だから――白い装甲を黒にして全身にエネルギーラインが走るように。TCSオシレーターは出力が上がると紫から赤、そんで緑に光るように。どういう原理でそうなるか知らんが出来るってんならやって貰おう。電飾でも仕込むのかね?

 正直、ユニコーンやジェフティの猿真似だけど俺が勝手に楽しむだけなら問題ないだろう。

 長剣に短剣、ライフル、大剣や槍、銃剣、大型手裏剣とかに変形するバリエーション豊かなアーセナルアームズを三つも背面に装備させるってんで、機体のサイズが一回り以上デカくゴツくなっちまったけど、大まかな造形は元々のレイファルクスのままだ。

 まあ、腕が脚よりも若干長くなったけど、大型のワイルドハンドに換装すると結構丁度良くカッコいいんで満足だ。

 後は、別口の武器も用意しないとなー。

 蛇腹剣とか大鎌とか欲しい。

 レイファルクスに似合うTCSオシレーター系のヤツが。

 何故かMSGの武器や増設パーツとかもあるけれど、それでもクリスタル系統のヤツってそんなに無いからなぁ。

 フルスクラッチしねぇといけないかな。やった事ねぇけど。

 

『――Pi!』

「なんだチビスケ? 『造りますか?』だと? え、出来るの?」

 

 肯定される。

 マジか。

 んじゃあ、やろうか。

 まずは蛇腹剣から。

 取り敢えず改造するのは、ビーストソードとビーストマスターソードの二種類だ。

 つーか、ビーストマスターの方は普通に蛇腹剣だからな。TCSオシレーター風のクリアパーツに替えたらいいだけだしな。

 普通のビーストソードの方は、菱形の刀身を連結させた剣だ。その切っ先を幾つかバリエーションを持たせよう。通常の返しの付いた両刃だけじゃなく片刃のヤツも欲しいな。

 そうだ、どっちとも柄を着脱式にしてインパクトナックルの台座と互換出来るようにしとこう。

 お、ユナイトソードもあるな。コイツもTCSオシレーター風に改造しよう。

 スパイラルクラッシャーやガンブレードランス?

 ああ、こういうのはTCSオシレーターって解釈なのか。

 いいね、夢が広がるじゃありませんか。

 あ、他の機体とかも見れる?

 イイねェイイねェ、んじゃあマガツキ・崩天とドゥルガーⅡは……あるのね。よし、んじゃあ次はそいつらをやろうか。

 

 

 

 

 

 ――おいおい、嘘だろ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「まさか……リアルで機体を造っていたとは……」

 

 取り敢えずレイファルクスと他に二体機体を改造し、さあ実物を見に行こう、とチビスケに頼むと。

 空を飛ぶ車に乗せられて工廠施設まで連れて行かれりゃ、視線の先には俺ームアームズが三体。

 あのスクリーンで見た時以上にリアルを伴って俺を出迎えた。

 そりゃあもう圧倒されたよ。

 普通にビビったね。

 でもチビスケに『乗ってみますか?』なんて言われたら――いちメカ好きとしては断れんでしょうが。

 で。

 

「えーっと……阿頼耶識システム? 背中と、両手にコネクター? 俺そんな人体改造受けてんの!? 後遺症とかはっ!?」

 

 で、情報を漁る。

 調べた結果、従来の阿頼耶識システムはそのまま機体と繋がるせいで、情報の逆流を受けて半身不随になったり廃人になる人間が多かったらしいな。

 で、それを防ぐためにコネクターを三つに分割し、更に人体にナノマシンによる補助脳を形成させ、情報のオーバーフローを防ぐ新型のマンマシンインターフェース――通称『阿摩羅識(あまらしき)システム』を造り上げたんだそうだ。

 阿頼耶識システム搭載機は全てガンダムと呼ばれ、ソロモン王が使役した七十二の悪魔の名前を冠しているらしい。

 確かに一つの作品にガンダムが複数登場する場合もあったけど、しかし七十二体のガンダムとは……全部登場してんのかね?

 あれ? そういや、オルフェンズって主人公の機体、バルバトスって名前じゃなかったっけ?

 オタクの俺としては某アイテム使用不可男の存在を思い出さざるを得ないのだが、どうなんだろうか。

 おっと、そうそう。『阿摩羅識システム』の特徴を読まねぇと。

 専用のパイロットスーツ(今俺が着てるヤツ)が機体側の接続端子になるようで、シートに座るだけで背中のコネクターは起動し、両手は専用の特殊な操縦桿を握る事で手の甲に紋様が浮かぶらしい。光りながら。……どう見てもナデシコのIFSじゃねぇか。

 俺のこの手が光って唸るとでも言えってかこの野郎有難う御座います。

 通常の操縦桿もあり、こっちを握る限りは『阿摩羅識システム』は使えないようだな。

 ふーむ……え、嘘だろ。

 解る。

 理解出来る。

 なんでだ?

 機体の動かし方が、通常だろうと阿頼耶識だろうと阿摩羅識だろうと、解る。

 なんでだ!?

