BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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突然ですが、皆さんにお知らせがあります。

つい先日、と言っても3日前なんですが……ツイッターを始めました。名前は同じくティアで、下のユーザーネームです。


@tears_bndr


始めたばかりで勝手が全くわからないですが、気ままにやっています。よろしければ、フォロー等お願いします(この場でツイッターの宣伝をするな)



脱線はこれくらいにして、小説の方に話を。まずは感想ありがとうございます!3件もいただけて、大満足です。お気に入り登録もありがとうございます。

次に、評価バーに色がつきました!こんなの初めてで、ファッ!?ってなってました。しかも赤って……もう感無量。本当に心から感謝を。

最後に、UAが5000を超えました!これも、毎回読んでくださっている人たちのおかげです。ありがとうございます。これからもがんばっていきます。

今回はりみりんの解決回。抱えている問題にどのように向き合わせるのか、その答えを出すのが難しかったように思います。

では、どうぞ。


phrase16 臆病な私にできる事

「はぁ……はぁ……」

 

私、何で逃げちゃったんだろう。

 

「はぁっ、はぁ……っ」

 

あんなに大声出して、香澄ちゃんに翔君もびっくりしていたよね。私のために、声をかけ続けてくれていたのに。

 

2人は何も悪くない。その期待に応えられない、私が悪い。応えたくても、そのためにバンドに戻ったところで、私は香澄ちゃんには相応しくない。釣り合っていない。

 

 

そんな香澄ちゃんが、こんな私のために……。

 

 

「……っ」

 

でも、私は香澄ちゃんと一緒にバンドをすることはできないんだ。

 

初めて声をかけられて、バンドに誘ってくれて、私はめっちゃ嬉しかったのに。大人しくて、影でコソコソしているような私とは、別世界のような人だったのに。

 

そんな人が私の力を必要としてくれていることが、夢のようで。思わず泣きそうになって。

 

ライブのステージで輝いているお姉ちゃんの姿を見て、バンドをやってみたいと思う事もあった。ベースを始めたのも、お姉ちゃんみたいになりたかったのがきっかけだった。

 

でも、それが遠い場所の話だと思っていた事もあった。その思いが、香澄ちゃんの手で現実になろうとしている。

 

お姉ちゃんと同じ舞台に立てる。香澄ちゃんに導かれて、新しい扉を開けるのかもしれなかった。こんな自分を、帰られるんじゃないかって思ってたんだ。

 

だから、香澄ちゃんとバンド……できたらやってみたかったんだ。

 

なのに私は、断ってしまった。無理なんだって、思ってしまったから。だって、私は……。

 

「Excuse me」

 

「……えっ?」

 

「Could you give me――」

 

え、えぇっ!?こんなところに、外国人!?困っているみたいだけど、いきなりの事で頭が混乱して、真っ白になってる。どうしたら……。

 

「えと、あの……」

 

「Hum?」

 

ど、どうしよう。このままじゃ私、この人のために何もしてあげることができない。でも、逃げるのだって失礼だよね……。

 

 

やっぱり、私には何かできる力なんて……。

 

 

「りみ!よかった、こんなところにいたのか!」

 

「翔君!?」

 

もう追いついてきたんだ。けど、香澄ちゃんの姿はない。多分、手分けして探しているのかも。

 

翔君を見てさっきの事を思い出してしまったけど、今は誰でもいいから助けを借りたかった。この様子を見た翔君は、私と外国人の間に立つ。

 

「なるほどな。この辺りに外国人なんて珍しいけど……事情は大体わかった」

 

「あの、翔君……」

 

「任せておけよ。まずはそれからだ」

 

任せてって言われても、何をするつもりなんだろう?私なんか、固まってしまったこともあるけど、全然言ってることわからなかったから……。

 

そんな事を考えている私の前で、翔君はゆっくりと深呼吸。困ったように、そして不思議そうに翔君の事を見つめる外国人だったけど、それは一瞬の事だった。

 

「……Hello! What’s up?」

 

「Oh! Could you give me――」

 

え、えぇっ!?さっきとは違う意味で、私は目の前で起こっていることに驚いている。外国人の人も嬉しそうだし、翔君も饒舌に英語を話している。2人で笑っているし、会話を楽しんでいるのかな……?

