戦姫絶唱シンフォギアDF ~DIVINE FLAME~   作:私だ

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第44話「約束 ~またいつか~」

 遠く離れた、どこかの世界。

 界下の生命に恵みを与え、そして繁栄を促す太陽の光が地平の彼方へ沈み、宵闇が支配せんとするどこかの国。

 光に縋り、闇を恐れる生命達が自らの在るべき場所へと帰る、そんな時間…しかし全ての生命がそう成りを潜め、また光が昇る明日へ生きられるかと言われれば、悲しい事にそれは違う。

 不幸にも闇に魅入られ、その命を脅かされる者も居れば、闇の中にある深淵を求め、敢えてその中に飛び込んでいく愚かな者も居る。

 そう、ちょうどこの街の一角のように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌っ…来ないで…!!」

 

 人目も付かない裏通り…袋小路となっているその場所に、悲痛な声を上げる女性の姿が。

 質素な服に素朴な見た目…恐らく何の地位にも付いていない、ごく平凡な民草であろう。

 しかしその服の上からでも分かる恵まれた身体に、化粧を施せばたちまち人を虜に出来るであろう整った顔立ち。

 例えるならば極上の宝石、その原石のような…。

 きっと普通に生きられたのならば、人としてありふれながらも充実した幸せが得られた事だろう。

 

「大人しくしてりゃすぐ終わるからよォ…!」

 

 だが世には己の欲を満たす為だけにそういう原石を狙う輩も居る。

 悪戯に、乱暴に…女性の前で刃物をちらつかせるこの男も、そんな1人だ。

 きっとこのまま放っておけば、この場所は浅ましさと辱しめに溢れた地となり、男は天上の、女性は地獄のような時を得る事になるだろう。

 

「ッ!?」

 

 そんな時、チリン…と何かの音が鳴った。

 同時に忽然と感じた背後からの気配。

 それに対し過敏に反応した結果、男はその視界にとある青年の姿を捉えた。

 

「あァ…?」

 

 その青年は真っ直ぐに腕を掲げており、その手先には少し奇妙な造形をした鈴が下がっている。

 先の音の出所はそこだろう…して、その意味とは?

 青年の行動に理解を示せない男が怪訝な眼差しを送る中、青年は掲げていた腕を下ろしながら一言。

 

「…早く逃げろ。」

 

 その言葉を聞いた途端、男は嗚呼…と察した。

 世界は多様な存在で溢れている…男のような下衆と呼ばれる輩も居れば、そんな男の行いを良しと思わない者も居る。

 大方、彼もその1人であろう。

 居るのだ…こういう上っ面の正義感だけで動こうとする馬鹿が。

 そんな男から馬鹿と蔑まされた青年の眼差しは鋭く厳しいものであり、しかしまたどこか憐れみのようなものも感じる。

 大方前者は男に対して、後者は女性に対してのものだろう。

 非道と呼ばれる男の行いに募りを抱き、その被害に合っている女性には慈悲を…女性にとっては正しく救世主であろう。

 だがこれでも男はその道で長く生きてきた…その手の者の相手の仕方は心得ている。

 最も、その度に取る方法は毎回変わらないの(相手を殺す事なの)だが。

 

「何だぁこのガキ…死にてぇのかァ!?」

 

 しかし何故だろう…何故か男は普段のそれとは違う感覚に見舞われている。

 青年の眼差しから感じるものが、何か全く違う意図を持っているような…そんな気がするのだ。

 何か得体も底も知れぬ、触れてはならない禁忌に触れてしまうような…。

 そのような感覚に陥り、男は二の足を踏んで素人の如く青年をただ脅すような口を開くばかり。

 すると場に再三の変化が訪れる…再び男の耳にある音が届いたのだ。

 しかしその音は先程青年が鳴らした鈴のような小綺麗なものでは無く、ブチリブチリと不快なもの。

 まるで肉や皮を無理矢理引きちぎるかのような音は、男の背後…女性が居る所から聞こえてくる。

 同時に感じる強烈な悪寒…一瞬で血の気が引き、背筋に冷たい汗が走る。

 そして男の本能が警笛を掻き鳴らす。

 振り向いてはならぬ、今すぐ走れ、逃げろと。

 しかし男は既にその心を外道に落とした身…善良なる人間ならば素直に従うそれに、後悔すると分かっていながらも抗うという選択しか取れなかった。

 

