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#4
「鎖」。タトゥーでいうと、「束縛」を意味する。つまり、自分の心を閉じこんでいる状態とも言える。この解放は、「自由」を意味し、可能性を秘めることになる。別の側面で考えると、その能力にもまた「束縛」されるという事になる。どちらが本当の「自由」なのか、これは、難題になりそうだ。
森を抜けた。朝になるも、一向に陽が昇らない。そもそも、月すらもう落ちている。前を見ると、金髪の幼女が一人。
「あなたは……、ルーミアさん。まさか、あなたがこの状態をつくったのですか。」
「確かに私だけど、理想郷を作るためには仕方ないの。」
「り、理想郷……?」
「『全て、唯一神様のお作りになられた、無駄のなき世界。』それが理想郷。あなたは、その
宗教じみてて気味が悪い。まあ、戦闘は避けたい所。
「あの、治してほしい時はどうすれば……。」
「なら、私の前で膝まづいて″罪″を告白しなさいな。スーって視界が良くなるから。」
膝まづくという事は、神の前に屈服するという事だ。まずい予感しかしない。
「……何を言っているのです?」
「神の使徒としての行いだよぉ〜。」
「神の使徒?何を言っているのです?さっきから支離滅裂で、あなたの意図が読めな……。」
「治さなくていい?ならあなたは……、異教徒ね。」
「へ?(い、異教徒……。)」
聞き出していくと、急に相手が戦闘準備を始めたので、私は困惑するしかなかった。
「唯一神様から、『異教徒は排除せよ』って言われているの。さて、殺ろうか。」
滲み出る殺意。これは、彼女を倒さなければ先に進めないというのを示していた。仕方なく、これには応じることにした。
*
盲目に近い状態での戦闘である。となると、命中率も下がってしまう。修行の後とはいえど、戦士の勘は磨いてもらっていない。拙い予測で攻略できるのだろうか?
とりあえず、双剣を召喚する。両方とも白い気を纏っていたのは見えた。対象によって自動的に判断されるようだ。視界の狭い中、何とか彼女を見つけ、剣を振るが、それを避けてしまう。
「おや、もう終わりかー。なら、こっちのターンという事ね。」
と、幼女は弾幕を展開した。手前の弾しか見えない。寧ろ近づきにくくなった。避けるのに精一杯だ。
「こりゃ近づけないよね?そっちも弾幕を展開したら、勝機はあるかもだけど。」
実はあの異変後、私は、弾幕が撃てなくなってしまった。鎖の能力が強力な故であろうか。突破するには、双剣しかない。
安全地帯を見つけながら、ジリジリと近くまでは寄ってこれた。その先には岩山がある。そこで、魔法陣を増やし、一対の鎖を岩に向かって突き刺した。そして、幼女に向かって勢いよく移動し、通り魔の如く剣を振り、過ぎ去る。彼女の袖を何とか切りつけた。私を睨んできた。完全に獲物を捕らえる目だ。
「……ならっ!」
と、彼女はスペカを発動した。
「暗黒『天照の岩屋戸』」
と。すると、何か幻覚のようなものが見え始めた。別に幻覚くらいなら、たかが知れてるので問題なかった。しかし、それが邪魔なのである。更に視野が狭くなってしまった。そこからの弾幕展開は、難易度を高めている。
「円拡散3重、旋回1重と……、自機狙い?」
分析していると、この弾幕が割と面倒な構造だったというのが分かった。避け続けて近づくのが難しい。自機狙いは特に、正面から突っ込むことを躊躇させる。
「効果が切れるのを待つべきか……。」
盲目と幻覚の中、必死で安全地帯を探した。やっと見つけるも、自機狙い弾が邪魔してくる。
何を思ったのか、私は、剣で弾を切ってみた。横の一閃は、弾ひとつを破壊する。連鎖して、他の弾も。
「何っ……!?」
幼女は危険に思ったのか、すぐに効果を取り消し、次の弾幕を展開する。
「蛍灯りし純粋夜」
確かに、視界は蛍の光の如く不規則に点滅する。面白い事に、弾幕もだ。しかし、弾幕の形式が単調的だった。そのうち、彼女のような教徒は、多様性をなくされているのではないかと思い始めた。つまり、捨て駒なのでは、と。その視点で彼女を見始めると、いつの間にか、彼女を「倒す」のではなく、戦意喪失させ、どう「解放」してあげるかが自身の課題になっていた。
そこで、瞬間に見えた視界を頼りに一旦上昇し、相手の背中を地面に合わせた。そのまま地面に一双の鎖を刺し、急降下する。さらに、片方で弾を切って突破口を作り、もう一方で彼女を切りにかかる。彼女を戦意喪失させるには、一度切りつけるだけで十分だ。何せ、あの強靭な天人の身体をも反応を起こすのだから。
命中させたのは、左横腹だった。戦意喪失程度の大怪我で済むには、血管と臓器の位置的に、ここしか考えられなかった。しかし、かなり深く切ってしまったようで、
「うぐ……ッ!」
と、彼女は、痛みに悶絶するばかりだった。
*
視界が晴れた。陽は昇っている最中だった。
(戦意喪失はさせたけど……。)
別に幼女には大きな変化が見られない。見当違いだったのだろうか。
「その能力で……、何がしたいんだ?」
「単純に、妹を助けたいだけ。寧ろ、これが原動力よ。さて、黒幕は一体誰?」
「唯一神様は、偶像を拝めてはいけないと仰った。そもそも、唯一神様が黒幕な訳……。」
「なるほど、分からないのね。」
偶像崇拝禁止って、外界のイスラームみたいに厳格なのだろうか?
