俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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お久し振りです。
アンケートですが、獅電が有力ですね。
二期の都合上、恐らく一度はオルガは獅電に乗ると思います。……多分その後スパロボ的乗り換えイベントをすると思います。


 用語解説:決闘

 厄祭戦以前にあった調停方法。
 恐らく宇宙進出を果たし火星まで人類が及んだことで、統治機構の目が行き届かなかったせいで生まれた。
 代表を選出し、戦い合わせる。
 古い決着方法ではあるが、未だに圏外圏では用いられている。特に極道組織では当たり前に現役の方法。



玖:角笛の先兵 ーグレイズー

 通信機を手に取り、オルガは吐き捨てるようにクランク・ゼントの決闘要請を突っぱねた。

 

「おたくは馬鹿か。そんな一方的な要求が通る筈ねぇだろ。そういうのはな、脅迫っつーんだよ」

『……』

 

 彼が述べたのを要約すれば。

 

 クーデリア・藍那・バーンスタインと鹵獲されたグレイズを引き渡せ。引き渡しが済めば、今回の件は自分がなんとかする。

 

 そう言っているのである。

 

 しかし。

 

「それ以前におたくは解ってんのか? 俺らはとっくに今回の一件を、火星の全自治区政府や各種メディア、一般人からスラムの人間まで、一切区別せずに広めている。アリアドネを通して、ギャラルホルンの本部にも正式に抗議を出した」

 

 勿論、ギャラルホルン火星支部に厳重な抗議をしたことは言うに及ばずだ。

 

『な……!?』

「先に手ぇ出してきたのはおたくらだ。なら、被害者である俺らは正当な権利として、抗議も出すし反撃する。当たり前の話だろ? そっちがどんな理由でクーデリアお嬢さんを殺そうとしているのかは知らねぇし、興味ねぇが……道理が通らねぇ理由なのは解る」

 

 クーデリア暗殺は、本来は秘匿しなければならない案件だ。

 故に犯罪者としてMSGを襲撃し、そのどさくさに紛れて彼女を殺そうと動いた。

 代表首相の名代で地球へ行く筈の彼女をギャラルホルンが殺そうする。

 これは各自治区で起きている独立運動と言う名の暴動を加速させる事になるだろう。そしてその矛先は、いずれギャラルホルン火星支部へと向けられるのは明白だ。

 各自治区政府も、矛先が自分の方へ向かないのならば静観、ないし同調するだろう。

 そうなってしまえば、依頼者であるノーマン・バーンスタインは火星支部とのパイプを失う事になる。

 彼も表向きは火星独立を掲げているのだ。

 幾ら実情がギャラルホルンの腰巾着であろうとも、その公約を掲げて当選した事実は変わらない。

 しかし、正式に抗議を受けた以上――ギャラルホルン本部は支部を徹底的に精査する必要がある。

 マッチポンプはギャラルホルンのお家芸であるとは言えども、純粋な反乱や暴動はコントロール出来ないのだから。

 

 更に。

 今度は龍治がオルガから通信機を受け取って、話し掛ける。

 

「あー、MSG社長の明星だ。それ以前に、俺らはそちらさんにかなり配慮してんだがな?」

『どの口が……!』

 

 思わずそうクランクが反論する。

 だがその反論は、秒も待たずに叩き潰される。

 

「今回はギャラルホルンを名乗る賊がやったんだ、と逃げ道だって用意出来る言い回しで俺は抗議文を出したんだぞ? 脱走兵扱いにするなり、そっちのパイロット殺して賊が偽装してただの、幾らでも言い訳が出来るだろ。それなのにアンタの決闘を受けた場合、今回の一件は正式にギャラルホルンがお嬢さん暗殺の為にいち民間企業を襲撃して叩きのめされた、と言う醜聞になるんだが……あんた、それで良いのか?」

『うう……っ!?』

 

 どうやらそこまで頭が回っていなかったらしい。

 

「……それを踏まえた上で質問だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 長い沈黙。

 その後に、クランクは老け込んだ様子で呟いた。

 

『…………つまり、ここで戦えば、ギャラルホルンの非道を公的に認める証人に、俺はなるのだな』

「そういう事だ。……まあ、どうやらアンタより早くアンタの上司は動いたみたいだが」

 