「ッ!!??」

 

 そうして振り返った先で、男は悪夢を見た。

 そこに居た女性は、今や女性であったものへと変貌していた。

 男が想起した、肉や皮を無理矢理引きちぎるかのような…それがまさに現実となり、男の前でその形をあまりにも異常に変えていく。

 もはや人としての形を無くしたそれの中から今、ナニかが生まれようとしているのだ。

 女性の内に潜んでいた、この世の常軌を逸した存在が目覚める。

 

「ヒィッ!!??」

 

 覆っていた肉皮を弾けさせ、中から現れたソレは、その身を余す所無く血に濡れたかのような色に染めている、悪魔と形容するしかない異形…。

 その異形の真銀の眼と視線が合い、男は堪らず情けない声を上げる。

 その瞬間に察したのだ…殺される。

 如何なる手段を取った所で、目の前の怪物には敵わない。

 逃げるべきだったのだ…だが今やそれも敵わない。

 そして男の察した通り、彼はこの怪物に殺される。

 世界は多様な存在で溢れている…故に、中には不条理に見える必然的な世界の深淵を垣間見て、そしてその深淵に呑まれる生命もある。

 今この場が、まさにそれであろう。

 だが、それはこの場に居るのが彼等だけならばの話だ。

 今この場には、もう1人の生命が居る。

 

「早く逃げろと言っている。」

 

 その声が聞こえた途端、男の思考はただ1つ…逃走の文字で埋め尽くされ、そしてそれを実行した。

 喚き声を上げながら逃げる男…本来ならば目の前の怪物がそれを許さないだろう。

 だが怪物の視線は既に男を外れ、代わりに青年へと向けられていた。

 

ナサリシチ(魔戒騎士)()…。」

 

 青年向けて怪物が呟く。

 この世ならざる言葉で魔戒騎士と呼ばれた青年は、ただじっと怪物を見つめている。

 その視線は何処か怪物と同じ様に、この世の生命が持つそれとは外れたものであった。

 

「こいつはホラー・“クリムゾンゲイル”、両腕の鎌に注意しろ。」

 

 と、青年が指に嵌めている指輪がひとりでに語り出す。

 目の前の怪物…クリムゾンゲイルと同類の存在であるその指輪…名をザルバというその指輪からの助言に感謝の意を示し、青年が頷きを返した…次の瞬間、クリムゾンゲイルが青年目掛けて動き出した。

 青年の持つ命を奪う為、凡そ常人では1つの予測も立てられない程の奇抜な動きで迫り、その腕から生える死神が振るうそれの如き鎌を青年の首元目掛けて振るう。

 しかしその鎌が青年の首を刈り取る事は無かった。

 青年はいつの間にかその手に真紅の柄を誇る剣を握り、あらゆる生命に恐怖を与える怪物の一撃を防ぐ。

 そのまま二擊、三擊と…怪物の魔の手を青年は的確に防いでいく。

 

「…!」

 