「でも、こんな風に宣教しているってことは、誰かが広めるよう命令したって事でしょ?誰が言ったの?」
「そこは、守秘が絶対だから、教えられないね。」
「守秘……。随分と厳格ねぇ……。」
「ところでさ……、あれだったら、怪我治してくれない?もう襲わないからさ。」
「治し方わかんないけど、なんとなく目処がついたし、やってみるか。」
剣に黒気を纏わせて、再び腹を切る。すると、傷がみるみる回復していく。同属性は、逆に回復機能があると思い、やってみたが、上手くいった。
「……痛くない。やるじゃん。」
私の事を見直してくれたようだ。
「こんな恩があるし、流石に襲わないわ。先、お行き。」
その時だった。幼女が突然、仰向けに倒れる。それをなんとか私が支えた。上を見ると、何か邪気みたいな物が、彼女から抜けていくのが見えた。
「ねぇ、どうした?」
彼女は、気を失っているようだ。
(誰かに操られてたというのか……?)
そしてあの言葉を思い出す。
″能力が変わっただけが異変ではない。″
(……黒幕は、守矢の輩ではない?)
なら、この邪気は一体誰によって植え付けられたのか?……そういえば、あの会合の時、サグメという奴が月にいないと聞いた。
「薄々は気づいていたが……。」
サグメは守矢神社にいる。そして、守矢の輩と共謀している。賢者と手を組まれたら……、余計面倒だな。
#5
感覚狂っていてあまり実感ないが、二度戦闘して、徹夜したことになる。普段、規則正しい生活をしてきたというのに、何だか傷ついた気分だ。それでも疲れていないという事は……。やれやれ、私は、隠れた戦闘狂なのかもしれない。いや、自覚している以上、末期ではないか。
さて、昼前ぐらいだったか、飛んで守矢に向かっている最中、前方から人らしいのが飛んでくる。……私目掛けて。危険を察知して避ける。すると、私の方に戻ってきたのだ。さてはどちらかの刺客だな。戻ってきた少女は、書物でしか見たことはないが、日本人の服装のように見える。
「なんだー。真正面にいたのにぶつかってくれないのかー……。残念な。」
「むしろ、ぶつかってくれる方が異常でしょう。何の展開を望んでたの、あなたは。」
「へへ……。」
何か、邪気みたいなのを感じる。あの朝の時と同じ……。何か、自然と身構えさせる。
「一応、念の為に聞くけど……、あなた、何を信仰してるのよ?」
「唐突じゃのう。うーん、意図がよく分からぬが、一言で言うなら……。」
「……『唯一神』じゃな。」
「やはり……。」と、私は後ろに下がる。日本という国は、東洋故に多神教国家だ。西洋国家のような、唯一神信仰はないはず。ましてや、イスラームみたいな唯一神信仰は、日本では……!
スペカを発動させ、双剣を準備する。
「……あなたが信仰しているのは、邪教よ。今すぐ、こっちに戻ってなさい。」
「か、改宗などせんわ!新たな能力で、我を怒らせた事を後悔させよう!」
*
初手からスペカを発動してくる。
「第一曜『先勝』」
布石のスペカか?六曜なのは気になるが。まあ、今のところ何も起こってない。
倭人が何かを呟いている。
「三十……二十九……二十八……。」
何かの時間だろうか?そんな事は気にせず、接近して切りかかる。
「おわっ!?」
心中、すぐ終わると思っていた。時間を数えて、静止し続けたのだから。しかし、このあと、私は驚いた。この一撃は、確かに当たるものだった。彼女も思っていただろう。それを不意に避けたのだ、……奇跡的に。
(確実に当たってただろうよ……。)
「……おろっ。」
これには、倭人も驚く。単に運がよかったのか?そう思っているうちに、カウントも、
「十……九……八……。」
と、10秒を切っている。
(『先勝』は、午前が吉、午後が凶。……なるほどね。)
一本取られた。これから起こる厄災を、一定時間受けなければならないのだから。
「五……四……三……二……一……。」
やるしかない。この時間を乗り越えてみせる。
「……零。」
厄災を乗り越えた先に何があるか?六曜に忠実なら、次に来るのは、「友引」だ。
本当に厄が降ってきた。弾幕が上からだ。相手が、どこにいるかも分からないくらいの濃度である。弾を切り裂いていき、安全地帯を無理やり作り出す。それすらないとか崩壊しているじゃないか……。いや、さっきまで弾幕展開がなかったからそのツケか。なら妥当だな。
……そんな事を思っている場合じゃない。連鎖爆発で周りの弾は無くなっていく。しかし、それ以上に弾幕量が多く、爆発はしばらくすると消えてしまう。おまけに、頻繁に近くで爆発するのだから、常にヒヤヒヤしている。(あれ、今日やられるんじゃね?)と。妹を助ける目的がなければ、既に折れていただろうな。
上から「切り漏らし」の弾が降ってきた。
(まずい、終わるッ!)
