俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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 グレートゼオライマーが当たらず爆死。ダイミダラーは二機とも四凸。
 石500個溶かしてこれかぁ。Gドラコが出るまでガチャはお預けしねぇと……






 用語解説:TCS「T Crystal Shield(T結晶シールド)」

 機体の防御フィールドを展開したり、斬撃の補助や発射する事も出来る。推進器代わりに使う事も出来る。
 というか主人公のヴェスパーの移動はコレ便り。
 要は攻撃にも防御にも、移動にも使える万能シールド。
 しかしTCS同士では干渉するので完全には防げない。
 だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 本作のオリジナル設定として、TCSを発生させる装置に負荷をかける事でTCSを減衰させられる。
 しかし、艦船用の大型TCS発生装置やⅡ型オシレーターなら某爪楊枝すら防ぐ。(何発まで無事かはまだ秘密)


肆:慈悲の一刺し ーミセリコルデー

 名瀬・タービンが『歳星』を出発してから暫く経った頃。

 ある店の中でテイワズの若手幹部二人が酒を飲みながら話をしていた。

 いつも通りにシノギや最近気になる女の話などを続けていると、その内の一人がふと呟いた。

 

「そういや、そろそろだろなぁ。タントテンポとの決闘って」

「ああ、ジャスレイさんがやらかしたって言うあれ……」

「バカ!」

 

 同期の不用意な発言を受けて、心配そうに周囲を見渡す。

 幸いなことに、周囲に人の気配はなかった。

 店主も奥にいて聴こえてはいないようだ。

 

「どうした?」

「……ふー」

 

 安堵の溜息を吐き、小声で怒鳴る。

 

「『どうした?』じゃねぇよ! もしジャスレイさんやお仲間が聞いていたらお前、殺されるぞ!?」

「あ? 謹慎が明けたって聞いてねぇぞ。それにこの件のせいで、あの人ももう終わりだろ」

 

 そうかもしれないが、こんな場所で話す事ではない。

 そう言って若手幹部は、渋る同期を伴って自分の家まで急いだ。道中に酒や肴を買い込んで。

 部屋に入り、息を吐く。

 

「なあ、おい。ここまで慎重になる事か?」

 

 不思議そうな顔をする同期に、彼は言う。

 

「……俺な、幹部会の後でジャスレイさんとすれ違ったんだ」

「それで?」

「…………少なくとも俺は、あの人に近寄りたくはなかったな。何するか解んねぇ」

 

 冗談だと思い、笑い飛ばそうとするが――その眼は、本気だった。

 彼は見たのだ。ジャスレイの貌に『鬼』を。

 

「……マジか」

「名瀬さんは今回の一件で株を上げた。少なくとも跡目候補には名前が載るだろうな。本人の意志に関係なく」

 

 そうじゃなくとも引退した元幹部たちからの評価が高い名瀬だ。

 この件があろうと無かろうと、いずれ名前が挙がったのは想像出来なくもない。

 しかしジャスレイは違う。

 彼は、いまいち仁義というものを理解していないのだ。

 商売人としての嗅覚は凄まじい。

 根がそちら側なのだろう。

 そんな男が、ナンバー2の地位に立てた要因は、はっきり言えばカネの力だった。それ程までに莫大な資産を持っていた男が、総資産の半分をオヤジに差し出した。

 魅力は半減したどころかそれ以下になっただろう。

 

「翻ってジャスレイさんはどうだ? 『部下の躾も碌に出来ねぇ野郎だ』って笑い者にされてただろ? 普通ナンバー2がやらかしても、そう大っぴらに嗤うか普通」

「確かに……」

 

 酒を注ぎながら、伝え聞いた幹部会の様子を思い浮かべる。

 引退したはずの元幹部すら出席するような席で、ジャスレイは盛大にこき下ろされたとか。

 

「あー……ジャスレイさん、名瀬さんに嫉妬してるからなぁ」

 

 伊達男である名瀬は五万人を超える大企業「タービンズ」の代表であり、数々の女性と浮名を流すプレイボーイだ。そして、噂になった女とは全員結婚している。更には子供まで作り、纏めて面倒を見ていると言う。

 並みの男に出来る事ではない。

 仕事だってそつが無かった。

 惑星間での流通業と言うものは、ハードルが高く利益も出難いのが普通なのだ。

 しかし彼はその流通業で莫大な利益を上げていた。

 そんな名瀬に嫉妬しない男はいない。

 だがそれ以上にテイワズに入った若手たちは、あの人に憧れていく。

 名瀬・タービンの在り方に惚れていくのだ。

 

 さて、それではジャスレイはどうか?

 基本的に彼は自分と盃を交わした直系しか手元に置かない。

 自分の派閥以外には冷徹そのものだ。

 誹謗中傷や諫言などは序の口で、同じテイワズでも利益がぶつかれば、容易に暗殺という手段を取る――という噂があった。

 実際。

 二人の同期でも、ジャスレイの逆鱗に触れて行方不明になった人間が何人もいた。

 この同期の男もまた、ジャスレイによって消されかけ、名瀬によって救われた過去がある。故にどうしても意見は名瀬寄りだ。

 ジャスレイは、確かにテイワズの序列では目上になる。

 公の場では礼儀を尽くすが、内心では恐怖し警戒している人間は多い。上も下もそれは変わらない。

 組織とは、結局のところ人の集まりだ。

 そのせいか、どんなに客観的にあろうとしても感謝や怨恨といった個人の感情とは切っても切り離せない。

 だからこいつのように、ちょっとした事で漏れ出る。

 