 

「――っ!?」

 

 その瞬間、鋭い頭痛が俺に襲い掛かる。

 

 ……ああ、成程ね。

 

 どうやらこの身体の『俺』は、火星生まれだったらしい。両親は普通にいたが赤ん坊の頃に死別。例のモビルアーマーに殺されたそうだ。……こっちでも、俺の両親は同じ名前だったようだな。多分、顔も同じだと思う。終戦間近だったけど、それでも人死には多かったみたいだな。

 で、そっから火星に来ていたフレームアームズを造ってた集団に拾われて、このタカマガハラで育った――らしい。

 しかしまあ、自分じゃない『自分の記憶』ってのは凄い違和感を感じるな。

 生まれは火星だけれども、俺は十二年をこのタカマガハラで過ごしたみたいだな。

 その頃はまだ工廠施設のみが稼働中で、都市部はまだ建設途中だった。

 で、そんな中で俺だけが若かったっつーか幼かったんで都市部が完成して普通に生きれるようになるまで冷凍睡眠で眠る事になったんだとか。

 あー、アグニカの爺さん。すっげぇ申し訳ないって顔で、でも満足そうに死んだっけ。

 で、科学者で主要メンバーの一人だった爺さんの死後、他のメンバーはこのタカマガハラを離れた。

 火星や地球圏に戻り、一般人としての生活を送ったらしい。

 態々記憶まで消去しての徹底振りには頭が下がるわ。

 で、俺は――阿摩羅識システムの手術を受け、都市部が完成するまでの間、冷凍睡眠装置に入る事になった。

 元々は地球圏脱出用移民戦艦だったらしいしな。スパロボOGかマクロスかは解らんが。

 で、同型艦はほぼ全てがモビルアーマーにて轟沈してるっぽい。

 そりゃあ大型のエイハブリアクターを複数搭載している戦艦なんだ。『落として下さい』って言ってるようなもんだわな。残ってるのが幾つあるのやら。

 話を戻そう。

 つまり俺は、この全長十キロメートル超の化け物戦艦の持ち主ーーと言う事になる。

 更に工廠で建造されてある輸送戦艦や護衛戦艦、約百隻ーー更にフレームアームズ各種。素体であるアーキテクトも三百機。まるで世界と喧嘩を売っても勝てるような戦力もまたーー俺のモノと言うことになる。

 だが、しかし。

 俺一人でそれらを全部同時に使えるワケがない。

 各個撃破されて終わるだけだ。……レイファルクス(俺式)がカタログスペック通りの性能ならワンチャンって感じだが、ここの世界でのフレームアームズは対モビルアーマー絶対破壊するマシンみたいだからな。

 人間同士での争いには過剰かもしれない。

 俺が眠って三百年が経ってんだ。どんな世界になっていてもおかしくはないからな。

 

 あ。

 

 なんか記憶っつーか、「俺」が『俺』と混ざっていくような。

 この世界の「明星・龍治」と西暦201X年の『明星・龍治』が混ざり合って、一つの「俺』になるようだ。

 若干不安はあるが、結局の所、俺は生きていたいんだ。誰に脅かされるでもなく、俺なりに真っ当に。

 生きることが大前提。

 死後の救済なんぞより、現世利益を享受しなけりゃ生きてる意味がない。

 その上で。

 善人には優しくあろう。

 悪人には容赦せず潰そう。

 外道にはそれ以上の暴力で返そう。

 仏心を以て悪魔を飼い慣らしたアグニカの爺さんたちのように。

 理不尽には理不尽を以て。

 因果応報であるように。

 それこそが、俺なりの決意だ。

 

「さて、そんじゃあこのレイファルクスにも新しい名前を付けねぇとなぁ」

 

 まあ、とっくに決めているんだけどな。

 

 

 ――LXー00/rf ヴェスパーファルクス。

 

 

 

 誰よりも天に輝き、地に堕ちて尚も輝くあの魔王/熾天使のように。

 覚者の悟りを見守ったように。

 菩薩と転じ人々を導くように。

 誰かが取り零した何かを掬えるように。

 

 

 

 きっと万人に優しくは出来ない。俺だって人間だ。

 だがそれでも。

 誰に憚る事なく、前を向いて。

 カッコ良さを大事に、やっていこう。

 

 

 

 

 

「しかし……こんなヒョロガリのガキじゃあどうしようもないよな」

 

 尚、俺の肉体年齢は十二歳。

 覚えの無い操縦関連の情報は、多分コールドスリープしてた棺桶に睡眠学習装置でも仕込まれてたんだろうな。

 

『――Pi』

 

 なんだ、チビスケ。『正解』?  ああ、そう。

 アグニカの爺さんが、俺が独りでも生きていけるように学習させてくれたんだな。

 ……ほんと、足を向けて寝れないな。

 んじゃ、これから生き抜く為にも身体を作り込もうかね。

 自分がイケメンじゃない事は百も承知だが、それでも筋骨隆々な肉体は欲しいもんだ。

 チビスケ、俺一人じゃすぐ妥協しそうだし、サポートは任せた。

 電子音を鳴らしてチビスケは俺を見上げ、自分の胸を叩く仕草をした。

 任せろ、ってことだよな。

 よっしゃ、頼むわ。

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 こうして俺は、肉体改造に取り組んだ。

 徹底的に全身の骨と筋肉を酷使し、虐め抜いた。

 それと並行しての機体の慣熟訓練もまたハードを極めた。

 幾ら頭で解っていても、身体が付いてこない付いてこないんじゃどうしようもないしな。

 そんな日々を過ごしていたら、いつの間にやら八年が過ぎていた。

 

 二十歳となり、俺は輸送戦艦の一つへ乗り込んだ。

 タカマガハラの近辺には宇宙での行動訓練の一環で何度も出てはいるけどな。

 何はともあれ八年って長い休暇は終わりだ。

 『出稼ぎ』と行こうじゃないか。

 

 輸送戦艦《天城》、出発だ。

 

 

 

 

 

 

 

 で、意気揚々と出発したは良いんだがなぁ。

 

「……あー、ちと訊きたいんだが」

 

 なんで俺はガマガエルのような機体に乗ったタンクトップの男が率いるモビルスーツ集団に包囲されているんだろうか。

 どいつもこいつも銃口を向けてきやがる。

 

「なんの真似だ?」

 

 チビスケに《天城》の操縦を任せ、俺は格納庫へ急ぐ。

 ついでにTCSオシレーター起動を指示。これで大抵の攻撃は戦艦(ふね)に当たる事はないだろう。

 