 そう言って、若社長は指示を出す。

 赤い布を機体の腕に巻いたグレイズへ、とある映像データを送信する。

 

『……これは?』

「安心しな。クラッキングするつもりはねぇよ。つい今し方、ギャラルホルン火星支部からの公的な発表が出たんでな」

 

 アンタ、人身御供にされてるぞ。

 

 龍治の言葉に背筋に冷たい物が走るクランクは、データを見た。

 そこには――部下と同僚を殺し、機体を奪った賊とクランク・ゼントが共謀していた――との公式見解があった。

 

『――――コーラル。これがお前の判断か』

 

 呻くようにクランクが誰かの名前を口にする。

 コーラル。

 確か、ギャラルホルン火星支部長の名前がコーラル・コンラッドだった筈だ。

 どうやらその男が、ノーマンと共謀してクーデリアを殺そうとするギャラルホルン側の人間のようだ。

 

「作戦行動中に賊に襲われ部隊の人員は全滅。その手引きをしたのがアンタだと、名指しで非難してるな。……俺らに(なす)り付ける事が出来なくなったから、どうやらアンタを生贄にしようとしているみたいだが」

 

 近々、クランク・ゼント元二尉討伐の部隊が送られる、ともあった。

 

「いやはや、ここまで露骨だともう笑うしかねぇな。俺らのように裏の事情を知ってるヤツなら特に、な」

『……どういう意味だ』

 

 薄ら寒い謀略の気配を感じ取ったのか、クランクの声には覇気が無かった。

 しかしそんな事を気に掛けるような人間はMSGにはいない。

 相手はこちらの命を奪おうとした敵だ。

 

「ウチが無傷でグレイズとモビルワーカー数十機を壊滅させた事は、アンタや生き残ったグレイズのパイロットから聞き取りはしているだろう?」

『ああ。だからこそ俺は、部隊を率いずにこうして一人で……』

「ちょっと待て。って事はアンタ、上の命令に背いてここに来てんのか?」

『……そうだ。これ以上無駄に犠牲を出す事を、どうしても俺は認められなかった。しかも……相手が子供なら猶更だ』

 

 子供。

 その言葉を受けてオルガの眉が片方動く。

 我関せずと言った様子の三日月もまた、鋭い視線を赤い布を腕に巻いたグレイズに向ける。

 

「……子供、ねぇ。確かにウチには子供は多いが、躊躇う理由にはならんだろ。アンタらにとっちゃ、孤児や元ヒューマンデブリなんて気にも留めねぇ、路上に転がる石ころ程度の存在の筈だ」

『そんな事はない! 下らない大人の争いに、子供が要らぬ犠牲になる事を俺は認めない!』

 

 その発言を受けて、龍治は目の前のモビルスーツに乗る男がどんな人間なのかを大まかに理解した。

 実直な軍人で、子供に銃を向ける事を躊躇う人格者、といった所だろうか?

 路地裏で独り震えているような幼い子供ならば、彼の暖かさは救いになったかもしれない。

 

 しかし、彼らはそれを侮辱と受け取った。

 

「――は?」

 

 動いたのは三日月だ。

 若社長の持っていた通信機を奪い取り、話し掛ける。

 

「アンタ、俺らの事馬鹿にしてんの?」

『その声……あのガンダムのパイロットか』

 

 あ、これ多分、あのオッサンの心を圧し折る会話になるな。

 そう龍治は直感的に理解した。

 

「犠牲とかさ、そっちが言い出すのって何か違わない? 先に手を出したのはアンタらの方でしょ。俺たちはそれを防いだだけで、それなのに、まるでこっちが悪いように言うのは卑怯なんじゃないの?」

『……そうだな。だが解ってくれ。俺も部下や同僚を、キミたちに殺されてる』

「何? あんた、恨み言でも言いたくてここに来たの?」

『そうじゃない。殺し殺されたを繰り返していたら、結局俺たちは恨みの連鎖に引き摺られてしまう。だから、どこかでそれを断ち切る必要があるんだ!』

「だとしてもさ、それ、俺たちを殺そうとしたギャラルホルンにいるアンタが言っていい台詞じゃないよね」

『それは……』

「三日月」

 

