俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話 作:FAパチ組み勢
用語解説:阿摩羅識システム
今作独自の設定。
阿頼耶識システムとの過剰な接合によって、半身不随や廃人化、死亡事故が多発した事を受けて研究が発足。
若社長である明星・龍治の両親が厄祭戦後も研究を続け、完成させる。
ナノマシンによる補助脳を形成する。
ナノマシンが稼働すると、掌の紋様が光る。
更に稼働すると――眼が……
機体と補助脳、そして人体で負担を軽減させるのが目的。
尚、モビルアーマーの襲撃を受けて二人は死亡。
その時に友人であったアグニカ・カイエルによって赤ン坊だった龍治は助けられる。
半身不随になったアグニカは阿摩羅識システムの研究を続け、自身の障害を克服。
※イメージ
阿摩羅識を埋め込むと、背中と掌に刺青のような紋様が現れる。
阿頼耶識(粗悪)を埋め込んだ人間が阿摩羅識を埋め込むと、背中にあった「ヒゲ」は無くなるが、銀色のピアスは残る。つまり三日月は三つ、昭弘は二つのピアスが背中に残っている。
※ネタバレ
要するに「機動戦艦ナデシコ」のIFSのパクり。
「盃かぁ。良いんじゃねぇか」
タービンズ旗艦《ハンマーヘッド》の来賓室で、新しく出来た兄弟分と酒を酌み交わしていたマクマードは、名瀬の申し出に上機嫌だった。
「いいなぁ兄弟、新しい息子が増えるのかよ。月はちと遠いからなぁ」
右腕が義手のダディ・テッドは左手で酒を飲みながら兄弟分を寿いだ。
どうやら二人とも、大分酔っているように見えた。
「……いや、オヤジ。テイワズの傘下にはならないそうです」
いつもならもう少しフランクにマクマードと喋る名瀬だが、今はテッドがいる。
他組織のカシラの前だ。
オヤジが舐められるような態度をとることは難しい。
そうする程度には、名瀬はマクマードを尊敬していた。
「あぁ? そりゃどういう事だ」
「例の馬鹿共と同じ立場にはなりたくない、と。連中、テイワズの直系になりたくて色々と無茶してたらしいですし」
現にMSG社員であるダンテ・モグロやチャド・チャダーンら数名は、時期は違えども彼らによってヒューマンデブリになったらしい。
連中からマルバに買われた仲間の殆どがCGS時代に使い潰され、既に死んでいた。残っているのはダンテたちを初め数名だけだそうだ。他の所に売られた者たちの末路も、似たようなものだろう。
故に、それを知った雇用主である龍治は、ヴェスパーファルクスを駆って敵モビルスーツ隊を殲滅。
三日月や昭弘もまた、仲間を苦境に落とし込んだ外道共を赦してなるものか――と追撃。
数名を逃がしはしたが、大多数を討ち取った。
勿論その戦闘で得た戦利品は、タントテンポに持ち込まれ、龍治たちの懐を潤す事にも繋がったのだが。
挙げ句の果てに生き残ったその数名もまた、兄貴分であったジャスレイに殺されたそうだ。
ある程度ジャスレイの性格などを知っていれば想像に難くない。
「……つまりテイワズとは商売だけの付き合いをしたいってぇのか?」
「……いえ、どっちかと言えば『俺たち』を介して付き合っていきたい、と」
「ふーむ……」
そんなMSGの態度にマクマードは首を捻る。
とても新興の民兵組織とは思えないような落ち着き振りだ。何か後ろ楯を欲しがらないで済む理由があるのだろうか。
しかし、
「あー……ま、そりゃそうだよなぁ」
彼らの戦闘を見た事があるテッドは納得した様子で頷いた。
「なんだよ兄弟? 解ったような顔しやがって」
「テメェもさっきの決闘観てただろうが。あれだけやれるのが三人もいるんだぞ? 十分過ぎるくらいだ。……それに、あの若社長の『相棒』はとんでもねぇぞ」
ある意味、悪魔の名を冠するガンダムフレームよりもよっぽど悪魔――『魔王』のような機体だと思ったものだ。
黒や金の装甲の上を流れるエネルギーラインと同色の紫の六翼。
バイザーの奥にある緑のカメラアイ。
鋭く厳ついマニュピレーター。
そんな見た目を裏切らない――規格外の戦闘力。
「それに、まだ「隠し玉」がありそうなんだよなぁ」
そんな強い機体を持っているというのに、彼は普通だった。無駄に偉ぶりもしなければ、卑屈になりもしない。自然体そのものだった。
アレは、虚勢を張っていては出来ない姿だ。
確かな『自分』が裏打ちされているからこそのそれだ。
