BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
実は今日1日で仕上げたので……やろうと思えばやれると言うことがわかりました(つまり普段はサボ――いや、何でもないです。すいません)
今回は、色々と話題を呼んだあの回です。まぁ、説明は要らないでしょう。見たらわかる。
では、どうぞ。
「じゃーん!見て見て、ペンライト!持ってきた?」
「当然だろ。な、有咲?」
「いらないし」
りみに誘われたライブ当日。俺は香澄、りみ、有咲と4人でSPACEに来ていた。もうライブは始まっていて、今は次のバンドが登場するまでの空き時間だ。
にしても盛り上がりがすごい。グリグリだけのライブじゃないんだが、他のバンドも負けず劣らずの人気っぷり。ガールズバンドが注目されているのがよくわかるな。
「つーか、何で私まで普通に誘われてるわけ?面倒くさいのに……」
「どうせ暇だろ」
「そんな言い方されると腹立つな、おい!」
本当の話だ。今日の昼に誘いに言った時にも、盆栽いじってただけの奴だからな。特に予定もなさそうだったから、香澄に協力してもらって、強引に連れ出した。
「あぁ、もう……私の盆栽との時間を返せ」
「そんなものと戯れてる暇があるなら、もっと声出して楽しめ」
「そうだよ~!ペンライト、貸そっか?」
「いらねぇし、ただでさえ暑苦しいのにくっつくな。てか、山吹さんは?誘うって言ってなかったか?」
「来て欲しかったのか?」
「そう言う言い方はしてねぇ!///」
沙綾の事も誘ったんだが、店も忙しいみたいだし今回はパスするみたいだ。一緒に行きたかったんだけどな。
それに……多分、前に話した時の違和感も関係してるんだろうな。音楽の話題を無意識に避けようとしている、あの態度が。
「りみりんはどうしたんだろうね?次、グリグリだよ?」
「姉ちゃんのとこにでもいるんじゃねーの?」
さっきまで一緒にいたはずなんだけどな?有咲の言うように、ゆり先輩のところに行ったのか?それにしては、帰りが遅い気がするんだが……。
「あっ、出てきたよ!……あれ?」
ステージの照明が、舞台袖から登場するバンドを照らし出す。だが、そこにいたのはグリグリではなく、さっき演奏を終えたバンド。
出番はもうなかったはずなのだが、各パート毎に楽器を構え、今にも演奏を始めようとしている。
それに、俺の位置からわずかに見える舞台袖には、グリグリの次にライブを行うはずのバンドが。入念に話し合いをしているようだが、その表情は切迫している。
「ね、ちょっとグリグリが……!」
「マジかよ!?わかった、すぐに準備しよ!」
何かあったな。こうも立て続けにイレギュラーな事が起これば、観客だってすぐに感づく。緊迫した空気の中、不安だけが募っていく。
「……グリグリに何かアクシデントがあったな」
「何があったんだろう……?わかんないけど、とにかく行ってみようよ」
「行ってみようって……私たち一般客だぞ!?牛込さんはグリグリと関係あるから入れるんだろうけど、こっちには何の接点もねーじゃん!」
ステージの裏に回ろうとこの場を離れようとする香澄を、有咲が肩を掴んで止める。
確かに異常事態なことに変わりはないし、そうしている間にもさっきのバンドが演奏を再開した。グリグリにトラブルがあったことは、有咲だって気づいている。
だが、そんな思い付きだけで今の自分たちにできる事は何もない。有咲は香澄に、そう言ってやりたいんだろう。
「でも、私たちはりみりんと知り合いじゃん!何とかならない?」
「私に聞くな!つーか、そんなんでどうにかなるんなら、何も苦労なんて……」
友達がスタッフと知り合いだからステージ裏に行けるなんて、虫がよすぎるからな。一般客が裏方に回れる方が特別なんだから。
けど、それはこの場に香澄と有咲だけだったらの話だ。
