俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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 お久しぶりです。ちょっと本腰入れてイシュガルド冒険してました。
 漆黒まで遠いなー。




 用語解説:ツインリアクター

 単純に二つのリアクターを搭載しているのではなく、本来一点物のリアクター二つを完全に同期させており出力は桁違いに高い。
 ガンダムフレームは全七十二機がこのツインリアクターを搭載している。
 今では再現する事はギャラルホルンにさえ不可能であり、使う場合は三百年前の骨董品をレストアしなければならない。




 用語解説:示現流

 日本に数多く存在する剣術流派その一つ。
 細かい事はどうでもいいから、とにかく敵まで走って大上段から剣を振り下ろせ。
 二発目なんか考えるな。
 なんてクレイジーな思想の剣術。
 作中では某少年(左手にミサンガ)が、その映像を見て走り込みと立木打ちをやり始める。
 勿論ガチムチとの筋トレと並行して。


捌:その悪魔、狩人たる公爵 ーガンダムバルバトスー

 

 

 

「何故だ……」

 

 

 

 ギャラルホルンが製造した一般的なモビルスーツである《グレイズ》のコックピットに乗っているオーリス・ステンジャは、茫然とした様子で呟いた。

 

 

 

「何故だ。何故、どうして…………どうしてこんな事にぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい――っ!?」

 

 

 

 モニターに映るのは、白い装甲の悪魔。

 神速の速さで振り下ろされた幅広い「刀」と呼ばれる剣が、己の命を刈り取ろうと迫る。

 最早これまで。

 オーリスに下される審判は、機体ごとの斬死。

 あっさりとナノラミネートアーマーが塗装された装甲を、弱点である質量兵器が斬壊していく。

 最早、数舜もせぬ内に彼は肉塊へと変わるだろう。

 後方に待機していた嘗ての師である同僚や、新人の乗るグレイズは恐らく間に合わない。

 突出し過ぎた事もあるが、それ以上に民兵組織の癖に練度が高い。

 恐らく、正規兵である自分たちよりも練度は上だろう。

 逃れられぬ死を前に、オーリスは何故こんな事になったのかと過去を振り返る。

 

 ――そうだ。私はコーラル支部長に……

 

 ギャラルホルン火星支部を統括するコーラル・コンラッド支部長からの命令で、自分たちはこの民兵組織に襲撃を仕掛けた。

 その結果がこれだ。

 モビルスーツの消耗を嫌い、歩兵やモビルワーカー隊を前面に展開したが、相手は初手でモビルスーツらしき機体を複数展開したのである。エイハブウェーブを感知出来なかった事で機体出力はモビルスーツに劣る、と考えてしまった。

 更に駄目押しのようにモビルスーツが出撃し、部下は全滅。

 そして自分の命も、風前の灯だ。

 

 

 

 耳障りな破砕音と共に。

 自分の身体が潰され――

 

 

 

 オーリス・ステンジャ二尉は、殉職した。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「よお、オルガ!」

 

 俺が食器を持って空いてる席を探していると、ユージンが呼び止めた。

 手招きしているし、俺が座る席もあったから、俺はミカの隣に腰掛けた。

 

「隣いいか、ミカ?」

「どーぞ」

 

 バクバクと食い続けるミカや昭弘を見て、思わず笑ってしまう。あの食わず嫌い共が、よくもまあ肉や魚をこんなにがっつくようになったもんだと感心する。……まあ、俺も人の事は言えねぇか。

 アトラの腕前に、若社長が卸す質の良い食材が合わさってっからな。

 こうなるのはむしろ当然か。

 そう思いながら、俺もメシを頬張る。

 ……うん、相変わらず美味い。地球の連中はいつもこんなの食ってんのかね?

 月まで行った時はバタバタして、地元のメシとか食う暇もなかったけど。

 

「なあ、オルガ」

 

 食事をしながらシノが俺に話し掛けてきた。

 

「なんだ?」

「もうすぐだろ? 例のお嬢様がウチに来るのって」

 

 既に関係する団員のタブレットには、次の仕事の依頼の大まかな内容が伝達されている。

 だからシノも知っていた。

 どうにも好奇心が疼いているようだな。

 

「なんだよお前、お嬢様タイプが好きなのか?」

「いや? 俺は女の子だろうと男だろうと可愛ければ好きだぜ」

「……雑食」

 

 三日月がボソリと呟き、何人かが吹き出した。……まあ、俺も笑った。

 シノその評価に「おおよ!」と胸を張った。

 威張る事かね。

 

「どんな感じの娘さんだろうな?」

 

 しかしそんなシノにユージンが言う。

 

「憶測でモノ言ってたってしょうがねぇだろ。それに、相手すんのは若社長やオルガくらいだろ。後は俺か、ビスケットくらいか?」

 

 多分そうなるだろうな。ユージンは副団長で、ビスケットは参謀だし。

 ……見事に野郎ばっかだな。

 俺らじゃ道中の話し相手すんのは無謀じゃねぇか?