もしくは、自分の持つ機体よりも巨大な何かを知っているからなのか……
そんな男に率いられているせいか、鉄華団もまた「そうあろう」と努力し初めている。
どこか無理をしているようにも見えるが、名瀬からしてみれば微笑ましくその眼に映った。
仮にもし間違えそうになっても、若社長がブン殴ってでも止めるに違いない。今ならば自分も、その加勢に加わるだろう。
そう思えるくらいには、名瀬は彼らを気に入り初めていた。入れ込みだした、とも言えるが。
下手をすれば妻たちが嫉妬しそうなレベルで。
「……気に入ったか。名瀬」
「はい。……どうにも若くて青いですが、性根は悪くないかと」
マクマードは、手酌でぐい呑みに酒を注ぎ、一息で煽る。
そこまで名瀬が気に入る連中は稀だ。それに隣にいる兄弟も一目置いているではないか。
故にマクマードも、徐々にではあるが興味を持ち初めていた。
「それと名瀬よぉ」
「うん?」
「いつも通りに喋って良いぞ。兄弟はそんなに器の小せぇ男じゃねぇからな」
「なんだ? 嫌に鯱張っていると思ってたら、俺を気にしてたのか。大事にされてるなぁ兄弟」
「ホレ見ろ。お前がそんなだから兄弟にからかわれたじゃねぇか」
……敵わねぇなあ。
いつもながらにそう思う。
「……解ったよ、オヤジ」
「おう。それで、どうするつもりだ?」
「テイワズとは関わらない盃だからな。俺がアイツらの家に出向くさ」
ここからなら歳星が近いので、マクマードやテッドを下ろし、盃を交わすのに必要な衣装や道具を揃えたらすぐに火星へと向かう――そう名瀬が言うと。
「……そうか。よし、俺も付いていこう」
「はあ!?」
つい大声で聞き返した。
「なんだお前。俺が義息子の義理事に参加しねぇような薄情なヤツに見えるのか?」
「いや、だって俺言っただろ? テイワズとは関わらねぇ盃だって」
「馬鹿野郎」
笑って、
「だからどうした。
それに、とマクマードは己の思惑も語る。
「新興の会社がなんでそんなに羽振りが良いのか、気になるんだよなぁ。兄弟の話だと、出された
「おお、美味かったぜ。地球産だって言われても納得するような出来だぜありゃ」
そう言われ、オルガたち鉄華団の連中の顔色を思い出す。
意外と血色が良かった。
それに、
少年兵というヤツは、実のところ何かに餓えているのが常だ。
大なり小なり餓狼のような眼差しをしているのが普通なのに、どうしてか穏やかなツラをした連中が多かった。
「……実は」
名瀬は、オヤジに話す。
「アイツら、元は俺の知ってる野郎の兵隊だったみたいでな」
仕事をした事のあるマルバ・アーケイという男は、普通だった。
普通に力がある者に媚びるし、普通に下の者を酷使する。取り立てて特色があるような会社経営者ではなかった。
そうである以上、少年兵の扱いも他と変わらなかったか、多少はマシな程度だろう。
「知った時、驚いたね俺は。聞けばマルバを退陣させて、あの若社長をトップにしたって言うんだからさ」
話を聞く限り、虐げていた連中には完勝した様子だ。
多少の血は流れたが、恐らくは許容範囲だろう。
それに、若社長側の人死にはゼロだったらしい。……一体どんな手品を使ったのやら。
「益々興味が出てくるじゃねぇか」
「多分、あの若社長がなんかやったんだろ」
テッドはそう言う。
「と言うと?」
「今の鉄華団にある戦力は、ほぼアイツの物らしい。それをポンっと貸し与えたそうだ。そりゃ警戒もするわな。……即座にあのガキ共掌返したらしいが」
本人たちすら警戒するような厚遇っぷりだったらしい。
……まあ、その警戒は一日と持たなかったようだが。
あのカレーは、美味かった。そう言って若社長を受け入れた団員は多いのだから。
「環境がガラリと変わったらしいぜ。本人たちに言わせれば「地獄から引き上げられた」んだとさ」
「…………」
何かを考え込むマクマード。
そして、
「……警戒していた子供すら味方にするカレーか。食ってみてぇな」
そう呟いた。
ずっこける名瀬とテッド。
「お、オヤジ……」
「兄弟よぉ」
半眼で見られる。
「じょ、冗談だよ冗談。がははははは……!」
マクマードはそう言って笑うのだった。
◆◆◆◆
「《イサリビ》の改修っすか……」
決闘後、火星へと帰ってからどうするのか話し合っている中で、若社長はそんな事を言った。
「このイサリビ、きちんと整備されてねぇだろ。動くとは言え内装は錆だらけだし」