 すると青年が突然その身を大きく反らした。

 その数秒後に、青年の視界を血色が掠める。

 クリムゾンゲイルの武器は両腕の鎌だけでは無い…その尾骨からは先の鋭利な尻尾が生えており、それが青年を襲ったのだ。

 だが青年はごく冷静にその攻撃を避け、また剣で受け流し、返しにその脚をクリムゾンゲイル向けて伸ばし蹴り込む。

 見た目としては決して楽な態勢から放たれたものではない為、そう威力のあるものでは無い筈…しかしクリムゾンゲイルはその一撃を受け止めた瞬間戦慄を覚えた。

 重い…いくら目の前の青年がヒトという種族の常なる者達とは違うと分かっていても、それにしても重さが違う。

 凡そ生身の人間が放つ一撃を軽く超えるそれを態勢を崩さずに受け止める事が出来たのは、クリムゾンゲイルにとっては幸運であっただろう。

 こいつは何かが違う…堪らず強めの攻撃を放つクリムゾンゲイル。

 その攻撃を剣で受け止めた青年は反動で大きく後退り、距離の空いた両者の間に緊迫した空気が流れる。

 青年に向けて一抹の懐疑心を持つ怪物、クリムゾンゲイル。

 対して青年は邂逅した時と変わらず冷静に目の前の異形と向き合っている。

 と、青年がおもむろに剣を頭上へと掲げ、切っ先で円を描いた。

 描いた軌跡が眩く形を残し、青年の頭上に光の輪を作る。

 そして輪の中心がひび割れると同時に、青年はその姿を変えた。

 

「ッ…!?」

 

 怪物の目が見開かれる、目の前に現れたその存在…青年の正体に。

 それはクリムゾンゲイルのような魔界に住まう魔獣ホラーを討滅せんと立ち上がる、魔戒騎士と呼ばれる存在。

 そして目の前の青年はその魔戒騎士の中でも最強と名高い鎧を纏う者。

 目の前で黄金の光を放つその姿が教えてくれる。

 

 

 

 

 

ロルゾユシチ(黄金騎士)…!?」

 

 

 

 

 

 彼の名は、レオン・ルイス。

 又の名を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻炎(SCAR FLAME) ガロ(GARO)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようクリス。」

「おはようございます、先輩。」

「おはようデス!キネクリ先輩!」

「よぅ、おはようさん。とりあえずキネクリ先輩は止めろ。」

「痛い!!デ~ス…。」

 

 遠く離れた、どこかの世界。

 多くの生命が営みを繰り返すこの世界の片隅で、小日向 未来、月読 調、暁 切歌、雪音 クリスの、何の変哲も無い日常が送られていた。

 

「雪音。」

「お、先輩にマリアか。わざわざ見送りかい?」

「あぁ、この後またすぐに日本を発つからな。」

「その前に皆の事を一目見ようとね。」

 

 そんな日常に加わる風鳴 翼、マリア・カデンツァヴナ・イヴという名の女性達。

 

「おはよ~~~う…。」

「おうおう、こっちは随分ドン底なテンションじゃねぇか。」

「だぁってぇ~折角の春休みがぁ~…。」

「しょうがねぇだろ出席日数足りてねぇんだから…春休みに足りねぇ分補習に来りゃチャラにしてくれんだからよ。」

 

 そして、立花 響という少女。

 翼とマリアを除いた少女達はそう比喩したようにまだ学生という身分…訳有ってその学生としての行事に暫し打ち込めなかった彼女達は、他の学生達との間に生まれた差分をこれから突貫で埋めようとしている所だ。

 

「まぁ後輩共と来年一緒の教室に居たいってんなら止めはしねぇが。」

「あ~調ちゃんと切歌ちゃんの2人と一緒かぁ…良いかも。」

「馬鹿、響ったらそんな事言って…響が同じ教室に居ないなんて私はやだからね。」

「未来ぅ…!」

「ま~た始まったよ…そういう事は家でやれって言ってんのによ…。」

 

 少女達とて本音を言えば休みと定められている期間は素直に休みたい。

 しかしここで何を言っても変わるものなど…響の機嫌ぐらいなもの。

 一部で夫婦とも噂されている2人の相変わらずな様子にクリスのみならず他の者達も苦い笑いを浮かべるしかない。

 

「それにここで頑張らないと、響の夢は叶えられないでしょ?」

 

 しかしその呆れた皆の様子は、未来がふと溢した一言で変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし、報告書は後でよく目を通しておく。これで今回の件は解決だな。」

 

 少女達と時同じくして、超常災害対策機動タスクフォース“S.O.N.G.”では、近日起きた異変に対する報告が司令官たる風鳴 弦十郎の指揮下で行われていた。

 

「司令。」

「おう緒川、どうした?」

「例の聖遺物、プロメテウスの火について1つ。」

 