やられるのを覚悟した。条件反射で、意味無いのに頭を守ってしまう。……しかし、上から降ってくる気配がない。
「やはり、1枚で仕留めるには無理があったか。否、我をもっと楽しませてくれるのじゃな?」
「私にも使命があるのよ。ここでやられる訳にはいかないし。」
ここで、私は一つの疑問をぶつけてみた。
「私自身でも
と。しかし、
「ほう……。なら、全力で!!」
という感じで、疑問に全く聞く耳を持たなかった。はぁ……、聞いた私が馬鹿みたいだ。
続いて二枚目のスペカ、
「第二曜『友引』」
が発動される。考えてみれば、これ含めてあと5回なんだな。
……なるほど。さっきの疑問の答えが出た。全てのスペカが、1分しか効力がないんだな。さっき、倭人が30秒きっちり数えていたのも、その為か。
次は友引だ。朝夕が吉、昼が凶。誤差(と言っても弾幕が濃すぎて、体感だと、全然その範囲ではないと思うが)を考慮すると、20秒から40秒といった所か。すぐに動くと呟いているのが聞こえない。2秒で決める。
「十……九……。」
40秒か。さっきより長く降ることが確定する。
(是が非でも止めん!)
と、無防備な所を突っ切るが、「奇跡的」というレベルで避ける避ける。……これも能力の内か。
例の如く、弾幕が降ってきた。さっきと同じような立ち回りで臨んだが、同時に打開策を練っていた。
(何か、何か気付かねば。)
ふと、名案を思いついてしまった。ひっくり返せば、迷案なのだが。
(賭けになってしまうが……。)
よし、決めた。1枚飛ばして、「仏滅」で攻勢する。その為には、「先負」で1つやらねばならぬ事があるな。
流石に疲れる。息切れし始めた。強制的に計1分余り双剣を振り続けたのだから、腕もつらい。
「ほう、やるのう。まだ我には手がある。降伏なら今ぞ。」
「うーん、白旗上げるのはまだ早いなぁ。それより、『大安』がどうなのか気になるね。多分、一切弾幕が展開されないはずだけど。」
「そこまでたどり着く自信があるか。素晴らしい。」
何故か褒めたたえられた。その前の「仏滅」で乙るとでも考えたのか。随分と楽観的な思考をした者だ。
3枚目。どうやら、読みは当たったようで、
「第三曜『先負』」
を繰り出してきた。午前が凶が故、開幕から高濃度の弾幕が降ってくる。弾幕を被った所で、私は、双剣体制で切り裂くのを止め、片手のみでどこまで耐えられるか試してみた。
(これが出来れば……。)
守備線が、ジリジリと自分に近づいて来る。極力、無駄のないように尽力した。……ある所で、その線が止まった。頭上10cm前後だ。
(ギリギリだが、いける!)