確かに《天城》という社長専用の輸送艦があるので、大規模なイサリビの改修は出来る。
だが、小規模どころか一人で動かす事を想定されて造られた天城の艦橋は狭い。……と、思っていたのだが、どうやら多人数での操艦も想定してあるらしい。
なんと艦橋の周囲の床が稼働し、格納されていた六つの座席が現れるのだそうだ。
故に、イサリビの代わりは十分に勤まるだろう。いや、元の性能を鑑みれば補って余りある程だ。
それに龍治としては、イサリビにTCS関連の改造もしたかった。なので火星に戻ったらこの艦を《タカマガハラ》へと持っていきたいと考えていたのである。
「俺が馴染みの所に持っていくのに……ま、往復で一週間くらいか。改造にどれくらい時間が掛かるのかは解らんが、一ヶ月か二ヶ月は掛かるかもな」
龍治の提案を受けて、オルガも考える。
ここ半年、自分たちは目まぐるしく働いた。
最初の三ヶ月は社員全員の阿頼耶識システムを阿摩羅識システムへと交換し、フレームアームズへの慣熟訓練に当てた。
そしてタントテンポの頭目たちを月まで送るのに二ヶ月。
更にその一ヶ月後にはテイワズ直系のタービンズとの決闘。
いい加減、社員や団員にも休みがいる。
全員を一気に休ませるのは出来ないが、交代させてでも休ませなければ。
イサリビの改修は、そういった意味では渡りに船と言えた。
「解りました。俺もそれには賛成です。もう半年は働き詰めですしね。昭弘やビスケットたちだって火星に残してきた家族が心配になるでしょうし」
「タービンズ関連で新しい仕事が入る事もあるだろうが、その為にも改修出来る事はしとかねぇとな。……ん?」
そんな話をしていると艦橋から通信が入る。
どうやら名瀬からのようだ。
訝しみながらもオルガと共に艦橋へ赴く龍治。
そんな彼に名瀬は、
「はあ? マクマードさんとテッドさんが
まさしく寝耳に水の出来事だった。
その言葉を聞いた瞬間、オルガは咄嗟に自分の胃を押さえた。
『そうなんだよ。……いや、テイワズの関係者にならねぇって話したのに、嫌に乗り気でな。お前さんらの世話になりたいって言ってるんだよ。あー、その……済まん』
モニターの向こうで名瀬が申し訳なさそうに頭を下げた。
「……い、いえ。でもウチは今改装中でして、旧社屋(基地)を解体して新社屋(基地)に建て直している最中なんですが」
火星を出発してから三ヶ月。
基地増設の為のAI制御の工業用ロボット等も降下艇基地には配備されてあるが、それでも三ヶ月では建築途中だろう。
そんな場所にテイワズやタントテンポのトップが来るのだと言う。
卒倒しないだけでも艦橋にいる連中は大したものだ。
しかし、安全が確保されないような火星まで来るというのは、流石にそれは周囲が止めるだろう。そうじゃなくとも現在の火星は独立運動の真っ最中。
下手に飛び火して二人が怪我でもすれば、報復にどれだけの血が流れるか。もし万が一、死ぬような事になったら……恐らく火星は、より
そう思って名瀬に確認を取ると、
『マジで済まん。テッドの叔父貴、歳星から月に通信入れて部下を火星に寄越して迄行くつもりらしい。オヤジの方は、俺がいるだろう――だとさ』
帰りの便を確保してまで行きたい、と。
義息子がいるから大丈夫だろう、と。
流石の若社長もこれには唖然としてしまう。なんとフリーダムなのだ。
オルガなどは、周囲の眼もあると言うのに下を向いてしまう。しかし問題はなかった。何故なら、艦橋にいる他のメンバーも全員下を向いていたのだから。
『済まん。いやほんとマジで済まん。俺らも同行するから、そっちには迷惑を掛けねぇ。と言うか、歳星で今回の詫びを用意する。だから納得して貰えねぇか?』
テイワズの本拠地である歳星への招待。
その発言にオルガたちは下を向いていた顔を上げる。
「……あー、マジっすか」
『盃を交わす為の衣装とかもあるから、出席する団員の服もこっちで用意する。その仕立てもあるし、色々と溜まってる連中もいるだろう。全部俺が面倒を見るから……頼む』
兄貴分になる男に、ここまで頭を下げられているのだ。
ここはもう受け入れるしかないだろう。
確かに別段問題ではないのだ。
色々と胃にダメージを受ける人間がオルガを筆頭に何人かいるぐらいで済むだろう。……多分。
「……解りました」
なので龍治も腹を括った。
いざとなれば他の連中の肝も据わるだろう。
しかし全員が若社長を見た。
……断らないの!?