 そんな大人代表の下に影なる大人代表の緒川 慎次が1つの報告に上がる。

 その内容は、これまで未解決とされていたある事実について。

 

「現ヴァリアンテ王国から受領されたあの聖遺物ですが、調査の結果今から700年前の当時の国王、その親族から国へと寄贈された物だと分かりました。遠い未来に於いて命燃やす絶唱の姫巫女現れし時、神の炎…つまりはプロメテウスの火をその姫巫女に授けよ、と。」

 

 700年前のヴァリアンテ王国の国王と言えば、アルフォンソ・サン・ヴァリアンテ。

 その親族と言えば、彼等の中で思い当たるのはたった1人しか居ない。

 

「これは…確定ですかね?」

「だろうな…いやまさかこの歳になってタイムスリップなんてものを経験するとは、人生何があるか分かったもんじゃないな。」

「700年前…私達があの時代を守れたからこそ、今この時がある…壮大な話ですね。」

 

 藤尭 朔夜や友里 あおいが溢した言葉に思いを馳せ、噛み締める一同。

 しかし事はそれだけではないと小さな技術者が声を上げる。

 

「それに、きっとボク達はただあの時代を守っただけではありません。」

 

 そう言ったエルフナインの手元にあるタブレット…そこには魔界詩篇なる歴史書の最終章が記されている。

 かつてはおぞましき獣が描かれていたが、今は違う。

 そこには6人の女神と、雄々しき翼を拡げる金色の騎士の姿が描かれていた。

 この変化が今の世に何をもたらし、そしてこれからもたらすのか…それはまだ分からない。

 だが弦十郎はよぅし!と勢い良く立ち上がり、皆に向けて声を届かせる。

 

「俺達はこれからもあらゆる困難にぶち当たる事だろう!だが挫けるな!彼等との出会いで、俺達は自分達の力に限界など無い事を知った!可能性は無限大…故に未来などいくらでも変えられるとな!」

 

 その先にはきっと、希望に溢れる未来が待っているのだと。

 

「その想いを胸に、今日も気張って行くぞぉ!」

 

 永遠に続く、あの輝きのように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホラー(クリムゾンゲイル)は焦っていた。

 目の前に佇む黄金騎士 ガロ(レオン・ルイス)…その光を消し去るべくあらゆる手を使い攻め立てるも、彼はその全てを軽く受け流す。

 彼はホラーを倒すべく修練を積んでいる魔戒騎士、その中でも最強の称号を与えられし者…このような結果となるのも、分からなくはない。

 だがしかし、クリムゾンゲイルはそれ以上の何かを目の前の存在から感じていた。

 これ以上相対していては、確実に狩られる…クリムゾンゲイルは勝負に出た。

 限りなく密着に近い距離から右腕の鎌を首筋向けて、左の鎌は腹部へ、そしてコンマ数刻遅れて尾を相手の背後から心臓目掛けて…いずれか1つでも致命傷と成り得るその囲いの攻撃は、3つの矛を持つクリムゾンゲイルならではの戦法だ。

 果たしてその結果は…。

 

「ッ…ギアァァァァァァァァァァ!!??」

 

 失敗に終わった。

 レオンは同時に迫った3つの攻撃を全て避け、反撃に剣を突き刺していたのだ。

 しかしクリムゾンゲイルはそれに対し疑問を抱かざるを得なかった。

 目の前に居た彼はこの目で見ていた限り、全く動いていなかった。

 殺った…!と、そう思った一瞬の後、気が付いたら懐に潜り込まれ剣を突き立てられていた。

 まさか首筋に、そして背面から心臓に向けて傷が付く直前も直前のタイミングで身を翻して攻撃を回避し、あまつさえ反撃を行ったとでも言うのか?

