BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
ツイッターにはちょくちょく顔出していたんですが、やはり小説を書くとなると時間も取れず……。ゴールデンウィークで巻き返します!多分!()
今回は、見事グリグリのライブが終わったところから!もうどこから始まるとか、絶対忘れてるよね()
では、どうぞ!
「みなさん、本当にごめんなさい……!」
「私たちも勝手にステージに上がっちゃって、すみませんでした!」
グリグリのライブは無事に終わり、何とか今日のライブは成功した。一時はどうなるかと思ったが、観客は大満足した様子で帰っていった。
裏で働いていたスタッフも、ようやく一息つけたと言ったところ。後片付けは残っているが、今はやり切った達成感の方が大切だった。
そんな中、グリグリのメンバーと香澄たちは、ちょうど楽屋に戻っていたオーナーに今回の一件について謝罪を入れる。結果こそ重要ではあるが、そこに行きつくまでの過程に問題があった。しっかりとけじめはつけなくてはいけない。
「オーナー、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。アクシデントとは言え、私たち……」
「遅れてしまったのは、事実なので……」
「…………」
だが、オーナーは頑なに無言を貫く。気まずい空気だけが流れ、グリグリのメンバーの不安も徐々に大きくなる。
これまでも、自分たちと同じ状況でSPACEを去るバンドはいくつかあった。今度は、自分たちの番。そう思うほど、恐怖と悲しみでグリグリのメンバーの心は満たされていく。
これがラストライブになるとは、誰も思ってなんかいなかったのに。
「ダメ、でしょうか。私たち、もうあの場所に……ステージに立てませんか?」
「…………」
「お願いです。まだ、立っていたいです。ライブを台無しにするかもしれなかった私たちが、図々しく口にできるような事ではありませんが……」
「…………」
「……っ、お願いです!オーナー!」
悔しくて仕方ない。ベースボーカルのゆりは、何とか復帰してもらえるように頼み込む。だが、それでもオーナーは答えない。揺るがない。
焦りでオーナーに詰め寄ろうとしたゆりだったが、バンドメンバーに止められて引き下がる。その様子を、同室にいた有咲とりみも黙って見ていることしかできない。
最早、覆らない。グリグリのSPACEからの追放は、決定的な事実となってしまった。
そんな中、口を開いたのは香澄だった。
「あ、あのっ!オーナーさん!」
「……何だい」
「おい、香澄……」
「グリグリの人たち、遅れちゃったけど……でも、お客さんたちも喜んでました!みんな、キラキラしてたんです!楽しそうだったんです!」
「……それで?」
「私も楽しくて、キラキラして……そんなグリグリが好きなんです!私もバンドやりたいって思ってて、そのきっかけを作ってくれたのは、グリグリだったから!」
今日のライブ。そしてこのライブを観ているからこそ、香澄はグリグリをSPACEと言う場所から失わせたくはなかった。彼女たちは間違いなく誰かを笑顔にして、その姿に香澄自身も力を貰ったから。
何よりも、バンドと言う舞台を香澄に見せてくれたのは、グリグリだった。彼女たちこそが、香澄の原点だった。
キラキラドキドキできるもの。ずっと探していた答えをくれ与えてたのは、この場所であり……彼女たちだから。そのために今、香澄は声を上げる。
「だから、SPACEから追い出さないでください!誰かを笑顔にするだけの力が、グリグリにはあるんです!」
「香澄……」
「香澄ちゃん……」
香澄の熱のこもった言葉も、涼し気に顔色一つ変えずに静聴するオーナー。手ごたえはあるのか、それともないのか。香澄にも焦りの色が見え始め、再び口を開こうとした時だった。