 しかし、そんな三日月の頭に若社長は手を置く。

 

「さっき言ったろ? あのオッサンは、もうギャラルホルンじゃねぇよ。不名誉除隊扱いで今じゃ犯罪者だ」

「……」

 

 三日月から通信機を受け取り、

 

「さっきの質問の返答を聞こう。なあ、見ず知らずのオッサン、アンタはどうしてここに来た?」

『……前言を撤回する。俺は、決闘になど来なかった』

 

 腕に巻いてある赤い布をグレイズは引き千切った。

 

「……そうかい」

『ああ、ギャラルホルンの名を騙る頭のおかしい馬鹿者が、言い負かされて尻尾を巻いて逃げようとしている。ただ、それだけだ。見逃してくれないだろうか……』

 

 最早体裁を取り繕う事もなく、命乞いをされる。

 こちらに損害を与えたのはギャラルホルンだが、実行犯の大半は既に処理し機体も回収している。

 であるならば、わざわざ『やさしさ』の選択を間違ったオッサン一人追加で殺した所で、得る物は少ない。

 そこまで若社長は見越して、離脱を許す事にした。

 

「何の話だ? 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。それでいいじゃねぇか」

『……感謝する。それと、他の子供たちに伝えてくれないか? ……『大人の醜い争いに子供を巻き込んで済まなかった』と……』

 

 他の、と濁してはいるが、その中にはきっとクーデリアの事も含んでいるのだろう。

 なんとなくだが、そう思えた。

 

「……オッサン。アンタ良い人だな。ただ、良い結果に結びついてねぇけど」

『…………そうだな。結果として子供殺しの片棒を担いだ俺が何を言っても、滑稽でしかないな。しかも死んだのはこちら側だけ。……は、酷い道化もいたものだ』

 

 そう吐き捨て、しかしクランクは穏やかな声で言った。

 

『もう、君たちと遭う事もないだろうが、幸運を祈る』

「おう。そちらさんも、何するつもりか知らねぇが、健闘を祈るよ」

『……有り難う』

 

 こうして、本来なら行われる筈だったクランク・ゼントと鉄華団の一騎討ちは流れた。

 彼が何を思い、何を為すつもりなのか。

 それは誰にも解らない。

 上司も部下も、同僚も、組織という後ろ楯すら無くした男は、しかし決意も新たに去っていく。

 

「……斬らなくて良かったの?」

 

 三日月がグレイズの背を見詰めながらオルガと若社長へ訊ねる。

 

「……まあ、そうだな。俺も決闘を受けた方が手っ取り早いとは思うが、後の事を考えるとどうしても、な」

「敵なら斬っても良いが、あのオッサンは敵じゃなかったからなぁ。味方とも言えねぇけど」

「味方じゃないなら、敵じゃないの?」

 

 そう言われて、オルガと若社長はお互いに顔を見合わせた。

 

「敵でも味方でもない連中は、結構いるもんだぞ」

「そうなんだ」

「まあ、先に撃たれたんなら斬っても良いさ。最終的な責任は団長である俺が持つ」

「更にその責任は代表やってる俺が背負うんだけどな」

「……ふーん」

 

 火星ヤシをポケットから取り出し、口に放り込む。

 

「若社長」

「おう」

「俺、ちょっと修行してくる」

「修行って、示現流のか?」

「そう、ジゲン流の」

「道着に着替えて修行しろよ。上半身裸でやんのは屋外でのマラソンの時とかだけにしとけ」

「解った」

 

 すたすたと地下にある格闘技や剣術を習う為の日本式の道場へと三日月は歩き出した。

 なんとなく釈然としない雰囲気を醸し出しているように見えた。

 

「……納得いってねぇなありゃ」

「まあ、そうでしょうね。ずんばらりんと斬って終わりがアイツの好みでしょうし」

「そっちの方が確かにスッキリするだろうけどなー。悪巧みとか、アイツ苦手みたいだし」

「出来るかもしれませんけど、しようとすら思わないでしょうね。……それに多分、ミカが納得いってねぇのって、あのクランクとかいうオッサンじゃなくて、オッサンを切り捨てたギャラルホルンの方だと思いますよ」

「……あー、成程」

 