 

「……」

「どうしたの、オルガ?」

「ああ、アトラに道中は話し相手になって貰った方がいいかな、と」

「……いいと思うけど、アトラの仕事の邪魔しないその人?」

「……どうだろうな。俺もまだ面通ししてねぇからよ。通話画面越しに応対したのも若社長だしなぁ」

 

 ま、考えても仕方ねぇ。

 それよりも顔合わせには俺も同席しねぇと。

 お。

 そう考えてたら若社長から出頭のメールが届いた。

 約束の時間までまだある筈なんだけどなぁ。

 

「どうしたの?」

「どうやら、例のお嬢様が来たらしい」

 

 さーて、どんな人なんかね。

 革命の乙女って女は。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「お噂はかねがね。初めましてクーデリア・藍那・バーンスタインさん。私が、マーズ・セキュリティサービス・ガバメント――MSGの社長をやらせて貰っている明星・龍治です」

 

 私とメイドであるフミタンは、社長室とプレートの掲げてある部屋で、その人に出逢った。

 差し出された手は大きく、優しく握られているにも関わらず、力強さを感じた。……やっぱりこの人も少年兵だったのだろうか。

 

「初めまして、明星社長。クーデリア・藍那・バーンスタインです。それと、こちらはフミタン・アドモス。私のメイドです」

「……初めまして」

「ああ、どうも。初めまして」

 

 何の気負いもなく、彼はフミタンとも握手を交わす。……この人、歳はフミタンと同じくらいかしら?

 ソファーへと促され、私たちは腰を下ろした。

 柔らかな感触。

 あ、結構良い素材を使ってるわね。

 

「さて……メールでご依頼された件の確認といきましょう」

 

 そう言われて、私は居住まいを正す。

 

「……火星独立の為、地球経済圏の一つであるアーブラウへ赴かれる。その護衛を弊社の鉄華団に頼みたい。そう伺っていますが?」

「はい」

 

 私がアーブラウに赴きたい理由は、植民惑星とされている火星の現状をなんとかしたいと思ったからだ。

 しかし資源を採り尽くされた火星では、まともな産業は少ない。

 だから私は、火星の地下に大量に眠っているハーフメタルに着目した。

 しかし、流通には大幅な制限が課せられているのが現状だ。

 採掘されたハーフメタルは、火星で精製され、地球を初めとした各経済圏に振り分けられる。

 だけど、十分な量が供給されているとは言えない。

 だからこそ、規制の撤廃が叶えば、火星の雇用は増える。

 きっと、皆が笑顔になれる。

 少年兵たちも、きっと普通に生きていけるようになる筈だ。

 

「……まあ、雇用が増えるのはこちらとしても願ったりです。経済が回らなけりゃ、出来ることも増えませんし。道中の厄介事は、ウチが引き受けましょう」

 

 一瞬、何か言いたそうな顔をした社長さん。

 しかしそれを問い質す前に誰かが部屋に入ってきた。

 

「「失礼します」」

 

 若い男の人の声。

 多分、十代くらいかしら。

 入ってきたのは白髪で褐色の肌をした人と、ちょっとぽっちゃり目の人。

 

「おう、来たか。……あん? ユージンはどうした?」

「すいません、若社長。実はユージン、ちょっと別件があったらしくて」

「……ああ、そういや今日は操舵班の認定試験だったか」

 

 何か別の仕事で来れない人がいたらしい。

 

「まあ、この際だ。ユージンとは後で面通しさせとけ。それよりも仕事の話だ」

「はい」

 

 その鋭い眼が、こちらを射抜く。

 少しだけ、気圧された。

 

「こちらのバーンスタインさんと、世話役のアドモスさんをアーブラウまで連れていく。改修したイサリビでの初仕事だ。いつも通りメンバーの選出は任せる。頼んだ」

「了解!」

 

 敬礼するその姿には、素人の私でも解るくらい尊敬の念が込められていた。

 まるで、自慢の兄に良いところを見せようと張り切る子供みたいで、どうしてか微笑ましく映った。

 

「はじめまして。クーデリア・藍那・バーンスタインです」

「あ、はい。ハジメマシテ。MSG実働部隊『鉄華団』団長のオルガ・イツカです。こっちは参謀のビスケット・グリフォンです」

「は、はじめまして」

 

 お互いに頭を下げ合う。

 

「んじゃあ、もう少し細かい話を詰めましょうか」

 

 そう社長さんが言う。

 ……そう、ね。

 細かい話はフミタンに任せましょう。ちょっと施設を見てみたいし。

 だから社長さんにそう頼んでみた。

 

「……ウチの中を見てみたい、と。どうします若社長?」

 

 ビスケットさんがそう社長さんに訊ねる。……みんな若社長って呼んでるのね。

 

「ま、いいだろ。案内役がいれば立ち入り禁止区域には入らんだろうし。……あ、お前らは案内は駄目だぞ。同席させる為に呼んだんだからな」

 