そう、全員の眼が訴えていたが、敢えて無視する。
いざとなったらクリュセのホテルにでも泊めればいい。
最悪「方舟」に上ってハンマーヘッドに泊めればいい筈だ。
そう若社長は考えていた。
『悪いな。……じゃあ、歳星に付いて来てくれ』
そう言って通信は切られる。
「……しゃーねぇ。チビスケ、聞こえるか?」
天城にいるチビスケに通信を入れる。
Piと電子音が聞こえた。
「これから歳星っていうコロニーに向かう。あのハンマーヘッドに付いて行ってくれ」
了解の電子音が短く鳴らされる。
こうして、天城とイサリビはハンマーヘッドに連れられ、歳星へと向かうのだった。
◆◆◆◆
「ふーん。それじゃあ火星に帰るのが少し遅れるんだね」
イサリビの調理室で食材を切りながら、アトラ・ミクスタという名の少女が三日月に話し掛ける。
「うん、そう。……てっきりこのまま帰ると思ったんだけどね」
「歳星か。死んだ親父の話だと、歓楽街なんかもあるデカい船らしいが……どうなんだろうな」
「知ってたの、昭弘?」
「おおまかな話だけだ。ヒューマンデブリにされる前に聞いたんだよ。親父が近寄りたくない危険な場所だって言ってた」
器用に箸を使って食べる昭弘と、スプーン使いの三日月。
どちらも大盛りに盛られた料理をガツガツと食っていた。
アトラは、ダディ・テッドたち三人を月まで送り届ける最初の航海から鉄華団に就職していたのである。
三日月と四ヶ月は逢えない、と聞いて居ても立ってもいられなかったのだ。
なので、今の職場の店主であるハバに無理を言って辞職し、MSGへ転がり込んできたのである。
そこからはまさしく八面六臂の活躍だった。
アトラは、龍治が用意してくれた様々な料理のレシピが大量に保存されてある特製タブレットを活用し、鉄華団の胃袋を満たしてくれていたのだ。
料理というジャンルでは、彼女は無類の才能を発揮してくれた。
龍治をして、『何故火星の雑貨屋にこのレベルの料理人がいるんだ?』と困惑した程だ。
料理の才能という一点だけでも彼女は突出していた。
もし、どこかの高級なレストランで修業すれば、彼女は瞬く間に料理界のスターダムを駆け上がっただろう。
背丈は低く、幼い容姿。
その見た目に似合わぬ料理人としての輝かしい才能。
そんな彼女が扱うのは、若社長から提供される火星の住人からしてみれば綺羅星のような食材たち。
質の悪い食材を高水準の料理にする事にしか長けていなかった
ならばどうなるか。
結果は眼に見えていた。
「アトラ、これって魚だよね」
「え? うん」
普通にフォークでパクパクと三日月が食べていたのは、魚だった。
魚に衣を付けてパン粉で揚げたフライだ。
「あ、三日月食べれたんだ」
「うん。生はまだ抵抗あるけど、美味いねこれ」
若社長に無理矢理食わされた魚介カレーだが、存外にイケたのはカレーだったからだと三日月はここ半年信じて疑わなかった。
カレーに混ぜるから魚は食える、そんな認識の三日月に一歩を踏み出させたのは、アトラだった。
彼女はMSGに就職後、タブレットを見ながら煮魚を作った。
それを試食した若社長は、本気で絶句した。
前世でも食べたことがないような美味すぎる煮魚。
恐らく前世にいた上流階級の人間でも、一握りしか食べられないような味に思えた程だ。
幾ら良い食材や調味料が揃っていたとしても、ここまで味を高める事は凄腕の料理人にしか出来ない。
そう彼女を褒め称えたせいで、今では『アトラ料理長』と呼ばれる程だ。
「……でもこれ、美味いのは美味いんだけど」
ぐぅ、と三日月の腹が鳴った。
「余計に腹が減るね」
「だな。まだイケるぞ」
若社長に次ぐ戦力である二人は、揃いも揃って大食漢だった。
「もー、しょうがないなぁ」
そう言いながらもどこか嬉しそうな顔をして、アトラは次の料理を作っていく。
(人は、命を食べて生きている、かぁ)
手際良く調理を進めていく中で、龍治の言葉が思い出される。
どんな生き物でも、誰かの命を奪って生き長らえるのだ。
ならば料理人は、その奪われた命に敬意を払わなければならない。
祈りを込めて。
想いを込めて。
誰かの笑顔のために。
料理を作る。
その総てが、彼女を成長させる。
MSG所属鉄華団調理班班長、『料理長』アトラ・ミクスタ。
彼女の成長と飛躍は、まだ続いている。
◆◆◆◆
少し、時間を遡る。
その日。
火星ではある出来事が起きた。
七月某日、非番だったのでクリュセに買い出しに出ていたマルバとトドは、安い飯屋で遅い昼食を取っていた。
そんな二人がふと見たテレビの映像。
画面いっぱいに、ある少女を映し出す。
「ああ? 誰だこのガキ」
「先代、知らないんスか? クーデリアですよクーデリア」
「クーデリア?」
「確か、クーデリア・なんちゃら・バーンスタインっつーガキで、火星の独立運動をやってるってぇ話です」
「……バーンスタインってぇと」
「ええ、あのクリュセ独立自治区代表首相ノーマン・バーンスタインの娘って話でさぁ」
ノーマン・バーンスタイン。
就任前は、火星の地位向上や独立を訴え、独立自治権を勝ち取りはしたものの、今では地球経済圏の腰巾着とまで言われているような男だ。