「……俺さ、名瀬さんには恩があるんだよ」

 

 酔ってきたのか、そう言う同期。

 

「知ってるよ。お前が何度も言ってたし」

 

 同期の眼に涙が滲む。

 

「だからよぉー、あの人をよぉー、助けられるような男によぉー」

「ああ、もう。ほら、泣くなって……」

 

 今後、ジャスレイから名瀬への当たりは順当にキツくなっていくだろう。

 少なくとも、自分たちはそうなると睨んでいる。

 だが、今の自分たちでは無力だ。

 

「……あの様子じゃ、名瀬さんが何しようがやっかむだろうしなぁ。……おい、寝るなって。寝るならベッドで寝ろよ!」

「うぅ……名瀬さぁん……」

 

 そんな感じで若手幹部たちはぐだぐだとしていた。

 遠い宙域でタービンズと鉄華団が激突する、ほんの数時間前の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「初めまして、だ。団長殿」

 

 ――その言葉が、激突の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 名瀬・タービンと名乗る男が乗る船と距離を取って対峙する。

 

『初めまして、だ。団長殿』

 

 どこか、若社長を思わせるような飄々とした態度の男。

 しかし同じような雰囲気では、無い。

 種類は違えど、どちらもその態度には見合わぬ「何か」を背負っている。

 オルガは直感的に、それを悟った。

 

「……はい。MSG実働部隊『鉄華団』団長、オルガ・イツカです」

『ご丁寧にどうも。テイワズ下部組織『タービンズ』代表、名瀬・タービンだ』

 

 元々お互いに情報は貰っていた。

 しかしそれ以上に、こうして顔を突き合わせる事で解る事もあった。

 

『まあ、色々と話したい事もあるが……まずは、お互いに仕事をしようか』

 

 白いスーツを着た長髪の男は、そう言う。

 オルガもその意見には同意した。

 

「そうですね。……ルールはどうしましょう?」

『三対三の決闘で、一機ずつやりあおうか。本人が「参った」と言うか、俺かお前さんが判断しよう。お互い、事故にだけは気を付けようや』

 

 ――こんな代理の喧嘩で死人を出すのが馬鹿らしい。

 そう若社長は言っていたが、どうやらこの名瀬という人も同様の考えのようだ。

 

『んん? そういや、今回は社長さんもいるって話だったが……出てこないのか?』

「あ、いえ。もう出てます。そっちの青い機体です」

『ああ?』

 

 オルガがそう言うと、青い機体がひらひらと手を相手方の船に振る。

 

『……前線に社長が出るのかよ』

「お恥ずかしい話っすけど、ウチはまだ社長より腕の立つ人間がいないもんでして……」

 

 本当に恥ずかしい話だ。

 だが、社長に勝てないような半端者を出すワケにもいかないのも本音だった。

 三日月の発言は、確かに的を得ていたのだ。

 

『ほーう。随分信頼されてんだなぁ社長さん』

『いやいや、そうでもねぇですよ。どうにも必要以上にウチの団長は持ち上げてくれるんで、話半分に聞いて貰えませんかね』

 

 イサリビを通して、若社長と名瀬は言葉を交わす。

 

『……社長さん、幾つだい?』

『んーと……この前二十一になりましたかね』

『若ぇなぁ。俺がその頃は、まだタービンズは出来てなかったっけ。……アミダのヤツとは出逢ってたけど』

『……あー、奥さんで?』

『おお、そこのピンクの機体あるだろ? アレに乗ってる』

 

 今度は、ピンクの機体が手を振り返してきた。

 

『……嫁さん前線に出すのも大概じゃないですかね』

 

 オルガも同意するように頷く。

 

『つっても、アイツ筋金入りのパイロットだからなぁ。俺がそんな事言ったら殺されちまう』

『……夫婦円満で何よりですわ』

 

 苦笑して、しかし若社長が切り込む。

 

『さて、そんじゃ話は終わってからしましょうや』

『――だな。さっきも言ったが、人死にだけは気を付けようや』

 

 そして、決められていた通りに機体が前に出ていく。

 こちら側は、轟雷に乗った昭弘だ。

 相手は――

 

『ねー、ホントに私が最初? アジー変わってくんない?』

『馬鹿言ってないで、とっとと行きな。名瀬の御指名だよ』

『……ま、ダーリンに言われちゃしょうがないか』

 

 腕のない機体。

 巨大なバックパックを装備している。

 資料にある名は、《百里》。

 その名の通り、宇宙の百里を駆けるモビルスーツだ。

 

『アンタが私の相手?』

『ああ』

『そっか。そんじゃ――』

 

 頭部にある五つのカメラアイが赤く光る。

 

『遊ぼっか!』

 

 そして――蹂躙が始まった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

『ぐぉおおおお……!?』

 

 一番最初ってのはなんか納得いかなかったけど。

 でも、

 

「ほーら! どうしたのー? 止まって見えるよ!?」

 

 なんか楽しい。

 猪みたいに突っ込んでくる相手を寄せ付けずに攻撃する。

 すっごくクセになりそう。

 百里のロケットランチャーに当たりながら、それでも攻撃を加えようと奮戦する相手。

 まるで子供と大人の喧嘩ね。

 でも――

 

『そこか!!』

 

 手にした十字の大型ライフルが火を噴く。

 バラ撒かれる大型弾頭。

 当たりはしないけど、でも狙いが正確になっているような――

 

「残念っ!」

 

 こっちのロケットが相手に当たった。

 炸薬に呑まれて、機体が煙の中に消える。

 でも――ん?