 そう社長さんに言われて、オルガさんは誰かの名前上げた。

 

「なら……ミカはどうっすかね」

「三日月ぃ? 案内はやれると思うが、まだアイツ敬語上手くねぇだろ」

 

 敬語を上手く話せない少年兵。

 これだ。

 その子の事を知れれば、私は火星の負の遺産について理解を深める事が出来るに違いない。

 

「では、その人でお願いします」

「……ええ?」

「お願いします」

「……解りました」

 

 こうして、私は少年兵である三日月・オーガスに出逢った。

 そして、知らず知らずの内に傲慢だった事を突き付けられたのだ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「……なんとも自由なお人ですな」

「はい。それがクーデリアお嬢様ですから」

 

 やって来た少年兵と共に社長室を出ていったお嬢様。

 それを見送り、視線を戻す。

 これからが本番だ。

 

「そんじゃあ、話をしましょうか。女中さん」

 

 雰囲気が変わる。

 張り詰めた空気の中、明星社長が差し出したタブレットにとあるデータが表示された。

 

 そこには、お嬢様の人権を売買する契約書のデータが表示させられていた。

 

「クリュセ代表首相であるノーマン氏より、クーデリア嬢個人の売買契約書が送られてきた。首相の名代として地球に行く筈のお嬢さんが、資産扱いってのはどうにも解せねぇ。厄介払いそのものじゃねぇか」

「……」

 

 自分の顔から表情が抜け落ちるのが解った。

 少なくとも、暖かみのある顔をしてはいないだろう。元々そこまで表情豊かな顔が出来ない性質だ。

 ふと、あのいけ好かない彼女の顔が浮かんだが、すぐに頭から消した。

 

「暗に、『娘が死のうが奴隷になろうが構わない』って悪意が見えるんだがなぁ。……そこん所どうよ?」

 

 少しだけ、視界が滲む。

 何故、お嬢様の道を遮ろうとする者が、こうして身内にもいるのだろうか。しかも実の父親が率先して命を奪おうと画策している。

 その醜悪さに怖気と吐き気を覚えた。

 会長も旦那様も、お嬢様が死ぬ事で享受できる利益を求めている。……そして私は、その為の駒だ。

 自分が、途轍もなく汚れているように思えて、叶うならここで舌を噛み切って死にたかった。

 しかし、文字通り身体に叩き込まれたメイドとしての『私』は、自分の心とは裏腹に言葉を紡ぐ。

 

「……お答え出来るとお思いで?」

 

 自分でも驚く程に、その声は冷たかった。

 そんな私を前にして、明星社長は平淡な様子を変えない。

 

「成程。つまり今回の依頼は、失敗するのが前提の依頼だと?」

 

 随分と舐められたもんだ。

 笑う社長。

 しかし、どうしてか。

 私の背筋が粟立った。

 

「そりゃ、幾らなんでも……」

「…………っ」

 

 イツカ団長は顔を顰め、グリフォンさんも帽子で視線を遮った。

 恐らく、その眼は軽蔑の色を浮かべているに違いない。

 だけれども。

 

 

 

「宜しい。この依頼、お引き受けしましょう」

 

 

 

 そう、言われる。

 

「……え」

 

 明星社長が何を言っているのか、一瞬解らなかった。

 

「ちょ、若社長!?」

「正気ですか!?」

 

 部下の二人も慌てた様子で明星社長に詰め寄る。

 

「正気も何も、ここで下手にあのお嬢さんを追い返したら、帰り道で絶対殺されるぞ。そしたら下手人は俺らだって真実(うわさ)が出回るだろうさ」

 

 人の欲望や悪意には際限がないもんだ。

 そう言って明星社長は皮肉気に笑う。

 

「何で俺が文字が読めるようになった連中に、『デビル○ン(漫画)』を読ませたと思う? 人ってのは、状況が許せばここまで簡単に酷いことがヤれるんだってのを勉強させる為だぞ」

「……いや、意図は解りますけど、だからってアレは……」

「アレのせいでベッドに地図描いたヤツもいるじゃないですか……」

 

 よく解らないが、二人はとても渋い顔をしている。

 

「そうか? 三日月とかなら、普通に受け入れそうだけどなぁ」

「そりゃあミカならそうでしょうけど」

「寧ろ三日月は、リョーの方を応援しそうな気もするけどね」

「あー、一理あるな。……逆の場合もあるかもしれねぇけど」

 

 明星社長は、部下である少年たちに質問する。

 

「まあ、アレは創作だが……ああいった側面も人間にはあるんだと理解した上で訊くが、ノーマン・バーンスタインは次にどんな手を打つと思う?」

 

 考え込む二人。

 

「……理由や動機は解らねぇが、代表首相サマにとっちゃ、今回の一件は失敗して欲しいんだよな」

「それに、クーデリアさんが行方不明になる事も、だね」

 

 明星社長が眼だけで先を促した。

 