「おいおい、俺がいる事を忘れてないか?一応、ここでバイトしてるんだぜ?俺は中に入れるし、ついでに香澄たちも中に入れられる」
「あ、そっか!頼りになるね、なーくん!」
「そうだったな……翔って、ここのバイトだったか」
俺は観客の間をすり抜け、会場を一旦出る。スタッフ用の通路を通り、俺はステージ裏に入った。香澄たちも後に続き、りみの姿を探す。
慌ただしく作業するスタッフたち。待機しているバンドのメンバーも、スタッフと念密な話し合いを重ねていた。
そんな中、不安そうにスマホを見つめ、ソワソワと落ち着きのない少女が。りみだ。俺たちは何があったのかを確認するため、りみの元に向かう。
「りみり~ん!何かあったの!?」
「香澄ちゃん!翔君に、市ヶ谷さんも……!」
「グリグリじゃないバンドが出てきたから、気になってこっちに来たんだ。りみ、何があった?」
「それが……お姉ちゃんたち、まだ来てなくて……!」
「「「えっ!?」」」
やはりそう言う事か。何かトラブルが起こって、予定通りにこっちに戻ってこられていないってわけだ。となると、理由として考えられるのは……。
「確か、3年って沖縄に修学旅行だったな。なら向こうは台風で……それで飛行機が遅れたんじゃないか?」
「翔君の言うとおりだよ。さっき空港に着いて、こっちに向かってるって連絡はあったんだけど……」
「それでこの騒ぎって事か。つーか、それってヤバいんじゃねーの?」
ヤバいなんてものじゃない。どんな事情があっても、客は自分たちの時間を割いてライブを観に来てくれているんだ。その期待に応えるのがバンドマンとしての務めだし、遅刻なんて理由が許されるはずがない。
バンドは客がいてこそだし、客を大事にしないバンドは……言い方は悪いが、バンド失格だ。まだ他のバンドがつないでくれてはいるが、これで間に合わなかったら、どうなるかはわからない。オーナーだって、黙ってはいないはずだ。
こうなったら仕方ない。呑気にライブ観戦なんてしている場合じゃなくなったからな。俺は仕事モードに切り替え、スタッフに状況を確認して回る。
「すみません、ライブの状況はどうなってますか?」
「えっ、成川君?今日は休みだったんじゃ……?」
「今はそんな事言ってる場合じゃないですよ。それより、グリグリが遅れているみたいですが……埋め合わせの方はどうなっているんですか?」
「前のバンドは追加で2曲演奏させて、次のバンドからはMCを伸ばして引っ張ってもらうようにしている」
「けど、それじゃあ限界があるから、どうしたものかと思っていたんだ。よりにもよって、グリグリが遅れるなんて……」
「いつもはそんな事ないのに、今日に限って……」
スタッフの口から、次々と後ろ向きな言葉が吐き出される。こいつは相当疲弊しているな。愚痴の一つや二つ、言いたくなる気持ちもわからなくもない。
だが、ここで俺たちの心が折れるわけにはいかない。俺はスタッフに喝を入れるために、力強く言葉を投げかける。
「皆さん、弱音を吐いてる場合じゃないでしょう?バンドを全力でサポートするのが、裏方の役目なんですから。グリグリは今必死にこっちに向かっているのに、俺たちが先に音を上げるわけにはいきませんよ!」
「成川……」
「まずは曲と曲との間を広くとってもらうようにお願いしてください。バンドの方だけじゃなく、音響や照明にも伝えてください。演出一つで、わずかでも時間は延ばすことが可能ですから」
今いるスタッフに指示を出し、何とかしてグリグリが到着するまでの時間を作る。客だって、香澄たちだってグリグリのライブを楽しみにしていたんだ。その期待を裏切らせて、このまま終わるような真似だけはさせない。
「今から演奏曲を増やすのは難しいか……。可能なバンドっているかどうか、確認してくれませんか?」
「わかった。俺の方で確認して来よう」