 仲間への情が厚い三日月にとって、クランクのやり方は到底理解出来ないものだった。……今迄の三日月のままであったなら、だが。

 そして、クランクの決死の行動を切り捨てたギャラルホルンの冷淡さは、今の彼にとっても理解の範疇外だった。

 

「仲間が間違ったら、殴ってでも止める覚悟を持てって俺が教えたからなぁ……そりゃ不機嫌にもなるか」

 

 どうフォローするべきか考えるオルガの背を叩きながら、若社長は大笑いした。

 

「兄貴分は大変だな。弟分の成長にも目を配らなきゃいけねぇんだから」

「だったら若社長は俺らの親父分でしょうよ」

「おいおい、俺みたいな若い男捕まえて親父扱いはねぇだろ」

 

 しかしそんな若社長に社員たちから追撃が入る。

 

「え、若社長って若いかもしれないけど、俺らにとっちゃ親父みたいなもんだよ」

「美味いもんくれるしなー」

「勉強させてくれる」

「強くなる方法だって教えてくれるじゃん」

「まあ、最初は信じられなかったけどよ……今はアンタが大将じゃねぇと、ここは成り立たねぇよ」

 

 皆が思い思いに口にするのは、感謝の言葉だ。

 

「……まだ結婚もしてねぇのに、子供ばっかり増えやがったなぁ」

 

 頭を掻き、龍治もまた踵を返す。照れているのは明白で、何人かはそんな彼をニヤニヤと見ていた。

 

「基地に戻ったら幹部連中には先に明日からの動きを説明するからな。色々とデカく動くぞ」

『『『了解っ!!』』』

 

 ぞろぞろと皆が基地へと帰っていく中、

 

「……うーん?」

 

 一応いたトドは首を傾げていた。

 

「どうしたトド」

「あ、先代。いやね、若社長が『あの野郎は人身御供だ』みたいな事言ってたでしょ?」

「おう」

「ありゃどういう意味かなーと」

「解んねぇか? ギャラルホルンお得意のマッチポンプだよ。仮に生きていてもあの野郎の言い分を聞かずに殺せば、身内殺しって嘘は真実になる。死んでいたのなら猶更―――死人に口なしってヤツだ」

 

 マルバから意味を聞いて、トドはその身を震わせる。

 

「うひゃーえげつねぇ」

「そうだな。正義の味方のやる事じゃねぇよなぁ。……それが解ってたから、若社長は手を出さなかったんだろうぜ」

「成程ぉ」

 

 基地へと歩を進めながら、二人は会話を続ける。

 

「……つっても先代、このままだとギャラルホルンと全面的に戦争する事になりませんかね?」

「どうだろうな? 天下のギャラルホルンだぜ? そこまでの馬鹿はいないと思いたいが……」

「流石に俺もいねぇとは思いたいですよ、そんな後先考えねぇような馬鹿。……それはそうと、もしそうなってもなんとかなりそうって思いません? 俺ぁあのヴェスパーとか見てるとそう思いますよ」

「……確かにな。まあ、どっかの馬鹿が暴走しなけりゃ、そんな大事にはなるめぇ。いつも通り末端が首切られて終わりだろうぜ」

「今回馬鹿やらかしたのが火星支部のトップっぽいですけどね」

「…………あ」

 

 つう、とマルバの頬を汗が伝う。

 背中に冷や汗も感じた。

 

 まさか。

 そんな。

 そんなバカな。

 

「……馬鹿が馬鹿をやるかもしれねぇってか」

 

 トドもまた、顔を顰めて唸る。

 

「それにですぜ、あの人らに喧嘩売ったようなモンじゃないですか。火星のギャラルホルン、ボロ雑巾みたいになるんじゃ……」

 

 今回の一件について、例の二人は農場に出掛けていた為に実害はないが、しかし泊まる予定だった基地が襲撃されたのだ。

 もしこの襲撃に関して『落とし前』をきちんと付けなければ――テイワズとタントテンポの二大極道組織が、その報復に動くだろう。

 恐らく若社長は名瀬とジャンマルコに連絡している筈だ。

 二人が無事だということも踏まえて。

 しかしそれは、二人が無事だったからと言って、報復を控える理由にはならないだろう。

 

「……やっべぇ」

 