 

「あれ? なんか、機体の周りに“膜”みたいなのが――」

 

 悪寒。

 

『見えた――』

 

 発光。

 え、つーか近、

 

『よお』

「っ!?」

『おらぁあああああああああああああああああああっ!!』

 

 銃身を持ち、十字の銃床で殴られる。

 うわ、かなりの衝撃だ。

 

「舐、め、んな……!」

『舐めてねぇよ』

 

 すると、背中にあった変なのが動き出す。

 ツインバレルタイプの銃がその先端には備え付けられていた。

 けど、それよりもヤバいのがその銃口の下にあったんだよねぇ。

 

「チェーンソーって……!」

『アンタを凄腕だと思ってるから、俺は出し惜しみはしねぇ!!』

 

 チェーンソーが四本、その刃を回転させる。

 ナノラミネート装甲は銃弾とかにはかなりアドバンテージがあるけど、こういった武器には弱いんだよねぇ。あと熱にも。

 

 

 

『これで、もう、アンタを離さねぇ……!!』

「――っ!?」

 

 

 

 四つのチェーンソーが、百里の脚とバックパックに打ち込まれた。

 

『この轟雷はよぉ、エイハブリアクターを載せてねぇんだ』

「そんな事、最初から解ってたっつーの!」

 

 腕のロックを外し、手持ちのライフルの銃口を相手に向ける。

 だったら銃が普通に通用する筈だよね。

 つーかそんな珍しい機体をよくこんな決闘で使うわね。

 ……逆なのかな。

 決闘だから、コレを使ってるのか。

 

『だから、別の動力を積んでる』

 

 前言撤回。

 なんか嫌な予感がする。

 

「……え?」

 

 相手が、ライフルを放り――機体(わたし)を抱き締めた。

 

『ソイツは小さくてよぉ、フレーム毎に幾つも搭載出来るんだ。んで、コイツの装甲にはサブ動力まで備わってる!』

 

 ちょ、この馬鹿力……!

 メキメキと機体が軋む音が聞こえる。

 つーか、どうしてか頬が熱い……!

 

『ソイツをフル稼働させれば、尋常じゃないパワーが出せる! 勿論、使った後は木偶の坊になるけどなぁ!!』

 

 まあそうでしょうね!

 つーかここまで密着されたら、使える武器が無いって。

 あーもー、姐さんの助言通り近接武器載せとくんだったー!

 

『貰ったぁあああああああああ!!』

「負けるかぁああああああああ!!」

 

 だから、至近距離でロケットランチャーを撃とうとして――

 

 

 

『『そこまでだ!』』

 

 

 

 向こうの団長さんとダーリンに止められた。

 言われた通り、相手は腕を緩めて私を離す。

 でも、チェーンソーが挟まったままだから、前言通りに離されてない。

 

「……むー」

『はぁ! ……はぁ! はあーっ!』

 

 息が荒い。

 なんか、変なの。

 

『……んー、団長さんはどう見る?』

『……あと少しでこっちのフルパワーが切れました。そうなったら振り払われて終わりでしょう。こっちの負けです』

『俺としては引き分けだと思うんだが……どうだラフタ』

「うえ!? えーっと……どうなんだろ?」

 

 腕は私の勝ち。

 でも、度胸って意味では、コイツの勝ち――かも。

 

『……いいや、俺の負けだ』

 

 相手がそう言った。

 

『序盤でバカスカ当たり過ぎた。幾ら轟雷が頑丈だからって、それでも限度がある』

『避けられなかったのか?』

『ああ。悔しいが……パイロットとしての腕は、俺なんぞよりも上だ』

 

 ……なんだ。解ってんだ。

 

「んー。私も、ちょっと調子の乗っちゃったし……引き分けにしない?」

『いや、俺の負けでいい。それで良いっすか、若社長』

 

 すると、青い蜂みたいな機体に乗ってる社長さんがコイツに答えた。

 

『おう、いいぞ。お前がそう決めたんだ。無碍にすんのは野暮ってヤツだしな』

『んじゃ、初戦はこっちの勝ちって事で。良いかい社長さん』

『ええ。……よーし昭弘、腕が上のパイロットを相手に良くやった。多少無茶な戦法だったし、今後はもうちょっと武装を考えてみるといい』

『了解です。……その、失礼します』

 

 そう言って、コイツ――昭弘は、私の機体から四苦八苦して、チェーンソーを抜いた。

 

「あーあー、傷だらけじゃん。もー」

『……すいません』

「良いよ。戦闘なんだし、多少の損傷は織り込み済みだしね。……で、昭弘つったっけ?」

『? ……うす。昭弘・アルトランドです』

 

 

「私はラフタ。ラフタ・フランクランド。また戦ろうね!」

 

 

 今度は私が、アンタを翻弄してあげるよ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

「次は俺か」

 

 昭弘は残念だったけど、でもいい経験になった――と思う。

 勝つより負けた方が色々と勉強になるしね。

 若社長と訓練する時も、全力で戦って負けた方が色々と成長を実感出来る。

 

「さて――」

 

 メイスと大剣を手に、俺が前に出ようとして――

 

『こら』

 

 若社長に止められた。

 

『せめてどっちかは置いてけ。殺傷力がそうじゃなくても高すぎる。……つーかお前、射撃武器は?』

「え? 今回はいらないでしょ? 若社長だってそうじゃん」

『……他人(ひと)の事は言えねぇか』

 

 まあ、言われた以上はその通りにしよう。

 取り合えずメイスの方が攻撃力はありそうだしな。こっちを置いておこう。

 

「じゃ、若社長。これお願い」

『おう。しっかりやってこい』

 