手応えを感じた。あと20秒。これに耐えれば、勝機がある。
「20……19……18……。」
あの倭人と同じように、数を呟き始めた。精神安定も兼ねてだ。当然、相手は、片手で抑えているのも、数を呟いているのも分からない。
「10……9……8……。」
10cm維持のまま、半分を切った。だが、油断も隙も与えてくれない。いや、むしろ有難いというべきか。5秒を切った所で、また双剣体制に戻した。バレないように、念の為だ。
「2……1……、0。」
弾幕が消えた。後は「吉」が30秒続く。休憩時間と言うべきか。
「ここまで3枚……。やるのう。じゃが、次の『仏滅』で潰れるのが見えるぞ、我は。」
倭人が、煽っているように見えたので、私は、沈黙を返した。
「なぜ黙っておる?怖気付いているのかね?まあ良い。『仏も滅入る程の大厄』を貴様に落としてやろう。……覚悟せよ。」
(さっきより濃い訳、ね……。)
遂に運命になるであろうカードが発動される。
「第四曜『仏滅』」
「仏滅」は、一日中大凶。1分丸々弾幕が降り続くという事だ。しかも、今以上に。
受けてみると、確かにそうだった。濃さで言えば、1.5倍と言った所か。10cmの守備線を守るのも難しかった。
安定した時は、守備戦が10cmより若干下回ったが、片手でも抑えられた。方向は、ほとんど変えていない。
「やるなら、今だ。」
決心した。
自由になったもう一方の剣を、反対に持ち替える。その剣を、槍投げのように真っ直ぐにぶん投げる。直後、濃すぎる弾幕で、視界不良だったのが、一気に晴れた。……どうやら、命中したようだ。
「お、お主……、どうやって……。」
「胴体に命中しなかったのは良かったわねぇ……。」
当たったのは肩だった。大怪我ではあったが、乙らなかった分、まだ良いのでは、と自画自賛した。
「し、質問に答えよ!!」
倭人にこう言われてしまったので、私は、こう返した。
「あなたの能力……『六曜』って、私だけじゃなくて、全体にかかっているんじゃないかな、て。例えば、『吉』の状態なら、私も、あなたも『吉』という訳だし、逆も然り。」
「なら……、なぜ我は当たったというのか?」
「確かに、『吉』の時は、あなたの方が運が上だった。常人以上の運を手に入れたのなら、それは、六曜を身につけた時の付属能力ね。ただ、運というのは面白いものよ。蛇口みたいな構造なのだから。簡単に言えば、栓を″締めた″という所ね。たとえ運が残ってたとしても、大凶の前では意味なかっただろうし。」
*
共に地面に降り立ち、私は、彼女と同属性の気を纏った剣で、傷付けた怪我を治し始めた。
「……我は、負けるべくして負けたのか?」
「そうねぇ……。実際、勝敗なんて運がかなり左右するし、『1/2を外した』と言った方が正しいのかもね。」
「運を操るのは難しいなぁ。」
彼女は、笑みをこぼした。つい、私もつられてしまった。
治療が終わった。
「……ふぅ。これでどう?」
「もう、すっかり良くなったぞ。楽しき戦だったぞよ。ホッホッホ。」
直後、邪気が倭人から抜けていくのが確認でき、彼女は倒れた。私は、その彼女を抱いた。つい、感情が崩れてしまった。
「よく……″自分″を守れたな……。」
#6
よく、「此々が120%です!」と、ありもしない確率を使って話の具体性を高める人がいる。そのような概念は、私にとっては到底理解できない。円にすると一周を超え、20%と同じになってしまう。かといって棒にすると、今度はハミ出してしまう。「新たな可能性」も実に不可解だ。その対象の確率は、一つしかないのだから。……まぁ、確率・可能性は結局、常に一本のベクトルでしかないという事だ。
邪気が抜け、どうやら倭人が気を失ってしまったので、木陰のある涼しい場所に彼女を寝かせた。すると、後ろから、聞いたことのある、大人びた声が。
「ふーん。貴方にも、こんな優しい面があったとはねぇ。常に、人妖に対して冷たい態度を取っているのかと思っていたけど。」
私は気怠く後ろを振り向く。後ろにはスキマがある。……私の予想通りだった。
「あの時能力を明かしていたら、きっと貴方は、霊夢に従属していた。賢明な判断だったかもね。」
「……褒めているつもり?」
「ええ。でも、霊夢にとっては、その行為が不都合だったらしいけどね。」
「じゃあ、なぜ『賢明な判断』と言いながら、霊夢さんサイドについたのは?」
すると、婦人は変なことを言い出した。
「霊夢に対する反乱因子は、私たちが抑えている。霊夢を敵としている者は、私達で徹底的に抑える。これで初めて幻想郷の平和が保たれるわけよ。」
言っていることが、よく分からない。なんだか飛躍しているような……。私は、この言葉の意味を熟考した。反乱因子、これを抑えることで得る平和。……そして、私はある二文字が思い浮ぶ。
(″統制″……?)
博麗大結界で現世と分離しているのは、もっと他の理由が潜んでいるでは、そう感じた。多分、その一つが″統制″なのであろう。
「さて……。」
と、婦人が言った。
「霊夢の敵は、幻想郷の敵。真の平和が訪れるまで、しばらく引っ込んでもらうわよ……、覚悟しなさい。」
何とかして、賢者との戦闘は避けたかった。しかし一方で、今なら勝てるかもしれない、という余裕もあった。
(今の能力なら、喪失まで追い込めるかもしれない……!)
*
フィールドは草原。鎖を刺すのも限られる。私は、鎖を飛ばす反動で、一気に上昇する。婦人は殺気立って、私を追っかける。スキマを使い。
(スキマの能力は変わっていない……。なら、何の能力が?)
とりあえず、戦闘パターンは、今の所1つなので、双剣で落としにかかる。再び地面に刺そうとした。しかし、何故か、空気がそれを拒否したのである。いや、
(自分の周りにも結界だと!?)
