俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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用語解説:T結晶・UEユニット(またはUEシステム)

フレーム毎に仕込めるくらい超小型・高効率を誇る動力炉。
熱の発生が極めて少ない。
大体は原作準拠。しかし人類製。


つ ま り は そ う い う こ と だ。



――なお、爆発だけはしない模様。



弐:狼と呼ばれた陸戦機 ー轟雷ー

 CGSを龍治とオルガが乗っ取った翌日。

 一夜で出来た基地から物質が運び込まれていく。

 運んでいるのは丸い身体の横にキャタピラが搭載された小型のロボットたちだ。

 彼らが運んでいるのは、フリーズドライ系のレトルト食品だった。

 このCGSを拠点にすると決めた龍治が、輸送艦に載せていた食糧品を全て下ろしたのだ。

 参番組の少年たちは、元ブルワーズ組に比べれば真っ当な食事を与えられていた。しかし現代から転生し、飽食の時代を知る龍治としては、どうしても赦せなかったのだ。

 美味いメシがあるから人は頑張れる。

 食費を削る軍隊が強いワケがないのだ。

 

「まったく……どうして社長になってからの最初の仕事が、ガキ共のメシ作りなんだろうなァ!!」

 

 炊事を担当しているのは基本的に参番組で、持ち回りでやっていたそうだ。大人に殴られない程度に腕はあったが、本職に比べれば数段劣る。

 安く大量に作る必要があるからだ。

 文句を言いながらも、手際良くレトルトのパックを湯の中から取り出し、封を切って中身を大きい寸動鍋へと放り込んでいく。彼の拠点であるタカマガハラは、旧日本が主導して建造していた戦艦だ。美味い食事の為に心血を注ぐ国民性は例え未来になっても変わらなかった。故に、タカマガハラにはあらゆるレトルトパックが保存されていた。

 再建された都市部とは別に、各種生産プラントも稼働している。火星にそういったプラントを持ってくる事も出来た。

 しかしその為にはもっと人員が必要だ。

 ほぼオートメーション化されているとは言え、人間が携わらなければいけない。無駄であっても、そうするべきだ。

 龍治はそんな事を思いながら鍋を掻き回している。

 今回の品目はカレーだ。

 更に別に持参した野菜や果物、牛肉(合成肉ではない)をテキトーに切ってぶっ混んでいく。

 所詮は男の料理。

 多少雑でも旨けりゃいいのである。

 そうしている内に、食堂にえも言われぬ芳醇なスパイスの芳香が充満していく。

 まさしくそれは魔性の香り。

 幼少期に食べた事があるビスケット・グリフォンやアルトランド兄弟(昭弘と昌弘)などは、その味を思い出して生唾を飲み込んだ程だ。

 食べた事がない連中は、生唾を飲んでいる知ってる組の様子に否応無く期待が膨れ上がっていった。

 

「……よし」

 

 そんな中、ノルバ・シノが意を決して近づいて行く。

 

「あのー……龍治さん?」

「なんだ? えーっと」

「シノです。ノルバ・シノ」

「おうそうか。それでどうした?」

「いやね、俺、こういった匂いの料理は初めてなんすよ。だからちょっと味見したいなー、なんて……」

 

 あ、狡ィ! と仲間の声をさらりと無視し、シノはそう言った。

 

「なんだ? カレー食った事ねぇのか?」

「ええ、まぁ」

 

 聞けば、野菜はそれなりに口にしているが、肉は合成物を数える程度にしか食べた事がないそうだ。更にシノは魚介類のおおまかな姿形は知っていても、口にしたこともないと言う。団員の大半は、それ以前に『魚』という生き物がいる事すら知らないそうだ。

 ふと、鍋を見る。天然物の、しかも日本の和牛を大量に入れたコレが劇薬に見えた。

 前世でもお目に掛かれないような高級肉。

 黒胡椒と塩、それとニンニクで焼いたシンプルなそれは、龍治をして悶絶する破壊力だった。

 雑に作っているとは言え、追加で入れた食材のポテンシャルも相当だ。

 かき混ぜている大きなヘラから掬って、味を見る。

 ……美味い。

 龍治としては充分に合格点だが、シノにも味の感想を聞いてみるのはどうだろうか。

 

「……味見してみろ。ほれ」

「あざっす!」

 

 小皿に取り分けられた茶色いそれ。

 もし知らなければ◯◯かと言いたくなるような見た目だ。

 しかし、だがしかし。シノは思う。

 この香りだけで充分にご馳走だ。

 震える小指にカレーを付けて、口に含む。

 

「…………」

 

 硬直するシノ。

 

「どうしたのみんな? シノ?」

 

 何やら緊迫感に包まれた周囲を無視し、三日月がやって来た。

 

「う」

「う?」

「うっっっっっめぇぇぇぇぇえええええええええええええええええっ!!」

 

 絶叫。

 何度も、しかし大事そうに小皿の中身を指で掬い、舐め取るシノ。たまらないと言わんばかりのその姿に、周囲の人間は殺意すら覚えた。

 

「美味ぇ。美味ぇよ! こんなの食った事ねぇ!?」

 