 そうして出ていくと相手はもう前に出ていた。

 

『若いね。アジー・グルミンだ』

「三日月・オーガス」

 

 どちらも余り喋らない性質のようだ。

 だから、

 

「――っ!」

『――っ!』

 

 何も喋らず――お互いに仕掛けた。

 

 

 

 

 

「やるね」

『そっちもね……!』

 

 青い――《百錬》だっけか。

 その機体がアサルトライフルと片刃のブレードを手に攻撃してくる。

 でも、

 

『……っ! 楯持ちとは、随分と慎重な!』

 

 急遽取り付けた「フリースタイル・シールド」だけど、その名前通り自由自在に敵のライフルを防いでくれる。

 背後を取られても、背中のサブアームに搭載しているクレイモアが迎撃するから、かなり厄介なんじゃないかな。

 もう片方のサブアームに大剣を任せ、俺は腰のレイピアを手に取る。

 

「そー……れっ!!」

 

 んで、突貫。

 ガンダムフレームって、リアクターを二つ積んでるせいか、出力が高いんだよね。

 パワータイプの轟雷とタメを張るって凄い。

 

『細身の剣か!』

 

 相手のブレードと打ち合う。

 弾いて、相手の体勢が流れた所へ――腕に沿わせたシールドで、バッシュ。

 

『ぐうっ!?』

 

 逆手に持ち替え、投擲。

 相手のアサルトライフルを弾く。

 

「ここだ」

 

 んで、楯を()()

 ガシャリと四本の爪が伸びる。

 

『んな……ぐぅ!?』

 

 で、相手の腕を挟み込む。

 ……本当はコックピットを潰す為の機構なんだけど、今回は腕だ。

 もう一方のブレードも取らないと危ないよな。

 腰にマウントしているグラディウスを引き抜き、俺は相手の手首を斬った。

 まあ、綺麗には斬れなかったけど。

 でも手がひしゃげて、ブレードは持てなくなった。

 ……さて。

 

「どうする? まだやる?」

 

 背中の大剣を抜いて、首筋に当てる。

 まあ、コックピットは大体胸にあるから、これあんまり意味ないんだけどね。

 でも位置的にスッパリ行けるのは行けるか。

 

『……参ったね。こうもあっさりカタを付けられるとは』

「出力の差がモロに出たね。ちゃんとリアクターの調整してるし、腕も轟雷の腕だから丈夫でパワーもあるんだよね」

 

 近接戦にご丁寧に付き合ってくれたから、結構段取り通りにカタが付いた。

 でもこれ、あんまり俺の成長には繋がらないよな。

 どうしてって、

 

「手加減されても嬉しくないよ」

『……』

「子供だって思ってちょっと躊躇したよね。多分本当は、もっとやれたでしょ? お姉さん」

『……解るものなんだね』

「まあね」

 

 流石に解るさ。

 あのラフタって人と同じくらい、この人は良い人だ。

 俺たちを気遣ってくれている。

 

『……言い訳をするつもりはないよ。奇妙な楯に気を取られたって事もあるけど、それでも負けたのは事実だ』

 

 ……ごめんね、青い人。

 ウチの楯って、こういうの多いんだよね。

 

『私の負けだ』

 

 笑いながら言われた。

 ……なんか、こっちが負けたような気がするのは何でだろう?

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

『驚いたよ、ウチの娘たちと互角にやれるなんて』

 

 『ルージュのアミダ』と呼ばれる凄腕が、ウチの社員を褒めた。

 圏外圏で最も強いパイロット、とタントテンポより情報を仕入れていたが、雰囲気だけでそれが解る。

 

「御褒め預かり恐悦至極。ま、いずれはもっと()()()()()を狙うんでね。これくらいやって貰わにゃ困る」

 

 爺さんの遺書が事実なら、まだいる筈だからな。

 用心しねぇと。

 

『んじゃ、最後はあたしらだね』

「ですな。……そんじゃあ、自己紹介を。MSG社長、明星・龍治。搭乗機は《ミセリコルデ》。宜しく」

 

 あ、ちなみにスティレットはスティレットでもスーパースティレットⅡの改造機なんだよな。

 足をレイジングブースターってのに交換してるんで推力はかなり増してたり。

 俺の名乗りを受けて、アミダさんも律義に返してくれた。

 

『名瀬・タービンの第一夫人、アミダ・アルカ。搭乗機は《百錬》……なんてね』

 

 茶目っ気あるなぁ。

 こりゃ旦那が心底惚れる御人だね。

 そう思いながら俺は、腕に装着している「ACSクレイドル」の隠しブレードである「ブレシアダガー」を展開する。

 そして、

 

「いざ、尋常に」

『勝負といこうじゃないか!!』

 

 超高速の戦いが、始まった。

 

 

 

 

 この機体、脚と肩と背中にブースターがあり、更に武器は腕の刃とマシンガンだけというシンプルな構成になっているんだが、

 

「結構やれるもんだな。ミセリコルデ」

 

 あの『ルージュのアミダ』が乗る百錬を相手に速度だけは上回っている。

 ほぼ思い付きの急造機だが、速度はピカ一だ。

 百錬の背後を取り、その背中にダガーを刺突する。

 しかし、その攻撃はひらりと躱される。

 

「浅いかっ」

 

 即座にマシンガンを連射。

 相手に距離を取らせる。

 しかし、

 

『遅いよ!』

 

 向こうも銃撃を返してくる。アサルトライフルとブレードという先程の人と同じ武器構成でここまで対応されるとは。

 正直に言えば、技の練度はかなり高い。

 熟練の技ってのはこういうのを言うんだろうな。

 

『そりゃアタシが歳食ってるって言いたいのかい!?』

「何を仰いますやら!」

 

 あっぶねぇ……!

