出来次第投稿したいと思います。
「16日に休みを作った。サグメと共に食事会でも催そうではないか」
確か、数日前にそんな事を言われた気がしたので、その日は定時で仕事を終わらせ、早く就寝した。
どうやら強制的に繋がれたようで、気がつくとドレミーが何かを準備していた。私のことに気づくと、ドレミーは私に一礼する。
「これはこれは。覚えてくれていて何より」
「あなたが何も言わずに記憶を繋ぎ止めていたせいよ。まぁいいんだけど」
私はため息をする。
そして、私はいつもの事を言う。
「さて、煙草一箱とライター」
私は手を差し出す。すると、ドレミーは指を鳴らし、差し出した手に希望の物を出現させた。私は、手慣れた操作で煙草に火と灯し、それを咥え始める。
「はぁ……、ここに来るといつもそれ。どうにかならない?」
「依存してないから、すぐ止めれるわ、多分」
「それ中毒者が言うセリフ……」
ドレミーは呆れていた。それを気にせず、私は続ける。
「それに、現実世界でそんな事始めたら、それこそ中毒になりかねないし、何せこいしに『お姉ちゃん、口臭くない?』なんて言われたら、すぐに剣生成して自分の首ぶった斬るわ」
そう言い、私は溜めた煙を吐いた。
「……いい加減、シスコンって言うのを認めたら?」
「断じて違う」
煙草を人差し指と中指で挟み、否定する。
「はぁ……、これだから『夢性格』は」
「その夢性格は意味が違うでしょう……?」
既に呆れ返っていたドレミーをさらに困惑させ、頭を抱えられた。そんな顔を見て、私は煙草を蒸し、吐く。
「まぁ、あなたのことだから、自分の嗅覚を一旦殺してるんでしょ?」
「へいへい。ご明瞭さん」
私の言葉が、彼女をさらに呆れさせる。
後々やってきたサグメを含めた、3人での会食が始まる。
「さぁ、アリスのティーパーティーをば」
「『終わらない』のはナシにしてよ……」
サグメは、ドレミーの冗談を苦笑いで返した。
ドレミーは、夢創異変で対峙した。この時は、まさにエンターテイナーに相応しいような過激さを持っていたが、異変後、話す機会ができた時は、かなり気さくな人だった。何故か、と問いかけたところ、
「あぁ、それは少し有頂天になっていた」
かららしい。
一方のサグメも、その異変の主犯であった。ただし、正邪に操られていた節もあるので、実際は、「加害者であり、被害者」というものだった。彼女は、正邪と同じく「扇動する程度の能力」を持っていた。ただし、対象は人妖ではなく、人妖以外の生物であった。元能力(つまりは現在の能力)が似ているので、それを聞いた時、「あぁ、なるほど」と私は深く関心したものだ。
そんな彼女は、以後数週間ではあるが、自宅で自発的に謹慎をした。部下たちに、その旨を伝えると、意外とすんなりいったらしい。しかし、「謹慎」とは名ばかりで、実際には月をあちこち周っていたらしい。本人曰く、
「こういう時間があっても悪くはない」
との事。
今回、ドレミーが茶会を開いた訳。それは、3人で互いに情報交換をするため。逆に言えば、3人で集まるときは、決まって茶会をする。サグメは月社会、ドレミーは表社会。そして私は……裏社会の代表として。
「ていうか、何で裏で生きてすらない私が、裏社会代表な訳?」
ドレミーは、笑いながら、それに答える。
「何で、で……そりゃ、幻想郷の禁断探求に触れるんでしょ?その時点で表社会から蹴られたのも同然でしょ」
「まぁ、元から表社会でも、生きた心地しなかったけど……」
「え、さとり……貴方、幻想郷の掟破ろうとしてるの?」
どうやら、サグメはこの事は初耳だったようだ。
「そうよ。自分の能力の正体を探るためには、ここを通らざるを得ないのよ」
「あー、もうそりゃ八方塞がりですわ」