 その様子を見て我慢が出来なくなったのか、更にゾロゾロと人が集まってきた。

 中には涎が口から溢れているようなヤツもいるではないか。

 このままだと暴動が起きるかもしれない。

 

「んー、ま、いいか。んじゃ、ちと早いけどメシにすっか」

 

 轟音のような歓声が、食堂を揺るがした。

 

「カレーは中辛だけど、果物とか入れてるから初心者でも食いやすい筈だ。米のお替わりも何度だってしていいぞ。さあ、腹ぁいっぱい食えガキ共!!」

『『『いただきま――すっ!!』』』

 

 いきなり現れた謎の新社長、明星・龍治は、たった一回のカレーライスで社員の心を掴んだのである。

 警戒する者たちもまた、その食事の魔力には抗えなかった。

 最も警戒していたユージンなども、カレーを口にした瞬間から虜になった。

 

「くっそ、クソが! なんでこんなにも美味ぇんだ!?」

「……火星ヤシより美味いのがあるなんてなぁ」

「おかわり下さい!!」

「……兄貴。美味いよな、コレ」

「そうだな昌弘。親父たちと食った時の事を思い出しちまう。……もう無理だとばかり思ってたんだがな」

 

 そんな食堂の一角で、スプーンを手に困惑の表情を浮かべる少年が三人いた。

 元ブルワーズ組のビトー、アストン、デルマだ。

 

「……あの、さっきの話は本当ですか?」

 

 大真面目な様子で昭弘は頷く。

 

「明星さんに聞いた。お前ら、苗字がねぇんだってな」

「……はい。他の連中は、苗字を覚えているんでそれを使うって」

 

 しかし彼らは苗字を覚えるより先に売られた。親の顔など覚えてもいなかった。

 だから昭弘は、そんな三人に提案した。

 

「もう一度言うが、俺らの家族にならねぇか?」

「家族って……」

「アルトランドを名乗らないか、って話さ」

 

 昌弘がカレーを頬張りながら軽い調子で言う。

 

「そりゃお前……いいのかよ」

「良いも悪いも、あの地獄(ブルワーズ)で肩抱き合ってやってきただろ? 俺はお前らの事、兄弟だって思ってるんだけど」

 

 昭弘もまた、大真面目に頷く。

 

「明星さんには感謝してる。死んだと思ってた弟に引き合わせてくれたんだ。俺ぁこれから先、何があってもあの人や家族を護る。……だからよ、その中に、どうか入っちゃくれねぇか?」

 

 沈黙。

 しかし。

 彼らは顔を見合わせて、“しょうがねぇな”と笑う。

 

「……解ったよ“兄貴”」

「兄ちゃん呼びは昌弘の特権だからな、俺らは兄貴って呼ばせて貰うぜ」

「おい何言って……!?」

「照れるな照れるなって! 初めてマン・ロディに乗った時、『兄ちゃん……!』って言ってたの知ってるんだからよ」

「デルマお前! それ内緒にするって約束だったろうが!?」

 

 慌ててデルマたちに飛び掛かる昌弘。

 

「おらガキ共! メシ食ってから遊びやがれ!! 兄弟喧嘩がしてぇなら外でやれっ!」

 

 龍治の怒鳴り声を受けて、食堂にいた全員が爆笑に包まれた。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すいません、若社長。まさか、就任初日にメシなんか作らせて」

 

 誰もいない食堂で、オルガは龍治に頭を下げた。

 ただの社長ではオッサンのイメージが付くから、と団員たちがそう呼び始めたのである。

 実際二十歳前後なので、まだ社長としては若い部類だ。

 

「良いさ良いさ。美味かったろ?」

「そりゃまぁ……」

 

 正直、一軍の連中が食ってたヤツよりも美味いメシ食わせて貰いましたけど。

 そう言ってオルガは頭を掻いた。

 彼もカレーを口にしたが、その味の衝撃は、想像以上と言えた。

 そして、その中にゴロゴロと転がっている天然物の肉。牛という生き物の肉だそうだが、合成肉なんぞとは比べ物にならないくらいに美味かった。

 恐らく火星にあるどの自治区でこれを出しても、大抵の人間は食べられない値段が付くだろう。

 それを知ってか知らずか、社員たちは必ず大盛りで二杯は食った。どんな少食のヤツでもだ。

 

「良いメシってのはな、それだけで活力になるんだ。解んだろ団長?」

「そう、っすね。確かに、なんか違います。昨日より、みんな笑ってるっつーか……」

 

 腹いっぱいに暖かくて美味いメシが食える。

 たったこれだけの事なのに、泣いてるヤツだっていた。

 オルガだって感動しきりだった。

 

「まぁ……一軍だったか? アイツらに報復出来たからっつーのもあるかもな」

 

 恨み辛みも立派な生きる希望だからな。

 そう言う龍治の瞳に、酷薄な光が見えた。

 

「……なんか、実感ありますね」

「ん、ああ」

 

 俺にも、報復したい相手がいるんでな。

 その言葉が、オルガには意外に思えた。常に飄々とした態度の龍治にしては珍しい。

 全自動食器洗浄機が動く音だけが、どうしてか耳に残った。

 