 冗談っぽい言い方だったけど、マジだったなアレ。

 しかし、こうも切っ先を逸らされるのは何か理由がありそうだな。

 ……速度上げてみるか。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

(ちぃ! 流石に速い……!)

 

 アタシの百錬に傷を付けるだけの力がある事は、初見で解っていた。

 でも向こうは攻めあぐねているみたいだね。

 それもそうさ。

 

「……さて、食いつくかな」

 

 こっちが態と作った隙に、滑り込むように手甲のブレードを突き出してくる。

 対処は出来る。出来るのだが……

 正直、いなすだけで精一杯だ。

 それでも十合以上はその馬鹿みたいに速い突進を受け流したんだから、アタシもまだまだやれるね。

 でも、そう思ったのがいけなかった。

 社長さんの雰囲気が変わった。

 

『……仕方ない。全ブースター・リミッターカット。阿摩羅識システム・フルコネクト』

 

 瞬間。

 意識が冴え渡り、背筋に冷たいものが走る。

 これはあれだね、アタシの意識が最大限に警戒しているせいで周囲がスローに見えるヤツだ。

 俗に『ゾーンに入る』って言われる現象だね。

 そうなったって事は、

 

「こうなるんだよね!」

 

 劣勢に追い込まれる、という事だ。

 変わった。

 段違いに速くなり、ブレードの軌跡が読み切れなくなった。

 こっちの隙なんかお構い無しに攻撃を仕掛けてくる。

 いくら命の取り合いをしていない、とは言え肝が冷えるってもんさ。

 ……それに、何となく解っていたけど、どうやらこの坊やたち。

 

 

 

「阿頼耶識を埋め込んでいるね、坊や! さっきの二人も!!」

 

 

 

 その言葉に、《ハンマーヘッド(ウチのいえ)》の連中が息を飲んだ。

 

『ちと、違う』

 

 しかしそれは言下に否定される。

 

『ソイツの上位互換品だよ。阿摩羅識システムっつーんだ』

 

 アマラ識?

 

『阿頼耶識は機体と繋がり過ぎるんでな。帰ってこれない人間も多かったそうだ。で、心ある科学者の皆さんがな、そういった人間を減らそうって努力したんだよ』

 

 そう言う坊や――いや、龍治。

 

「阿頼耶識の上位互換――それが本当なら凄いことだよねぇ! だが、そんなモノは噂でも聞いた事が無いよ!!」

『そう言ってくれるなよアミダさん。これは俺の両親の遺作なんだから』

 

 これでも五万人を超える社員を抱えているんだ。

 嘘かどうかんなんてのは大体解るくらいには人を見てきた。

 だからこれが本当、あの子が本当だと思っているという事は解ったよ。

 

「それが本当なら猶更さ! 自分の子供にそんな危険な手術をさせる親がいるなんてね!!」

『……ま、そう言うわな。今の時代なら』

 

 そう言って龍治のブレードが閃き、アタシのブレードと火花を散らす。

 

『俺が赤ン坊の頃に死んじまった両親が、『我が子がどんな敵に遭っても生きていけるように』って、俺に遺してくれた形見なんだ。アンタとしては色々言いたい事もあるだろうけど、どうか悪く言わねぇでやってくれ』

 

 多少口調が荒くなったね。……そういう事か。

 

「アンタに感じていた違和感の正体が一つ解ったよ。アンタは、阿頼耶識やそのアマラ識とやらを忌避していないんだ。メリットもデメリットも知った上で、それを受け入れてる!」

 

 地球の連中のように、異物を肉体に埋め込む事に忌避感が無いのだ。

 しかし火星や圏外圏の人間とも違う。

 必要に迫られてといった免罪符すら持ち合わせていない。

 

『それ以前に、今出回ってる粗悪品を語られても困る。ウチのは純正品だ。だから大人にも定着するし、障害だって残らねぇ。そんで、肉体の補助だってしてくれる』

 

 元は阿頼耶識も医療用だったからな、と龍治はそう嘯く。

 

「……そうなのかい?」

『まあ、厄祭戦が起きたせいで戦争用に研究が進んだそうですが、元々は麻痺とかで歩けない人間を歩けるようにサポートする生体ナノマシンが源流のようで。俺が持ってる資料によると、ですがね』

「興味深いねぇ。厄祭戦の資料は木星圏でも散逸してるからね」

 

 メデイカルベッドでの再生治療が出来るせいか、それ以外の医療関連の情報は余り進歩していない。

 そのせいで、アタシは子供が産めない身体のままさ。

 ま、今は家族が沢山いるから寂しくは無いんだけどね。

 

『お望みなら、その手の資料を渡しましょうか? 阿摩羅識システムの概要も含めて』

「……そうだねぇ。理解しないで責めるってのもお門違いだしね。頼めるかい?」

『了解』

 

 そう喋りながらも、アタシたちは高速での戦闘を続けていく。

 でも、このままずっと続けていくのも詰まらないしねぇ。

 

「どうする、社長さん? そろそろ終わらせないかい?」

『奇遇ですな。……そろそろしんどくなってきていましてね』

 

 そりゃ宇宙空間とは言え、そうも縦横無尽に高速で動けばねぇ。寧ろ良く動いた方だよ。

 

「距離を取って、一発当てた方が勝ち。――それでどうだい?」

『了解です』

 