 マルバは思う。

 このままでは、ギャラルホルン火星支部はMSGだけでなく、テイワズとタントテンポとまで戦争する事になるだろう。

 例の二人――マクマードやテッド個人に心酔している部下も多い。

 名瀬やジャンマルコもその類だ。

 更に名瀬は、龍治とオルガの兄貴分だ。

 

 盃を交わした『親╱弟』が舐められて、黙っていられる『子╱兄』などいるものか。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

『――状況は解った。それで、どうするつもりだ?』

 

 細かい部分は違えども、名瀬とジャンマルコにそう問われ、龍治は今後のプランを説明する。

 

 簡潔に言えば、無視だ。

 

 あの手の人間は、自分の行いに何らかのアクションが返ってくる事が普通だと思っている。

 恐らく若手時代はそうではなかったかもしれないが、しかし現在の彼らは『そう』だ。

 故に、取る選択は無視の一択。本当にただそれだけ。

 彼らを直接追及するのではなく、ただ事実を広めるのみ。

 誇張脚色は一切行わず、ただ事実のみを列挙する。

 迅速に、しかも人を選ばず。

 火星に住まう人ならば誰であろうと知れるように、龍治は動いた。

 二輪車に変形出来る地上走行型のフレームアームズを引っ張り出し、その機体に紙のビラやデータを積んで各自治区やそれ以外の居住区にバラ撒いたのである。勿論映像も火星のあらゆる動画サイトに載せた。

 人々の関心が向けられれば、ギャラルホルンが今後、どう動こうとしているのかを注視する目は増える。

 そうなれば、彼らは思うように動けない。

 正義と秩序の担い手が悪辣な行動を取れば、人々は急に掌を返して、彼らを糾弾するだろう。

 そうなれば、彼らは今の職を失い、世間から迫害され、人々から軽蔑と嘲笑に晒される――かもしれない。

 死ぬかもしれない、という想像が働かなくとも、そうなれば彼らの末路は決して愉快な物にはならないのは明白だ。

 更に駄目押しとして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「揃ったな」

 

 MSGのとある会議室。

 そこに集められた実働部隊鉄華団団長のオルガ、その幹部たち、それに整備班から雪之丞、大人組としてマルバとトドがいた。

 それ以外の社員たちもまたカメラを通して注視している。無論、仕事をしている者もいるワケだが。

 クーデリアとフミタンもまた、居心地悪そうに席に座っていた。

 

「っと、その前に……聞きたいことがある」

 

 龍治が参加者を見渡し、

 

「今回の一件、クーデリアお嬢さんをギャラルホルンに差し出せば、全部丸く収まる。……そう思ってるヤツはいるか?」

 

 龍治の質問に誰も答えない。

 そうなる筈がない、と理解しているからだ。

 故に代表してオルガが言う。

 

「ならねぇでしょう。多分渡したら、そのまま犯罪者として俺らは始末される。まあ、それが出来るかどうかは別として」

「俺もそう思う」

 

 若干肩を強張らせたクーデリア本人を横目に、話は進んでいく。

 

「さて、そんじゃあ依頼の説明だ。現クリュセ独立自治区代表首相であるノーマン氏は、名代として娘であり独立運動家としても名高いクーデリアお嬢さんを、アーブラウとの交渉の為に地球へと派遣する。まあ、その案内役と護衛に俺らが選ばれたワケだが……お嬢さん、これはアンタが考えたのかい?」

 

 突然水を向けられて、慌てて頷くクーデリア。

 

「は、はい。フミタンに、地球までの往復実績がある会社をリストアップして貰いました。その中で私がここを選びました」

 

 フミタンを見遣るオルガとビスケット。その視線は、少し複雑だ。

 そんな二人の態度に何か感じたのか、ユージンもまた少しだけ彼女を注視する。

 

「で、交渉の内容は……ハーフメタルの流通規制撤廃が主だ。他にも幾つか細々とした別件があるみたいだが、大枠はそれの為だとさ」

 

 若社長の言葉に、クーデリアは頷くことで肯定する。

 

「だが……この依頼が失敗する前提で動いている御仁もいるみたいだがな」

 

 若社長は、クーデリアをちらりと見て、

 