「報復って……若社長が、っすか?」

「ああ。……まあ、よくある話だよ。仇に二親とも殺されてな。育ての親も、人生の大半をそいつらに食われた」

 

 確かによくある話だ。

 団員に聞けば、似たような話はゴロゴロ転がっているだろう。

 

「その……相手は?」

「育ての親がなんとか仕留めた。その代わりに半身不随になってな。……回復すんのに十年掛かった。で、歩けるようになったっつーのに、その二年後にポックリ逝っちまった」

「そりゃまた……」

 

 龍治の育ての親であるアグニカは、試作機のフレームアームズと阿頼耶識システムの力を借りてモビルアーマーを破壊。しかし機体からのフィードバックを受け止めきれずに、彼は車椅子生活を余儀なくされたのである。

 阿摩羅識システムの研究が進んだお陰で、ナノマシンの過剰反応による半身不随はその十年後に改善したが、しかし蝕まれた寿命は如何ともし難く、アグニカ・カイエルは更に二年後にその生涯を閉じた。

 

「……取り敢えず、当初の予定通り会社は俺らで運営していくぞ。残ってくれる大人もいたしな」

「そうっすね。……まさかおやっさんは兎も角、マルバのオッサンも残るとは思いませんでしたけど」

「それと会計役の人(デクスターさん)には無理言って残って貰ったんだ。ある程度便宜は図るぞ」

「ですね。……でも、ユージンに散々っぱら説教食らいましたよ。一軍連中に退職金くれてやる理由はねぇだろって」

「ま、会社勤めなんだ。そこら辺はきっちりしねぇとな」

 

 立ち上がる龍治。

 

「さて、やるぞオルガ団長。これからだ。まずはお前の阿頼耶識から取り換えていくぞ。……そしたら勉強だ。覚える事は山ほどあるんだからな」

「うへぇ。ゾっとしねぇっすね」

 

 それに続くオルガ。

 

「そう言えば、三日月ってここの粗悪な阿頼耶識、三回受けてるんだって? よく死ななかったな」

「はい。それと昭弘が二回受けてますね」

「……下ろしたベッドじゃ時間が掛かるな。二人は《天城》の方でやった方がいい」

「宇宙に上がるんスか? そういや一度ウチの強襲装甲艦も見とかねぇと……」

「ああ、資産の目録にあったな。《ウィル・オー・ザ・ウィスプ》だっけ?」

「あんまし良い名前じゃないですよね。死んだ子供の魂だの鬼火だのなんてのは」

「まあ、少年兵抱えてるウチだと悪趣味ではあるか。名前でも変えるか?」

「そっすね。……ちとみんなで考えます」

「任せる。そんじゃそのヒゲ、とっとと抜きに行こうか?」

「お願いします」

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 三日月・オーガスは、オルガと歩く若社長と呼ばれるようになった青年をじっと観察する。

 彼の動物的に鋭い直感が、若社長の事を、どこか『ズレている』と訴えていたからだ。それが悪いモノではないが、どうしてか気になった。

 初めて逢った時からだ。

 まるで見たこともない怪物の前に立ったような、規格外の何かを見ているようだった。

 しかし学の無い少年兵の三日月は、上手く言語化出来ない。

 なので、まず『殺せるかどうか』を考えた。

 恐らく出来るとは思う。

 だが、ほぼ確実に仲間が大勢道連れになるだろう。

 ガタイもしっかりしていて、肉体的な大きさで言えば、昭弘よりも少し細いくらいだろうか。しかし、それ以上に得体の知れない威圧感を感じていた。

 そしてそれ以上に恩があった。

 美味いメシも大盤振る舞いしてくれたのだ。なんだかんだと言って、美味い食事によって龍治は、三日月の心も若干ではあるが開いてみせたのである。

 更に仕事面での改善も提案された。

 阿頼耶識をもっと良いものに換えてくれると言うではないか。

 昨夜、背中と掌のコネクターを見せて貰ったが、あれに変えればもっと上手くモビルワーカーを初めとした機械を操れるようになるとか。

 更に、新しいカテゴリーの機体も配備していくそうだ。

 地下のガンダムフレームも、これからは戦力として数えていくと言っていた。その為の改修計画も若社長とオルガは練っていると言う。

 

「バルバトスとグシオンだが、まずはバルバトスの装甲を量産しとかねぇとな。破損しても付け替えられるように」

「そうっすね。でもおやっさんの話だと、コックピット周りはとっくに抜き取ったって……」

「丁度良いだろ。阿摩羅識用のコックピットに換装していくんだから」

「若社長、でも改修するカネはどっから……」

「隣の基地には工場もあるんだ。バルバトスを移送して、そっから検査と改修だ。……グシオンの方はガンダムフレームの情報が集まってから、だな」

「となると、整備班はそっちが仕事場になるのか。……一度俺も見ときてぇな」

「何言ってんだ。阿頼耶識抜いて阿摩羅識入れるのだって隣でやるんだぞ。今からお前も行くんだよ」

「ああ。成程」

「機密は色々あるが、実働部隊のカシラはお前なんだ。気張ってくれよ」

「うっす。頑張ります」

 