「それから、MCでつなぐ話をしていましたが……あまりバンド側に負担させるのも、本来の演奏ができなくなってしまうリスクがあるかもしれない。だから、MCを伸ばすのはなしです」
「えっ、どうしてなの、成川君?それだと時間が……」
「時間を稼ぐことも目的ですが、このライブはグリグリだけのものではありません。出演しているバンドがベストなパフォーマンスを行わなくては、観てくれる人だって満足はしない」
「……そう言う事ね」
「もし協力してくれるバンドがいるなら、話は別です。ですが、曲を増やすのはともかく、MCとなると話す内容を今から考える必要がある。それは負担になるかもしれないと判断したので……。その辺の事も、バンドの方に伝えてくれませんか?」
「了解。私の方で伝えておくわ」
よし、これでひとまずは落ち着いたか。そうしている間にも、次のバンドがステージに向かっている。残されたバンドも少ないし、時間は限られている。
間に合ってくれるといいんだがな……。こればっかりは、俺もどうしようもない。
「……へぇ。結構仕事してんじゃん」
「これでも、オーナーのお墨付きなんでね。後は、グリグリが来るのを待つだけだ」
「うん……。お姉ちゃん、大丈夫だよね……?」
「大丈夫だよ!グリグリのみんなだって、こっちに向かってるんだよ?それなら、来るまで待てば――」
「ダメだね」
香澄の言葉を遮ったのは、普段は滅多に裏方には顔を見せないオーナー。騒ぎを聞いて、わざわざここに来たのか。
「ひゃっ!?お、オーナーさん!?」
「いつの間にいたんだよ……」
「客を待たせるなんて、許せるはずがない。何があろうとステージに立つ……。客は最高の演奏を期待してるんだ。期待を裏切るようなバンドはダメだ」
大方さっき俺が言ったような話だな。オーナーの登場で驚く香澄と有咲だったが、オーナーの言葉を聞いて、別の意味で驚きを見せる。
「も、もし間に合わなかったら……お姉ちゃん、グリグリはどうなりますか?」
「……二度と家の敷居をまたがせない」
「「「そんな……!」」」
オーナーのやり方に、非道だと感じる人もいるかもしれない。けど、それだけバンドに情熱を捧げているのが、オーナーなんだ。伊達にSPACEのオーナーなんて務めているわけじゃない。
「……りみ!ゆりさんに連絡取れるなら、今どこにいるのか確認してくれないか?それと、できるだけ急いでもらうように伝えてくれ!」
「う、うん!」
「成川か……。今日は休みのはずだろう?」
「えぇ、今日は客だったんですけどね。けど、トラブルみたいですし、人手も必要でしょう?」
「情けない話だが、そのようだね。すまない。向こうの音響を頼めるかい?」
「音響ですね。了解です」
俺は3人を残し、音響の方に向かう。新たに曲を増やすとなると、音響にフォローに入る必要があるからな。
「……お姉ちゃん」
心配そうにステージを見つめる、りみと香澄。有咲もまた、彼女なりに心配している。そんな3人に気を向けながら、俺は持ち場に着いたのだった。
***
「オーナー!最後のバンドのステージ、終わりました!」
「……間に合わなかったようだね。仕方ない、片づけを始めるよ」
他のバンドも、なーくんたちもがんばって引き伸ばしたライブ。でも、ゆりさんたちグリグリは、最後までSPACEに来ることはなかった。間に合わなかった。
どうしよう。こんなの、納得できない。りみりんだって、グリグリがこのまま終わってしまうなんて嫌なはずだよ。
「……っ。お姉ちゃん……!」
スタッフの人たちも落ち込んでいる。みんな、悔しいんだ。有咲も、何もできずに呆然としているしかない。
何よりも悔しいのは、りみりんで。堪えきれずに、熱い涙がポロポロと零れ落ちていた。
「…………」
私、何もできないのかな。このまま見ているだけで、ゆりさんたちを助ける事なんてできないのかな……?