 アサルトライフルをマウントし。ブレードだけを手に持つ。

 向こうも、右腕を引いて構えた。

 

 

 

 ――合図は、いらなかった。

 

 

 

 交差し、決着が付く。

 そう、

 

『俺の負け、ですね』

「ああ、アタシの勝ちさ」

 

 お互いのブレードは砕け折れた。

 でも、アタシがアサルトライフルを突き付ける方が早かった。

 こうして、アタシと龍治の決闘は終わった。

 

「……あ、そうか。もう一つの違和感も解ったよ。機体(それ)、アンタの愛機じゃないね」

『ええ。いつものヤツで出るつもりだったんですが、ウチの団長に止められましてね』

「舐められたもんだよ」

 

 ま、引っ張り出せなかったのはアタシの手落ちだねこりゃ。

 

『……すいません。万が一の事を考えて、若社長には無理を聞いて貰ったんです』

 

 通信を聞いていた団長さんが謝罪する。

 

『おいおい、じゃあ何か? そこの兄さんは使い慣れていない機体で、ウチのアミダと戦り合ったのか?』

 

 名瀬、顔が引き攣ってるよ。

 

『えーっと、使い慣れていないワケじゃないですよ。この機体のベースはスティレットと言って、結構ベーシックな機体なんです。だから乗り慣れてるっちゃあ乗り慣れてるんですよ』

 

 ほう、つまり。

 

「他にも色々と面白そうなのがありそうだねぇ」

『ええ、色々と取り揃えてますよ。武器も人を選ぶようなのばっかりで、社員でも好き嫌いが分かれてますし』

 

 ああ、そう言えば――あの坊やたちも、チェーンソー付きの銃とか爪になる楯とか持ってたっけ。

 確かにあれは人を選ぶかもしれないねぇ。

 

「なんか、アタシにも使えそうな機体はあるかい?」

 

 つい軽口を叩いてしまう。

 この百錬はアタシが使っているけど、実際はテイワズのモノだ。もし仮に名瀬が盃を割るような事になったら、百錬は返さなきゃいけない。

 だから、アタシ『だけ』の機体ってヤツが丁度欲しかったのさ。

 

『んじゃあ、まずはこの《ラピエール》ってのはどうでしょう?』

 

 データが送られてきた。

 ……ほほぉ。赤い機体だね。

 

「これは?」

『俺の乗ってるスティレットのバリエーション機なんですが、まあ見ての通り女性型の機体でして。ベースの色合いからしてみてもアミダさんには似合いの機体かと』

 

 滞空能力は普通のスティレットとやらの二倍以上か。

 高性能な広域レーダーを持っていて、情報処理能力も高いんだねぇ。

 カタログスペックだけでも相当だ。

 比較情報として渡されたスティレットの機体データと比べると、ラピエールは上位機って事か。

 

「でも解せないねぇ。どうしてそれを今回使わなかったんだい?」

『いや、単純にラピエール装備は一機分しかなくて、スティレットみたく予備パーツがあるワケでもなかったんで』

 

 それに、本当はいつもの機体で出るつもりでしたし。

 龍治はそう言う。

 どうやら嘘を吐いてはいないみたいだね。

 でもそれだけじゃない、か。

 

「他にも理由があるみたいだけど?」

『そりゃありますよ。具体的に言えば商談ですね』

『商談?』

 

 名瀬が興味を惹かれたように身を乗り出してくる。

 

『これ以上は面と向かって話しましょう。……どうやら、お互いに思わぬ()()を乗せていらっしゃるようですし』

『……成程、決闘の代理だもんな。ならこっちと同じように「見届け人」がいるのも当然か』

 

 へえ。

 随分肝が据わってんだねぇ。あちらさんも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

 名瀬の部屋に通された龍治、オルガ、ユージン、ビスケットはソファーに座るように促された。

 しかし、ビスケットとユージンはこれを固辞。故に社長の龍治と団長であるオルガだけが名瀬と対面のソファーに腰を下ろした。

 

「あの「オヤジ共」は別室で話し合いだ。だから俺らは俺らで商談を続けようじゃないか」

「ですな。後の事後処理はあちらさんがするって話ですし」

 

 所詮は雇われの代理人、このぐらい遣り合えば恰好はつく。

 

「で、ウチのアミダに機体をプレゼントしてくれるのは嬉しいんだが……見返りは?」

「支払いは、ギャラーでこのくらいですかね」

 

 その額を見て、名瀬は眉を上げた。

 安過ぎる。

 ジャンク扱いのモビルスーツでももう少し値が張ると言うのに。

 

「安いな」

「ええ、でも理由があります。今回売るのはラピエールだけですが、ゆくゆくは色々と買って頂きたいんですよ」

「……テイワズにか?」

「いいや。()()()()()に、ですよ」

 

 すぐに合点がいった。

 この件の発端なのだから。

 

「ジャスレイの叔父貴か」

「そうですね。えーっと……そう、ジャスレイ・ドンナモンジャイ氏が、余り宜しくない御仁であると情報を得ているので――」

「……(若社長、若社長っ。ジャスレイ・ドノミコルスです!)」

「……あれ、そうだっけ?」

 

 横にいるオルガが慌てて耳打ちする。

 微かに聴こえた二人の会話が嫌にツボり、アミダは噴き出した。

 正直に言えば、名瀬も笑いそうになったが根性で耐えた。

 

「ジャスレイの叔父貴はそいつらを切り捨てた。色々とカネになるヤツらだったから重宝していたようだが、こうなってしまったら、な。だがそのせいで俺もお前さんらも目を付けられた」

