いつ建てられたかもわからない古びたマンションの一室に足を踏み入れる。
カーテンは閉められ、足を踏み出すたびに埃は舞い上がる。
本当に人なんか住んでるのだろうか。
「すみませーん、どなたかいますか。」
自分の声が途切れると虚無の時間が漂う。
──いないのか?と、その場を去ろうとした時だった。
「キミが高崎春真君だね。すまないねうちの店長が迷惑をかけて。」
突然の背後からの声に思わず振り向いた。
すると、そこには小柄な少女が居た。
「なぜ名前を…」
「キミのことはよくお店で見させてもらってるよ。」
少女はモニターを指した。そこにはいくつもの防犯カメラで撮影された雀荘の中の様子が映されていた。
「君は…何者…?」
「私の名前はリンネ。リンネと呼び捨ててくれて構わないよ。私はこの店のオーナーなんだ。」
はい?と、声に出てしまいそうになるのを抑える。
オーナー?この子が?雀荘に入ることすら許されなさそうな容姿をしているのに?
「失礼ですがおいくつですか…?」
「今はその質問には答えることができないかな。それと、敬語も使わなくて良い。時間の無駄になるからね。」
頭の中に疑問符が増える。この子は一体何者なんだ?
「そんなことより、キミはその紙袋を持ってきてくれたんだね。感謝するよ。」
「あぁ、はい。」
紙袋を手渡す。
「全くあの店長は図体に似合った精神を持ってほしいものだね。」
「店長が何か…したのか?」
「そうだね…君は店長と麻雀をしていて思ったことがないかい?例えばとことんツキがないだとか。」
思い当たる節はそれなりにあった。麻雀をしていても、ここぞという時に店長が力を発揮出来ているところを全く見たことがない。
途中までは一位だったとしても、ゲーム終了時には殆んど二位か三位には転落している。
「あの店長は酷く運が悪い。呪われているかのようにね。その運の悪さが、この店にひたすら面倒な案件を運び込んでくる事に対して私が腹を立てていただけだよ。この紙袋の中身もそういう物だろうね。」
面倒な案件とはなんだろうと疑問に思ったが、聞いてもこれ以上は教えてくれそうな様子も無かったので諦めた。
「キミはこの後用事があるんだろう。早く行くと良い。」
時計を確認するともう二十分程が経過していた。
「今後も店長のことをよろしく頼むよ。」
無事に渡すことができたと店長に報告し、さっさとバイト先へと向かった。
リンネという謎の少女については結局よく分からなかったが、今は目の前の給料のことを考える事にした。
リンネは小さいです。