「首謀者は解らんが、関係者は今の所二人。このお嬢さんの親父で代表首相でもあるノーマン・バーンスタインとギャラルホルン火星支部のトップらしいコーラル・コンラッドだ」

 

 そう断言する。

 彼女の人権売買契約書は正規の物だった。

 これが悪意ある第三者の手に渡れば、彼女は晴れてヒューマンデブリとなるだろう。

 人権の無い見眼麗しい少女が「どう扱われるか」など、考えるまでもない。

 有史以来、美少女を貪るケダモノなど掃いて捨てるほどにいるのだから。

 彼女自身には予め事情を説明しており、その表情は暗い。

 無理もなかった。

 彼女の父は、彼女の活動をそれ程までに疎ましく思っていたという証明なのだから。

 傍らにいるメイドの手を握るクーデリア。

 恐らくは彼女からすれば無意識の行為だ。

 クーデリアにとって、フミタンという女性は信頼に値すると思っているからこそ、握る手に込められた力は強い。

 その暖かさこそが、彼女にとって毒になっているとも知らずに。

 周囲から注がれる同情、憐憫、疑念……様々な種類のそれを、クーデリアは感じているだろう。

 しかしそんな周囲の反応は、龍治の「依頼続行」の発言で霧散する。

 

「……まあ、他にもプロジェクトはあるし、色々と関係各所との連携もある。お嬢さんの案件だけに注視するワケにゃあいかん」

「あ、そうだよな。もうすぐ『グランプリ』と『キャノンボール』があるんだっけ」

「『ストラグル』もだ」

 

 何かしらの暗喩のようだが、どうやら他にも仕事を抱えているらしい。

 

「工事や建設の仕事も増えてきてるんだ。ここがウチの何度目かの正念場だってのは全員理解しているよな?」

 

 頷く少年たち。

 

「宜しい。つまり……今から班分けするぞ」

 

 そう言うと、オルガ団長が明星社長の横に歩み寄る。

 

「クーデリアお嬢さんの護衛組と、姐さんたちと『グランプリ』や『キャノンボール』を取り仕切るレース組、そして工事建設作業組だな。解っているとは思うが、護衛組はギャラルホルンと事を構える可能性がある。危険手当も出るが……死ぬ確率も高い。世の中何があるか解らんからな」

 

 それを踏まえた上で人員は分けている、と若社長が言う。

 

「まず俺とミカ、それと若社長はクーデリアお嬢さんの護衛組だ」

 

 そう言うと誰もが妥当だと頷くではないか。

 

「操舵手はユージン、作戦参謀はビスケット。残りの戦闘班は昭弘、シノ、チャドとダンテ。整備班はおやっさんに任せる。で、グランプリ関連はマルバとトドのオッサンが取り仕切ってくれ。姐さんらに手を出して資源採掘惑星で強制労働なんてオチは勘弁してくれよ?」

「馬鹿野郎、あんな怖い人のオンナに手を出すとか冗談じゃねぇ」

 

 マルバの言葉に頷く者、苦笑する者、声を上げて笑う者と様々な反応を見せる少年たち。

 三日月が言っていたように、一年前まで搾取していた大人と搾取されていた子供の関係とは思えない応酬だ。

 

「残りは工事建設作業組だ。まあ、他にも依頼をこなして貰うと思うが、昌弘たちが中心になって動いてくれ」

 

 誰もが異を唱えない。

 子供や大人に関係なく、仕事に対する真摯さが伺えた。

 

「あ、あの」

 

 おずおずといった様子でクーデリアが手を挙げた。

 

「明星社長が護衛に参加するのはどうしてでしょうか? 社長のような人が、私のような小娘の護衛につくのはリスクが大きいのでは……」

 

 その言葉に視線を逸らすオルガたち。

 解ってはいるのだ。

 しかし、

 

「……いや、はは。実は、ウチの戦闘班、若社長に勝ち越した連中が一人もいなくて」

「え?」

 

 呆気に取られた様子のクーデリア。

 

「専用機持ちの若社長は、ウチの最大戦力なんだ。解りやすく言っちまうと秘密兵器だな。……通常戦力で一番強いのはミカだけど」

 

 もう、何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして話は『パレード』のそれに移る。

 