彼女は、私をもて遊んでいるとでもいうように、気味悪く微笑んでいる。
「このままだと……!」
この危険にすぐ気づいた。すぐさま、結界に刺さった鎖を剣で切り抜き、鎖をしまう。切り離された鎖は、外側から消えてなくなっていく。
「何なの、この能力……。」
婦人は、微笑して返した。
また鎖を飛ばして、体制を整えようとしたが、全て、スキマに潰されてしまい、意味がなかった。万能すぎだろう……。
彼女は、スキマを作り出し、手を突っ込んで何かを取り出した。しかし、その″何か″が、とてつもなく強力だった。
「まさか……。」
と、声が漏れるほどだ。
「″確率″を信じなさい。ま、あなたは、非科学を信じないだろうけど。」
そう言って繰り出したものは三つの月。すなわち、
「『フェイスアポロ』……?」
(何でも取り出せる、て言っても、バランスというのがあるじゃない……。)
しかも確率補正によって、フェイスアポロは、高性能なホーミング弾と化していた。人為的に強化されたスペルは、私をさらに追い詰める。切ろうにも1発で壊せない。というのも、この双剣には刃がない。このスペカの名前が「剣」ではなく、「鎖」であるのもそれが理由であろう。あくまでも、「鎖」の域を出ない。また、婦人が使用しているスペカの元々の使用者は、″純粋″によって強化された妖精である。属性が中性的で、ただの棒となってしまう。
……左腕が痛み始めた。見ると、袖が破けているおり、皮膚が赤んでいるのが見える。
(擦り傷……。この異変で初被弾、ね……。)
真正面に来たら1発で乙るな、そう感じた。倭人の濃弾幕より使い方が上手い気がする。
彼女は微笑む。
「被弾しても冷静でいられるなんて、素晴らしいわ……。」
その笑みが、殺意を余計際立たせているのだがな。
「でもねぇ、私が一度ケガをさせたら、その傷口を広めることが出来るのよ。」
と言うと、私の腕の擦り傷が、次第に酷くなっていく。すぐに分かった。
(『生存率』……ね。)
何故、編み出した答えが「生存率」でも驚かなかったのは、彼女は根本から乙らせるような事はしないと考えたからだ。別に彼女がSだということでは無い。賢者特有の慈悲があるのではないか、と。
まぁ、じきに左腕が使えなくなるのは見えた。敢えて、もう使わない。問題は、使わない一つを含んだ3つをどう使うか。一旦、体制を整えるために、地面に降り立とうとした。
しかし、彼女は容赦しなかった。着地予定地点に、スキマを張っていたのだ。そこからは、無数の手。
(どこかにでも引きずり込む気なの……。)
再び上昇するが、スキマの手はそれ以上の速さで私を追い詰め、ついに足を掴まれた。幸い、手自体に属性が帯びていたので、使える右手でスキマから伸びる手を一振りで切り離すことが出来た。
「あら、もうお終い?」
婦人は、物足りなそうな様子だ。
「あなたの能力は、確かに強いのよ。だけどね、あなた自身がそれを使い切れてないの。」
「なぜ足りない?」
と、わたしが問うと、彼女は、
「可能性を信じていないからよ。」
と、帰ってきた。
「可能性……?」
「そう。信じてみなさい『可能性は100%以上ある』という事を。貴方の能力は、元が強力なのか、スペルカードの能力が本来の力より抑えられてる気がするのよ。これが最大可能性であっても、私の目を照らすと、まだ伸び代があるように思えるわ。」
これも、私には理解できなかった。というのも、幻想郷を作った者が、可能性について語り始めるとは思わなかったである。おそらく、最強級(確かあと数人いたはずだから)の妖怪のはずなのに。何となく、綺麗事にも感じられる。冒頭で述べたように、確率は100まであるただ一つのベクトルでしかない。当然、私はこの言葉に気が障った。
婦人は、話し続ける。
「貴方……、もしかしてこれが最大能力と思っているの?なら、一回ポケット中のスペルカードを見てみなさい。これは、貴方の可能性ではなくて、このスペルカードの可能性だけどね。」
(スペルカード……?)
