俺はお決まりの台詞を言う。
「もちろん異世界だ!こんな世の中にまた生まれてくるとかもう嫌だ!」
またこういうパターンか。もう死ぬ程聞いたわ。まあ、こっちはもう死んでるんだけど。
「分かった。じゃあちょっと確認してくるから」
「へ?」
5分後。
「あー。単刀直入に言うとな、お前は異世界転生出来ない」
「へ?」
まだきょとんとしてんのかコイツは。スバっと言っただけだぞ。俺は悪くない。
「ど…どうして異世界に行けないんだよ!教えろ!」
「まぁまぁ落ち着け。まず異世界へ転生するには条件がある。その為には一定量のポイントがいる訳だが、お前は単純にポイント不足だ」
「はぁ!?ポイント!?そんなの聞いた事ないぞ!」
そりゃそうだろ。死んでから説明受けるんだから。こりゃキレてるね。まぁ、ここに来てから何回も見た光景だけど。
ー数年前。
「ふーむ。
俺の死因を読み上げられる。言われてから思い出したけど確かにトラックに轢かれたわ。我ながら短かった人生だと思う。そして、目の前で死因を読み上げているのは自称神を名乗るジジイだ。
「で、神様が俺のようなサラリーマン捕まえてどうすんの」
「何じゃ。妙に驚きがないの…大抵は驚く奴らが多いんじゃが」
「いや、本当に居るんだなって思っただけだ」
しぶしぶ信じるしかないだろう。死んだ瞬間思い出せるぐらいだからな。
「じゃあお主に頼みたい事があるんじゃ」
「何の用だよ…」
昔からめんどくさがり屋の俺には分かる。確実にそうなる予感しかしなかった。
「ワシの代わりに神になりたくないかの?」
何だそれ。神になる?意味が分からんぞ。てか神って代わり立てれるものなのか?
「なんでそうなるんだ。教えてくれよ」
「説明する前にお主が言うて来たじゃろ…まあよい。まずお主が神になれるチャンスから話そう」
長くなりそうだがめんどくさがり屋な俺でも話に興味がある。多少の事は放っておいて神の話を聞くことにした。
「この世界には若者が不遇な死を遂げた時に救済するシステムがある。対象としては15歳から20代後半くらいかの。若すぎるとこのシステム理解出来ないからその場合はまた別の処置をとっておる」
「そうなのか。じゃあそのシステムは神になれるチャンスを手に入れるのか?俺の予想している通りならそんなシステムじゃないと思うが」
神はこちらを向くと非常に満足そうな笑顔をしてきた。よせ、気持ち悪い。
「気持ち悪いとか言われると神でも傷つくぞい…」
何だよ。俺の心の中読まれてたのか。そりゃ悪かった。もう俺喋らなくていいのかこれ。
「その事は置いておくが、お主の言う通り。これは神のチャンスじゃなくて転生するチャンスじゃよ」
転生?再び生まれ変わるっていうアレか。神もそうだが実在してたんだな。
「その通り。転生先は2つある。お主達が住んでいるこの世。そして、別の世界。いわゆる異世界じゃな」
へー。異世界も存在していたのか。ラノベの話だけかと思ってたわ。
「転生のチャンスを得たものはワシの所へ来る。そして転生したい場所を選び、もう一度生を謳歌するのじゃ」
俺この転生には納得出来るな。普通に日常生活をまた送りたいって奴はこの世に、冒険とか非日常を求める奴は異世界へと生まれ変わる。
コレ結構いいシステムじゃないのか。
「ほう…いいシステムと思ってくれるか、修也よ」
急にフレンドリーだな。いきなり下で呼ばれてビビったわ。
「いきなり呼ばれてビビっとる場合じゃないぞ!このシステムのせいでワシは困っとるんじゃ!」
えっ、そうなのか。誰が決めたかは知らないけどアレはいいもの…
「ダメじゃ!マがつく人見たいなこと言っとるんじゃない!」
知ってんのかよ…じゃなかった。これどこが問題なのか教えてくれよ。
「この転生システムが出来てからもうじき100年経つ。だがの最近の若者はこぞって異世界転生を選ぶんじゃ!」
そんなに叫ばなくてもいいだろ。鼓膜破れるかと思ったわ。
「もう死んどるから構わんじゃろ!」
うわ。神がそんなこと言っていいのかよ。
「…お主さっきから神、神言っておるが厳密に言うと転生を司る神じゃ。しかも日本区域担当のな…」
神でも転生神なのかよ。全知全能かと思ったわ。思ったが日本区域担当って仕事ラクじゃないのか。