「なら……ヒットマンを雇う、とか?」

「だけど万が一暗殺が成功した場合、ノーマン首相はとんでもない厄ネタを殺し屋に提供する事になる。脅されるだろうね。……だったら、関係のある人間に頼む、とか?」

「関係者か。……いち自治区のトップだ。そういった伝手には困らなさそうだよな」

「じゃあ、その中で一番今回の件に積極的に関わりそうなのは…………あ」

「あ」

 

 何かに気が付いた二人。

 

「そうだよ……あのお嬢さんは、今じゃ火星の顔とまで言われるお人だ。殺されたなんて知られたら暴動が起きるぞ」

「それを鎮圧する事でノーマン首相は低迷している人気を取り戻す。本人は、娘を喪いながらも気丈に振る舞う高潔な人物だって評価されるだろうね」

「その為には、犯人と暴徒化した連中を取り締まれる権力がいるな。それと暴徒鎮圧の実績が極めて高い組織だ」

「そして、この火星でそんな権力や実績を持っている組織は一つしかない」

 

 二人の声が唱和する。

 

「「ギャラルホルン」」

 

 腐敗しているとは言えどもその組織力は絶大だ。

 今のお嬢様では、蟻のように踏み潰されてしまうだろう。

 私は、ふと旦那様の今日の予定を思い返す。

 

「……あ」

 

 か細い悲鳴が喉奥から漏れる。

 思わず咄嗟に口を手で覆う。

 

「どうしました?」

 

 明星社長に促され、私は団長さんたちの仮説に補足を入れる。

 

「旦那様は、近々ギャラルホルンの高官と会う予定が……」

 

 守秘義務すら放り投げ、私はそう伝えてしまった。

 

「……オイオイ。ってことは、アレか? 次はギャラルホルンとドンパチすんのか? ……まぁじでぇ」

「動こうオルガ。最悪を想定しないと無駄に死人が出る。哨戒してる皆を下がらせるよ。初擊でこっちの目を潰せれば、アドバンテージを稼げるからね。生身の連中は引っ込ませないと」

「……おう。直ぐにサポロボたちを代わりに巡回させよう。ダンテもレヴァナントアイで索敵させるぞ」

「それがいいね」

「若社長!」

「おう、良いぞ。理不尽に殴り掛かってくる馬鹿を相手にすんのは慣れてんだ。ヤバくなったらなんとでもしてやる。好きにやってみろ」

「「了解っ!」」

 

 敬礼し、社長室から出ながら二人は行動を開始する。

 

「管制室。俺だ、オルガだ! 直ぐに戦闘班へ通達してくれ、『仕事の時間だ』と!」

『うぇ!? オルガ団長、いったい何が』

「ギャラルホルンが攻めてくるかもしれねぇんだよ! 哨戒に出てる連中も下がらせろ、命あっての物種だぞ!!」

『わ、解りました!』

「ユージン、聴こえる?」

『いや、丁度管制室にいたからオルガの声も聞こえてたけどよ……マジか?』

「その可能性があるのさ、解っているのに備えないのは馬鹿だよ」

『……それもそうか』

 

 動揺はしているようだが、しかし自棄にやってはいない。

 それが見て取れた。

 

「さーて。俺も準備しねぇとなぁ」

 

 明星社長は私の横を通り過ぎ、

 

「で、どうすんです? アンタは()()()()()()()()()()?」

 

 そう言い残して去っていった。

 私は何も言い返せず、俯くしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「妙だな……」

 

 夜明けを待っていたギャラルホルン歩兵部隊に属する彼は、狙撃銃のスコープ越しに哨戒していた少年兵が基地へと駆け出すのを見ていた。

 

「哨戒している連中が、大急ぎで撤退してる。どういう事だアレ?」

「……ん、何か出てきたぞ」

 

 別方向を双眼鏡で見ていた同僚が、地下からせり上がる幾つかの建物に気付く。

 あれは……

 

「迎撃用の機銃やミサイル、トーチカに見えるな」

「ああ、俺もそう見える」

 

 つまり、

 

「……気付かれた!」

「オーリス二尉、()()()()()っ!!」 

 

 ミサイルコンテナのハッチが開き、機銃がこちらを向く。どう考えても目標は自分たちだ。

 このままでは挽き肉になってしまう。

 ここからはモビルワーカーやモビルスーツに任せるべきだ。

 故に彼らは、一目散に持ち場を放棄した。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

「バレただとぉ!?」

 

 通信の向こうからの言葉に、オーリス・ステンジャは激昂する。

 

「……動きが早いな」

 

 同行していたクランク・ゼント二尉が別の通信を受け、呟く。

 

「クランク二尉?」

「……これでこちらの奇襲は失敗した。向こうも出してくるぞ」

 

 まだ新米であるアイン・ダルトン三尉とクランクがそんな会話をしている間に、オーリスはモビルワーカー隊を前に出す事を決めた。

 

「モビルワーカー隊、出撃しろ! 敵拠点の防御を削れ!」

 