「ノアキスに独立運動家共を集めたのか……よくやるよ」
「で、連中に唆されて演説かぁ。このお嬢さん、自分が神輿だって気付いてますかね」
「さて、な。だが……」
華がある。
血筋に美貌に知性。
およそ大多数の女が羨む三つを手にしながらも、弱者を助けようとする時代のヒロイン。
であれば、いずれ彼女は……
「ギャラルホルンが黙ってはいないだろうさ」
「ですねぇ」
独立運動は、火星のギャラルホルンにとって痛い問題だ。
生かさず殺さずに火星の富を吸い上げ、地球の経済を運営しているのだから。
旧西暦時代、西欧諸国がやっていた植民地制度の焼き直しが、今の火星の現状だった。
それを変えようとすれば血が流れる、と彼女は知っていてあそこに立っているのだろうか。
「ま、俺らがどうこう言ってもしょうがねぇ。帰るぞ」
「へーい」
マルバの懸念は、およそ一年後に現実のものとなる。
尤も。
まさか自分たちもその騒動に巻き込まれるとは、夢にも思っていなかったのだが。
◆◆◆◆
時を戻し、若社長たちが歳星に向かっている頃。
火星のMSG本社(基地)となったそこでは、様々なロボットによる建築が進められていた。
「これはどこに持ってく? そこ? オッケー」
留守番役の年少組は、昌弘やタカキたちと一緒にロボットたちから指導を受け、基地の改築に従事していた。
中には、フレームアームズの素体であるフレームアーキテクトに乗って作業している者もいた。
尚、乗れるのはミドルティーンからである。
それ以下のローティーンは、モビルワーカーにしか乗れないように若社長たちが定めたからだ。
身体が出来上がってないのに、モビルスーツの操縦は負担が大き過ぎる。
大人でもモビルスーツの操縦は体力を持っていかれるのだ。モビルスーツに乗る前に肉体の鍛練は必須と言えた。
更に少年たちは、シミュレーターで普通の操縦方法も学んでいた。
阿摩羅識が搭載されていない機体に乗る事があるかもしれないからだ。
話を戻そう。
大多数の団員が工事に従事している中、昌弘はオレンジ色のスティレットのような機体に乗っていた。
「……スティレットより地上走行能力は高いな。当たり前だけど」
スティレットに比べて脚が貧弱なのが印象的だ。
フレームが剥き出しで、逆関節になっていた。名を『オストリッチレッグ』と言うらしい。要するに『ダチョウ脚』である。
踵にローラーがあり、平地での移動速度は轟雷よりも高い。
伊達に背中に過給機を搭載してはいない。
更にスーパースティレットⅡと同じように肩にブースターが搭載されてあるので、加速も減速も全方向思いのままだ。
『どうだ昌弘?』
オペレーター席に座っていたアストンが連絡を入れる。
今日はこのコンビが、この機体の評価をしているようだ。
「そうだなぁ……スティレットよりは使いやすいかもな。空を飛ぶのが苦手なヤツもいるけど」
『ビトーとかな』
そう言って二人で笑う。
後ろで笑っている少年たちも多いようだ。
『煩せぇ! 大体普通に空を飛べるお前らがおかしいんだよ!?』
ビトーの言う通りアストンと昌弘は、短期間で飛行操縦の教練を終えているのである。現在数人の団員と農園に出ているデルマも比較的早く終わらせたのだが、ビトーだけはかなり時間が掛かった。
この少年、スティレットとの相性が良すぎたのだ。
そのせいで自分の腕と機体に振り回されてしまったのである。適正はあるのに成績は余り良くはなかったビトーは、実は結構それを気にしていた。
『怒るなよビトー。でもお前、スティレット好きだろ?』
『……そりゃ嫌いじゃねぇけど』
『なら、この《クファンジャル》は相性が良いかもな。空を飛べるだけの推力はあるけど、地上走行能力もかなり良いぞ?』
昌弘は踵のローラーと背中のブースターを併用して走行する。
逆関節の脚のせいで平地や空中での行動に特化しているが、初心者でも比較的楽に乗れるだろう。
使いやすさは轟雷と同レベルだろうか。
《クファンジャル》という湾曲した剣の名を持ったその機体は、曲者のようで実は扱いやすい印象を搭乗者に抱かせた。
「結構面白いな、この機体」
先にこちらを操縦してから、スティレットの方を操縦すると良いかもしれない。
昌弘はそう思った。
『そう言えば昌弘』
「うん?」
アストンが尋ねる。
『若社長に言われた新しい仕事、なんか思い付いたか?』
火星出発する前に、居残り組は若社長より『ある課題』を与えられていた。
それは、『戦闘以外にMSGでやれる新しい仕事とは?』という課題である。
本来は、少年たちに考えさせるような事ではない。
しかし龍治としては、それでも敢えて取り組ませた。
態々思い付かなかった時は他の社員団員たちと話し合え、と念を押したのは、社員同士の交流を図ったからに他ならない。
「……そうだなぁ。レース、とか?」
幼い頃に父が語ってくれた自動車のレース。
車じゃなくとも、馬や自転車などを競わせる場合もあるのだとか。
兄と自分は、なんでそんなものに人が熱狂するのか解らなかった。
『レースは良いけどよ、何を走らせるんだ? 俺らか?』