「そう…ワシも100年前、神が変わる前に日本ラクそうだからここへ来たんじゃ…前の神も『日本?あんな所小指使うぐらいだし、滅茶ラクだよ!』って言ってたのに…」
おい、神。体震えてるぞ。大丈夫か。
「日本は不幸な死を遂げる者も多くなった。それを救うためにワシはここに居ると思うと頑張れた」
神…。お前亡くなった人の為を思っていたのか…
「最近の日本は可笑しいんじゃ!馬鹿な事をして死ぬ奴!イジメで自殺?主犯の奴には転生するチャンスなど与えん!過労ォ!?ちゃんと休ませてやれ!神でも休みは貰っておるぞ!」
震えていたのって怒りでかよ…まぁごもっとだ。
「ハァ…ハァ…さて異世界転生がなぜ問題かを教えてやるぞい」
あっ、戻った。溜まってた事全て吐き出したのか。
「おかげさまでな。ワシがこの区域に来た時は大抵この世に転生する奴が多かった。再びこの世に生まれると記憶は消えてしまうが、やっぱり元の世界に未練があったからじゃろ」
成程。そりゃ転生してでも戻りたくなるな。
「ところがさっきも言った通り最近の若者は異世界転生を希望する者が増えてきての…これが問題じゃ」
何で問題なんだ?行きたいやつは行かせればいいだろ。
「それは順を追って言おう。まず、この世の若い層にウケとるラノベに異世界転生というジャンルがあるのは知ってるじゃろ」
ああ。俺も異世界転生っていう言葉はそっから知ったな。
「その影響でな、先に言ったように異世界転生希望者が増えた。不遇な死を遂げた奴らばかりじゃったから可能な限り異世界へと生まれ変わせてやった」
良かったじゃないか。お望みの異世界へ行けて。
てか神は向こうの世界に送ってあげてるんだろ。何のトラブルもないように見えるが。
「じゃがの!望んで行った者達のほとんどは異世界モノの主人公みたいに自分に特別な力があると思い込んでおったのじゃ!」
えっ。マジか。
「ワシもマジかと思ったぞ。アホな奴はパーティ組んだ後無謀にもドラゴンへ挑んで見事に死んだ」
おい、そんな馬鹿が居るのか?たまたまって事もあるだろ。
「まだあるぞ。あるものは自分を勇者だと思い込んで、他人の家に勝手に入り込んでタンスから金品を盗んだ。おかげでソイツは向こうの世界で終身刑くらっとる」
こりゃ馬鹿だな…。同じ日本人として呆れてどころか恐怖を覚える。
「更には異世界へ転生する際スマホを持ち込みたいとか言う奴も居てな…こやつは問答無用でこの世へと生まれ直させた」
もう何も言えないわ。
「奴らが好き勝手にしてくれたおかげでこちらの世界から向こうの世界にはワシの権限では転生させる事が出来なくなってしまっての、ここ数年は死ぬまでに何か良いことをしたかという善行ポイントで判断して合格出来た者だけを異世界転生させておる」
成程。ふと思ったが向こうからこっちの世界へ来るやつは居たのか?
「昔は結構居たんじゃが…今の日本へ来るぐらいなら元の世界で魔物に殺される方がマシだと言うておる」
そこまで悪化したのか日本は。ヤバいな。
「そしてそろそろ神を交代させる期間が来た。世界中に居る転生神は次の神を転生システムの対象から選ぼうと言っておるのじゃ…ここまで話を聞いたんじゃ。修也、ワシの代わりに転生神になってくれんかの?」
いいぞ。ここまで興味を持てたのは人生初めてかもな。一介の人間がどこまで出来るか分からないが、やってやるよ。
「おお…!ワシの見込んだ通りじゃ!じゃあ引き継ぎやっとくからの明日からよろしく」
後何年あるか分からんが神の引退早すぎるだろ。
「では頑張るのじゃぞ…」
そういうと神の姿は消えた。俺、神になる実感ないんだけどな。
ー現在。
「じゃあ、この世に生まれ変わるでいいか?」
「はい…」
良かった。素直に受け入れてくれたな。俺はあのジジイ神から聞いた話を転生システム対象の奴らに全員話してる。変な奴を送りこまないようにするためだ。許せ。
「また来世頑張ってくれ」
そう言うと目の前の男の魂は天に登って逝く。今から生まれ変わるのだろう。この光景は神になってからも美しいと感じてしまう。そして、その光景を見終えた後また新しい人影が見える。
「次の奴か…」
さてお前は異世界転生出来るのかな。