 少なくとも、悪い事ではない。

 自分でも解るくらいにメシも美味くなった。

 戦力も増えるそうだ。

 更に意味があるのか知らないが、読み書き計算も教えてくれると言う。……正直、頭を使うのは得意ではないが。

 そこまで考えて、三日月は自分の気持ちに気付いた。

 

「……そっか。俺、ワクワクしてるのか」

 

 MSGを去っていく少年兵たちもいたが、それ以上に威張り散らしていた大人たちがいなくなった事で、漸く自分たちは居場所を手に入れたと言えるだろう。

 ならば、手にした居場所を護るのが自分の――三日月・オーガスの務めだ。

 その為には力がいる。

 少し前におやっさんやマルバが、バルバトスを地下から隣の基地へと運んでいたのを思い出す。

 覚える事が多くなったとボヤいていたおやっさんは、しかしどこか嬉しそうだった。

 マルバもまた、初めて見るような真面目な顔で付き合っていた。

 タブレットを見ながら顔を突き合わせて何かを話し合っていたようだが、どうしてだか二人が年齢以上に若く見えた。

 錯覚かもしれないが、三日月にはそう見えたのだ。

 

「……ガンダムバルバトス、か」

 

 三日月・オーガスは、ぎゅっと拳を握り締めた。

 その眼は、静かに闘志を燃やしている。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方。

 MSG発足後、初めてのブリーフィングが開かれた。

 

 今後の方針の説明だ。

 

 スーツを着ているのは会計監査主任として登用したデクスター・キュラスターのみで、元社長であるマルバはタンクトップにジャケット、防刃性のズボン、足元はタクティカルブーツといった装いで参加していた。

 

「えー……そんじゃ、これからのMSGの方針を説明していく。取り合えず一週間で今いる連中の阿頼耶識を抜いて新しいモノに取り換えていくけど……その後の話だ」

 

 オルガがそう言うと、参加している殆どが姿勢を正した。

 

「俺たち鉄華団は今後、MSGの実働部隊として、依頼された区域で指示された作戦を行う。今までと変わらねぇだろ、と思うかもしれねぇけどよ――今後は、モビルスーツやフレームアームズに乗っての作戦になる」

 

 その言葉に、団員や社員たちはどよめいた。

 フレームアームズと言う機体は若社長のワンオフ機だと思っていたが、どうやら団員にも配備するつもりだと解ったからだ。

 戦闘班に内定が決まっている者たちは、どんな機体が来るのか期待半分不安半分といった様子だった。

 

「ちょっといい?」

 

 手を挙げて発言を求めたのはビスケットだ。

 

「それなら、モビルワーカーは戦闘には使わないって事だよね。どうするの?」

「社長の話だとモビルワーカーはレストアして、農業や土木作業用に変えていくそうだ」

 

 今後はそっち関係の仕事も請け負っていくらしい。

 そう説明するオルガとしても、それは願ったりだった。

 ずっと戦闘一本でやっていけるとは、学の無い自分でも思えないのだ。

 部下や家族を食わせていく以上、商売のネタは多い方が良い。

 

「……それ、今の人数で足りる?」

 

 依頼が増えると聞いて喜ぶ団員の中で、ビスケットだけが苦い顔をしていた。如何にCGSの評判が悪く、規模が小さかったとは言え、実績は積み重ねてきてはいるのだ。少年兵の命を対価に、だが。

 そういった内情を知らない、もしくは頓着しない者は依頼を持ってくるだろう。

 

「ビスケットの言う通りだ。多分人手は足りなくなる。だからよ……『()()()()』になった連中を、呼び戻そうと思う」

 

 その発言を受けて、ここにいる全員に緊張が走った。知らないのは元ブルワーズ組や龍治くらいだろう。……しかし社長である筈の龍治は、ここにはいない。ハブられているのではなく、別件があって三日月を連れて出ているのだ。

 オルガが理由を訊いてみた所、『届け物』が“空”からやって来るからだと言っていた。

 

「オルガ、それ、若社長は知ってるの?」

「勿論相談してる。龍治さんの話だと、粗悪品の阿頼耶識を抜いてリハビリすれば、ある程度は回復するそうだ」

「……リハビリ?」

 

 首を傾げる団員に、ビスケットは嘆息する。

 

「もう一度動けるようになる訓練ってことだよ。……なら、スラムに行かないとね」

「ついでに腹空かせてるガキがいたら拾ってきてくれ。無理強いはしなくていいから、希望するヤツらだけでも」

 

 そうは言うオルガだが、恐らくそこまで増える事はないだろうとも思っていた。

 正直言って胡散臭すぎる。

 自分だって、龍治の背中や掌のコネクターを見ても信用出来なかった。自分の『ヒゲ』が取れて漸く「この人は、本当の事しか言っていなかった」と実感した程だ。

 自分の掌にある刺青のようなコネクターを見て、オルガはふっと笑う。

 

「……救いってのは、案外どこかしらに転がってるのかも知れねぇな」

 

 そんな時だ。

 轟音が会議室を揺らした。

 

「何だっ!?」

 

 警戒する団員たち。

 

「多分、龍治さんが言ってた『届け物』だな。……見に行くか?」

 