「こちとら、お宅らにちょっかいをかけるつもりはねぇ。無駄に弾薬消費すんのだって馬鹿らしいからな」

『言いたいことは解るぜ。でもオメェ……』

 

 お宝を持っているじゃないか。

 そう言って、男は舌舐めずりをする。

 

『エイハブウェーブを発しない未知のエネルギーで動く輸送艦だなんて、裏でも表でも高値が付くのは間違いないんだよ』

 

 ……成程、まだ世の中はエイハブリアクター頼りか。

 

『大方、どこぞのアステロイドベルトで見つけた発掘品なんでしょう? 商人か傭兵かは知らないけど、テメェみたいな三下風情が乗っていても宝の持ち腐れってもんよ。俺たち海賊ブルワーズが有意義に使ってあげるわ。感謝なさい』

「……海賊、ねぇ」

 

 機体に乗り込みながら、追従するホログラムウィンドウに写るオカマを見遣る。向こうには艦橋で俺が話してるように見えているだろうがな。

 

「その前にいいか?」

『あァら、命乞いなら良い声で鳴いて頂戴』

「違うわ阿呆。それよりも訊きたいんだけどなァ」

『……』

 

 嫌な予感でも感じたのか、オカマが厳しい顔で俺を睨む。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

『アンタたち、やりなさいっ!!』

 

 随伴する機体が銃撃を開始する。

 手にしたモビルスーツサイズのマシンガンが乱射される。

 しかしその銃弾は、TCSによるバリアに阻まれて艦に傷一つ付けられない。

 その事実に動揺するも、オカマは続けるように指示。

 減衰させるつもりのようだな。

 

「チビスケ、俺が出たら全速力で後退。戦域から離脱しろ。援護はしなくて良い」

 

 他の武器は、今回無しでいこう。

 アーセナルアームズだけでなんとかなるだろう。

 

『進路クリア。お早いお帰りを御待ちしています』

 

 ホログラムウィンドウにチビスケの文字が流れる。

 

「あいよ。明星・龍治! ヴェスパーファルクス、出るぞ!!」

 

 TCSの力場干渉による偏向推進。

 故に、推進器が無くてもこの機体は自由に加速する事が出来る。

 勢い良くカタパルトから射出された俺は、その加速を殺す事なくマシンガンを乱射している内の一機に肉薄。

 

『コイツ、速――』

「まず一つ」

 

 殴り飛ばす。

 

『なんだ!』

『昌弘っ!?』

 

 他の機体から、子供の声?

 つーか殴り飛ばしたヤツからもだな。

 

「ガキの頃から海賊稼業か。世も末だなぁ」

 

 呆れた声がつい口から洩れてしまう。

 

『……っ! ふざけんじゃねぇ!!』

 

 切っ先がハンマーになっている鉈を引き抜いて、襲い掛かってくる。

 俺は翼のアーセナルアームズより長剣のベリルソードを一本取り出して迎撃する。

 

『誰が……! 好き好んで……っ! こんな事してると思うんだよぉおおおおおおお――っ!!』

「……阿頼耶識か」

 

 動きが滑らかだな。

 どう考えても歳に似合わない有機的な動きだ。

 ただ――雑だな。

 なんつーか、動きが素人っぽい。

 暴力を生業としてる軍人や傭兵とは違うし、暴力に染まったチンピラとも違うな。

 まさか、一般人に阿頼耶識を埋め込んでるのか?

 

「なら――」

 

 大振りの攻撃に合わせて後退。直後に急接近。

 振り抜いた姿勢のモビルスーツの四肢を両断する。

 

『――ぐぅうううううううううっ!?』

『ビトーっ!?』

 

 助けに入ろうと何体かが向かってくる。

 だがな。

 

「余所見してて良いのか?」

『え? あがッ!?』

『嘘だろ――っ!?』

 

 それよりも俺の剣が手足をぶった斬る方が早い。

 全機ともダルマになって貰った。

 

 

 

 

 

 

『中々やるわね』

 

 そんな中、動かなかったガマガエルから通信が入る。

 

「そりゃどうも」

『……ウチのゴミ共との戦闘でも、エイハブ粒子の反応は見られなかったわ』

 

 まあ、UEユニットが動力源だしな。

 

『驚いたよ。まさか、あの輸送艦と同じような機体もあったなんて。……でも、アナタ死ぬわよ』

 

 厭らしい口調でオカマが言う。

 

『アナタ、人を殺した事が無いでしょう? あんなゴミカス共の命を奪わなかったのが良い証拠よ!!』

 

 即座にブースト。

 手にしたハンマーで俺を殴りにかかる。

 

「……」

『図星のようだなぁ! でも俺は違うぜぇ!!』

「だろうな」

 

 攻撃に躊躇いが無い。

 だが――コイツも雑だ。

 

『どうやらテメェは知らねぇようだから教えといてやる! そのガキ共はなぁ! ヒューマンデブリっつーんだよ!!』

 

 動揺させようとしているのか、オカマの口調が嘲りの度合いを深める。

 

『デブリの屑鉄同然で売り買いされる備品(モノ)なんだよ! 死んだ所で替わりなんざ掃いて捨てるほどあるんだよォ! そんなゴミ共をご丁寧に殺さねぇように行動不能にするしか出来ない甘ちゃんがぁ! ブルワーズに楯突いてんじゃねぇぞぉおおおおおお――っ!!』

 

 ――よし。

 

「やるか」

 

 操縦桿を握り替える。

 『阿摩羅識システム』――起動。

 俺の乗るヴェスパーファルクスが強く発光する。

 ウェポンセレクト、(ハルーン)

 ベリルソード二本と虚空から出現した柄が合体し、槍を形成する。

 

『槍だとぉ!?』

 