 

「ほわぁ……」

 

 

今の翔君、めっちゃかっこいいな~……。

 

 

「See you!」

 

「See you!……よし、どうやら役に立てたみたいだな」

 

あんなに堪能に英語を話して、翔君ってすごいんだ……。外国人と会うのも珍しいことなのに、何も怖気づくことなんてないまま話をしていた。しかも、楽しそうに。

 

 

それに比べて、私は……何もできなかった。

 

 

「いや、にしても焦ったな。りみもテンパっただろ。外国人と話すなんて、なかなかないし難しいからな。英語の成績だけ良くても、実際に会話しようと思うと話は別物だからな」

 

「で、でも翔君はあんなに英語を……」

 

「まぁな。前から英語は得意だったし、自信はあるんだ。あ、国語も得意だけど」

 

それで、あんなに流ちょうなんだ。自分に自信があるからできる事なんだね。私だったら、あんなに話せる自信はどこにもない。

 

「……ありがとう、翔君」

 

「いいって。慣れないことはするもんじゃないし、気にするなよ」

 

「ううん。私、すぐに固まっちゃうし、どうしたらいいかわからなくなって、動けなくなっちゃって……かっこ悪いよね」

 

「何言ってるんだよ。固まるって事は、何とかしようと思ってるからだろ?何もしようとしない人より、その方がかっこいいじゃんか」

 

「……そんな風に言ってくれるんだ」

 

「何か変だったか?」

 

「ううん。そうじゃないよ」

 

けど、結局は何もできていない。後ろ向きだから、行動に移る前にあれこれ考えてしまうから。一歩踏み出す事でさえ、私にはできない。情けない。

 

だから私は、昔から人よりも友達が少なかった。内気な性格が災いしていたから。もう高校生なのに、ズルズルと引きずってきてしまったから。

 

こっちに転校してきたからかもしれないけど、それでも花女に通い始めて3年目になる。それはもう、言い訳でしかない。

 

「……ただ、すごいなって思っただけだよ。翔君も、香澄ちゃんも」

 

「香澄も?」

 

「入学式の時の自己紹介……私は緊張して、全然上手く話せなかった。中学から持ち上がりだから、知ってる子も何人かいたのに」

 

口ごもり、上手く言葉にできずに、座り込むしかなかった。間違えないで、堂々と話そうとすればするほど、間違った時に笑われてしまうんじゃないかってビクビクしていた。そんな私に送られる拍手が、恥ずかしくて仕方なかった。何も言えなかったのに。

 

 

けど、香澄ちゃんだけは違っていた。

 

 

「そんな中でも、香澄ちゃんは堂々としていたんだ。初めて会う人達ばかりで、私なんかより緊張していてもおかしくないのに……活き活きしてたんだ」

 

周りとは拍子抜けなことを言って、笑われていたとしても。香澄ちゃんは真剣に、言葉を紡ぎだしていた。

 

全部が一生懸命で、とても楽しそうで。そんな香澄ちゃんの事が、私はずっと気になっていた。まるで恐れを知らない、私なんかとは違う世界の人だと思っていたのに。

 

 

あんな風になりたいって、私は香澄ちゃんに憧れたんだ。

 

 

「だから、そんな香澄ちゃんにバンドに誘われて、本当に嬉しかったんだ。続ける気だって、もちろんあったよ。ベースやってたのも、いつかはバンドをやってみたかったからなんだ」

 

「じゃあ、どうしてりみは、バンドを辞めようなんて言いだしたんだ?香澄に影響を受けて、一緒にバンドをやってみたいって思ってたんだろ?」

 

「うん……」

 

香澄ちゃんと一緒にバンドをやっていれば、少しでも香澄ちゃんみたいになれるかと思った。もっと堂々と、臆病な自分を変えられたらいいと思っていたんだ。

 