 拒否する者はいなかった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「若社長ーっ」

 

 CGSのロゴのままの本社から、少年兵たちがぞろぞろとやって来た。

 

「おーう」

 

 手をヒラヒラとさせて、龍治は降下挺基地に到着する輸送機を眺めていた。

 タブレットを操作し、自動操縦で格納庫に向かわせる。

 

「どうしたオルガ」

「一応今後の説明は終わりましたんで。で、これが『届け物』ですか?」

「おう。チビスケに取りに行って貰ってな。取り敢えずフレームアームズを十機程用意した」

「十機っすか……そりゃまた豪勢な」

 

 格納庫へと向かう龍治にオルガたちは付いて行く。

 

「一番スタンダードなヤツを用意したんだが……半分は特殊な訓練が必要でな」

「訓練?」

 

 龍治の横にいた三日月がオルガに説明する。

 

「空を飛べる機体だって」

「……マジか」

「マジだよ。陸戦機だけじゃ格好が付かねぇだろ」

「そういう問題でもねぇ気がするけど……」

「まあ、TCSで飛行の補助はするからな。墜落さえしなけりゃ問題はねぇだろ」

 

 後ろでは、「空を飛ぶ機体だって」「嘘だろ」みたいな会話が聞こえてくる。

 しかし若社長は気にする事なく、

 

「ま、取り敢えず御披露目だ。まずは……コイツからだ」

 

 タブレットを操作し、格納庫に搬入される機体がライトに照らされて浮かび上がる。

 

「うぉおお……」

「ゴツいな」

「なんだっけ……昔見た戦車に似ているような……」

「お、なんだ。知ってんのかビスケット」

 

 見上げる機体。

 四角い装甲に覆われたその外観も印象的だったが、やはり着目するのは踵に取り付けられた靱帯(キャタピラ)だろうか。

 そんな機体を見て、目の色を変える人間が何人かいた。

 

「若社長……コイツの名前は?」

 

 龍治は笑う。

 

三二式一型(さんにしきひとがた)轟雷(ごうらい)》。別名を《M32 ウェアウルフ》。好きに呼んでいいぞ」

「轟雷……」

「そうだな……オルガ、お前乗ってみるか?」

「いいんスか!?」

 

 頷く。

 

「おう。俺も最初はコイツでフレームアームズの乗り方を学んだからな。阿摩羅識に変えればどれくらい違うのか、肌で感じて来い」

「あざっす!!」

 

 深く一礼して、オルガは意気揚々と轟雷の元へ走り出す。

 コックピットに乗り込んだ事を確認し、その機体を外へと搬出する為にタブレットを操作する。

 そんな彼に、三日月が話し掛けた。

 

「……ねえ、龍治さん」

「んー。どうした」

「バルバトスは? 使えそう?」

 

 フレームが剥き出しになったバルバトスを見ながら、三日月が話し掛けてくる。

 

「なんだ気になるのか?」

「うん」

「経年劣化した装甲は全部再生産するが……中のフレームに変なクセが付いてたな。特に膝とか。無理な姿勢で長年放置されてたみたいだからなぁ」

「ふーん……。じゃあ、いつ頃に乗れる?」

「そうだなぁ……雪之丞さん!」

「おう! どうした若!?」

「バルバトスを戦場に出せるのって、どれくらい掛かりますかね?」

 

 轟雷が搬出される様子を真剣な顔で見ていた雪之丞は、そう尋ねられて持っていたタブレットに目を通した。

 

「あー、ガタの来てるフレームを修理して、そっから新しいガワを被せるだろ? で、動作と阿摩羅識の確認で……ま、二ヶ月ってとこか」

 

 他の仕事と並行するので、それくらいは掛かると言う。

 急ぎの仕事が入っているワケではないのだ。じっくりと腰を据えてやりたいらしい。

 

「二ヶ月か……」

「おいおい。もうアレに乗る気でいるのか? 気が早ぇなぁ」

「でも俺、三番組でも負けなしだし。一番腕が良いヤツがバルバトスに乗れるんでしょ?」

 

 だったらアレは俺が乗るよ。

 そう言う三日月に、気色ばんで近寄る男が三人。

 シノと昭弘とユージンだ。

 

「オルゥア! 三日月ぃ! 誰が一番強いって!?」

「モビルワーカーとモビルスーツじゃ、扱いが違うっておやっさんも言ってただろうが!!」

「もっぺん勝負すっかテメェ!!」

 

 しかしそんな三人に三日月は、

 

「いいよ。どうせ負けないし」

 

 そう挑発する。

 恐らくは無自覚に。

 更にヒートアップする三人。

 

『ウソだろ!? これ凄ェな!!』

 

 そんな四人を後目にオルガが驚愕と歓喜の声を上げる。

 思わず振り返る。

 そこでは、オルガが轟雷に乗って大立ち回りを演じていた。

 走っては止まり、履帯を下ろしては戻す。右肩の大砲(二九式二型 120mm低反動滑腔砲)を動かしたり、腰にマウントされているナイフを抜いて腕の振りを確認したりしていた。