「……客が満足して帰ったのなら、それでいい。あんたの言う通り、力のあるバンドをこのような形で追い出すのは私としても不本意だ」
「そ、それじゃあ……!」
「けど、次はないよ。……気をつけな」
一言だけ言い残し、オーナーは楽屋を出て行った。グリグリのメンバーは安堵の色を浮かべながら、その背中に感謝の言葉を投げかけた。
最悪の事態を逃れることに成功し、香澄もりみと手を取り合って喜ぶ。もし追放となっていたら……想像したくもない。
「ゆりさんたち。許してもらえてよかったね!」
「うん!香澄ちゃんや有咲ちゃんのおかげだよ!」
「は、はぁ?べ、別に私は何もしてねーし……」
「あれ?有咲照れてる?」
「そ……そんなんじゃねーし!」
そう強がってはいるが、有咲は明らかに頬を真っ赤に染めていた。照れ隠しと言うやつだろう。
「つーか、私は、香澄に乗せられてステージに上がっただけだ。けど香澄は、あんなアウェイの中でもステージに上がって、さっきもオーナーに真っ向から言いあってただろ。私に何かできたって言うんなら、間違いなく香澄がいてくれたからだ」
「あ、有咲……」
「……っ、あ!ちょ、今のはなんつーか……こ、言葉のアヤだ!真に受けんな!つーか忘れろ!///」
「有咲~!」
「ちょ、抱き着くな!牛込さんも見てないで、早く助けてくれよ!」
「あ、あはは……」
かえって心配になるほど顔を赤く染める有咲と、嬉しさで抱き着く香澄。余計に有咲の赤みが増し、りみは苦笑することしかできない。
だが、そんな二人に勇気をもらって、自分を変える一歩を踏み出すことができたのは事実だ。りみはじゃれ合う二人をほほえましく見つめていた。
「ちょっとあなたたち、もう二度とあんなことしちゃダメだよ!」
「わぁ!?ご、ごめんなさい!」
「結果的にグリグリのライブができて、お客さんが喜んでくれたからよかったけど……ダメなものはダメだから!わかった!?」
「は、はい!もうしません!絶対に!!」
と、そこにSPACEのスタッフからの説教が入る。だが、グリグリのライブの成功と言う功績も配慮してか、少しきつめにお灸を据えるだけで終わった。
片付けのためかスタッフの人は楽屋を出ていき、残ったのは香澄たちとグリグリのメンバーだけとなる。
「あ、あはは……怒られちゃったね」
「何とかなったからいいけど、普通に怒られるに決まってんだろ!大体、何でお前きらきら星なんだよ!?もっとまともな曲とかねーのかよ!?」
「だ、だって~……キラキラする曲って言ったら、きらきら星くらいしか……」
「レパートリー少なっ!?そんな事なら――」
「あの……戸山さん、だよね?ちょっといいかな?」
声をかけたのは、グリグリのギターボーカルのゆりだった。他のメンバーもゆりの後ろで、香澄たちに熱い視線を送っている。
「は、はい!何でしょう、ゆりさん!」
「そんなに固くならなくてもいいよ。りみから話は聞いてたよ。周りを振り回すほどに明るくて、何にも気にしないで突っ走る、元気な同級生がいるって」
「お、お姉ちゃん!?その話、ここで言わなくても……///」
香澄の事を褒め称えていたことがばれて、恥ずかしさで顔を隠すりみ。香澄も嬉しそうにしているのを見て、ゆりは話を続ける。
「あはは、ごめん。それで、戸山さん。さっきはありがとう。ライブが終わってからもステージで時間をつなげてくれようとしたのって、戸山さんなんだよね?」
「はい!私にも何かできる事ないかなって、とにかく何かしたくって。そうしたら、身体が先に動いてて……何にも考えてなかったんですけど、上手く行きました!」
その姿勢に、有咲もりみも心打たれた。だから3人で時間を稼ぐことができた。きっかけは、全て香澄から生まれていた。
「そうだったんだ。本当に嬉しいよ。もう少しで私たちは、このSPACEに立てなくなるところだったから。そんな私たちを助けてくれたのは、戸山さんだよ」
「ゆりさん……」