『なんでだよ』
『走らせるにしてもコースはどうすんだ?』
『作るのか?』
『出来なくはないだろうけど……』
『待て待て、何を走らせるのかを考えねぇと』
『車?』
『地球にその手のレースはあるんじゃなかったっけ』
『さっき言ってたように人を走らせるのは?』
『……人を走らせるレースか。あれ? どっかのスラムでそんな賭博がなかった?』
『スラムを仕切ってる顔役に話を通せばやれるだろうけど……』
『儲けの何割かは持っていかれるだろうぜ』
『だったら人だけのレースは辞めとこう。俺らの強みを活かさねぇと』
『強みねぇ……』
喧々諤々とオペレーター室で少年たちが案を出し合う。
どうやらレースという案は中々良いアイディアだったようだ。
そんな時だ。
『いっそモビルワーカーとかフレームアームズは?』
ビトーが何気なく言った案を受けて、沈黙が流れる。
その案を聞いた全員が考え込んだのだ。
『な、なんだよお前ら』
解っていないのは本人だけのようだが。
「……モビルワーカーのレース。こっちは行ける、と思う。エイハブリアクターがあるからモビルスーツは難しい。だけど同じサイズのフレームアームズなら……派手なレースになる」
UEユニットは、エイハブリアクターとは違い電波障害を引き起こす特徴はない。
昌弘は「いけるのでは?」と思い始めていた。
「……これ終わったら、若社長にメールしてみよう」
『そうだな。じゃあ昌弘、そろそろ帰投してくれ』
そして、若社長からの返信を受けて――
「GOサインが出て、こうしてレースをする事になった――と」
「そう」
依頼先から帰ってきたデルマは、二体のクファンジャルが並んで立つ姿を見上げた。
農作業用に改修されたモビルワーカーに座り、アストンと一緒に昌弘とビトーの勝負を眺める。
「お待たせー」
「おーい、これ持ってくれよー」
そう言ってモビルワーカーに近寄ってくるのは、タカキとライド・マッスだ。
ライドはその絵の上手さをオルガに見込まれ、鉄華団のマークを考案した事で知られている。……尤も、シノを含めた数名からは「魚じゃねぇか」との意見もあったが。
更にMSGの社章も、この少年がデザインの原案を考えた。
若社長もその社章を気に入り、ジャケットの背中にはライドが考えたMSGと鉄華団のマークが載る事になったのである。
そんな彼が手にしているのは、若社長がタカマガハラから持ってきたスナック菓子だ。
ポテトチップスである。
「お、ポテチか」
アストンが顔を綻ばせる。
「はいアストン。これしょうゆ味らしいよ」
「ありがとうタカキ」
どういうワケか、タカキとアストンはウマが合ったらしく、最近はよく一緒にいる姿を目撃されていた。
デルマもまた、よくつるむ人間を作る事が出来た。双子のエンビ・エルガー兄弟だ。
昌弘はどちらかと言えばライドと行動を共にしている。
そしてビトーは、と言えば……
「勝てよービトー! お前の勝ちにお前と俺の今晩のおかずを賭けてるんだからなー!」
『勝手に賭けるな馬鹿野郎!』
ダンジ・エイレイとよくつるんでいた。
彼はある意味で団員内では有名だった。
――死ぬ時は、でっけぇおっぱいに埋もれて死にてぇ。
そんな彼の言葉を聞いて、若社長が爆笑したのだ。確か、将来の夢はあるか――と若社長に食事中に聞かれたのが発端だったと思う。
そう訊かれて、ダンジは笑顔でそう言ったのである。
呼吸困難になるかと思うくらいに若社長は笑った。
そしてダンジは言われたのである。
――生きて揉めよ!
ダンジとしては、目から鱗だった。
なんせこんな男所帯だ。若社長が来る前は、いつ死んでもおかしくないような環境だった。自分より先に死んだ年下だっている。
そんな場所に、女なんているワケがない。
だから、死ぬ時はせめて……と思っていたのに、若社長は「生きて揉め」と言う。
彼は、年少組を死なせるつもりがないのだ。弾避けに使う事さえ理解の外だろう。
事実として整備班以外に配属している年少組は、こうして火星に居残りだ。
訓練メニューや仕事は割り振られてあるが、それらは全て死人が出ないものばかりだった。
「昌弘ー! お前もだからなー!」
『ライドテメェこの野郎!!』
持ってきた袋の中からチップスを摘まんで口に入れ、容器から突き出したストローを口に含み、吸い上げる。
ポテチの塩味を堪能し、コーラの爽やかな炭酸と甘味がライドの喉を通り抜けた。
「っかー! 美味いねポテチとコーラは」
『おま、それは……』
昌弘が羨ましそうな声を出す。
ライドたちが若社長から教わった事の一つに、ポテチを食べてコーラを飲むという組み合わせがあった。それを体験した年少組は、少なくない人間が炭酸ジュースの味の虜になったのである。
ビトーたちもその例外ではなかった。
「勝った方にポテチとコーラを百個ずつ渡すってさ!」
タカキがそう言う。
事実だ。
若社長は、基地の食糧保管庫にある各種フレーバーのポテチとコーラを優勝者に贈呈すると約束してくれたのである。
『そういうことなら……』
『まあ、やるけど』
渋々といった風を装っているが、二人のテンションが機体越しでも解るくらいに高まったのが見て取れた。