 オカマの乗るガマガエルのハンマーと、俺の槍が激突する。

 

「……まあ、こんなもんか」

『ぐぉおおおおおおおおおおおお――っ!?』

 

 拮抗したのは一瞬で、ガマガエルは即座に吹き飛んだ。

 

「パワーはあるが、それ以上に動きが雑だな。強みを活かし切れてねぇ」

 

 だからこうも押し負ける。

 機体性能に物凄い差があるのは当然だが、パイロットの質も良くねぇな。

 八年近く対モビルアーマー戦の軍事教練を受けてる俺からしてみれば、お粗末としか言い様がない。

 重装甲なのは良いが、あれじゃあカモだ。

 だからこんな風に。

 

『ハンマーがっ!?』

「得物を取られる」

『舐めんなぁっ!』

 

 槍の刃先でハンマーを持つ手を肘から斬り飛ばした。

 しかし諦めずに相手は頭部のバルカン砲を乱射するも、しかし俺はそれを回避する。

 大袈裟な挙動はいらねぇ。

 態々食らってやる理由もないしな。

 バルカンを避けた俺は、一息で距離を詰め、

 

「まあ、なんだ。命までは取らねぇ……なんて言われるとは思ってはねぇだろ。見た所、散々好き勝手してきたようだしな」

 

 突き出した槍の穂先が、装甲を貫いてコックピットへと到達する。

 悲鳴を上げるよりも早く、オカマはその全身を吹き飛ばされたようだ。要するに死んだ。俺が殺した。

 ……そんなに吐き気とかはないな。

 ま、外道死すべし慈悲は無い、だしな。

 しかしあんな雑なヤツでも、坊主たちにとっては脅威だったようだ。

 槍を引き抜き、ベリルソードをマウントする間、誰も喋らなかった。

 

「……さて。あー、そこの坊主」

『えっ。……俺?』

「そうそう。俺が殴り飛ばしたヤツ」

『……なんだよ』

「ダルマになったお仲間を連れて、俺の輸送艦に入ってろ。俺はこれからお前らが乗ってた艦を潰してくるんでな」

 

 そう言い捨てて俺が海賊船に向き直ろうとすると、別の小僧が話し掛けてきた。

 

『あ、あのさ!』

「なんだ」

『……っ。あの艦、ヒューマンデブリが殆どなんだ。そうじゃないのはカシラのブルック・カバヤンだけで』

「……それで?」

『お、俺がアンタの艦で働くから! アンタの為に死ぬ気で働くから!! だから……』

『ビトー……』

 

 泣きそうな声で、ビトーと呼ばれた子供は叫ぶ。

 

『助けて下さいッッ!!』

 

 俺は、

 

「……ま、カシラに責任は取らせるがよ。下っ端まで纏めて根切りにゃしないさ。それだけは約束する」

 

 ブルワーズとか言う海賊の艦へと近付いた。

 しかし艦は急速に方向転換しようとしていやがる。

 お。

 逃げる気だな。

 だがそうはさせん。

 

「BSーR04、フルオープン」

 

 アーセナルアームズより光波射撃武器(要はビーム兵器)が六丁取り外される。

 その内の二丁を手に取り、残り四丁は浮遊したままで銃口が敵へと向けられた。

 

「出力固定。ターゲットロック」

 

 罷り間違っても消し飛ばさないように威力を絞り、照準を推進器へ。

 

「ベリルショットランチャー、シュート」

 

 六つの光芒が、狙い違わず海賊船の推進器を捉えた。

 黒煙を上げて動けなくなる。

 船の停止と武装解除の通信を送り、待つ。

 程なくして海賊は諦めたのか白旗を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、大将」

 

 苦々しい顔を隠しもせずにブルック・カバヤンとやらは俺を睨んだ。

 舌打ち一つして、

 

『何の用だネズミ野郎』

 

 横柄な態度でそんな事を言った。

 

「……ネズミ?」

『知らねぇのか。テメェみてぇな阿頼耶識を埋め込んだ野郎は人間じゃねぇんだ。んな半分機械野郎が、人間様に楯突いてんじゃねぇよ。挙げ句にクダルまで殺しやがって……』

 

 罵詈雑言を並べ立てられるが、そんな事は馬耳東風で聞き流す。

 所詮負け犬の遠吠えだ。

 まあ、色々と訊きたい事もあるが、あのオークとカバのハイブリッド生物じゃなくてもいいしな。

 だからカバ野郎は無視する。

 

「さて、ヒューマンデブリと呼ばれるアンタらに朗報だ。アンタらが恐れるオカマは俺が殺した。アンタらの同僚であるビトー某に尋問して解ったんだが、残りはそこのブルックとやらだけらしいな。そして、そいつがアンタらの『持ち主』だとか」

 

 空気が変わった。

 視線の質が、その先が。

 

「俺は復讐肯定派だ。後悔なんざやった後ですりゃいいのさ」

『ああ!? テメェ何を言って…………おい』

 

 立ち上がるヒューマンデブリと呼ばれる人間たち。

 

「かつて基督教の教えにおいて、()()()()()()()()()()()()()()()()。勿論それが何を意味してるのかなんて俺には解らんが……人間ヤル気になれば素手でも殺せるんだ。もちっとスマートにやれる道具だってあるだろ?」

『おい! 何言ってんだテメェ!?』

「終わったら連絡してくれ」

 

 そう言って、俺は通信を切った。

 しかし、通信が切れる瞬間にパンパンパンッと何かが破裂するような音が聴こえたんで、どうなったのかは簡単に解るけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ヒューマンデブリと呼ばれた人々は持ち主であるブルック・カバヤンに反乱し、見事自分を取り戻した。