「なら、何でだ?」

 

「……怖かったんだ。私、ステージに上がる自分を想像したら、足がすくんじゃって」

 

「自分が、ステージに立つ姿……」

 

「変だよね。バンドやりたいのに、そんな事で怖がってるなんて。でも、ダメなんだ」

 

何となく考えてたんだ。私たちがバンド組んで、ライブ……SPACEの舞台にしよう。そこでライブをする姿を。お姉ちゃんたちが立っている場所に、同じように立って、おなじように演奏する姿を。

 

最初は楽しそうだと思った。けど、段々と不安が芽生えてきた。私なんかがステージに立って、ちゃんと演奏できるのかって。

 

「みんなに見られてるって思ったら、頭が真っ白になっちゃう。どうしようかって、それだけ考えちゃって、精一杯になっちゃうんだ……」

 

今だって、私はどうしたらいいのかわからなかった。何もできなかった。もし、香澄ちゃんと演奏しても、自分は絶対に香澄ちゃんの足を引っ張ってしまう。

 

後ろ向きな私と、前を向いている香澄ちゃん。方向が違う2人は、決して交わることなんてないんだよ……。

 

「香澄ちゃんがやりたいって願っているバンドを、私のせいで台無しにしたくなんてない。お姉ちゃんみたいに上手くないし、緊張してすぐ間違えちゃう。きっと……香澄ちゃんをがっかりさせるよ」

 

 

だから、私じゃない方がいいんだ。香澄ちゃんには、こんな日の目を見ない私なんかよりも、もっとぴったりな人がいるはず……。

 

 

「……そっか。だから、さっき俺たちにあんな事言ったんだな」

 

「……うん。自分でもどうしたらいいのかわからなくなって、ついカッとなっちゃって……」

 

「いいさ。りみの本音、聞けたからな」

 

話がひとしきり終わり、私たちは身近なベンチに腰かけていた。何を話すわけでもなく、2人ならんで座っているだけ。静かな時間が流れ、夕焼けが私たちを照らす。

 

翔君は、こんな自分に失望しているかな?いや、そうだよね。失敗が怖くて、逃げただけなんだから。香澄ちゃんの力になろうともしないで、上手く行かないことだけ考えて諦めてしまうんだから。

 

香澄ちゃんだって、こんな私の事を嫌いになったはず。頼りにしてもらったのに、振りほどいたのは私なんだから。憧れて、目標にしたところで……追いつくなんて、夢のまた夢だったんだ。それがわかったんだ。

 

 

私、本当に何やってるんだろう……?

 

 

乾いた風が私たちの間を吹き抜ける中、私はいてもたってもいられなくなり、ベンチから立ち上がる。

 

また逃げるつもり?心の中でそう尋ねられた気がしたけど、これ以上香澄ちゃんや翔君に迷惑をかけるわけにはいかない。私のせいで、憧れの人の夢を壊したくはない。

 

こんな私に構ってくれなくてもいい。もっと堂々として、緊張なんて知らない人にやってもらえばいい。大人しく身を引けば、それで――。

 

「……待てよ」

 

「……っ!?」

 

腕を掴まれた。逃げようとする私をつなぎとめようとするように、翔君の手が伸びる。

 

止めてほしい。何もできない私がこんなところにいても、恥ずかしいだけなんだ。情けない理由を赤裸々に告白して、惨めな私を晒して……。

 

 

それなのに、まだ手を伸ばし続けるのは……どうしてなの……?