「ウチの社員をヒューマンデブリに仕立てた下衆が襲ってきたんで潰しただけなんですが、ねえ?」

「ま、そうだろうな。どうせ手を出したのは馬鹿共の方からだろうさ。タントテンポの頭目さんからもお墨付きを貰ってるしな」

 

 だが、そこで「はいそうですか」と引き下がらないのがジャスレイという男だ。

 それが解ったからこそ、自分たちの身を護る為にタービンズと仲良くなりたい、と。

 

「つまりお前さんらは、ウチと業務提携を結びたいんだな」

「傘下に入るのは、ねえ? そのジャスレイ・某さんと拗れた今となっちゃあしない方が良いでしょう。入ったら組織の和ってヤツが崩れるでしょうし」

 

 実際には、組織の和とやらを乱しやすいのもジャスレイなのだが。

 

「ふむ……だが、惜しいな」

 

 名瀬が顎に手をやって考え込む。

 しかし別の話題に話は飛んだ。

 『阿摩羅識システム』の話へと。

 

「その阿摩羅識システムってやつは、本当に大丈夫なのか?」

「俺は最初の手術が阿摩羅識でしたから比較出来ません。多分、解るのはオルガ団長たちでしょうね」

 

 名瀬が、オルガを見る。

 

「どうだい団長さん? 教えてくれるか?」

「あ、はい。……えっと、俺らは元々CGSって所で働いてました。で、その入社条件が阿頼耶識を埋め込む事だったんで」

「待て」

 

 突然名瀬に掌を突き出されて話を遮られた。

 

「……お前さんら、マルバん所の兵隊かよ」

「ええ!?」

 

 ビスケットは驚愕の声を上げ、

 

「マルバのオッサンの事、知ってんのか!?」

「ユージン、言い方ぁ!」

「すんません若社長!」

 

 乱暴な物言いになったユージンを龍治が叱る。

 相手はいち企業のトップ。そしてヤクザの幹部だ。

 礼儀は大事だとこの会談が始まる前に説明したと言うのに。

 オルガやビスケットの冷たい視線がユージンに突き刺さる。

 

「ま、口調は良いさ。話を続けてくれ」

「はい。阿頼耶識に適合したヤツが参番組って呼ばれる非正規部隊に入れられます。まあ、少年兵の扱いなんてどこも同じでしょうから割愛しますが……そん時に入れられた阿頼耶識は、若社長曰く『純度の低い粗悪品』だったそうです。だから機体と繋がれば人によっては頭痛や鼻血も出るし、過剰に負荷が襲うんだそうで」

 

 もしそんな阿頼耶識でモビルスーツなんかを扱えば、半身不随や意識を持っていかれていたかもしれない。

 そう龍治は言っていた。

 

「早い話が、機体と一つになって『戻って』こられなくなるんです。モビルスーツやウチのフレームアームズは、精密情報の塊みたいなもんですし、一つの脳味噌だけじゃ処理が追い付く筈もない」

「だからこその『阿摩羅識システム』か」

「ええ、機体に有機的な動きはさせたい。しかし人体への悪影響は極力減らしたい。そんな我儘を叶えたのが、このシステムです」

 

 これは名瀬には話すつもりはないが、厄祭戦の影響で阿頼耶識システムの臨床データは山のようにあったのだ。死んだ者や障害が残った者の数は、それこそ千や万に届くほどだ。

 阿摩羅識システムは、そういった犠牲の上で成り立っている。

 

「人体に擬似的な補助脳を形成させる、ねえ? これは誰にでも適合するのかい?」

「えーと……勿論個体差はあります。人に才能があるようにこればっかりはどうしようもなかったようですね。ただ、俺が施した限りでは、阿頼耶識システムより負担は大分軽減されたようですけど」

「若社長の言う通りです。それに若社長は、阿頼耶識を抜きたいってヤツには無償で抜いてくれました。適合に失敗して、起き上がれねぇようなヤツも、若社長は救ってくれたんです」

 

 真摯に、真剣な顔で若社長の功績を語るオルガ。背後に控えるユージンやビスケットも同様の顔をしている。

 若社長本人が何とも言えないような顔をしているのが名瀬とアミダには見えた。

 

「……」

 

 名瀬は少しだけ同情するような視線を、前に座る若社長に向けた。

 ここまで慕われるとは、本人も思っていなかったのだろう。

 そんな様子が見て取れた。

 

「……面白いヤツらだ」

 

 小声で呟く。

 それに微かに反応したのは、妻であるアミダだ。

 彼女は、自分の旦那の考えが手に取るように解った。

 

「そうだな……業務提携の話は前向きに考えさせてくれ」

 

 その言葉に喜色を浮かべるビスケットとユージン。

 しかし、

 

「ただし」

 

 続けられる言葉に驚愕する。

 

「書類にサインして『はい終わり』ってのは味気ない。だから……俺と義兄弟の盃を交わしてくれ」

 

 眼を細める若社長。

 

「……それはつまり、俺らをテイワズに引き込みたい、と?」

 

 雰囲気が変わる。

 一気に警戒ムードになった。

 

「違う違う。テイワズに入らなくても義兄弟や親子の盃を交わすヤツはいるんだぜ? ……ま、滅多にいるもんじゃねぇが」

 

 そう弁解する名瀬の耳をアミダが引っ張る。

 

「この人はね、アンタらを気に入ったんだよ。でも、力を貸したいけど業務提携だけじゃなく身内になりたい――そういう事だよ」

「痛たたたたたたたたっ!? ちょ、アミダ? 耳が取れるって!!」

 

 変に恰好を付けようとして警戒させるヤツがあるかい!