ドレミーは、頭を抱えて笑い始める。
「……笑い事じゃないんだけど」
「分かってる、分かってる」
と、ドレミーは言うものの、笑い声は止まる事を知らない。何ていうか、馬鹿にされている気がする。
「もうそろそろ、止めたら?さとりも、じきにべそをかき始めるわ」
手を差し伸べてくれると思ったら、なんとドレミーの冗談交じりの貶しに加担した。
「2人して蔑むのは止めてくれる……?」
サグメも、ドレミーの話に完全に乗っていた。この2人、気が合うどころか、親友以上の何かだ。
そう言えば、とドレミーが人差し指を立てた。
「何故、自分の正体を
私は、目の前の肉料理をナイフで切って、口に入れる。そして、飲み込んだ後、こう話す。
「パチュリーにも頼まれたのよ」
「ん?その意、とは?」
ドレミーが疑問を呈す。
「あなたにしては、掴めない話ね。多分、奴にも意図があるはずなんだがなぁ」
サグメの方に目を向ける。彼女は、ただ黙って頬杖をついている。緋い目は、冷たく私を見ている。
「今の私の能力って把握してる?」
自分でも驚くくらい低いトーンの声を出し、ドレミーに質問する。
「質問を質問で返すのは馬鹿馬鹿しいがな……」
と、彼女は答えを出し渋るが、
「そりゃ、『心を読む程度の能力』だろう?」
と、語気を若干強めて答えた。
(やっぱり、いくら夢の管理人でも無理ねぇ……)
と、私は内心、軽蔑した。しかし、これは、私の求めていた答えでもある。
「……今の私は、過去の私ではないの」
はて、とドレミーは理解が追い付かない様子だ。
「それは、まだ鎖の能力を持ったままっていう事?」
サグメが鋭い目のまま、私に問いかける。私は、それに頷く。
「私の能力変化が、あなたたちの異変を起因としたものではなかったのよ」
「ほう……。あの時は、能力享受の時によく起こる『似た能力の発生』かと思ったが、まさかの奇遇だったとはね」
ドレミーはケラケラと笑った。しかし、サグメは表情が曇ったままだ。
「ならさ……」
彼女が口を開く。
「それを証明するようなものはないの?」
何を言っているのか、という顔をすると、ドレミーは顔をしかめる。
「?あなたが今、鎖の能力を持っている証拠を」
「はぁ……?情に訴えてるのに、客観証拠が必要な訳?」
「そりゃ、夢の中だから。ねぇ?」
サグメが、ドレミーに目を配ると
「まぁ、大抵の言ってることは信頼してないね」
と、それに同調した。やるせない気持ちに、軽く舌打ちした。
証拠になるかと思い、
予定調和には、至らなかった。
急に、食欲(?)が落ちた私は、急に肩身が狭く感じ始めた。
「ちょっと……、今日はこの辺にしとくわ。なんか、気分が悪くなった」
ドレミーとサグメは、揃って首を傾げるが、
「そう。なら」
と、快諾した。
おそらく、彼女らにとっては、当然の事であろう。しかし、私――大多数は不快に感じるであろう。まぁ、夢界という特殊環境というのもあるが。
私は、席を立ち、起床の方向へトボトボ歩き始めた。
気づくと、そこは私の寝室だった。時計を見ると、まだ5時すら指していない。
最悪な目覚めだ。
11月17日
夢日記の内容
ドレミー及びサグメに遭遇。能力変化異変後について語らう
サグメ:当異変で自己謹慎。実際は休暇のように使っただけ。復帰後も地位は変わらず、ラッキーと言いたいところ。
ドレミー:夢の管理者として、相変わらずの仕事をこなす。あの時は有頂天になりすぎていた、と笑う。美談にできるのがすごい。しかも、敵と味方が仲良くなって。
私:能力変化異変解決後も能力が変わってないことを伝える。ドレミー、奇遇だっただけじゃん、と笑う。
正直、夢界では証明しようがなかったため、ここで切り上げ、起床