「まあ、分かっているとは思うが、ギャラルホルンの妨害だって当然予想される。でも、大っぴらには殺せない。だからどさくさに紛れて殺そうとしてるんだろうさ」

 

 これはそんな連中をコケにすると同時に、クーデリアの身を護る為の策だと若社長は語る。

 

「火星全体の雇用の活性化なんて、クリュセ以外の自治区にとっても有り難い話なんだ。それにお嬢さんにはノアキスでの実績がある」

 

 例え神輿でも、旗頭としての責務を全うした彼女。

 価値を見出だした嗅覚の鋭い政治家はある一定数は存在していると、若社長は踏んでいた。

 事実、先のギャラルホルン襲撃について情報を流すと、秘密裏にではあるが支援を申し出てくれた政治家も何人かはいたのだから。

 

「だからよ、各自治区を通し、火星全土に()()()()()()()()()()()()()()を大々的に宣伝する」

 

 参加不参加は兎も角、こうして火星市民の目に入れば、ギャラルホルンとて無体な真似は出来ないだろう。

 若社長は既に火星支部にも式典への参加を望むメールを公式に送ったのだ。これであちらも知らぬ存ぜぬは通らない。

 

「さて、そんなお嬢さんを護衛する俺らはどうするのか、と言えば……文字通り黒子に徹するんだなコレが。代表の俺や団長やってるオルガはちと格好を考えなきゃいけねぇが、それ以外は俺が指示した通り防弾防刃製のインナーと、黒スーツ、それにインカムを内蔵したサングラスで統一してメディアに映る。髪もある程度は整えとけよ?」

 

 そう告げると、思い思いの返答が返ってくる。

 色々と思う所はあるだろうが、しかし腹を括った表情を会議に参加している全員が浮かべていた。

 そんな空気に触発されたのか、クーデリアの顔にも赤みが増す。目には見違えるような生気が宿っているのが若社長たちには見えた。

 龍治は笑みを浮かべて頷く。

 これなら十分にこの娘は、パレードの主役を演じてくれるだろう。

 パン、と手を打ち鳴らし、全員の意識を自分に向ける。

 

「さあ、派手に行こうか野郎ども?」

 

 ニヤリと笑いそう告げる。

 了解の声が思い思いに上がり、オルガやユージン、ビスケットたちは動き始めた。

 雪之丞もまた、整備班の人員を招集して三班に振り分けている。

 龍治もまた自分の名前で、自治区政府やギャラルホルンが動くよりも迅速に各地へ情報を伝播させていった。

 

 

 

 

 

 出発式典は一週間後の午前十時より開催。

 その情報を掴んだ各自治区の政治家や活動家、実業家たちは、それぞれの思惑を胸にクリュセへと集い始める。

 交渉の成功を望む者も、失敗し戦火が拡大する事を望む者も、はたまた――どちらに転んでも利益を得ようとする者も。

 まさに魑魅魍魎。

 しかし正式な参加者でなくとも、クリュセに来る者たちはいた。

 一般市民たちだ。

 特に独立運動に関心のある人々の反応は顕著だった。

 彼らは独立運動のデモなどに参加せず、クーデリア・藍那・バーンスタインの出発式典に足を運ぶ事を選んだのである。

 各自治区に存在するマスメディアもまた、スクープを撮らんと現地であるクリュセ自治区にリポーターとカメラマンを派遣した。

 

 

 

 

 

 

 

 火星全土が目まぐるしく動き、あらゆる目がクリュセに向けられている頃――

 遡る事数カ月前、月と木星より大型の艦が数隻火星へ向かっていた。

 農作業に勤しんでいたとある二人の迎えだ。

 しかし現状、迎えだけでは済まないだろう。

 どのような落とし前になるかは解らないが、ギャラルホルン火星支部は少なくない出費を強いられるに違いない。

 娘の暗殺を依頼し、結果としてその騒動に例の二人を巻き込んだノーマン・バーンスタインは、有名な極道組織に自分の弱みを握られた事になる。

 であればどうなるかなど明白だった。

 骨の髄までしゃぶり尽くされるだけだ。

 いや、骨すら残らないかもしれない。

 なんだかんだと敵対しない子供には優しいオッサンたちだが、舐めた敵には苛烈というか、容赦がないのだ。

 名瀬やジャンマルコはその事をよく知っていた。

 だからこそ二人は表情にこそ出さなかったが、胃がシクシクと痛み出すのを自覚していた。

 

