「まったく、キミは…」
呆れながら大きなため息を吐く。
「勝手に一般人を干渉させるべきではないと言っているだろう。」
「申し訳ありません。」
「今後も同じようなことがあれば解雇するよ?」
「すみません、それだけは…」
とは言っても、解雇したら困るのはこちらの方だが。そう簡単に雀荘の店長をやってくれるものが見つかるわけではない。
「ですが、高崎は是非ともリンネさんに合わせたいと思いまして…」
「確かに彼から感じ取れるオーラの強さは異常だった。彼の神は少しだけ過保護すぎるようだね。」
会った瞬間…いや、モニター越しで見ている時から分かっていた。
高崎春真は異常だ。
しばらく、彼の雀荘でのゲーム成績の統計を記録していたが、一位率は八割を超え、最下位になったことは一度たりとも無い。
麻雀は運要素の強いゲームで、本来、一位率は三割もあれば良い方といったところなのだ。
決して相手が弱かった訳では無い。早川は置いておき、蟹江はよくイベントに参加しプロとやり合いに行き、毎度健闘できるほどには腕がある。学生麻雀大会でも優勝したこともあるようだ。店長も運が悪いとは言え、それでもプロとして活動していた。それを補える技量があるはずだ。
それなのにも関わらず、彼は確率なんていうものは無視して勝ち続けていた。
「私が神の加護を使ったとしてもあそこまでの恩恵を受けることは難しいだろうね。」
「高崎も自分らと同じ被験者の可能性はあるんですかね。」
「いいや、無いよ。あの時研究所にいた人間のデータは全て頭に入れてあるが、あんな一般人はいなかったはずだ。」
何らかの研究に関わったことがあるのかもしれないと、彼の情報を集めていたがこれと言って不思議な点は見つからない。
先天的に持ち合わせていたのか、それとも私には探せない場所で何かがあったのか。
「彼は私達、『神の代弁者』とは関係の無い存在だということは間違いない。一般人を巻き込むことには気が引ける。それに、変に私たちが動けば”やつら“も動き出す可能性がある。最近は物騒だ。キミも気をつけたまえ。」
「わかりました。」
「それと、今回の案件については今夜から動き始めるよ。」
紙袋の中に記憶メモリを放り込み、紙袋を返却する。
「その中の内容はトシとアカネに伝えておいてほしい。」
店長は紙袋を持ち、すぐに目的地へ出発していった。
「今夜も忙しくなりそうだ。」
いつからのことだっただろうか。賽を振る楽しみが無くなった日は。
二つのサイコロを投げる。
神は赤い目を開きこちらを覗いていた。