 スムーズに機体が動き過ぎるようだ。

 どこか戸惑いながらも、その事実にオルガははしゃいでいた。

 装甲に搭載された補助動力のお陰で、パワーも段違いだ。

 そんな興奮した様子のオルガを見て、マルバが。

 

「なあ、若社長」

「なんスか先代?」

「阿摩羅識つったか? あれ、俺にも入れられんのか?」

「……まあ、出来なくはないっすけど。でも、()()()()()()()()()()最初はしんどくなりますよ?」

 

 ある意味、肉体の補助をナノマシンにさせるのだ。

 鈍った感覚を鋭敏な状態に戻せる事も、アグニカによって立証されていた。

 

「……現場に戻るつもりでな。ロートルのままだと直ぐにおっ死んじまう。今までの罪滅ぼしじゃねぇけどよ、このままじゃいられねぇのさ」

 

 昨夜。

 食堂に現れたマルバ・アーケイは、社長として自分が如何に不出来だったかを、オルガらに謝罪した。

 そのケジメが、あの一発の銃声だった。

 三日月ではなく、オルガが撃った。恐らく三日月なら、マルバの脳天に銃弾を叩き込んでいた筈だ。しかしオルガはそうはしなかった。

 銃弾は、マルバにではなく、その横の壁に撃ち込まれた。

 

 ――こんな世の中だ。孤児やヒューマンデブリを会社に入れてくれた恩と相殺すりゃ、こんなもんだろ。

 

 そう言って、オルガはマルバを一発殴り飛ばした。責任者は確かにマルバだが、オルガたち参番組を虐げてきたのはハエダたちだ。その連中には、既に命で償って貰っているのだ。

 ならば、これ以上は過剰だろう。

 こうして、クリュセ・ガード・セキュリティは解散。

 マルバ・アーケイは社長職を辞任した。

 今のマルバはただの社員だ。

 

「んじゃ、やりましょうか」

「……頼むわ」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「いやー凄ぇなマジで!」

 

 上半身裸で興奮した様子でオルガは轟雷から降りてきた。

 

「どうよ団長、阿摩羅識システムは?」

「凄いっすよ! 阿頼耶識よりもスムーズに動かせるし、なにより全然頭が痛くならねぇ!」

 

 よし、これで阿摩羅識に不安を覚えてたヤツらにも良いデモンストレーションになった。

 どんな環境だろうと、新しい事に忌避感を覚えるのはある種の本能だしな。

 

「……なあ、オルガ。そんなに違うのか?」

 

 ユージンがそう尋ねる。

 コイツやビスケットはどっちかっつーと慎重派だ。

 

「おう! ぜんっぜん違うぞ!」

 

 しかしリーダーであるオルガへの信頼は高い。

 

「阿頼耶識よりもなんつーか……視界が広く感じるし、自分の身体みてぇに機体が動かせたぜ」

「……まあ、それは解るよ。あれだけはしゃいでたらね」

 

 ま、あれなら潜在的な否定派も阿頼耶識を抜く事に最終的には同意すんだろ。

 

「よーし、そろそろ暗くなってきた。明日から順次阿頼耶識を阿摩羅識に変えていくぞー」

 

 そう俺が言うと、まばらではあるが了承の声が上がる。

 

「三日月、昭弘。お前らはこれから俺と方舟まで上がるぞ」

「え?」

「どうしてだ?」

 

 不思議そうな顔をする二人。

 

「粗悪な阿頼耶識を複数回してるヤツを治療するのは時間が掛かるんだよ。だから俺の(ふね)の特別なベッドでやった方が早いのさ」

「あー……そうなんだ」

「こっちだとどれくらいかかるんだ?」

「普通のヤツなら三十分で終わるんだが……お前らは三時間くらいは掛かる。全部のナノマシンを排出しねぇといけねぇからな。念入りにやらんとどんな後遺症が出るか解らん」

「別に良いけど」

「おう」

「良くねぇわ馬鹿たれ」

 

 二人に拳骨を落とす。

 馬鹿かコイツら。

 

「俺が社長である以上、社員の福利厚生に力を入れるのは当然だ。つまりコレは雇用主である俺の義務だ。お前ら雇われは黙って心身が健康であるように務めろ。いいな!?」

「……解った」

「……うっす」

 

 頭頂部にデッカいたん瘤を作った二人がなんとも言えない顔で返事をする。

 

「そう言うワケでオルガ、俺はこの馬鹿二人を連れて《天城》に上がってくる。晩メシ食わせたら明日まで哨戒や留守役以外は自由にしていいぞ。町で遊ぶのも許可してやる」

「良いンすか!?」

「その代わり、堅気の皆さんに迷惑掛けるなよ?」

「大丈夫っすよ。もしなんかあったら俺がブン殴っときますんで」

「任せる。あ、それと哨戒になったヤツらには俺特製のステーキを御馳走してやる。天然物のかなり質が高いヤツだ。それこそ地球の貴族サマが食ってるようなとびっきりをな」

 

 カレーに入れようとして余った牛肉がまだかなりあるからな。

 サイコロステーキにしても美味い筈だ。

 

「それ、逆に哨戒役に志願するヤツが多くなりそうっスけど……オルガ・イツカ以下鉄華団各員、了解しました! 聞いたなお前ら、今日と明日は無礼講だ!!」

 