『んじゃ、やるぞー』
エンビが乗る轟雷がやって来る。
手には長い柄に括った大きな旗を持っていて、中心にはMSGと鉄華団のマークが掛かれていた。
『よーい』
旗を掲げ、
『スタートっ!!』
振り抜いた。
轟音を上げて、二機のクファンジャルが火星の赤い大地を駆け抜けていく。
『おらおらおらぁーっ!!』
ビトーの乗るクファンジャルが、地面を滑るように移動する。
しかしその機体と付かず離れずの距離で昌弘の機体がピタリと追従していく。
機体構成は推進剤の量まで同じだ。
違うのは乗り手だけ。
その二機の走りを複数のドローンが追っていく。
『……ビトーのヤツ、やっぱこの機体と相性良いな!』
昌弘が悪態を吐く。
明らかに彼よりビトーの方がクファンジャルを乗りこなしている。
それとは逆に昌弘は、クファンジャルやスティレットよりも、轟雷や轟雷のバリエーション機の方が性に合っていた。
しかし、
『ここだ!』
『あ、狡ぃ!!』
モニターに表示されている折り返し地点にて、昌弘はクファンジャルの肩のブースターを逆噴射させる。
更に逆関節を活かした跳躍によって空中で方向を変換。
そして、全ブースターを後方に向け、加速。
空を飛んでいく。
『ほんとに狡いぞ昌弘ぉー!』
後方で負け犬が何か言っているが、知った事ではない。
元々クファンジャルは空戦も出来る機体だ。
やれる事をやって何が悪いというのか。
『くっそー! ……ええい、やってやろうじゃねぇかこのヤロー!!』
ビトーもまた、跳躍。
背中や肩の全ブースターの出力を全開にして、空を飛翔する。
『うぅおおおぉおおおおおおおおおおおおおおお――っ! やっぱ怖ぇえええええええ――――!?』
半泣きである。
しかしそれでも勝利を諦めたくないビトー。
それ程までに各種ポテチ百袋とコーラ百本は魅力的だったのだ。
忌々しいブルワーズ時代。
出される食事は、死なない為だけのカロリーチューブだけ。それすら満足に出された事はなかった。
味なんて知れたものじゃない。
そんな地獄から拾って貰い、食えるようになった甘い物やジャンクフード。
例え義兄弟であろうとも、譲れない。
多少の恐さがなんだと言うのだ。
デッドヒートを繰り返す二機。
空を飛び、モニターに表示されるゴールライン目掛けてかっ飛んでいく。
そして、
『ゴールっ!!』
エンビが旗を振ってそう告げる。
わあ、と観ていた全員から歓声が上がった。
機体を空中で急減速後、ゆっくりと降下してくるクファンジャル。
コックピットが開き、汗だくになった二人が外に出てくる。
『勝ったのは……』
勿体ぶって間を置き、勝者を手で指し示す。
『ビトー・アルトランド!!』
大歓声と賭けに負けた連中の悲鳴が響き渡った。
その様子を撮影していたエルガーや団員たち。
「盛り上がったけど、これって商売になるのかな?」
内輪だけしか盛り上がらないのでは?
そう思った。
一応このレースの映像と昌弘たちの感想を若社長に報告するつもりだが、そういった意見も上げておこう。
しかし、
「意外と面白かったよな」
「商売にならなくても、またやって欲しいよなぁー」
それだけは確かだった。
「おーい、次はモビルワーカーのレースやるぞー!」
「誰がやるんだ?」
昌弘とビトーが言う。
「ダンジとライドだ!」
「お前らほんと許さんからな!」
モビルワーカー同士のレースも、盛り上がったのは言うまでもない。
◆◆◆◆
「成程……レースっすか」
歳星にて、盃を交わす為に必要な紋付き袴の和服を注文し、出来上がるまでの間。
若社長はオルガに送られてきたフレームアームズ同士のレース映像を見せていた。尚、他の連中は、名瀬の紹介で「大人の女性との社交場」へと繰り出している。
紋付き袴は若社長とオルガだけだが、他の連中はスーツに羽織を着せる予定だ。
「ああ。それと、モビルワーカーでのレースもやったそうだ。レース用にチューンナップして」
「へえ」
次に再生される動画では、モビルワーカーが四台参加してのレースの映像が流れた。
こっちも先程より迫力は弱いが、しかし面白そうだ。
「待機組の連名で出されたからな。かなり自信があるんだろうさ」
「……でもこういったレースって、裏で賭け事が起きねぇっすかね?」
「起きるだろうな。人間は賭け事が好きだし。コイツらもその日の晩飯のおかずを賭けてたらしいぞ」
「それくらいならまだ可愛いもんですけど、カネを賭けるヤツも……」
「出るだろうなほぼ十割の確率で」
「となると、賭けをする時はウチが胴元にならねぇといけねぇんじゃ……」
「裏で関係のない連中にやらせるのは、それはそれでメリットはあるんだぞ? なんせ運営側とは無関係なんだ。八百長疑惑なんざ持たれねぇだろうし」
「八百長っすか?」
「ズルって事さ」
とは言うモノの、龍治達には賭け事を運営した経験はなかった。
いっそ最初は純粋にレースだけをするのもありかもしれない。
「おーう。どうした二人とも」
そんな二人に近付く男がいた。
名瀬だ。
「おお、兄さん」
「兄貴」
苦笑する。
「そう呼ぶのは式が終わってからだって。で、どうした?」