疑問に思いながら、右ポケットに入っている二種のスペルカードを取り出す。
(まさか、私を騙そうと……。)
私は彼女を疑った。
「変わった様子はないけど、何をしたつもり?」
こう尋ねると、
「もっと、よく見なさいよ。」
と、返ってきた。そこで、私は裏を見る。
(双剣は、変わったような様子はないけど……。)
今度は「懺悔の鎖」の方を見る。……右端何か書いてあった。
(裏には本来、何も書いてないはずなんだけどなぁ……。)
と思いながら、その文字をまじまじと見る。
「……『Lv.2』?」
「そう。そのカード、自動で強化されるのよ。今現在、貴方の本領はここまでよ。」
「ここまで……。ていうことは、私はどうあがいても、あなたに勝てないという事?」
「えぇ。その気になれば、貴方の生存率を低めることなんて可能よ。」
この言葉で、これ以上喧嘩を売る行為をするのは、やめた方がいいと悟った。
「はは……、こりゃ私の負けね。」
*
降伏宣言をしても、婦人は、一向に私を拘束しようとしない。話の流れから、私をあの巫女に突き出すのではないかと思っていたのだが。
「……先行くけど、いいの?」
私がそう言うと、
「ええ。この先、貴方が勝てる見込みなんて無いけれど。」
と、返ってきた。拘束する意思すらなさそうだ。
「……本当に行くけど?」
「だから、良いって行っているでしょう。」
私は、一度ため息をした。まぁ、彼女の言うように、勝機がないのは事実である。そのため、私は何も出来ずにいた。
一方の彼女は″月″をしまった後、一枚の札を取り出した。それを持って、私に近づく。
「貼った後、痛いかもしれないけど、その辺は許して欲しいわ。」
やっと拘束されるのか、と最初は思っていた。しかし、その札を背中に貼られると、一発、後ろから殴られたような強烈な痛みが、体中を伝播した。耳鳴りがして、何も聞こえない。その際、私の目の前には、男性とも女性とも取れない、中性的な姿をした天使が、一人立っていた。
(何……あれ……?)
瞬きをした後には、もうあの天使の姿は見えなかった。気付くと、痛みも収まっていた。
「ま、こんな感じね。これで伸び代は埋まったはずだけど。」
と、婦人はやり切った顔で言った。ポケットにあるスペカを確認した。いつの間にか、二種類増えている。
(腕と、拳銃……?)
もはや、鎖のイメージとは、かけ離れたものだった。
その後、私は左腕を出して、患部を治してもらった。敵ながら、快く承諾したのは、
「この先、そこら辺のより強い能力者が出て来るからね。」
というのが理由らしい。
彼女に、ひょんな事を聞いてみた。
「正直、あの巫女が勝つ見込みはあるの?」
婦人は、この事に首を横に振る。
「彼女も分かっているでしょうね。自分が、全ての人妖に対抗しうる力を持っていない、要は『退化した』、というのを。この異変で、全員の能力が強化されたなら、今の霊夢の能力は、私達妖怪にとっては雑魚なのよ。」
と、付け足して。
「らしくないねぇ。擁護する気は無いの?」
「こればかりは本人も自覚してるわ、多分。」
「じゃあ、私を助命した理由って……!」
と、私が言うと、
「行きなさい……。」
と、遮るようにして言った。
「貴方は、強大な敵を倒せる唯一の能力者。同じ目的なら、私達は味方よ……。」
「……それってどう言う?」
その後、私は答えを聞く事なく、彼女の何らかの確率で、守矢方向に飛ばされた。あの言葉は、表面上のことだけなのか。「同じ目的」である以上、今回は譲歩しただけなのだろうか。
(面倒事に巻き込まれなければ良いけど……。)
*
「何だろう、この香り……。彼女の中から、『解放』の意志を感じる……。」
婦人は、この時に現実世界線から離れて行くのを僅かながら感じ取ったらしい。しかし、私はそれを感じ取れなかったし、ましてや″統制″の事すら記憶の片隅にしか残っていなかった。
……妹の思いが先走ってしまったのかもしれない。私にとって、大きな失態だ。
#7
100年前だったか忘れたが、当時、新刊だった「我が闘争」という思想書を、外界から取り寄せてもらったことがある。確か、著者は確か……、A.ヒトラーだったかな。この人は、徹底的に「ユダヤ」という人達を叩いた結果、国の頂点に立った。そして、その人達の弾圧を展開した。そんな悪人にも関わらず、私は、その人の本を後生大事に取っている。もちろん、やっていた事は、あまりに非人道的で擁護できないが、大きな要素として、最初、この本を読んだ後に一つの感想を思いついた。
(彼は天才だ。最高の演説能力を持っている。)
と。
やはり、金がある神社は違うな。綺麗な参道まで用意してある。石畳が、丁寧に敷き詰められている。その長い長い道を進んだ先に、博麗のものとは比べ物にならないくらい大きな鳥居。その下にいる人が点みたいだ。
(いや、鳥居の下に人……?)