 

 

「は、放してよ。翔君」

 

「いや、放さない。りみだけ言いたい事言って、俺には何も言わせてくれないのか?」

 

「それは……私がかっこ悪いって、何もできない私がみっともないって、そんなことを言いたいの……?」

 

「違うよ。俺は、そうやって後ろ向きにならずに、もっと自信を持ってほしいって思っただけだから」

 

「……えっ?」

 

「今のりみは、自信が何もないんだ。上手く行かなかったら恥ずかしい。ドジで情けない姿を見せると、他人からそんな目で見られてしまうって。だから、何もできないって思い込んで、閉じこもってしまう」

 

翔君が言ってる通りだよ。他人の目ばかり気にして、動けないでいるんだから。お姉ちゃんみたいに、香澄ちゃんみたいに。堂々と、前を向けるように。

 

それができないんだ、私には。なのに、翔君はそんな私に力強く言葉を投げかけてくる。

 

「でも、そうじゃないだろ。もっと前向きに考えてみろよ。かっこ悪い?間違えて迷惑かける?そんなの上等じゃんか。怖がって動けなかったら、できる事も出来ないんだぜ?」

 

「で、でも……」

 

「失敗する姿を見せることは、確かに恥ずかしい事かもな。俺だって、香澄だって見せるのは嫌なはずだよ」

 

「だったら――」

 

「けど、その姿がみっともないなんて、何とも思わない。自分のやりたい事やって、それで失敗してしまっても……逆に誇らしいじゃんか。真っすぐに向き合っているって事なんだから」

 

「…………!」

 

翔君の言葉が、私の心を満たしていく。あれだけネガティブに考えていたはずなのに、抱えていた恐怖や不安が、簡単に剥がれ落ちていくみたいだった。

 

「後ろは見るな、前を見ろ。自分の行ったことに自信を持て。香澄みたいに、もっと何事にも体当たりで挑んでみろよ。あいつ、いつも俺に迷惑かけてばかりだけど……いつだって全力だ。やれること、どんなに笑われたってやってるじゃないか」

 

「あ……」

 

そうだ。香澄ちゃんは自己紹介の時も、周りからはどこか浮いていたような気がする。それでも、香澄ちゃんは前を向いていた。自分に正直になっていた。

 

恥ずかしい。情けない。そう考えてしまう気持ちは、誰にだってあるんだ。その殻を破ればいい……なんて、難しいことは何も考える必要はなかったんだ。

 

自分にできる事を精一杯する。何かしないと、間違えないように、成功しないと。そうやって自分で自分にプレッシャーを与えているから、いつまでも上手く行かないんだ。苦しめていたのは、私自身だったんだ。

 

自分に自信を持つ。正直でいる。やりたいことに、真っ直ぐに向き合ってみる。香澄ちゃんがそうしていたように、私も少しずつ前を向いてみる。そんな姿に憧れたんだから。

 

そうすれば、きっと私だって……何かできる。後ろしか見ないで、人の目だけ気にしている自分を、変えることができると思うから。

 

「お~い、なーくん!りみり~ん!!」

 

「遅いぞ、香澄!どこ行ってたんだ!?」

 

「えへへ、ちょっと道に迷っちゃって……」

 

「香澄ちゃん……」

 

赤いギターを抱えたまま、香澄ちゃんが走ってくる。道に迷ったと言ってたけど、ギターを持ったままずっと私の事を探してくれていたんだ。

 

今だって、私のためにやれることをやっていたんだ。周りの目なんか気にしないで、自分にできる事だけを考えていた。そんな姿が、みっともないわけがない。

 

 

……すごいな、香澄ちゃんは。やっぱり、敵わないよ。

 

 

「な?こいつは、何事にも全力でいるだろ?道に迷っていようが、ここまで来てくれたんだ。できないとか、かっこ悪いとか、迷惑だとか……関係ないだろ?」

 

「……うん。そうだね」

 

「へ?なーくん、何の話?」

 

「お前が単純で、前しか見ないで突っ走るバカ野郎って話だよ」

 

「えー!?それってどういうことなのー!?」

 

張りつめていた空気が、一瞬にして和らいでいく。私の気持ちも緩んでいったのか、つられて笑ってしまった。

 

「えへへ……。翔君、ありがとう」

 

「ん?お礼なんて、別に言われるような事じゃないよ。さっきの話で、りみが何か考えてくれたならそれでいいんだ」

 

「うん……。それと、香澄ちゃん」

 

「えっ、私?」

 

「さっきはその……ごめんね。急に逃げて、戸惑っちゃったよね」

 

まだ、さっきの事を謝ることができていない。翔君もそうだけど、一番謝らないといけないのは、香澄ちゃんなんだから。

 

許してくれるのかな。あれだけきついこと言って、甘い考えかな。

 

ううん、そうじゃないよね。そうやって失敗したことばかり考えるから、何もできないんだよね。自分に自信をもって、やるべきことをやるんだ……!