名瀬に若社長は、火星から送られてきた新事業案を見せる。
こういった賭け事にはテイワズの人間なら強いと思ったからだ。
「……ふーむ。モビルワーカーのレースか。……盲点だったな。生で見せるなら、客の安全面を考えればモビルワーカーくらいの大きさが丁度いい。例のフレームアームズのレースも、派手で見栄えは良いが……直に見せるのはちぃとばっかし怖いな」
彼は一瞬で理解した。
これはデカいシノギになるかもしれない、と。
如何に火星には貧困層が多いと言えども、富裕層がいないワケではないのだ。
そういった連中程刺激を求めているのは明白だった。
独立運動に熱狂する中流層以下の人間のガス抜きにも利用できる。
そう自治区政府が考えれば取り込みすら危惧しなければならない。
更に問題はフレームアームズだ。
モビルスーツと同サイズでありながら、電波障害を引き起こさない新しい機体。
そんなモノを持っていると知られれば即引き渡しを要求されるだろう。
だが、この若社長はそういった要請を鼻で笑って拒否するのは目に見えている。
下手をすれば自治区政府がギャラルホルンと結託して戦争になるかもしれない。
……そして、ギャラルホルンを壊滅させるに違いない。
龍治の愛機の詳細を知った名瀬は、そうなると半ば確信を持った。
「で、お前さんらはどうするつもりだい?」
「まあ、最初は口コミで広めるのが妥当かな――と」
「ほぅ? 大々的に宣伝しねぇのか?」
「まずは知って貰わねぇと。『こういう娯楽がありますよ?』って。押し付けたら反発するのが人間ですからね」
「……成程。確かにそうっすね」
まずは賭け無しで純粋にレースを見せる。
そこで客に「面白かった」と言わせれば勝ちだ。
「ただまぁテイワズの人間として言わせて貰えば……裏での賭博は規制してもどんどん出てくるぞ」
「ですよねぇ」
「そこで、だ」
名瀬がずいっと顔を寄せて小声になる。
「……俺らがお前さんらから委託されて賭けをやるってのはどうよ?」
「タービンズが、ですか?」
「おう。丁度こっちも
若社長とオルガは考える。
兄貴分となる名瀬との共同事業というのは悪くない。
テイワズとの直接的な繋がりは色々と邪推されるかもしれないが、タービンズとならば目くじらを立てる人間は少ないだろう。……全くいないワケではないのが組織の常ではあるが。
「解りました。でも、まずは実際にサーキットを作ってモビルワーカーを走らせてからです」
「あ、そっか。客の反応も見ねぇと続けられるかどうか解らねぇか」
慎重な若社長の発言に、オルガも納得する。
フレームアームズはそれらが終わってからやるべきだと判断したようだ。
「…………」
そんな二人を見て、口元に笑みを浮かべる名瀬。
しかし、ふと思う。
(あれ? ……レースも良いけど、実際に戦う所を見せるのも面白いんじゃねぇか?)
モビルワーカー同士、フレームアームズ同士。
ペイント弾を撃ち合うだけでもかなりの迫力になるだろう。
安全に配慮出来れば一大エンターテインメントになるのではないだろうか?
「どうしたんです兄さん?」
「兄貴?」
「だからそれは式が終わってからだって……ま、いいか」
店の人間が、注文した紋付き袴が出来上がったと伝えてくる。
それを彼らの艦に運ぶように名瀬は言って、二人と肩を組んだ。
「よーし、お前ら。まだ女を知らねぇんだってな?」
「え? ええ、まあ……」
「あの、兄貴……?」
実際は龍治は前世では「その手の店」で童貞を卒業しているので素人童貞だが、しかしオルガは確かに童貞である。
「俺の知ってる極上の店を紹介してやる。全員美人揃いだぜ?」
「あー……そう、ですか」
「いやあの、俺らだけって言うのはちょっと……」
しかしどこか遠慮気味の弟分二人を引っ張って、名瀬は「とある店」に二人を放り込んだ。
高級な佇まいの店で、気後れする二人。実際目が飛び出るほどにカネは高い。
現れる女性たちも所作が美しく、その美貌も抜きんでていた。
三時間後。
「…………いやはや、ここまでとは」
「…………」
凄まじいテクニックに苦笑する龍治と魂の抜けたオルガの姿があった。
◆◆◆◆
そんなこんなで歳星を出発して火星へと向かう一同。
マクマード・バリストン。
テッド・モルガトン。
マフィアの二大トップを引き連れて、彼らは火星へと帰る。
そしてマフィアのトップ二人は、とある老女と出逢う。
多分、鉄血二次創作界隈で、一番フットワークが軽いオッサン二人がウチのなんじゃなかろうか……
機体解説:SA-16d クファンジャル
※解説
スティレットの燃費を改善する目的で開発されたバリエーション機体。
脚の装甲を取っ払って逆脚にする事で軽量化に成功。
肩に増設された可変ブースターと強化された背面のブースターによる推力はマシマシに。
余りピックアップはされないが、しかし実はFA世界では敵フレームアーキテクト――通称「アント」を壊滅させる事が出来たスゲーヤツ。
無数に月からやってくる連中を全世界で押し留めていたのだが、このクファンジャルを大量配備していた中東・インド地方では迎撃率100%だった。