よく見ると、異次元に行けるような、人が入れるくらいの狭間もある。精神を研ぎ澄まして、鳥居に向かう。
何かが飛んできた。妖精かなにかだ。すかさず、剣で切り裂く。
「おや、誰か来たようで。」
鳥居から聞こえてきた。近づくと共に漂ってくる、今まで感じたことのある邪気。ただし、凄まじく。
「あなたが……、あなたが、全ての元凶の……!」
迫り来る妖精達を避けながら、私は前に進んでいく。
「″全て″とは、酷い言いがかりな。」
近づいていくと、次第に顔が分かってきた。その人が、異変を起こした張本人だと思っていた。だが、私の予想とは 、大きく違っていたのだ。
「私が全てではないぞ?私含めて3人だな。」
「それでも、あなたが関わっていたのは変わらないでしょうよ……、天邪鬼!」
「まるで、憶測の上で話している様だな。」
邪鬼は、そう言って私を嘲笑する。いかにも冷静、という感じだ。
「なんとなく思ったのよ。異変なのに、『刃向かってくる妖精が少ない。』と。今の攻撃で、その答えが分かった。……言うまででもないけど。」
この時までに私は、彼女の能力を何となく見抜いていた。邪鬼は溜め息をし、気怠げに話し始めた。
「あぁ。確かに、私がそれに関しての首謀者なのは間違いない。勘が鋭いなら、もう分かっているはずだけど、この異変で扇動能力を手に入れたんだよねぇ。」
「″扇動″……、″洗脳″ではなく?」
「ただの演説能力さ。それの、何がいけないとでも?」
予想と大きく違っていた。邪気が、何かしら接触して入っていったのではなく、吹き込まれる形で組み込まれたとは。
「……意図を持って吹き込んだのは事実でしょう?まるで、あなたに非はないような話し方だけど。」
「当然。私は、″扇動″しただけだ。後は、自分で考えて行動している。全て私の所為、で済まされる事じゃないだろう?」
これ以上問うところで、屁理屈で返される始末だ。
「はぁ……、それより奥にある狭間は何?」
「さぁね。」
「いつまで白を切るつもりなの……!」
私は、邪鬼に少しずつ歩み寄る。私が近接戦に長けているからだ。しかし、その後邪鬼はこう高らかに言った。
「さぁ妖精達よ、我が善良なる策に匙を投げる者が現れた!必ずや、我々が勝利をもぎ取ろうぞ!唯一神様の御加護がある限り、我々が敗北することは、断じてないのだよ!」
そう言うと、どこからか小妖精達の束が私を囲む。中からは、「やってやるぞ!」や、「束になれば、上級妖怪なんて……!」と言った声が聞こえる。意気揚々とした様子だ。
「″扇動″ねぇ……。外界でも多くあったけど、歴史的に言えば、『すべて失敗している』のよ。残念ながら、今回も失敗しそうね。」
*
邪鬼は妖精の戦意を煽っている。直接戦闘に介入しないあたり、指揮以外に能力はないのだろう。しかし、指揮能力は凄まじいものであった。
彼女が使っている戦法は、人海戦術に近い。妖精といっても、種類は豊富のため、攻撃も多彩である。しかも、明らかに一撃で落としているはずなのに、また立ち上がって私に立ち向かっている。あたかも、自ら玉砕を望むように。
(これが扇動能力……。)
「大衆の受容能力は非常に限定的で、理解力は小さく、その分、忘却力は大きい。」……先程述べた本の内容の一つだ。さっきまで洗脳されていた妖怪とはワケが違う。
思えば、なぜここまで小妖精が出てこなかったのか疑問に思っていなかった。むしろ、今までの異変と大きく違う点だというのに。その答えがこの状況だった。いくら双剣を振っても、ゾンビを切っている様だった。
(なんて……、なんて無駄なの!?)
次第に頭がムシャクシャし始めた。おそらく、あの狭間の先にはこの異変の元凶がいる。その前に壁がある。しかし、その壁に到達するのが近くて遠いのだ。
そのうち、私の方が劣勢になっていく。気づくと、もう既に全身傷だらけだった。
「どうかね?これが数の暴力だよ。戦争においては物量がモノを言う……。『数』を制した者が真の勝者なのだよ。」
邪鬼は悠々としている。そして、
「速攻で決めるよ。」
とニヤけ、
「隠蔽は最高の宣伝」
を発動させる。
(何の事実を隠すつもりなの……?)
と内心思ったが、彼女が隠したのは、「自己に潜む『恐怖心』」だった。発動した途端、攻撃され物怖じした妖精の恐怖心が取り除かれ、切り裂いても突っ込んできた。もう玉砕だけでは説明できない。むしろ、
(心まで矯正されてる……。)
このままでは埒がない。そこで、あの時に貰ったあのスペカを繰り出すことにした。そのスペカは、片腕をギリシア神話に描かれるような神が守っているようだった。この絵柄から私が名付けたスペカネームは、
「巨腕『十二柱の巨人』」
である。すると、双剣がみるみる解け、魔法陣にしまわれていく。片方の魔法陣は、次第に右側の魔法陣へと融合した。そのまま二倍にしたくらいの大きさだ。そこから鎖で作られた巨大な右手が飛び出す。私の腕よりも幾分大きい、屈強なものだ。拳を握ってみた。すると、鎖も拳を握ってくれる。
(いや……!むしろこんな事している暇はない!)