 一般的なモビルワーカーよりも強化されているギャラルホルンのモビルワーカーならば、あのような民兵組織のモビルワーカーなぞ簡単に潰せる。

 そう、オーリスは考えた。

 彼の考えは間違いではない。

 事実、ギャラルホルン以外の組織で運用されるモビルワーカーは、ギャラルホルンの物に比べれば性能的に劣っている。

 だからこそ、連れてきた数十機のモビルワーカー部隊を動かしたのだ。

 

 だが――

 

 惜しむらくは、敵対した相手がMSGであった事が災いしたと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 轟音。

 爆音。

 破砕音。

 

 

 

 遠くから聴こえる戦場音楽に、オーリスは特徴的(バナナのよう)な前髪を弄りながら酔いしれた。

 自軍が負ける事など想像すらしていない様子だ。

 故にオーリスは、上機嫌で通信に出た。

 

「状況を報告せよ」

 

 聞かなくとも我がギャラルホルンの勝利は間違いない。

 そう、思っていた。

 だが、

 

『ほ、報告っ! 敵基地よりエイハブウェーブを感知出来ない機体が複数出現っ!! サイズはモビルスーツ相当っ。既にこちらのモビルワーカーが十機破壊されましたぁ!!』

 

 敵にモビルスーツ(?)がいる。

 それを知り、オーリスは待機モードであった愛機を起動した。

 

「減給、と言いたい所だが……モビルスーツが相手ではそうも言ってられんな。貴様らは援護に回れ、私が前に出る」

 

 グレイズのカメラアイが光る。

 そして――彼は、戦場に躍り出た。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「状況はどうなってる?」

 

 龍治は、インカムで管制室に状況を確認する。

 

『モビルワーカーは三十機。これ、フレームアームズ一機出せば簡単に終わりそうですけど』

 

 管制室に詰めているオペレーターの少年は、そう言う。

 

「流れ弾で死ぬのも馬鹿らしいだろ。……今動かせる戦闘班は?」

『三日月さん、シノさん、ダンテさん、それにチャドさんです。昭弘さんは、まだ機体の装甲の取り付けが終わってないんで、出撃出来ません。まだ教練が終わってない連中ならいるにはいますけど……』

「他の戦闘班は休暇や農場の手伝いか。……まあ、いない人間を当てにしてもしゃーない」

 

 ある一定の技量がある、と認められなければ戦闘班でも戦闘に参加する事は許されない。

 故に、今回前線に出られるのは、社長である龍治を入れて五人である。別の機体を使えば明弘も出せるので、実質六人だ。

 いつもならいるタービンズのラフタたちも、今はいない。

 彼女らは宇宙にある拠点に戻っていた。

 

「三日月、シノ、ダンテ、チャド。往けるか?」

 

 格納庫にいるであろう戦闘班の人員に通信を入れる。

 

『うっす。でも、相手はギャラルホルンでしょ? 殴り返していいんスかね?』

「良いんだよ。ケツは俺が持ってやる。だから殺れ」

『了解……って、オルガ?』

『若社長、俺も出ます』

 

 インカムの向こうで、オルガがそう言う。

 

「おい団長」

『解ってます。俺ぁ指揮を取れって話でしょう。でも、ミカがまだ出れないんスよ』

 

 先程名前を呼んでも返事がないので不審に思っていたが、どうやら格納庫に三日月はいないらしい。

 

「何かあったのか?」

『機体の調整に手間取ってるらしいです。アイツ、ぶっつけ本番で出撃しようとしたんですけど、おやっさんや整備長さんに待たされてて』

「……仕方ねぇな」

 

 まだ航空戦力のスティレット系は出撃させられない。

 機体は、轟雷やそのバリエーション機、レヴァナントアイだけで済ませろとインカムで伝える。

 

『『『了解っ!!』』』

 

 基地が大規模に稼働する。

 巨大な建造物が地表へと姿を現す。

 巨大なコンテナのような扉が自動的に開く。

 轟雷系三機、レヴァナントアイ一機。

 格納庫であったコンテナより、各ブースターを点火し、一気に敵モビルワーカーへ肉薄する。

 

 そしてオルガたちが、十機程のモビルワーカーを破壊した瞬間に、そいつは現れた。

 

 ギャラルホルンのフラグマシンであるグレイズである。

 その機影を確認し、龍治は笑った。

 そしてーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 【遠い遠い未来】

 

 

「待たせてしまったかな」

 

 ーーいえ。

 

 私は、目の前の老紳士と握手を交わす。記者をしていれば、この人の名前を知らない間抜けはいない。

 それくらいの傑物なのだから。

 

 

 ――初めまして。逢えて光栄です首相。

 

「元、だよ。今ではただの隠居爺さ」

 

 ――なら、閣下と呼んでもいいでしょうか。

 

「些か面映ゆい気もするが、年若いお嬢さんにそう呼ばれるのも悪くはないな」

 

 豊かな金髪を撫で付け、年齢よりも若々しい肉体をスーツに身を包んだ彼は、首相時代いつも杖を持っていた。

 噂では、あれは仕込み杖で、彼は護衛よりも強いと真しやかに語られていたが。

 

 ――では、始めます。

 

「ああ。と言っても……この手の取材は久々だ。何か不備があったら教えておくれ」

 

 ――はい。それでは、嘗て閣下は、火星のいち民兵組織に所属していたとありますが、これは事実でしょうか?