 そうアミダは笑って旦那に説教した。

 

「おー痛い。……ま、まあそんな感じなんだが、どうだい二人とも」

 

「「「……二人?」」」

 

 首を傾げる少年三人に、名瀬は笑みを浮かべる。

 

「そっちの社長さんと、団長さんだよ。アンタら二人とも、俺の義兄弟(きょうだい)にならねぇか?」

 

 突然の名瀬の申し込みに理解の追い付かない少年たち。

 龍治もまた、突然の申し込みに二の句が継げなかった。

 降って沸いた名瀬からの義兄弟の申し込み。

 これが何を意味するのか、まだ誰にも解らない。

 

 しかし、受けるにしろ断るにしろ、きっと何かは変わる。

 

 それだけは、確かだった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「さぁて、そんじゃあ()()の新しい「義息子たち」の根城を見に行くとしようか。兄弟!」

「あんまりはしゃぐなよ兄弟。俺たちは「お客様」なんだからな」

 

 何故か、火星への帰路に()()()()()()()とタービンズの《ハンマーヘッド》が伴う事になった。

 

 

 

「…………胃が痛ぇ」

「大丈夫だって。頼もしい味方が出来たと思えよ」

 

 

 

 そのせいでオルガはまた胃を押さえ、若社長に宥められていた。

 

 

 




 ――原作より一年早く兄貴が出来るかも。それと次回、本社でオレンジと黒のダチョウ脚が走る。



機体解説

SA-16s2 スーパースティレットⅡ改造機
機体名:ミセリコルデ

頭部:SスティレットⅡ(エクステンドアームズ04)・藍

胴体:SスティレットⅡ(エクステンドアームズ04)・藍

背面:SスティレットⅡ・SH-4000B セイレーン mkⅡ+・藍
   プロペラントタンク・白

肩部:SスティレットⅡ・IOF402 ヴァリアブルスラスター・黒

腕部:スティレット・藍色
腕部兵装:ACSクレイドル(両腕)・黒

脚部:レイジングブースター・藍
脚部兵装:ACSクレイドル(両脚)・黒

※解説
龍治がヴェスパーファルクスの代わりに搭乗するスティレットの改造機。
タービンズとの決闘の為、ブースター増し増しで仕上げた。
高速での近接格闘のみを主眼とし、武装は四つの『Armor Complex Supplying(複合兵装供給)システム』クレイドルのみ。
本来高空遠距離からの砲銃撃戦を得意とするスティレットに近接戦をさせるという狂った思想の機体。
故に緊急用である筈の「ブレシアダガー」が主兵装。
更に漸雷の兵装である「M-11 スタンナックル」を所持。しかし今回は出すより先に負けた。
機体名は、ミセリコルデ。慈悲の一刺しを意味する。
敵の装甲を誰よりも速く貫く為の機体。
(漫画版SRWOGより、某ゼンガーリオンから着想を経て)





強化改修型ガンダムバルバトス(決闘仕様)

※解説
両肩と両腕を轟雷の装甲に換装したバルバトス。
近接主体の改修案の中から選ばれた。
装甲に補助動力の入っている轟雷の両腕が採用されている。
武装は巨大なメイスと、ナイトソード各種。
尚、タービンズとの決闘では事故を防ぐためメイスは不所持。
その為、ナイトソードシリーズのみを装備している。
内容はレイピア、グラディウス、クレイモア、大剣。
腰にグラディウスとレイピアを。
背中にクレイモア。
手には大剣。
左肩後方よりフレキシブルアームが伸び、フリースタイル・シールドを装備している。
オルガの『精一杯生き抜く』という言葉を受けて三日月が追加発注した楯。
しかしこの楯は、生来持ち合わせている三日月の攻撃性を充分に満たしている。
※尚、二人の装備を見た瞬間から昭弘は何かを閃いたようで、タービンズとの決闘後はよく自前のタブレットと睨めっこしている姿が見かけられるようになった。





轟雷(昭弘式)

※解説
通常の轟雷の背面にマルチブースターとプロペラントタンク(角)を装備しただけの機体。
しかし両肩と腰部にフレキシブルアームを計四本接続し、サブアームを四つ増設。
主腕にグレイブアームズ(十字砲)を。
サブアームには「MW-13 バヨネットチェーンソー」を四丁装備。
両主腕でグレイヴアームズを抱えて銃撃。
敵が近付いて来ればその質量を以て打撃する想定。
昭弘本人からも近付くために大型ブースターを装備している。
四丁のダブルバルカンが射撃の補佐を目的としているが、下部に取り付けられたチェーンソーは敵機の四肢を裁断する事が目的。
グレイヴアームズの十字砲をパイルバンカーにする事も検討していたが、今回は命を取り合わない決闘なので流れる事に。

※前述の通り、若社長と三日月の楯(?)に大いに感銘を受け、グシオンの武装プランを練っている。
楯であり武器というのが彼の琴線に触れたようだ。

そんな彼に、魔の手が迫る。

「ほーら、シミュレーター行くよー!」

それを見た団員数名から、「捥げてしまえ!」と怨嗟の声が上がっている。



SA-16s2 スーパースティレットⅡ

※解説
スティレット強化機体。
次期主力に数えられるくらいには出来が良かった。
しかし現場のスティレット大好きおじさんたちからの感想は今一つだった。
FA世界において、少数のスティレット部隊にこの追加武装が送られたが、使う人間は余りおらず、ガトリングとミサイルといった基本兵装で戦っていたとか。
※作者の独自設定として腕にもクレイドルは装着出来るように、としている。
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