と、私は鎖の拳を束になっている妖精の方へ飛ばした。飛ばす際、私が反動を受けたが、その腕は弾幕を食らっても壊れる事はない。そして、腕は十数体の妖精をまとめて殴り飛ばす事ができた。
……汎用性が高い、とは言ったが、それでもせいぜい武器が作れる程度だと思っていた。しかし、この鎖は、「武器」でもあるが、「紐」でもある。そしてこの瞬間、私の「手」と化したのだ!
しかし、やはり片手では足りない。そう思った私は、「懺悔の鎖」を使って魔法陣を二倍にし、左腕を生成した。これで、十分に拳を飛ばせるようになる。
さっきの双剣と違い、こちらは纏めて攻撃できるため、集団戦に向いている。リロード時間がかかるのが欠点だが、それでも強力なメインウエポンになり得る力だ。
小妖精たちをゴスゴスと殴り飛ばす。一撃は強力で、たちまち抵抗する者も減ってきた。その様子を見た邪鬼は、
「……くっ!」
と、少し焦る。だが、その後に彼女はニヤリとした。
(これも想定内というの……!?)
と、内心驚いていると、2枚目のスペカを繰り出す。
「本土決戦『一億総戦力』」
すると、一人小妖精が私に向かって飛びかかった。攻撃する素振りは感じられない。しかし、私に抱きついた瞬間、白く光る。そもそも名前の時点で嫌な予感がし、私はそれをはたき落としてその場をいったん離れた。すると、の妖精は爆発しながら乙ったのだ。もう私が言った″玉砕″ではない。敗色が濃厚なのか、もう既に覚悟している。そして私を巻き込もうとする。これを体感すると、私は段々と酷な気持ちになっていった。
(小妖精はしょうがないと割り切っていたけど、これでは……!)
どうにかして、あの邪鬼だけ倒さねば。そして私は一つの妙案を思いついた。これは鎖の腕の耐久によるので、リスクがあるが。
迷う時間なんてなかった。私は両腕を引き戻し、片腕を自分全体に巻きつける。だいたい三層分くらいだ。その腕の″鎧″に、妖精達が飛びついていく。彼女たちは、私に光を飾り、ついに自爆した。その様子を見て、邪鬼は勝利を確信する。
「ハハッ!我々の勝利だ!唯一神様は私たちに味方しておられるのだよ!」
そう言うと、妖精達が賑わい始める。続けて、邪鬼は何かを言おうとした。だが、彼女は気付いた。
「何だ、このこぶ……。」
気付いた頃には遅かった。私の鎖の拳が彼女の頬を殴りぬける。そして、そのまま巨大な鳥居に全身を強打した。
(かなり迂回したけど……。)
どうやら、鎖は感覚でも動かせるらしい。結構難しいが、攻守で使えるのだから、十分良い。
全員の煽動が解けたのか、辺りは静まり返る。私は巻いた鎖を解き、状況を確認した。邪鬼はその場から動きもしない。そして意気消沈した残りの妖精たちが、山積みとなっている。
鎖の腕の指先を動かし、確認してみた。あれほどの爆発を受けても、鎖には何一つ傷が付いていなかった。私はため息をつく。
「勧善懲悪とは何なのかしら……?」
いくら死なない(=存在が消滅しない)とは言えど、殺したような感覚が腕に残る。ここまで無実の妖怪を殺めてしまうと、後に残るのは罪悪感だけだ。
「『不倒無殺』ね……。」
ふと、思った言葉だ。無論、この能力の自制でもあるが、「当たり障りのない生活を送りたい」という、私の性格にも合致していた。どう解放するか?はたもや、どう現在の生活を維持していこうか?
これは、一種の決意表明である。あの狭間の先に、『唯一神』がいる。どうやって展開しようか?ただし、目的は対象の消滅ではなく、対象の戦意喪失だ。
*
狭間に入る。中は禍々しく、空間が歪んでいて気味が悪い。
(狭間だからか、中は案外広いのね……。)
地面はなく、私は飛行している。下を見ると、底なしの谷を見ているようで、恐怖を唆られる。
しばらく進むと、禍々しい空間の中から、色彩豊かな空間が見えてきた。近付くと、既視感がある光景が広がっていた。
(あれは……博麗神社?)
空は明るかった。が、私に移った景色は地獄だった。
根元から壊れている質素な鳥居。そして、えぐり取られたような本殿。周りの木々は所々倒れており、私が知る、ボロくさく、自然豊かな博麗神社の姿ではなかった。
その真ん中で、2人が話している。1人は浮遊し、1人は倒れ込んで。
(もう黒幕は倒せたって訳?ならもう戻ろうかしら?)
戻ろうとした瞬間、小声が聞こえた。
「おや、もう終わりですか?」
その声は私の知る、あの巫女の声でもない。
(まさか……!?)
近くの木々に隠れて様子を見る。すると、巫女がボロボロに倒れていた。敗北したのは彼女の方だったのだ。そして相手方……獏は彼女を見下し、奇妙にニヤけていた。