 

「私、こんな性格だから……上手く行かなかったらどうしようとか、そんな事ばかり考えちゃう。そうしたら、すくんで何もできなくなって、香澄ちゃんの足を引っ張るんじゃないかって思ったんだ……」

 

「りみりん……」

 

「こんな事で、香澄ちゃんのやりたかったバンドを壊したくない。夢を奪いたくないって思って……それで、さっきは逃げちゃったんだ。本当に、ごめんなさい」

 

香澄ちゃんの前に立ち、深々と頭を下げる。恥ずかしいけど、そんな気持ちに負けちゃダメ。それじゃあ、今までと何も変わらないんだから。

 

「……顔を上げて、りみりん」

 

「……うん」

 

「りみりんの気持ち、ちゃんとわかった。私、何にもわかってなかったから、知ることができてよかった。またこうして話ができただけでも、私は嬉しいよ!」

 

「香澄ちゃん……!」

 

 

本当に真っすぐで、憧れる。そんな香澄ちゃんと、私はバンドを……。

 

 

「よし、なら2人の仲直り記念って事で、今からやまぶきベーカリーにでも行くか。もちろん、今日は俺の奢りだ!」

 

「本当!?わーい、なーくんありがと~!!」

 

「えっ、いいの?」

 

「あぁ。りみがまた一つ成長したって記念に、って事も含めて……な?」

 

「……うん!」

 

成長……私、できたのかな?少しでも、変われることはできたのかな?

 

まだわからない。今も、香澄ちゃんや翔君の背中は遠い場所にあるように思えてしまう。

 

けど、その場所にちょっとずつでも近づくことができるように……なっていけるのなら、嬉しいな……。

 

「あ、そうだ。今度お姉ちゃん……グリグリのライブがあるんだけど、よかったら香澄ちゃんたちも来てくれないかな?」

 

「ゆりさんの!わぁ、行く行く!なーくんも行こ!」

 

「そのライブって、確か次の週末だったか。だったらバイトもなかったはずだし、久しぶりに観客としてSPACEにお邪魔しようかな」

 

「よかった!じゃあ、お姉ちゃんにも伝えておくね!」

 

香澄ちゃんと翔君も、喜んで承諾してくれた。お姉ちゃんたちもきっと喜んでくれると思うな。

 

「……ん?でも今、ゆり先輩たち3年生って修学旅行だろ?」

 

「帰ってくる日がちょうどライブの日なんだ。ライブの時間には全然間に合うみたいだから、大丈夫だよ」

 

「そうなんだ!楽しみにしてるね、りみりん!」

 

お姉ちゃんたち、グリグリのライブに香澄ちゃんも来てくれる。帰ったら、お姉ちゃんに連絡しようかな。

 

「……にしても、よかったな。一件落着って感じだ」

 

「うん!でも私、何もしてない気がするけど……?」

 

「いや、そんな事ないぞ。りみが自分の弱さを吐き出して、前を向こうって思えるようになったのは、間違いなく香澄のおかげだからな」

 

香澄ちゃんのおかげ……。

 

ううん、多分そうじゃないと思う。私は香澄ちゃんがきっかけで、憧れを抱くようになった。自分を変えたいって、そう思うようになった。でも、それだけじゃダメだったんだ。

 

今の場所から抜け出すこともできなくて。そこから這い上がる勇気をくれたのは、翔君なんだ。

 

 

だから……。

 

 

「……ありがとう」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「えっ、う、ううん!何でもないよ!」

 

 

 

ありがとう、香澄ちゃん。

 

 

 

そして、ありがとう。翔君。

 

 

 

私に、前を向ける力を与えてくれて。

 


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