 そんなものは人間離れが過ぎた所業だ…しかし相手の心臓を貫く筈であった尾が、そして黄金騎士の剣が揃ってクリムゾンゲイルの胸部を貫いている事がそれを示唆する何よりの証拠となる。

 そして繰り出される黄金の左拳。

 クリムゾンゲイルの頬に深々と突き刺さったそれの威力は、刺さっていた剣や尾を衝撃で引き抜かせ、袋小路の壁に瞬時に激突させる程の凄まじさであった。

 自由になったクリムゾンゲイルであったが、動きは鈍い。

 身体へのダメージはもちろん、心身に刻まれた感情がそうさせているのだ。

 あれは、人間が出来る業じゃない…身のこなしも、一撃の威力も。

 いくら黄金騎士とは言え、人間離れが過ぎている…ならばあれは一体何だ?

 あれは人という種族を軽く超えている…人では無い“ナニか”だ。

 それを感じた瞬間クリムゾンゲイルの脳裏に過ぎる、まことしやかな噂。

 

 

 

 

 

“黄金騎士の手により(メシア)が討ち果たされ、魔界が滅ぼされようとしている。”

 

 

 

 

 

 クリムゾンゲイルの身がすくむ。

 それは紛れも無く恐怖…目の前の存在が格下であるただの人間でも無く、天敵である魔戒騎士でも無い、世界を滅ぼす程の力を秘めた、全く別の未知なる“ナニか”である事を身を以て体感し、そして恐怖したのだ。

 それを理解した途端、クリムゾンゲイルは堪らずその場から飛び出す。

 かの咎人が、そんな愚行を許さぬ存在だと分かっていながらも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり歴史は変わったか…。」

 

 また同じ頃…鎌倉と呼ばれる地で、風鳴 訃堂なる人物が1人物思いに耽っていた。

 

「しかし、惜しい事をしたものだ…儂とした事が、何を出し渋ったか…。」

 

 それは常の彼としては珍しく消極的なものであり、彼の姿を遠目に見る者達に気味の悪さを与える。

 

「おい…あのオッサンまた何か1人でブツブツ言ってるぜ…?」

「相変わらず胡散臭さの塊であります…!」

「こらこら2人共、気持ちは分かるけど我慢して頂戴。他ならぬ私達の為なんだから…。」

 

 吸血鬼を思わせるような見た目の者も居れば、人外の尾耳を生やしている者、その身が動く度に機械音が鳴る者と…しかしそんな者達の奇怪な視線など気にも止めず訃堂が思いを馳せているのは、あの金色の鎧について。

 

「黄金騎士 牙狼…真名“金色大神”…人が一から生み出した、神の如き大いなる力…現世に於いて失われていたそれを、あわよくばと思っていたが…。」

 

 護国の為に、そしていずれはその先の為に、訃堂はかねてからその存在を気に止めていた。

 それが手の届く所にあったというのに、自分は一体何を躊躇っていたのだろうか?

 

「…いや、やはり不要か。人の意思に共する力など。」

 

 違う、躊躇っていたのではない…端から必要無いと判断していたからだ。

 

「この国を真に防れるは、この風鳴 訃堂ただ1人よ…他者の意思が介せんとする力など、護国の為の力に在ってはならん。」

 

 訃堂は声高に笑う。

 やはり世に必要なのは我が意志のみであると。

 不要と切り捨てたその光に抱いていたのが、唯一己の野心を断ち斬る力になるやもしれなかったという“恐れ”である事を知らずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢?」

「響先輩の?」

「ほぅ、そんな大層に語れるような夢がこいつにあると?」

「何か皆当たり酷くない!?皆私の事どう思ってるの!?」

「馬鹿。」

「馬鹿。」

「馬鹿。」

「酷い!!皆酷い!!」

「見事に全員揃ったわね…まぁそれが貴女の良い所なのだけれど。」

「マリアさんまで!!」

「こらこら、立花は言う程馬鹿では無いぞ。」

「翼さぁん…!」

「立花は普段何も考えてないだけで考える時は考える奴だ。」

「それ誉めてます!?馬鹿にしてます!?」

「何っ!?誉めているに決まっているだろう!?」

「え~ん未来ぅ~!皆が私を苛めてくるぅ~!」

「よしよし、急に抱き付いてこないの。」

 