昔から、ずっと。誰かを励まして、勇気を与える事なんてできなくて。今も、ほんの少しでも支えになることができない私が……憎い。
「……嫌だ」
「香澄?」
そんなの嫌だ。それじゃあ、私は何一つ――。
「……行かないと」
「って、ちょ!おい、香澄!どこに行くつもりなんだよ!?」
「ステージだよ!ゆりさんたちが来るまで、引き伸ばさなくちゃ!!」
私が、何とかするしかない。このまま終わりたくはない。
「はぁ!?わけわかんねーよ!もう終わってんのに、お客さんだって帰り始めてるのに……香澄が今ステージに出て、何かできる事なんてあんのかよ!?」
「わかんないよ!何をしたらいいのか、全然思いつかないよ!」
有咲の言うとおりだから。何ができるかなんて、そんなの知らない。考えることは、小さい時から苦手だったから。
でも、これだけはわかるんだ。
「それでも、何もしなかったら……終わっちゃうんだよ!?私は、絶対に嫌だよ!」
「香澄ちゃん……」
「だから行くんだよ!待っててね、りみりん。時間を作って見せるから!」
「うわ、ちょっと待てって!あーもう、マジかよあいつー!」
有咲の言葉は、ステージに出たことで最後まで聞こえなかった。それよりも今は、大勢の人に注目されて、さっきまでは感じていなかった緊張が私を襲う。
こんな形で立つことになった、SPACEのステージ。あの時憧れ、立ちたいと願ったステージで……私は今、何ができる?
何も持っていない。このステージには一人きり。足がすくんで、動けなくなりそうだ。何か、何か言わないと……。
「こっ、こんにちは!私、と……戸山香澄です!」
「え、誰?」
「グリグリじゃないの?」
咄嗟に自己紹介したけど、お客さんも戸惑っている。うぅ、どうしよう。何かしないといけないのに……。
あっ、そうだ!歌だ!楽器もないし、ランダムスターがあったところで、まだちゃんと弾けない。えっと、私の知ってる曲は……。
「……きーらーきーらーひーかーる~、おーそーらーのーほーしーよ~」
「って、きらきら星かよ!?おい、香澄!早く戻れって!ヤバいから、マジで!」
あ、あれ~……?お客さんの反応がイマイチな気がする……。1人で歌うのじゃ、限界がある……。
こうなったら……。
「有咲、お願い!力を貸して!」
「ちょま、え、はぁ!?い、いやいや無理だし!絶対無理!」
「無理じゃないよ!有咲はこのままでいいの!?」
「そ、それはよくないと思うけど……」
「だったら一緒に!」
「おい、嘘だろぉ!?」
もう仕方ない。有咲と二人で歌うしかない。力を借りてでも、何とかするしかない。私だけじゃダメでも、どうにかなるかもしれない!
「服引っ張んな……っ!?」
(げっ、お客さん多っ!?すげーこっち見てるし、うちに帰りたい……!)
「行くよ、有咲!」
「マジで言ってんのか……って、何でカスタネット渡すんだよ!?」
使えそうな物がこれしかなくて……。私は有咲にカスタネットを強引に押し付け、深呼吸してマイクの前に立つ。
ちらりと目配せして、有咲を確認。渋々カスタネットを手に取っていたが、やがて吹っ切れたみたいで……。
「くっ……うぅ、仕方ねーな!こうなったら、もうどうにでもなってやる!どうぜ恥かくなら、最後まで付き合ってやるよ!」
***
「す、すみませんオーナー!あの子たち勝手に……」
「もう少しだけ、待ってやりな」
「え?しかし……」
「まさかステージに出ていくなんて思わなかったが……彼女たちの気持ちは本物だ。今だけは、汲み取ってやろうじゃないか」
香澄ちゃんがステージに飛び出して行って、もう5分になろうとしている。有咲ちゃんはカスタネットを片手に、香澄ちゃんはカスタネットの音に合わせてきらきら星を歌い上げている。
二人とも、一生懸命に頑張っているのに。大勢のお客さんの前で、恥ずかしいはずなのに。出来ることを全力でやっている。
「…………」
私は?このまま、何もできないままでいいの?かっこ悪くても、間違えても、今の香澄ちゃんは自分にできる事をしようとしているんだ。
『もっと前向きになれよ。香澄みたいに』
「……!」
翔君だって、私に言ってくれた。今の私は、自信を無くしているだけなんだって。だから、香澄ちゃんのようにまっすぐでいられることを、私自身が望んだんだ。そうなりたいって、心から思っていたから。
香澄ちゃんも、有咲ちゃんだって頑張っているんだから。私だって、お姉ちゃんたちのために今できる事はきっとある。
私が変わるチャンスは、今なんだ。ううん。今しかないんだ。
「…………」
だったら、なろうよ私。香澄ちゃんみたいに、自分にできる事を……素直に、できるように!