「それに二人も、本当にありがとう。感謝しても、しきれない」
深々と、ゆりは香澄に頭を下げる。ライブを続けられるかどうかの瀬戸際だった。トラブルとは言え、一瞬で終わってしまうような事態だった。
その危機を救ってくれたのは、有咲にりみであり、間違いなく香澄だ。後ろにいたメンバーも、香澄たち3人に対して頭を下げた。
「お、お姉ちゃん……!」
「そんな、頭なんて下げないでください!下げなくちゃいけないのは、私の方なのに……」
「えっ?」
謝罪、感謝。そんな気持ちなんて、彼女たちから貰っていい物じゃない。むしろこっちから返さなくてはいけないんだ。
先に貰ったのは、香澄の方だから。
「……私、小さい頃に星の鼓動を聞いたことがあるんです。キラキラドキドキしていて、その時感じたものを、ずっと探していたんです」
「星の、鼓動……」
「でも、前のグリグリのライブで私、出会ったんです!キラキラできるものに!それが、バンドだったんです!」
「それって、さっきオーナーに言っていた……」
「そうです。私、やっと見つけたんです!まだギターも弾けないし、メンバーだって全然いないけど……でも!バンドがやりたいって、その気持ちだけは譲れない!それだけは確かなんです!」
メンバーも揃って、ギターも上手に弾けるようになって。バンドとして、ライブして。今度は、自分の手でキラキラして見せる。
それがいつの話になるのかは分からない。けど……絶対にこの思いは消させない。キラキラしたいから。有咲と、りみと。
「その気持ちを与えてくれたのは、ゆりさんなんです!だから……ありがとうって、その言葉を言うのはゆりさんじゃない」
頭を下げる。難しいことを考えるのが苦手な香澄でも、できる感謝の気持ちを。最大限に込めて。
「私にっ!キラキラドキドキできることを与えてくれて……ありがとうございます!」
ゆりは驚いているようだったが、香澄は構わず頭を下げていた。そんな香澄に、しばらくしてゆりが優しく声をかける。
「……顔を上げて」
ゆっくりと顔を上げる。そこには、ゆりの差し出した右手が。香澄はハッとして、ゆりに視線を移した。
「戸山さんの気持ち、すごく嬉しい。私たちの音楽で、夢を与えることができたんだから」
「ゆりさん……」
「だから、そんな私たちにまた……誰かのために、夢を与えられるチャンスを与えてくれたことは、ちゃんと感謝として伝えておきたいんだ。ありがとう、戸山さん」
互いに救い、救われて。そんな2人が今、こうして向かい合っている。香澄はゆりの右手を握り返し、その気持ちに答えた。その握手に、2つの意味を込めて。
握った手から感じる温もりは、香澄の心を温める。こんなにも優しくて、暖かな人からキラキラを貰えたこと。それが何よりも嬉しくて。
交わしたその手が離れるまで、香澄はその余韻に浸り続けていた。
***
「はぁ……。これで、本当に終わったって事だな」
それからしばらくして、グリグリのメンバーはSPACEを後にした。オーナーには改めて挨拶に行き、これからは反省会も兼ねて近くのファミレスに寄っていくらしい。
香澄たちも誘われたが、さすがに邪魔はできない。それに、いつまでも出歩くには遅い時間だ。翔はまだ片付けに追われているらしいので、3人で先に帰ることにした。
「ありがとね、有咲!りみりんも!」
「巻き込まれた時はどうしようか本気で焦ったからな!めちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど!?」
「えへへ……。でも、有咲がいてくれたから助かったよ。ありがとね、有咲」
「……っ、そ、そんな真面目にお礼言われると、恥ずかしいだろ……///」
外は暗くてよくわからないが、香澄にもりみにも、今の有咲の顔がどうなっているのかを想像するのは容易かった。そんな様子をほほえましく思いながら、りみは口を開く。