 しかし大変なのはこれからだ。

 約三十人前後の構成員たちは、海賊行為に従事していたんだ。真っ当な仕事など望めない、そう思っているヤツらが殆どだった。

 まあ、勉強とかしてなけりゃそうなるのも仕方ねぇ。

 

「それで、大半が俺の所での就職を希望ってか?」

「……はい」

 

 直立不動で俺の前に立つ子供。

 名前を聞けば、昌弘・アルトランドと言うそうだ。

 眉毛デカいな。

 

「……見ての通りこの輸送艦は一人用だ。食料だって俺の分しか乗せてねぇ。……あの海賊船からデータを吸い出したんで、地球や火星へのルートは解ってるんだ。公的な機関に助けを求めた方が良いんじゃねぇのか?」

「……そりゃ、伝手があるヤツらはそうします。けど、俺らはそうじゃないんです。それに、阿頼耶識を埋め込まれた時点で、真っ当な仕事には就けないですし」

「家族は?」

 

 そう訊くと昌弘は唇を噛み締めた。

 

「離れる連中は所在が解っています。俺は……兄が」

「逢いに行かねぇのか?」

「別々に売られたんで」

「……まあ、取り合えず火星に進路を取るぞ。そこで強襲装甲艦と輸送船を売りゃあ当面のカネは出来るだろ。ついでにモビルスーツも売れるんだってな?」

「あ、はい。あんなジャンクでもかなりの額で売れる筈です」

「そうかそうか。……各員に通達、本艦はこれより火星へと向かう。そこで艦やモビルスーツを売り払ったらカネは山分けだ。その後は好きにすると良い。以上だ」

 

 それだけを告げて、俺は艦長席兼操舵席へと乗り込む。

 

「動くぞ。さっさと部屋に戻ってお仲間とどうしたいのか、もう一度話し合ってこい」

 

 そう言って俺は昌弘たちをブリッジから追い出した。

 

「……ヒューマンデブリに宇宙ネズミ、ねぇ」

 

 俺の知る阿頼耶識システムには、あんな背中の突起は無い筈なんだがなぁ。

 

「チビスケ、今出回っている阿頼耶識の詳細、纏められるか?」

 

 艦長席前のコンソールに設えた専用のシートに収まっていたチビスケが、ブルワーズから奪ったデータを呼び出す。

 

「……これ、簡易版って事か? それにしてもチャチ過ぎやしねぇか」

 

 ふむ、ナノマシンの純度が低いせいで、子供にしか使えないのか。

 ……十五歳以上には定着しない、と。

 脊髄に埋め込むピアスも質が悪いからああいった「ヒゲ」が出来るんだな。

 取り外しは不可能、ねえ?

 

「チビスケ、確かウチの“ベッド”なら阿頼耶識の除去、出来たよな?」

『可能です』

「本来の阿頼耶識や阿摩羅識に変換する事は?」

『多少のリハビリを必要としますが、十分に可能です』

「……よし」

 

 家族の所に帰りたい連中に訊いてみるか。

 阿頼耶識を外したいかどうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員にカネは行き渡ったか?」

「はい、明星さん」

 

 昌弘が代表して頷く。

 

「さて、そんじゃあこっからはお前さんらは自由だ。好きな所で生きて、好きなようにすればいい。敵に回ったら容赦しないけどな」

「アンタ敵に回すぐらいなら尻尾巻いて逃げるよ!」

 

 その言葉に、元ヒューマンデブリたちは笑う。

 

「明星さん、ほんと、なんて言ったらいいか……」

 

 そんな中、何人かの連中は涙ながらに頭を下げられた。

 ウチのベッドで阿頼耶識を外した連中だ。

 真っ当な仕事をする上でコレは邪魔だからな。

 

「ありがとうございました」

「なぁに、縁があっただけさ」

 

 合縁奇縁。

 因果応報。

 結局はそういう事だ。

 ヒューマンデブリの識別である赤いラインの入った服は、もう誰も着ていない。

 

「んじゃ、達者でな」

 

 こうして、ブルワーズのヒューマンデブリたちはいなくなった。

 ここにいるのは、自分を取り戻した人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペドロ、元気でな」

「うん、ビトーも元気で。昌弘たちも」

 

 ペドロという小僧を筆頭に、年少組の大半は火星自治区で真っ当な商売をするつもりらしい。何人かは個人商店で丁稚奉公になるんだとか。

 恐らく貧しい暮らしになるだろうけども、海賊稼業で培った根性をバネにやっていくんだそうだ。

 まあ、真っ当に生きれるのならそれがいいだろ。

 お互いに肩を抱き合い、激励し合って小僧たちは別れた。

 

「で、残ったのは小僧ばかりが十人か」

 

 敢えて嫌味な事を言う。

 

「はい」

 

 しかしそれでも意志は変わらないようだ。

 静かに眼が燃えている。

 決意とかで。

 

「解っているだろうが、俺は結構な秘密主義だ。俺の艦に乗るのなら、それに従って貰う」

「「「はいっ」」」

「最初は訓練だ。文字の読み書きも出来るようになって貰う。メシは腹いっぱい食わせてやる。だから死ぬ気で勉強しろ。出来るな?」

「「「はいっ!!」」」

 

 無茶な事言ってるつもりなんだが、ノータイムで返事が返ってきた。

 これを理由に俺の艦に乗せないつもりだったんだけど、どうやら俺の目論見は頓挫したらしい。

 ま、取り敢えずは食料品の買い出しだな。

 メシと水は大事だ。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「あれ?」

「どうしたミカ? 買い出し終わったぞ」

「なんか、昭弘みたいな眉毛のヤツがいたんだけど……」

「どこだ?」

「ほら、あれ」

「あー……よく解ったな」

「でもさ、昭弘って家族いるの?」

「さあなぁ……いるかもしれんが、アイツら俺たちにも壁作ってるからな」

「同じ参番組なのにね」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 クリュセ独立自治区の庶民的な料理屋で俺たちは料理を待っていた。