 

「そうだね。……箸にも棒にもならんような子供の頃から戦場にいたよ。家族を、妹を養わなければならなかったからね。政治家になってからは、野党にも散々突かれた」

 

 ――妹であるフウカ夫人は、その頃から旦那様と懇意だったのでしょうか?

 

「……いや。義弟(おとうと)は、当時の若社長が同業他社から引き抜いてきたメンバーの一人だった。当時、劣悪な環境で仕事をしていた私たちよりも栄養状態が悪かったのは……酷く印象的だったな」

 

 ――ええと、若社長とはどなたでしょう?

 

「おや、知らないかな。MSG初代社長である明星・龍治さんだ」

 

 ――明星会長ですか!?

 

「……色々あって若社長は、MSGの前身であるCGSの多数の社員を強制解雇し、人員の整理を行った。古参の連中がほぼいなくなった事でコネも無くなったが、それでもあの人はやらなければならなかった。当時の私たちのような弱者を保護する為にも」

 

 ーー明星会長は、篤志家としても有名ですからね。

 

「まあ、本人は否定するだろうがね。どんな思惑があったにせよ、あの人がいなければ私たちは命を喪っていただろう。だから若社長は私たちにとって育ての親であり、恩人であるとも言える」

 

 そう言えば、MSGで働いていた古参の老人たちは、明星会長の事を『若社長』と呼んでいると小耳に挟んだ事があった。

 どうやら事実だったらしい。

 

 ――で、では、MSGに社名が変わってから、何に一番驚かれましたか?

 

「さて、月や木星の企業との業務提携の話も驚いたが……やはり一番衝撃を受けたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 来た。

 当時、火星どころか地球すら巻き込んで拡大していった『革命戦争』――その始まりの日と言われるあの事件。

 当時存在したギャラルホルン火星支部が解体される要因となった、クーデリア・藍那・バーンスタインの暗殺騒ぎ。

 これを聞くために私はここにいるのだから。

 元首相が、当時オペレーターだったというのは、存命している当時の関係者より既に裏取りを得ている。

 

「先に言った通り、私は同僚たちと管制室でオペレーターの真似事をしていた。その時にオルガ団長に通信で襲撃がある事を通知されてね。……いやあ、大変だった。若社長や団長に言われるままに戦闘班を送り出し、向こうのモビルワーカーを十機程スクラップにした時にそれは現れた」

 

 ――それ、とは?

 

「モビルスーツだよ。()()()()()()()()()()()()だ。つまり、ギャラルホルンの正式な部隊が襲撃してきたのだと私たちは思った」

 

 ――ですがそれは。

 

「ああ、解っている。だが公式見解として『そうである』と向こうが公表しているのだ。蒸し返すのも今の地球政権に悪いだろう」

 

 ――あ、はい。ではこの件はオフレコ、ということで。

 

「有り難う」

 

 ――ですが、その時何があったのかは教えて貰えませんか?

 

「ああ、構わないとも。私の視点になるが」

 

 ――構いません。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 もう、半世紀は昔だが、あの時の光景は未だに思い出せる。

 当時、基地にいた戦闘班は六人程度。

 戦闘班は他に数名いたが、休暇や護衛の仕事で留守にしていた。

 で、オルガ団長を初めとする数名が、フレームアームズに乗って迎撃に出た。確か、轟雷系が三機にレヴァナントアイが一機出撃したのではなかったかな?

 若社長の指示で敵モビルワーカー隊を壊滅こそしなかったが、そうだな……十機程撃破したら、残りが引いてグレイズが現れた。

 先にも言ったように、きちんと整備された純正のグレイズだ。

 モビルワーカーでも解ってはいたが、あれは駄目押しだったな。お陰で社内に動揺が走ったよ。

 しかし、若社長だけは違った。

 

 

 

『あー、こちらMSG社長、明星・龍治。ギャラルホルン製の機体に乗る貴君らに問う。此度の襲撃、その理由を明らかにされたし』

 

 

 

 ああ、勿論馬鹿な話さ。

 当時ギャラルホルンは、唯一の公的な軍隊だ。

 私設武装組織でしかなかった当時のMSGとは、社会的な評価も違う。

 その筈だったのだが――

 

 

 

『我々はこの理不尽な襲撃に対して遺憾の意を表明する準備がある。貴君らの攻撃が始まった瞬間より、既に映像と音声は記録しており、いつでも複製が可能だ。もし、此度の攻撃の理由が明らかにされない場合、これらを火星だけでなく、地球の各経済圏に流布させて頂く。勿論、地球にあるギャラルホルン本部にも正式に抗議を入れさせて貰おう』

『何を馬鹿な――』

『ああ、それとだ……そちらの機体にあるデータも余さず公表しよう。搭乗しているパイロットデータを調べれば、誰が乗っていたかは解るだろうしな。まさか栄光あるギャラルホルンが! 民間施設に意味のない山賊紛いの襲撃をする筈もないだろうしなぁ!!』

 

 ――え、えげつな。

 

 おや、そうかな?