(……親父、キレてねぇといいんだが)

 

 広大な宇宙の片隅を進む、伊達男二人はそう願った。……それが叶わぬ願いと解ってはいたが。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 火星の荒野を一台の車が走っていた。

 荒れ果てた地表ばかりの火星には似つかわしくない地球産の高級車だ。

 恐らく火星でこれと似た車に乗れるのは富裕層でも一握り。そんな車の中には、二人の青年が乗っていた。

 ギャラルホルン地球本部の目が届きにくい火星支部の監査の為に来星していた特務の青年たちだ。

 

 

 

 マクギリス・ファリド。階級は特務三佐。

 ガエリオ・ボードウィン。同じく特務三佐。

 

 

 

 共にギャラルホルンに燦然と輝くセブンスターズの直系……であるとされていた青年たちだ。

 ガエリオの方は紛れもないボードウィン家の跡取りだが、マクギリスは違う。彼は、非合法の人身売買組織よりファリド公が購入した孤児だ。

 そしてその事を、ガエリオは火星を出発する前に父より聞かされた。

 切っ掛けは、妹であるアルミリアとマクギリスの婚約破棄だ。

 それを主動したのが父であるガルス・ボードウィンだと知り、理由を問い質したのである。

 結果として彼は、イズナリオ・ファリドの私生児であると思っていた親友が、生まれも定かではない身分の孤児であると知った。

 その時、ガエリオが感じたのは――嫌悪であった。

 何に対しての嫌悪か、自分でも解らないが、しかし嫌悪を感じた。

 幼い子供に肉欲をぶつけるイズナリオへか。

 出自を偽っていた卑しい身分の親友にか。

 勝てないと思っていた親友に歪んだ優越感を抱いた自分か。

 いずれにせよ、自分の卑小さを嫌でも自覚してしまった。

 だからだろうか。

 整備されていない道に幼い子供が飛び出したのに一瞬気付かなかった。

 

 

「ガエリオっ!」

「っ」

 

 咄嗟にハンドルを切る。

 だがその前に。

 

「よっと」

 

 背の低い少年が、少女たちを抱えて飛び退いた。

 袖無しのタンクトップから覗く肉体には均整の取れた筋肉が搭載されており、本人の身体能力の高さも見て取れた。

 

「クッキー、クラッカ。道路に飛び出しちゃダメだろ。死にたいの?」

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 謝る双子らしき少女。

 しかし少年は鼻息一つ吐いて、親指で近付いてくる老婆を指す。

 

「桜ちゃんが怒ってる。怒られておいで」

 

 離れた場所で桜と呼ばれた老婆は孫らしい双子へ説教を始めた。

 それを状況についていけず黙って眺めていると、

 

「えっと……ごめんなさい?」

 

 黒髪の少年が謝ってきた。

 これが、最初の邂逅だった。

 三日月・オーガスとガエリオ・ボードウィンの。 

 生まれ、育ち、思想、信念。

 何もかもが違う二人。

 そして、マクギリスだけが気付いていた。

 

「……」

 

 この二人の相性の悪さに。

 

 

 

 




 機体解説:EB-06 グレイズ

 ギャラルホルンが誇る量産型モビルスーツ。フラグシップモデル。
 高い操作性により、ギャラルホルンの誰もが扱える傑作機。
 有事の際に、緊急脱出機構としてコックピットブロックが排出されるので、パイロットの生存にも一役買っている。出力以外ではガンダムフレームよりも汎用性は高い。
 しかし対モビルスーツ戦としての性能は拙く、プログラム通りにしか動かせない欠点が存在する。
 マイナーチェンジ前にゲイレールフレーム、ヴァルキュリアフレーム等があり、また士官用の派生機体の性能も高い。
 言うなればオルフェンズ世界のザク。

クーデリアには前倒しであるイベントが発生します。どうなるでしょう? ※実験的なものです

  • もう、○○○○じゃない……
  • こんな事もあろうかと!
  • 天使降臨
  • 錯乱暴走珊瑚
  • 間違った優しさの代償
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