囚われし妖怪の運命紀行   作:震顫

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夢創録のドレミーサイドを作っているのですが、構想がまとまらなくて……。
出来次第投稿したいと思います。



11月17日

 「16日に休みを作った。サグメと共に食事会でも催そうではないか」

確か、数日前にそんな事を言われた気がしたので、その日は定時で仕事を終わらせ、早く就寝した。

 どうやら強制的に繋がれたようで、気がつくとドレミーが何かを準備していた。私のことに気づくと、ドレミーは私に一礼する。

「これはこれは。覚えてくれていて何より」

「あなたが何も言わずに記憶を繋ぎ止めていたせいよ。まぁいいんだけど」

私はため息をする。

 そして、私はいつもの事を言う。

「さて、煙草一箱とライター」

私は手を差し出す。すると、ドレミーは指を鳴らし、差し出した手に希望の物を出現させた。私は、手慣れた操作で煙草に火と灯し、それを咥え始める。

「はぁ……、ここに来るといつもそれ。どうにかならない?」

「依存してないから、すぐ止めれるわ、多分」

「それ中毒者が言うセリフ……」

ドレミーは呆れていた。それを気にせず、私は続ける。

「それに、現実世界でそんな事始めたら、それこそ中毒になりかねないし、何せこいしに『お姉ちゃん、口臭くない?』なんて言われたら、すぐに剣生成して自分の首ぶった斬るわ」

そう言い、私は溜めた煙を吐いた。

「……いい加減、シスコンって言うのを認めたら?」

「断じて違う」

煙草を人差し指と中指で挟み、否定する。

「はぁ……、これだから『夢性格』は」

「その夢性格は意味が違うでしょう……?」

既に呆れ返っていたドレミーをさらに困惑させ、頭を抱えられた。そんな顔を見て、私は煙草を蒸し、吐く。

「まぁ、あなたのことだから、自分の嗅覚を一旦殺してるんでしょ?」

「へいへい。ご明瞭さん」

私の言葉が、彼女をさらに呆れさせる。

 

 後々やってきたサグメを含めた、3人での会食が始まる。

「さぁ、アリスのティーパーティーをば」

「『終わらない』のはナシにしてよ……」

サグメは、ドレミーの冗談を苦笑いで返した。

 ドレミーは、夢創異変で対峙した。この時は、まさにエンターテイナーに相応しいような過激さを持っていたが、異変後、話す機会ができた時は、かなり気さくな人だった。何故か、と問いかけたところ、

「あぁ、それは少し有頂天になっていた」

かららしい。

 一方のサグメも、その異変の主犯であった。ただし、正邪に操られていた節もあるので、実際は、「加害者であり、被害者」というものだった。彼女は、正邪と同じく「扇動する程度の能力」を持っていた。ただし、対象は人妖ではなく、人妖以外の生物であった。元能力(つまりは現在の能力)が似ているので、それを聞いた時、「あぁ、なるほど」と私は深く関心したものだ。

 そんな彼女は、以後数週間ではあるが、自宅で自発的に謹慎をした。部下たちに、その旨を伝えると、意外とすんなりいったらしい。しかし、「謹慎」とは名ばかりで、実際には月をあちこち周っていたらしい。本人曰く、

「こういう時間があっても悪くはない」

との事。

 今回、ドレミーが茶会を開いた訳。それは、3人で互いに情報交換をするため。逆に言えば、3人で集まるときは、決まって茶会をする。サグメは月社会、ドレミーは表社会。そして私は……裏社会の代表として。

「ていうか、何で裏で生きてすらない私が、裏社会代表な訳?」

ドレミーは、笑いながら、それに答える。

「何で、で……そりゃ、幻想郷の禁断探求に触れるんでしょ?その時点で表社会から蹴られたのも同然でしょ」

「まぁ、元から表社会でも、生きた心地しなかったけど……」

「え、さとり……貴方、幻想郷の掟破ろうとしてるの?」

どうやら、サグメはこの事は初耳だったようだ。

「そうよ。自分の能力の正体を探るためには、ここを通らざるを得ないのよ」

「あー、もうそりゃ八方塞がりですわ」

ドレミーは、頭を抱えて笑い始める。

「……笑い事じゃないんだけど」

「分かってる、分かってる」

と、ドレミーは言うものの、笑い声は止まる事を知らない。何ていうか、馬鹿にされている気がする。

「もうそろそろ、止めたら?さとりも、じきにべそをかき始めるわ」

手を差し伸べてくれると思ったら、なんとドレミーの冗談交じりの貶しに加担した。

「2人して蔑むのは止めてくれる……?」

サグメも、ドレミーの話に完全に乗っていた。この2人、気が合うどころか、親友以上の何かだ。

 