「でも、二人のおかげでステージに立てた……。怖かったけど、楽しかったよ」
「うん!私も、りみりんとステージに立ててよかった!ありがとっ、りみりん!」
「香澄ちゃん……!」
怖くて、何ができるのかもわからなくて。そんな自分と一緒にステージに立ち、演奏とは呼べないかもしれないライブができたことを喜んでくれる人がいる。胸の中で、何かが広がってりみを満たす。
そんな香澄の言葉で、りみは決断した。迷っていたバンドへの思い、まだはっきりと伝えていなかった思いを打ち明けるのは、今この場所なのだと。
「……あの、香澄ちゃん」
「うん?」
「前に言ってた、バンドの話だけど……。もし、まだ間に合うのなら、私も一緒にバンドしたい!こんな私でも、香澄ちゃんのバンドに入れてくれないかな……?」
「りみりん……!」
もう一度、バンドに。諦めかけていた言葉、そして待ち望んでいた言葉をりみの口から聞けた香澄は、嬉しさのあまりりみに思いっきり抱き着いた。りみは倒れそうになるが、それを有咲が受け止める。
「か、香澄ちゃん!ちょっと苦しいよ~!」
「ちょ、危ねぇだろ香澄!もうちょっと考えろ!」
「ごめ~ん!でも嬉しくって!りみりんがバンドしたいって言ってくれたこと!そんなの、断る理由なんか何もないよ!」
「それじゃあ……!」
「バンド、一緒にやろう!りみりんが一緒なら、私も心強いよ!」
りみの気持ち。それを香澄に伝えることに成功し、ようやく香澄たちの仲間入りを果たすことができた。香澄、りみ、有咲。少しずつ、バンドのメンバーが集まり始めてきた。
「ありがとう、香澄ちゃん!私、めっちゃ嬉しい!」
「私もだよ!よ~し!りみりんもバンドに入ってくれたし、次は文化祭だね!」
「……はぁ!?ちょ、文化祭はどっから出てきたんだよ!?」
「ギターを返してもらいに生徒会室に言った時に聞いたんだ!申請すれば、体育館でやるライブステージに出られるんだって!」
「あんときかよ……」
文化祭のクラスの出し物とは別で行われる、有志のライブステージ。香澄の話によると、例年盛り上がりを見せる目玉企画らしい。
香澄はそのライブステージに、自分たちのバンドで出場しようと考えていた。折角バンドを組むのだから、人前で演奏しなくては意味がない。
「だってって……。お前、まだろくにギター弾けないんじゃなかったのかよ」
「大丈夫!いっぱい練習すれば、きっと上手く行くよ!」
「本当か!?つーか、私まで頭数に入れてねぇだろうな!?まだバンドに入るとは一言も言ってはーー」
「一緒にがんばろ!有咲、りみりん!!」
「人の話は最後まで聞けよな!?」
有咲の怒号が夜道に響き、一拍遅れて2人の笑い声が木霊する。それがおかしくて、有咲もつられて苦笑する。
「えへへ……うん!香澄ちゃん、私も頑張るね!」
「りみり~ん!ほら、有咲も!」
「だからなぁ……」
目指すのは文化祭。最初の目標が生まれ、香澄は決意を新たにするのだった。
***
「…………」
声が、聞きたい。
「…………」
もう一度、笑い合いたい。
「…………」
あの頃のように、戻りたい。
「……ねぇ」
その声に答えてくれる人は、ここにはいない。
「また、歌いましょうよ……」
目の前に横たわる少女は、何も口にしない。
「笑顔にする事の意味を教えてくれたのは、あなたじゃない……っ!」
それでも。悲痛な声は、どこにも届かない。
「…………」
虚ろな目は、何も映さず。そんな目を見つめる少女は、返事を聞かせてくれる時を待っている。
「……美空」
窓から吹く風が、悲しげに瞳を揺らす金髪の少女を包む。
その視線の先にいる少女も、銀色の髪をなびかせていた。
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@tears_bndr
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