 元ブルワーズ組にとっては久し振りや初めての外食みたいだしな。

 高い所よか腹いっぱい食える料理屋だろ。

 

「しっかし……あのガマガエルがガンダムフレームとはなぁ」

「ツインリアクターの骨董品ですしね。三百年以上前の機体だし、好事家に売ればひと財産になるかも」

「……ふーむ。なら売り払わなくて良かったかもな」

 

 そう言えば、とビトーが何かを思い出した様子で俺に話し掛ける。

 

「クリュセ郊外にCGSって私設警備会社があるらしいんですけど、なんでもそこの社長がガンダムフレームを持っているらしいです」

 

 買い出しの時にそういった話を住人から聞いていたそうだ。

 

「ここら一帯じゃあかなり幅を効かせているみたいです。まあ、ギャラルホルンには劣りますけど」

「そりゃ治安維持組織より強い民兵組織なんて圧力掛けられるだろうしな」

 

 まあ、その治安維持組織の名前も俺は知らなかったんで昌弘たちには不信がられたけども。

 

「ちょっといい?」

 

 んあ?

 声がした方向を向くと、小さい子供が俺を見上げていた。

 

「なんだ坊主」

「坊主じゃない。三日月、三日月・オーガス。CGSって会社で兵隊やってる」

「おお、そりゃすまんな。俺ぁ明星・龍治。最近こっちにやって来た新参者だ」

「宜しく龍治」

「……一応歳上だし、せめて『さん』ぐらいはつけてくれよ」

「わかった、龍治さん。それでさ、そっちの……」

「昌弘か?」

「うん、ソイツに用があるんだけど」

「そうかい。おーい昌弘、お客さんだぞ」

「え、俺にですか?」

 

 昌弘が近寄っていくと、三日月は「やっぱりそっくりだ」と呟いた。

 

「あのさ昌弘。昌弘って、兄弟はいる?」

「なんで初対面のアンタにそれを訊かれるのかは解んないけど……兄貴がいるよ」

「名前は昭弘?」

「……っ!? なんで、知って……」

「同じ参番組で仕事してる。そっか、やっぱり昭弘の弟だったか」

 

 なんとまぁ。

 こうも昌弘に都合が良く事態が動くかよ。

 

「兄ちゃ、兄貴は生きてるのか!?」

 

 今コイツ、兄ちゃんって言おうとしたよな。

 

「うん、生きてるよ。今日も元気に筋トレしてた」

「……そっか。良かった……!」

 

 そんな俺らに近付く人影が。

 特徴的な灰色の髪をした男だ。前髪が一房斜めに垂れているのが印象的だった。

 

「あー、すんません。ウチのヤツが何かありましたか?」

「お前さんは?」

「あ、こりゃ失礼。CGS参番組で頭張らして貰ってます。オルガ・イツカです」

「明星・龍治だ。商人兼傭兵をやってる」

 

 厳しい視線で俺を見る。

 警戒されてるみたいだな。

 

「オルガ、やっぱり昭弘の弟だったよ」

「なにっ!?」

 

 しかしそんな警戒も、三日月の言葉で霧散する。

 思わずといった様子でオルガと呼ばれた青年は昌弘の顔を覗き込んだ。

 

「へぇ、やっぱし眉毛がめっちゃ似てんなぁ」

「でも筋肉じゃないよ」

「バーカ、ありゃあ昭弘が鍛えてるからだよ。お前だってアホ程鍛えてるのにそんなだろ」

「まあ、背は伸びないけどさ」

 

 和気藹々とブルワーズ組と話をしており、その中で俺に救われたと聞くと態度が軟化した二人。どうやら自然体に見えてた三日月も内心じゃかなり警戒してたみたいだな。……まあ、かなり厳つくなったもんな俺。

 別れる頃にはまた合う約束を交わすまでになり、今度昭弘を連れてくる、と言ってオルガと三日月は去っていった。

 

「アンタたち、あの子らの知り合いかい?」

 

 食堂の女将さんが俺らのテーブルに料理を運びながらそう尋ねた。

 

「ええ、昌弘(コイツ)の兄貴があの二人と同僚らしくてですね、今度会いに行こうかと話してたんですよ」

「そうかい。でも、あんまり行かない方がいいかもしれないよ」

「そりゃまたどうしてです?」

「民兵組織なんてあんなモンかもしれないけどさ、ガラの悪いヤツらばっかりでね。特に一軍とか名乗ってるヤツらの鼻持ちならなさったらないよ」

 

 この女将さん、何度か大人に殴られる参番組の子供を見た事があるそうだ。

 

「私らも生活があるから助けてやれないけど……それでも子供を殴って嗤う連中にはいい気がしないさ。ほんと、いなくなってくれないかねあんな連中」

 

 その言葉に、俺は注目した。

 

「女将さん」

「なんだい?」

「民兵同士の小競り合いって、良くありますか?」

 

 その言葉に女将さんの目がキラリと光る。

 

「……そうだねぇ。無いワケじゃあないね。自治区郊外の出来事にはお上も知らぬ存ぜぬを通すだろうし」

 

 ほほう。

 

「明星さん、まさか……」

「成程。じゃあ、民兵組織の乗っ取りなんてのも?」

「頻繁じゃないけど、起きる時はあるねぇ」

 

 成程、良い事を聞いた。

 だから俺はニヤリと笑って、言ってやった。これも人助けだ。

 人道に背く外道を叩きのめして、兄弟の感動の再会といこうじゃないの。

 だからこそ、まるで明日の献立でも決めるかのような軽い口調で俺は言ってのけた。

 

「んじゃあ、乗っ取ろうかCGS」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

「とまあ、そんな事を考えてるんだが。どうする? 乗るかい?」

「……解せねぇんスけど。どうしてアンタがそんな泥被るような真似を?」

「んー、そうだなァ。気に入らないから、だな」

 

 あからさまに警戒するオルガ・イツカ。

 俺と昌弘はCGSの敷地の中にいた。オルガたちが注文した部品を納入する業者を装って敷地へ侵入したんだが、ちとザルじゃねぇか?