 未来が溢した、立花 響の夢について…それが気になった少女達の花咲く会話が、世界に流れていく。

 そうしてこの世界は色付いていくのだ…夢と希望という色で。

 

「それで、叶えたい夢ってどんな夢なの?」

 

 促されたその声に、響はくすりと笑う。

 それを語るのはどこか気恥ずかしく、顔も赤くなってしまうが、同時に語りたいという想いが前に出て仕方がない。

 

「確かに私は皆が言う通り、本当の本当に馬鹿だけど…。」

 

 でもいつか…叶えたいその夢を形にする為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空へ飛び、逃走を図るクリムゾンゲイル。

 その姿をしばらく、まるで呆けたように見送っていたレオンであるが、彼は途端にキッと眼差しを鋭くする。

 すると鎧の背から緑色の炎が吹き出した。

 魔界の炎、魔導火からなる烈火炎装…たなびく対の背旗に沿うように展開されたそれは、まるで深緑のマントを羽織っているようであった。

 そしてそのまま地を蹴れば、炎は魑魅魍魎を貫こうとする彼を運ぶ力となる。

 背後から迫る光に必死に足掻く悪魔(ホラー)

 その悪魔から世界の生命を守る為、黄金騎士は希望の剣を天に掲げ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォォォォォォォォォォォオ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の夢は…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼等は今日を生き続ける。

 生きとし生ける全ての命が、誰からともなく交わした“約束”の為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか、必ずと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦姫絶唱シンフォギアDF ~DIVINE FLAME~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・まさかのここでクリムゾンゲイル戦

→あの戦闘だけならどこの時間軸にでもぶっ込めるので、ラストを飾る戦闘として残しておいたんです
 あれですよ、「俺達の戦いはこれからだ!」的な
 まぁ“これからだ”と言うよりかは“残党狩り”なんですけど


・幻炎 ガロ

→幾度もの死線を超えたレオンに合わせてガロの鎧が変化した姿
 流牙に於ける牙狼・翔、雷吼に於ける牙狼・陣のような永続的な進化体
 見た目は神炎刻身からプロメテウスの火と身体に纏っていた炎を取り除き、代わりに業炎 ガロと同じ金輪の付いた背旗を提げている
 何かと炎に縁のあるレオンに合わせている為か、鎧自体がこれまでのより烈火炎装の制御に秀でており、作中のように背旗を軸にしてマントのように展開したりそのまま簡易的な飛行を行える他、剣先に集中させて巨大な刀身を作ったりバリアのように展開させたりと、レオンの発想次第で様々な戦法が取れるようになっている


・結局2つの世界は地繋がりなのかそうでないのか

→もうお察しでしょうが、普通に繋がってます
 この作品ではレオン達の時代から700年後が響達の生きている時代です


・魔界詩篇の絵

→神滅ホラーが描かれていたのが神炎刻身のそれへと変わったらしい
 つまり本来の歴史から未来が変わった事の示唆であるが…しかしこれは大した違いではない
 犠牲となったのがレオンかアンジェか、その程度の話である


・何か企んでいそうな訃堂さん

→企んでいるだけ、続きはない


・そんな訃堂さんに向けてぶつくさ言ってる3人

→当時は相当ファンから嫌われてたけど、今はどうなのだろうか?


・真名“金色大神”

→拡げようとしてた風呂敷の1つ、畳めないと判断して止めた
 大雑把に説明すると、「何で牙狼だけあんな特別な形態いっぱいあるの?」っていう疑問への、「牙狼がそういう哲学兵装だから」という自分なりの回答
 世界の希望であれという想いを、その名を持つが故にかつてから一身に背負わされた事によって、常に世界の希望にならなければいけない呪いを掛けられてしまった
 つまりはどんな奇跡を起こしてでもそうであれと…要するに牙狼は絶対負けないぞと、そういう設定でしたとさ


・響の夢

→何でしょうね?


・戦姫絶唱シンフォギアDF、完ッ!!

→まだもう1話だけあるんじゃよ

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