 わあ、と歓声を上げてガキ共が本社に戻っていく。もう夕暮れだっつーのに、元気な事だ。

 そうだよ、ガキは笑顔が一番良いんだよ。

 泣いて怒るのだって別に良い。でも、笑えないのは駄目だ。

 俺が気に入らねぇからな。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 その日。

 世界の守護者を名乗るギャラルホルンに所属するマクギリス・ファリドは、自身が経営するモンターク商会の部下から報告を受けていた。

 

「なに? ブルワーズが壊滅した?」

 

 何かしら『使えるかもしれない』と思っていた海賊一味が壊滅したらしい。

 彼らが使う強襲装甲艦や重装甲モビルスーツが売りに出され、それが流れに流れて自分の所へ流れてきた事で事態が発覚したようだ。

 

「何か情報は?」

「確証の高い情報は何とも……申し訳ありません」

「いや、いい。無理を言った」

 

 武闘派海賊と言っても所詮は火星近郊をうろついて商船を襲うしか出来ないチンピラだ。

 そこまで注視していわけではない。

 しかし手駒が減ったのは事実だった。

 

「ですが……」

 

 しかしそこはモンタークの従業員。

 精度が低くとも情報は集めていたようだ。

 

「一つ、火星に関する情報が」

「…………ほう」

 

 何気なくを装っているが、マクギリスの関心は高まった。

 

「ブルワーズの機体や船が売りに出されたのと同時期に、エイハブリアクターの反応が無い輸送艦が現れたらしいのです。対応した方舟の職員によれば、持ち主はデブリ帯でこの船を見つけた――と」

 

 エイハブリアクターを使わない輸送艦。

 そんな物が本当にあるのだろうか。

 しかし実際に公的な記録に載っているのだから事実ではあるようだ。

 

「持ち主の名前は?」

「は。明星・龍治。日系人ですね。火星にある民兵組織の社長をしているとか」

 

 少し、興味が湧いた。

 

「その会社の名前は?」

「マーズ・セキュリティーサービス・ガバメント。通称MSG。それと、鉄華団という私設武装組織を擁しています」

「MSG。それに……鉄華団」

 

 呟くようにその名を口にするマクギリス。

 

「ありがとう。彼らについてまた何か解ったら情報を頼む」

「お任せ下さい」

 

 一礼して、部下はマクギリスの前から去っていった。

 

「…………」

 

 暫く逡巡し、彼はどこかへ連絡を取り始める。

 

『どうされましたファリド特務一尉?』

「ああ、すまない。近く火星への視察任務が入っていたと思うんだが……いつなのか確認を、と思ってね」

『そうでしたか。少々お待ち下さい』

 

 画面の向こうの緊張している士官は、穏やかなマクギリスの要望に胸を撫で下ろしながら応対する。

 

『……お待たせしました。ファリド特務一尉、口頭で説明を致しましょうか? それともデータで?』

「そうだな……データで貰おう」

『了解しました』

「すまないな」

『いえ、職務ですので』

 

 通信が終わると同時に、即座に自分の端末に情報が送られてきた。

 それに目を遠し、呟く。

 

「成程、一年後か」

 

 特務三佐に昇進後、ガエリオ・ボードウィン特務三佐(予定)を伴い火星支部への視察。

 往復四ヶ月の長旅だ。

 向こうの視察が済み次第、会ってみる事にしよう。

 MSG。それに、鉄華団。

 

 

 

 ギャラルホルンという組織が旗揚げされて、早三百年。

 世界を護るという崇高な理念も今は昔。

 厄祭戦の傷痕を誰しもが忘れた昨今。

 ギャラルホルンは、己が欲望を満たさんと暗躍する人外共が蠢く伏魔殿と成り果てていた。

 

「……所詮「俺」も、今は未だ『駒』に過ぎない。だが、いずれ――」

 

 脳裏に浮かべるは、醜い『義父(ケモノ)の貌』。

 どうしようもなかった。誰も助けてはくれない事も理解していた。

 しかしそれでも――

 醜い男に貪られる自分を初めとした()()たち。鬱憤を晴らすかのように、お互いを傷付け合った。

 ――結局、生き残ったのは自分だけだ。ある者は殺され、ある者は捨てられた。

 そして今も尚、増え続ける愛玩人形(おとうと)たち。

 必死になって勉学に励み、その過程で同性愛は受け入れられるものだと知りはしたが、それでも許せるものではない。

 

「どうやら最近の()()は、アーブラウのアンリ・フリュウ女史にご執心の様だ」

 

 思案する。

 どうすれば、あの政治の怪物を地の底へ引き摺り下ろせる?