 相手はギャラルホルンの名を騙った犯罪者だ。

 であれば、再発防止を求めるのは当然だろう。

 

 ……まあ、私も当時はそう思ったがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局彼らは、襲撃の理由を告げる事は無かった。

 余計に苛烈になった攻撃だが、まあ戦力差はどうしようもない。幾ら数があろうともモビルワーカーとフレームアームズでは後者に軍配が上がるのは当然と言える。

 モビルワーカーは密集せずに散開し、基地へと攻撃を仕掛けたが――オルガ団長たちによって徐々にその数を減らしていった。

 無論グレイズも攻撃に参加していたが、ほぼ無意味だった。

 射撃がその時の兵装のテーマだったからね。

 相手は、ガトリングやらミサイル、キャノン砲などを装備した轟雷やレヴァナントアイの弾幕を抜けられない程度の腕前だった。

 で、そんな時だ。

 三日月さんの機体が使えるようになったのは。

 

 ――三日月・オーガス氏ですか。

 

 そう。

 今でも鮮明に思い出せる。

 夜明け。

 細く伸びる朝日に照らされて、地下の格納庫が地上へと上昇する姿を。

 そして、格納庫が開き――現れたバルバトスを。

 

 ――ガンダムバルバトス。鉄華団の主戦力と言われていた三日月・オーガス氏の愛機ですね。

 

 そうだね。

 彼は、鉄華団の誰よりも苛烈なパイロットだった。

 仲間を護る為なら、どんな強敵にも食らいつく人間だったと言える。

 

 ――つまり、敵には容赦しないタイプの人だったと言うことですか?

 

 ……いや、敵や味方にも、だね。

 

 ――味方にも?

 

 あの人は、手加減が酷く苦手でね。

 若社長やオルガ団長たちに散々言われて漸く徐々に覚えていったくらいだ。

 

 ――はあ。

 

 だから、容赦なんてせずにグレイズは破壊されたよ。

 確か、剣でコックピットごと一刀両断されたんじゃなかったかな。

 お世話になってた会長さんが、三日月さんを気に入って、一振り用立ててくれたのさ。

 

 ――モビルスーツ用の刀、ですか。

 

 ああ。三日月さんはMSG発足当時、若社長からある流派の映像データを貰っていてね。

 

 ――(ごくり)

 

 示現流。

 その流派の修行映像を見た三日月さんは、見様見真似で同じように刀を振り始めた。

 だからかな。

 相手が巻藁だろうとグレイズだろうと、あの時の三日月さんには変わりがなかった。

 

 ――それはつまり。

 

 鎧袖一触さ。

 ブースターを全開で噴かして、蜻蛉の構えからの大上段の振り下ろし。

 生半可な相手では反応すら出来ない一撃だったよ。

 まあ、勢いが付きすぎたせいで初撃は右腕を斬り飛ばすだけで終わってしまったが。

 だが、二撃目はコックピットごと相手を両断してみせた。

 そこからはまあ、別の二機のグレイズとモビルワーカーが襲い掛かってきたが、グレイズは半壊に追い込んで撤退、モビルワーカーは殆どがスクラップになった。

 で、問題はその後だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――ああ、アレですね。『パレード』。

 

 そうだ。

 ()()()()()()()()()()パレードだ。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 インタビューを終えた記者の女性を見送った後、老人――タカキ・ウノは自室である映像を再生した。

 

『えっと……これでいいの?』

 

 映っているのは背の低い少年だ。

 

『ねえ、なんで皆カンペ見せてんの? 字が読めるようになったって言ってもまだ勉強中なんだけど』

 

 思わずふふ、と笑みが零れてしまう。

 そう言えばあの人は、人一倍勉強が苦手だった。

 

『えーっと、「初めて実戦で刀を使った感想は?」か。んー、初撃で外したのはちょっと不満かな。本当なら、最初の一発で仕留めるつもりだったし』

 

 カメラの外で紙がめくられる音が聞こえた。

 

「「相手は強かったか?」。正直解らない。だって向こうに何もさせないで倒したし……強かったのかな?」

 

 別に公的に残すつもりはない――ただ戦闘後の感想を撮っているだけだ。

 プライベートなインタビュー。

 

『ところでさ、被害ってどんなもんなの? 若社長』

『……怪我人は出てるが、死人は出てねぇ。幸いな事にな』

 

 画面外から若社長の声が聴こえる。

 

『……そっか』

『そっか、じゃねぇわ。お前、調整無理矢理終わらせて出たらしいじゃねぇか。おやっさんや整備長さんがカンカンだったぞ』

 

 じゃ、後で謝らないとな。

 そう言う三日月。

 画面外からは呆れるような溜息と共に笑い声も聞こえてきた。

 

『それでさ。オルガ、若社長』

 

 眼が、じっとある方向に向けられる。

 その意志の強さはカメラ越しの自分にも感じられ、思わず総毛立った。

 

 

 

 ――次は、どうする?