 俺としては楽で良いけど。

 コンテナから部品を運び出し、チェックしながら俺はオルガと話を続ける。昌弘は兄貴の所へ三日月が連れていった。

 

「助けてくれ、と請われたからな。で、俺には助けられるだけの余力があった。後は……火星に拠点があると俺としても利になるんでな」

「そんな理由でCGSを敵に回すのかよ。……マルバも元は傭兵だ。どこでどんなヤツと繋がってるか」

「それが助けない理由になんのか?」

「……っ」

「それ以前に、俺は結構強い武器を持っててな。モビルワーカー風情で勝てるとでも?」

「まさか、モビルスーツでも持ってるってのか?」

「持ってはいるが……俺の主力は違うヤツさ」

「それって……?」

「ま、追々解るだろうさ。それで、どうする? 付き合うか?」

 

 黙り込むオルガ。

 頭ン中で損得を計算してるな。

 どれ、一つ後押ししてやるか。

 

「真っ当な仕事場、欲しくねぇか?」

「……っ!!」

「本音を言えば、俺はブラック企業ってのは気に入らないんだよ。助けたガキの兄貴がそんな所で働いてるって聞けば不快感を感じるくらいにはな」

「……なら、アンタに付いたら真っ当に働けるってのか?」

「それどころか阿頼耶識を純正品に変えてやるぞ。外したいヤツは外してやるしな」

「……出来んのか?」

「おう。それと……俺だって世間一般で言う所の『宇宙ネズミ』だ。お仲間を助けたいって思っちゃいけねぇか?」

「マジかよ」

「ほれ、背中見てみな」

 

 ジャケットを脱いで背中を見せる。

 

「……俺らのとは違うみてぇだけど」

「当たり前だ。俺のはお前らの上位互換品でな。阿摩羅識システムっつーんだ」

「アマラ識……」

 

 信じたいけど信じられない、って様子だなコレ。

 ……そんだけ大人に食い物にされてきたんだろうな。

 

「本音を言えば、信じてぇ。でも、俺は参番組の隊長だ。馬鹿やって俺が死ぬのは良い。でも、仲間が意味もなく死んでいくのは……嫌だ」

「なら、どうする?」

「アマラ識だったか。その手術、俺にしてくれませんか」

「……まず、不良品の阿頼耶識を抜く事からしなきゃいけねぇぞ。で、そっから阿摩羅識システム用のナノマシンを注入する。まあ、これは麻酔で寝てる間に全部終わるからいいけどよ……そっからは純正品に慣れる為の『リハビリ』がいるな」

「リハビリっすか」

「おう。多分振り回されるぞ。自分自身に」

 

 それを聞いてオルガは笑う。

 

「……リハビリなんて言葉、こっち入ってから聞いた事もなかったっすよ」

 

 両手で自分の頬を張り、そして俺に頭を下げる。

 

「俺らの事、参番組の事……どうか助けちゃくれませんか」

「いいぞ」

 

 んじゃ、《天城》に通達。呼び寄せていた降下艇基地をステルスモードでクリュセ・ガード・セキュリティ本社横へ降下開始、と。

 多分二時間か三時間後には展開が終了するだろ。

 

「チビスケ、聞こえるか? ヴェスパーを持ってきてくれ。大至急だ」

 

 Pi、と通信機越しに了承の合図が鳴った。

 こっちもそのくらいになるかね。

 

「んじゃ、俺は一旦帰るわ。色々と取りに戻らねぇと」

「あ、そうっスね。じゃあ昌弘も帰らせねぇと……」

 

 で、持ってきたトレーラーに乗り込んで俺と昌弘はCGSを後にした。

 泣き晴らしたような真っ赤な眼のゴリラが俺らに向かってずっと頭を下げていたのが印象的だった。

 

「良い兄ちゃんだな」

「……はい。変わってたけど、変わってなくて安心しました」

「体つきか?」

「はい。まさかあんなにガチムチになってるとは」

 

 笑い合う。

 

「俺もお前の兄貴って話だからヒョロガリかと思ってたけどよ、まさか俺と同じくらいにゴリラだったとは。……でも良かったな、家族に逢えて」

「……っ。……はい」

 

 静かに泣く昌弘。

 さて、今度の相手はモビルワーカーか。

 ヴェスパー出すのは過剰かもしれねぇな。

 でも他はアーキテクトだけだしなぁ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 この三時間後、CGSは何者かと交戦を開始。

 死者、行方不明者は多数に及んだ。

 しかし非正規部隊であり弾除けとも称される参番組は、何故かこの戦闘に参加せず、一軍と称される実働部隊は壊滅。

 死亡者リストの中には一軍総指揮であるハエダ・グンネル、補佐ササイ・ヤンカスを始めとした実働隊の名前があった。

 しかし近隣住民の話では、モビルワーカーでの戦闘音は聴こえなかったらしい。

 そんな中、社長であるマルバ・アーケイは……

 

「よお、マルバ」

「何の用だ、雪之丞」

 

 社長室で唸っていた。

 腹巻きをした太鼓腹のナディ・雪之丞・カッサパが古馴染みを見舞う。黒い肌の彼の足は義足だった。歩く度に金属音が鳴り響く。

 不機嫌そうなマルバは、腹に包帯を巻いていた。

 謎の基地が本社横へ降りてくる騒動の折、金目のモノを持ってトンズラしようとしたマルバを一軍であるササイが銃撃したのである。彼もまた逃亡しようとしたのだが、上司を撃った瞬間を今まで虐げてきた参番組のオルガらに見咎められた。その結果、一軍の人員は軒並み戦死扱いとなった。退職金を貰えた者は少数だった。