 そう言えば、とドレミーが人差し指を立てた。

「何故、自分の正体を()()()()()()()のに、わざわざ幻想郷七不思議を解明するのかい?」

私は、目の前の肉料理をナイフで切って、口に入れる。そして、飲み込んだ後、こう話す。

「パチュリーにも頼まれたのよ」

「ん?その意、とは?」

ドレミーが疑問を呈す。

「あなたにしては、掴めない話ね。多分、奴にも意図があるはずなんだがなぁ」

サグメの方に目を向ける。彼女は、ただ黙って頬杖をついている。緋い目は、冷たく私を見ている。

「今の私の能力って把握してる?」

自分でも驚くくらい低いトーンの声を出し、ドレミーに質問する。

「質問を質問で返すのは馬鹿馬鹿しいがな……」

と、彼女は答えを出し渋るが、

「そりゃ、『心を読む程度の能力』だろう?」

と、語気を若干強めて答えた。

(やっぱり、いくら夢の管理人でも無理ねぇ……)

と、私は内心、軽蔑した。しかし、これは、私の求めていた答えでもある。

「……今の私は、過去の私ではないの」

はて、とドレミーは理解が追い付かない様子だ。

「それは、まだ鎖の能力を持ったままっていう事?」

サグメが鋭い目のまま、私に問いかける。私は、それに頷く。

「私の能力変化が、あなたたちの異変を起因としたものではなかったのよ」

「ほう……。あの時は、能力享受の時によく起こる『似た能力の発生』かと思ったが、まさかの奇遇だったとはね」

ドレミーはケラケラと笑った。しかし、サグメは表情が曇ったままだ。

「ならさ……」

彼女が口を開く。

「それを証明するようなものはないの?」

何を言っているのか、という顔をすると、ドレミーは顔をしかめる。

「?あなたが今、鎖の能力を持っている証拠を」

「はぁ……?情に訴えてるのに、客観証拠が必要な訳?」

「そりゃ、夢の中だから。ねぇ?」

サグメが、ドレミーに目を配ると

「まぁ、大抵の言ってることは信頼してないね」

と、それに同調した。やるせない気持ちに、軽く舌打ちした。

 証拠になるかと思い、第三の眼(サードアイ)を覗く。見ると、眼は以前の姿を保っていた。どうやら、自分の思い込みが激しすぎるようだ。

 予定調和には、至らなかった。

 急に、食欲(?)が落ちた私は、急に肩身が狭く感じ始めた。

「ちょっと……、今日はこの辺にしとくわ。なんか、気分が悪くなった」

ドレミーとサグメは、揃って首を傾げるが、

「そう。なら」

と、快諾した。

 おそらく、彼女らにとっては、当然の事であろう。しかし、私――大多数は不快に感じるであろう。まぁ、夢界という特殊環境というのもあるが。

 私は、席を立ち、起床の方向へトボトボ歩き始めた。

 気づくと、そこは私の寝室だった。時計を見ると、まだ5時すら指していない。

 最悪な目覚めだ。




11月17日

夢日記の内容

ドレミー及びサグメに遭遇。能力変化異変後について語らう
サグメ:当異変で自己謹慎。実際は休暇のように使っただけ。復帰後も地位は変わらず、ラッキーと言いたいところ。
ドレミー:夢の管理者として、相変わらずの仕事をこなす。あの時は有頂天になりすぎていた、と笑う。美談にできるのがすごい。しかも、敵と味方が仲良くなって。
私:能力変化異変解決後も能力が変わってないことを伝える。ドレミー、奇遇だっただけじゃん、と笑う。

正直、夢界では証明しようがなかったため、ここで切り上げ、起床

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