「やっぱグリグリ出ないのかな……。うーん、帰ろっかな……?」
「ど、どうしよう有咲!お客さん、このままだと帰っちゃう……!」
「そりゃ、きらきら星じゃ限界あるだろ!選曲だって――」
「香澄ちゃん!有咲ちゃん!!」
私は愛用のベース……お姉ちゃんからのお下がりで、ピンク色のベースを持って、ステージに上がる。香澄ちゃんたちも、私がステージに来るのは予想外だったみたい。
お客さんの視線が怖い。震えが止まらない。気を抜くと、足の力が抜けて倒れそうになる。思考が止まって、頭が真っ白になりそうになる。
でも、それじゃいけないんだ。だから私、今ここに立っているんだ。そして、自分の足でステージに上がる勇気をくれた、三人の力になるために。
「り、りみりん!?」
「持ってるの、それベースか……!?」
「お、お姉ちゃんも、グリグリのみんなも絶対に来る!そのために、私も……やれることをやりたい!もう逃げたくない!」
「りみりん……!」
「だから、一緒に……お願い!!」
「「……うん!」」
曲は、さっきも歌っていたきらきら星。香澄ちゃんはボーカルを。有咲ちゃんはカスタネットで合いの手を。そして、私は。
「……きらきら星のベースアレンジか。やるじゃん、牛込さん!」
「ありがとう、有咲ちゃん。でも、今は……」
「わかってる。最後まで付き合うって言っちゃったからな」
声を掛け合い、一つの音を完成させていく。私たちの想いが届いたのか、帰ろうとするお客さんもいなくなった。足を止め、私たちの演奏に耳を傾けている。
歌とカスタネットとベース。香澄ちゃんが目指しているバンドとは、あまりにも遠くて、かけ離れているものだけど……。
(……楽しいね、香澄ちゃん)
香澄ちゃんと有咲ちゃん。二人と一緒に演奏するのが、めっちゃ楽しい。怖いけど……それ以上に楽しいんだ。この気持ちも、香澄ちゃんが、翔君が教えてくれた。
どうして私は、あんなにも臆病になる必要があったんだろう?逃げる必要なんてあったんだろう?そんなもの、何にもなかったのに。
前を向くことができて、本当によかった。後ろを向いてちゃ、絶対に見えていなかったから。
今こうしてステージから見える、二人と一緒に見ている景色は。
「……ん?翔の奴、何かこっちに合図みてーなの送ってね?」
音響の場所にいる翔君が、何か伝えようとしている。あれは……丸?両手で大きな円を作って、一体何を……?
「あっ……!りみりん、あれ!」
香澄ちゃんが何かに気づき、指を指す。その先にいたのは、私たちが待ち望んだ姿で……。
「お待たせ!遅れてごめんね!!」
「お姉ちゃん!よかった……っ!」
「ありがとう、りみ。それに……二人も。後は私たちに任せて、ね?」
私たちと入れ替わりにステージに立ち、楽器を構えるグリグリのメンバーたち。お客さんの歓声が、ワァッと広がっていく。
「SPACE!まだまだ元気ありますかー!」
間に合った。グリグリのみんなが、お姉ちゃんが。もうダメかもしれなかったけど、このライブに。
ありがとう。私に勇気をくれた、香澄ちゃん。それに有咲ちゃん、そして……翔君。
こんな私でも、前を向いて……できること、ちゃんとできたよ……!