 現代表に関する裏工作を公表するべきだろうか。

 ――いや、自分がそれを知れたのも偶然に過ぎない。

 もし反逆の意志を見抜かれれば、即座に斬って捨てられるだろう。

 

 必要なのは、盤面を引っ繰り返すイレギュラー。

 

 物語を陳腐にさせる程のデウスエクスマキナ。

 しかしそんなモノは、どこにもこの世界には無い、と自分が一番よく知っている筈なのに。

 

「……バエル、か」

 

 幼少期。

 自分の心の支えとなったアグニカ・カイエルが搭乗した――伝説の機体。

 ガンダムフレーム一号機。

 それを欲する心は今も自分の中にある。

 だが、本人は気付いてすらいない。

 怨みの矛先がどこにあるのか。

 本当にしたい事が何なのか。

 

 

 

 しかし彼は、近い将来――その想いから脱却する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 二か月後。

 

「よぉーし、そんじゃ模擬戦を開始するぞー」

『『うーすっ!』』

「負けた方は、両方の機体に付いたペイント弾の洗浄だ。いいな?」

『『了解っ!!』』

 

 LCS通信が入る。

 整備室にいる雪之丞からだ。

 

『派手に動いても良いが、壊し過ぎるなよガキ共! 整備班の事も考えろよな!?』

 

 審判役がブザーを鳴らすと、轟雷同士が激突する。

 手にした銃から発射されるペイント弾が、お互いの機体を染め上げていく。

 そんな彼らの戦闘を、カメラ付きのドローンが追い掛ける。

 

 

 

 

 

 所変わって整備室。

 そこでは雪之丞が、モニターに映る轟雷同士の模擬戦を見ていた。

 

「あーあーあー。昭弘とシノのヤツ、考えろっつったのに……」

 

 そんな彼に背後から声が掛かる。

 バルバトスのコックピットに乗る三日月だ。

 

「おやっさん」

「おお、すまんな三日月。……それで、どうだ?」

「……うん。ちょっと時間掛かったけど、やっとバルバトス(コイツ)、阿摩羅識と繋がったみたいだ。機体の情報が入ってくる」

「おう、そうか。……最初、ウンともスンとも言わなかった時はどうしようかとも思ったが、なんとかなって良かったぜ」

「そうだね。……ところで、コイツの武装なんだけどさ」

「おう」

「メイスだけなの?」

「あー……それなんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『バルバトスの強化案の募集ぅ!?』』』

「そうだ」

 

 真面目な顔をした龍治が、社員たちへ通達する。

 

「三日月にも訊いたんだが……あの野郎、『大雑把に使えるのなら何でも良い』と宣いやがる」

「だからそこで俺たちっスか……」

「ああ、今全員のタブレットにデータを送った。基地にある武装や強化パーツ、それに轟雷とスティレットの予備装甲にジャンク屋で買ってきたパーツ群、それとバルバトスの再生産した装甲各種。これらを使ってバルバトスをコーディネートしてくれ。勿論審査は俺とオルガ、それにパイロットの三日月が行う」

 

 社長! とタカキ・ウノが手どころか、跳び上がりながら訊ねる。

 

「優勝した人には何か景品はありますか!?」

「おお、勿論あるぞ」

 

 更に追加のデータを送信する。

 

「この前はステーキだったんで、今度は焼肉だ。どんな料理なのかは、画像の通りだ。プレートの上で肉や野菜なんかを焼いて、熱々のソレを特製のタレに着けて食うのさ。勿論白米付きだ」

 

 明星・龍治。

 彼は、焼肉には白飯派だった。

 

 ゴクリ、と喉を誰かが鳴らした。

 

「期限は一週間。それまでに武装案を提出してくれ。文字の読み書きが出来ないヤツも、画像付きなら考えられるだろ?」

 

 この二ヶ月。

 社員全員の識字率を上げる為に、龍治は様々なイベントを企画した。

 今回もその一環だ。

 結果も徐々にではあるが、出始めている。

 この二ヶ月の間で、自分の名前くらいならば半数が書けるようになった。(勿論三日月は書けない側。ケアレスミスが多い)

 

「じゃ、考えてみてくれ。あ、勿論参加しなくてもいいぞ。それじゃ解散」

 

 誰もがタブレットを覗き込んで、武装案を考え始めた。

 

 

 

 

 

 こうして二週間後。

 バルバトスは、焼肉のパワーによって強化改修される事となった。

 

 そしてある団員は言う。

 

 ――焼肉、美味しかったです。

 

 




 

 ――続けてしまったぞどうしてくれる。




機体解説:三二式一型 轟雷/M32 ウェアウルフ


※解説
御存知「最初に生まれたフレームアームズ」その一機。
ゴツい装甲に覆われ、サブ動力を装甲に仕込んでいるせいでパワーもマシマシ。
戦車を模した機体。
戦車に変形はしない。したければ作るしかない。ヘビィウェポンユニットかアーキテクト入りのホバー戦車を買うしかない。
え? ホバー戦車は後輩のモノ?

量産型でありながら、原作世界では最初期から終戦まで現役のスゲーやつ。MSGによる武装強化は寧ろやらない方がコイツに失礼。
現場に愛され、敵にも愛された。
最近アニメの影響か、妹ちゃんと同じように公式でも改型がお披露目された。



ちなみに作者が好きなのは《ウェアウルフ・スペクター》。
鹵獲機を更に鹵獲したという設定で、某カッコ良さ全振りの黒い砲台とコンビを組んで戦地を放浪している傭兵兄妹――なんていたらいいなぁと妄想している。

……あれ? 外伝に兄妹の傭兵いたよな?
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