 一方マルバは、幸い撃たれた箇所がたっぷりと脂肪が蓄えられた腹部だったので命に別状は無かった。 

 

「まさかササイに撃たれるとはなぁ」

「あの野郎……拾ってやった恩を忘れやがってっ」

「そりゃそうだろ。雇い主が我先にと逃げ出そうとしたんだ。だったらやるだろうさ」

「……チッ」

 

 友人の揶揄に反論出来ず、安物の煙草に火を着けた。

 大きく紫煙を肺に取り込み、吐き出す。相変わらずのチープな旨さを感じて、思わず舌打ちしてしまう。

 普段は値の張る葉巻を愛用していたが、傭兵時代は専らこれだった。

 吸い慣れた懐かしの煙。

 苦しくも楽しかった過去が思い浮かんだ。

 だからつい、弱音が零れた。

 

「……なあ雪之丞。どこで失敗したんだろうなぁ」

「そりゃお前……」

「一軍が腐っていったのを見過ごしたからか? 役に立たねぇガキを弾除けに使ったからか?」

「さあな。でも俺からしてみりゃ……現場主義のお前が、後ろに引っ込んだ時からこうなるかもって思ってたぜ」

「なら言えよ」

「金に狂ってたお前が聞き入れたとは思えねぇがな」

「……違ぇねぇや」

 

 笑う。

 

「それで、俺はどうなる?」

 

 どこか吹っ切れた様子のマルバ。

 そんな友人に雪之丞は肩を竦めた。

 

「解らん。参番組を焚き付けた野郎がいるのは知っているが、どうやらそいつにしてもガキ共の反乱は予定外だったらしい。今は食堂で情報の擦り合わせをしてるぜ」

「そうかよ」

 

 痛む腹を押さえ、マルバは歩き出す。

 

「行くのかよ? 今度こそ脳天に風穴が空くかも知れねぇぞ」

「バーカ。“猟犬のマルバ”様が、ここで見苦しく逃げると思うかよ?」

 

 嘗ての異名。

 二匹の犬のアイコンをトレードマークに活躍した傭兵マルバがそこにはいた。

 そんな友人の背中に向けて、雪之丞は絞り出すように吐き捨てた。

 

「……遅ぇんだよ馬鹿が」

 

 扉が閉まる直前、マルバもまた。

 

「その通りだよ馬鹿野郎」

 

 

 

 そして、食堂にて銃声が一発鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 こうして、CGSは解散。

 新しい会社が発足される事となった。

 新社名は、『マーズ・セキュリティサービス・ガバメント』。

 通称、MSG。

 代表者は、明星・龍治。

 実働部隊の名は、『鉄華団』。

 司令官は、オルガ・イツカ。

 

 

 

 

 

 若者たちによって刷新された新たな組織が飛躍の時を迎えるのは、これから約一年後。

 

 

 

 

 

 金髪の美しき女性活動家との出逢いが鉄火の嵐を巻き起こす。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

「ほんとにやるのか?」

「あたぼうよ。俺もネズミになっちまったからな。なら、現場に出ねぇと」

「年寄りの冷や水は嫌われるぜ?」

「うるせぇ!!」

 

 その組織の中に、中年のオッサン二人がいた。

 

 

「往くぞォ《轟雷》っ!!」

 

 

 




 ――続くかどうかは筆者次第



 機体解説:LX-00/rf ヴェスパーファルクス


 ※解説
 明けの明星を意味するレイファルクスの改造機。
 白い装甲が黒へと変更されている。
 全身にエネルギーラインが流れるように加工されており、起動時はTCSオシレーターの色と同色の光が絶えず全身を駆け巡る。
 パイロットの強い意向によって、通常出力ではTCSオシレーターの色は紫、高出力時は赤、最大出力時は緑色へと変化する。
 また、カメラアイは通常時高出力時は緑のままで、最大出力時には金色に光る。
 特徴的なのはその背部のマルチプルシフター(武装懸架用の翼)で、本来一基二翼の所を三基六翼へ増設している。つまりアーセナルアームズを三組背中にマウントしている。
 翼の配置としてはウィングガンダムゼロカスタムを参照。その下部にもう一組マルチプルシフターがあるイメージ。
 増設されたアーセナルアームズによって機体バランスは致命的なまでに悪化し、TCSによる姿勢制御が無ければ立つことも儘ならなくなった。その為、機体のベースであるアーキテクトにも手が加えられ、胴体と四肢が多少の延長と大型化を施され、本体の保持力が強化された事で改善。射撃武器が持てる程度にマニュピレーターも大型化され、鋭利なワイルドハンドが取り付けられた。
 更に多数のTCSオシレーター搭載武器を保有し、状況に応じてそれらを使い分けるのだが、実際はアーセナルアームズのみで大体対処が可能だったりする。TCSによる空間干渉により、アーセナルアームズの武装を使用する場合、必要な武装以外はそのままにアンロックユニットとして本機に追従する。
 大気圏内での飛行及び戦闘も問題なく可能。





 ※コンセプト
 俺ームアームズ魔王風味。
 明けの明星、つまりルシファーを意味合いとした中二病の極みような機体。
 どこぞのOGに出てくるような皇帝機と同じで、TCSの空間干渉と武装に搭載されてあるOSによって武装を飛ばしても操作が可能。なので投擲武器であるベリルダガーⅡ(大型手裏剣)を投げても戻ってくる。要は全武装ファンネル化。
 完全なる作者の妄想や願望の産物。
 悔しい事に技術がないので作れない。
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