夏休みを目前とし、前期の単位をかけたテストが近づく。たまには頑張って講義を聞こうかと思う今日この頃。
しかし、講義を受け始めてみれば、つまらない。と、自主的に睡眠学習へと切り替える。
すると、一瞬で講義の時間は過ぎ、昼食の時間となる。
いつも通りに学食を食べていると、声を掛けられた。
「高崎って今日暇?」
唐突だったので思わず振り向いたが、そこには高校のときからの遊び仲間の一人がいた。
「ちょっと雀荘にでも付き合ってほしいんだけど。」
「雀荘か…」と呟き、特に予定もないことを確認する。
「行けるよ。」
「なら、三限終わったらいつもの場所で集合!いいな?」
「おう。」
彼の名前は中川大輝。遊び仲間の一人だ。暇人サークルという名のサークルで活動しており、暇があれば暇人を集めて遊んでいる。そんなサークル成立するのかと思っていたが、流石暇人の集うサークルであるため活動率はかなり高く、それなりに人気もあるらしい。因みに俺は入ってない。
そして、授業では再び爆睡を決め、指定された時間は瞬く間にやって来る。
「なんだよ、またそんな眠そうな顔して。」
「まぁ、寝起きだから。」
「店長には卓また用意して置いてもらったからな。勿論ノーレート。しっかり打ってくれよ。」
───タン、と牌の音が響く。
二ゲーム目もオーラス、程よい緊張感と焦燥感が漂い、誰も不要に声を発しない。
「リーチ。」
リーチがかかった。その瞬間に更に緊張感が加わる。
「行け、勝負だ!」
───当たり牌だ。
だが、スルーする。それでは一位にはなれない。
自分の番がやって来る。指の表面で牌をなぞり、ほっと息を吐く。
「お疲れ様です。」
牌を裏返し、手牌をさらけ出す。
「4000オール。」
「まーた、高崎のトップかよ!」
中川の一声で先程までの緊迫していた空気が一気に霧散する。
「こうも勝てないと気が滅入るなぁ。現役の頃はもっとやれた筈なんだがなぁ。」
大柄な男…店長がぼやく。
店長は数年前までプロとして活動していたらしい。現役の頃は堅実な打ち手だと評価されていたそうだ。
「たまたま運がよかっただけですよ。店長一回も振り込んでくれないからこっちも大変ですよ。」
「高崎君それ先週も言ってたよね?」
おっさんみたいな男ばかりの雀荘で唯一の女性の声。
「気のせい。それよりも、蟹江は考えてる事全部顔に出てるのどうにした方が勝率上がると思う。」
「余計なお節介ね。誰にバレようと自分で引けば良いのよ。」
こいつは蟹江咲良。多少(?)可愛げな容姿をしておきながら店員でもないのに毎日のように雀荘に通うただのジャンキーだ。年齢は同じくらいらしいが、詳しくは教えてくれない。実際の所は知らないが、中川との間では無職と噂している。
店長とは遠い親戚でそれなりに長い付き合いらしい。
「店長、そろそろバイトの時間なので帰りますね。清算は最下位の中川君がしてくれるらしいんで。」
「おい!…ま、いいけど。」
「まだ少しは時間あるか?少し頼みがあるんだが。」
「店長?なんですか?」
「これをある場所に持って行って欲しいんだ。どうも最近機嫌が良くなくてなぁ。俺が持って行っても相手にしてくれないんだよ。」
店長は白い紙袋を持ってきた。
機嫌…?子供にでも渡すのだろうか。
「全然いいですよ。いつもお世話になってますからね。」
ノーレート…賭けません。
オーラス…テニスやバレーである最終セットみたいなもの。
リーチ…ビンゴと同じです。あと一歩であがり!
4000オール…あがった人がみんなから4000点貰います。
トップ…一位のこと。