 

 

 

 若社長は言う。

 確か、笑みを浮かべていた筈だ。

 

『ちょっと嫌がらせしてやろう。ついでに色々と巻き込まれて貰おうか』

 

 誰に、などは言わない。

 敵が誰かなど既に解っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ」

「なんだよ」

 

 ダンテは鏡を覗き込んで髪をセットしている。

 そんな彼に昭弘は話し掛けた。

 

「いつものジャケットじゃ、駄目なのか?」

 

 彼らは、歳星で名瀬より贈られた黒いスーツを見ながら話をしている。

 

「別に俺らはただの護衛だろ。だったらいつもの恰好の方がいいと思うんだがよ」

「まあ、そうだな」

 

 チャドもまた同意する。

 しかし、ダンテは違った。

 

「ったく、これだから脳筋は。いいか、若社長が言ってただろ? 『大事なのは説得力だ』って。そりゃあ荒事すんならいつもの恰好の方が良いさ。でもな、それでビビんのはチンピラぐらいだろ」

 

 相手は本物の軍隊(ギャラルホルン)だ。

 そうダンテは言う。

 何のために黒スーツにサングラス姿(スーツの下には特製の防弾防刃性インナーを着込んでいる)で統一して動くのか考えろ、と。

 

「……ビビらせる、いや、見せつける為だってか」

「そうだ。俺らはチンピラじゃねぇ、お嬢さんの護衛なんだってギャラルホルンやクソ親父に見せつけるのよ」

 

 色々と勉強しているダンテは、解っていた。

 相手が嫌がる方法なぞ掃いて捨てる程にあるという事を。

 無ければ作ればいいのだという事を。

 

「それに若社長は二の矢、三の矢だって準備するお人だ。この程度で済ますワケねぇだろ」

「ああ、アイツらに言ってたアレか。でもアレってブラフだろ」

「――そう思うよな?」

 

 エイハブリアクターの影響下ではあらゆる電子機器は使えなくなる。それが常識の筈。

 だが――

 

「何の為に俺がレヴァナントアイに乗ってると思ってんだよ」

 

 笑う。

 小型のタブレットを取り出し、操作。

 差し出された画面には、レヴァナントアイからの視点で、一部始終の映像と音声が記録されていた。

 

「既にこの映像と音声は複製されて、パイロットデータと共に火星中にバラ撒かれてる。合成だ何だのって言われても、これ幸いにって突き上げられるだろうぜ。なんせ、火星の殆どの人間にギャラルホルンは嫌われてるからなぁ」

 

 どこか引いたような表情で、友人を見遣る昭弘とチャド。

 

「こんな状況で下手を打てば、大打撃を受けるのはどんな馬鹿でも解るさ。だからギャラルホルンもクソ親父も今は動けない」

「……ああ、若社長が言っていたな。他人の目がある所で悪事を働けるようなヤツは滅多にいないって」

「そう。正義の看板を背負ってるような組織なら猶更だ」

 

 納得する二人。

 しかしダンテは若社長の懸念も理解していた。

 

「……(それでも動く可能性もあるんだけどな)」

 

 しかしその場合も、対応策は講じてある。

 その時『敵』は、きっと――本当の暴力、蹂躙とは何なのかを知る事になるだろう。

 

 

 

 

 しかしその前に。

 

 

 

『私はギャラルホルン実働部隊所属、クランク・ゼント!』

 

 

 新たな厄介事が舞い込むとは思いもしなかったワケだが。

 




 多分次回は、オルフェンズ二次創作でも余りない展開になるのではないかと。
 尚、三日月は最終的には某親分(OG)のようになって貰おうかと。……性格まで似ないだろうけど。



 機体解説:ASW-G-08 ガンダムバルバトス

 厄祭戦を戦い抜いた七十二機のガンダムフレーム、その一機。
 汎用特化の機体で様々な戦況に対応できるように調整されている。
 とある整備長の熱意によって厄祭戦の資料を基に当時の姿にレストアされる。しかし出力云々は厄祭戦当時よりも劣っているらしい。
 原作で言う所の第4形態で今回出撃した。
 しかし三日月としては、フレームアームズとミキシングする事も考えており、今後も別機体の装甲や武装なんかも色々と試していきたいと思っている。
 データだけだが、某鉄塊の破城槌や侍達人剣なんかに興味を抱いていたり。

オルガの搭乗機について

  • 見た目特化装甲付きGA
  • 月の将軍Z0/G
  • 夜の曲刀LX
  • 白皙の魔鳥X2
  • やっぱ獅電でしょ

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