BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
いやー、ようやくですよ。待ってました。フライングで短編出してしまうくらいだったからね!(前の話で言い忘れましたが、そちらの短編を見てからこっちを見るといいかも)
その前に、早速お気に入り登録して下さった方々、ありがとうございます!それだけで、作者は泣いて喜んでます(本当)
話を戻して……ガルパでもスター大盤振る舞いだし、めでたいこと尽くし!作者も楽しんでプレイしてますよ!
もちろん名前はティアです。腕前はハードがやっとの下手くそですが、協力ライブで見かけることがあったら、その時はよろしくお願いします。足は引っ張りません。
あ、ドリフェスはまだ引いてません。最終日に一気に引くつもりなので、結果は次の投稿で。
この小説としても記念すべき1話で、前書きがかなり長くなりましたが、本編に移りましょう!
――私、小さい頃『星の鼓動』を聞いたことがあってーー
それは、幼き日の記憶。明日への扉を叩かれ、心の奥底に眠る何かが解き放たれた瞬間。
不安で俯き、下を向いて歩いていた自分を明るく照らした、満天の星空。美しさに心を奪われ、自然と上を向いたことで満たされていく、抑えきれない衝動。
――キラキラドキドキって、そういうのを見つけたいです――
いつかまた、あの星空のような興奮に出会える夢を信じて。この秘めた思いは、今までもこれからも、絶対に消えることはない。
まだ出会うことはできないけど、踏み出す自分を待っているはずだから。そのために探し続ける。あの時のような鼓動を感じられるものを。
――キラキラドキドキしたいです!!――
夢を撃ち抜く瞬間を。
***
桜舞い散る並木道。雲一つない穏やかな青空。その中を駆け抜ける、一人の少女。すれ違う景色に胸を震わせながら、少女はある場所へとたどり着く。
「ふー、学校に来たら実感するな~。今日から私も高校生なんだよね!」
花咲川女子学園。通称花女。都内でも有名な女子校で、中高一貫の教育を行っている学校だ。そのため、大半の生徒は内部からの持ち上がりとなるのだが……今学校に来た少女は違った。
小柄で華奢な体つき。星をイメージした、猫耳のような髪。アメジストの瞳を輝かせ、彼女は――戸山香澄は、これから始まる学校生活に心を躍らせる。それもそうだ。彼女は、今日からこの学校の一員となるのだから。
「楽しい学校に新しい制服!何かキラキラすることが始まりそうな気がする!」
「何を大声出してんだよ、香澄」
「あっ!その声は……」
香澄と呼んだ一人の人物。香澄はその姿を捉えると、人目もはばかることなく駆け出した。
「なーくん!遅かったね?」
「遅かったね、じゃないだろ!勝手に一人で走って行くな!追いかけるの大変だったんだぞ!?」
「え~?だって、早く学校行きたかったから~。なーくんだって、楽しみじゃなかった?学校!」
「まぁ、楽しみなのは楽しみなんだけど……とりあえず、抱き着くな。離れてくれ」
癖っ毛が少し目立つが、端正に整えられた黒髪。香澄よりも一回り高い身長で、体格は優れている。
そんな彼――成川翔は、香澄と同じ制服に身を包んではいた。もちろん、男性用に加工はされているが。翔もまた、香澄と同じ学校に入学することになっている。
「もー、最近なーくん抱き着くなって言う事多いよ~。小さい頃はギュ~ってしても怒らなかったのに……」
「恥ずかしいんだよ。俺だって、年頃の男の子だぞ?もっと自分が女の子だって事自覚してほしいんだけどな……」
香澄のせいで、俺たちの横を通り過ぎる花女の生徒は好奇の視線を向けてくる。こんな事で注目されるのはごめんだが、香澄が関わっていなかったとしても、どのみち注目されることは避けられなかったはずだ。
それもそうだろう。この学校は、花咲川女子学園。『女子』とついているだけあって、れっきとした女子校だ。
そして俺は、改まって言う必要もないが男だ。女子校に男子がいるだけで、自然と注目の的になるのは仕方ない。けど、あまりじろじろ見られるのも嫌だな……。しかも女の子だし。
ここに来る途中でも何人かに見られてたし、しばらくは落ち着かない登下校が続きそうでならない。と、ここで香澄がようやく疑問に触れる。
「そう言えば、何でなーくんはこの学校に入学できたの?ここって、確か女子校だったよね?」
「あ、あぁ。通える学校の中じゃ家から一番近いし、家計の都合もあるからさ。家族に迷惑もかけたくなかったし、特務生って扱いで特別に入学許可が下りたんだ」
そう。俺がここにいるのは、異例中の異例。本来はあってはならない事態だ。女子校なのに、男子生徒を入学させるわけにはいかないからな。
だが、俺の事情を知った学校側は、快く入学を許可してくれた。制服も用意してくれたし、色々と手続きも済ませてくれた。そして、現在に至ると言うわけだ。
「へぇ~そうなんだ。なーくん、女の子になったのかと思ってた!」
「ならねぇよ!健全な男の子だ!」
だから、正直この環境は慣れるまでに時間がかかりそうだ。どこを見渡しても女子だぞ?何かのライトノベルでそんな話を見たことがあるが、またわけが違うし。
香澄が一緒だったのは、唯一の救いだったけどな。幼稚園時代からの付き合いだし、知り合いが1人いるだけでも心強い。
「でも、これから楽しみだね~!なーくんも一緒だし!」
「……そうだな。今日から高校生だからな。青春って感じがするよ」
俺の青春は、他の男子どもとは全然違ってくるけどな。上手くやっていけるかどうかもわからない。
けど、これは自分で選んだ道なんだ。いきなり不安になって、後悔なんてしているようじゃダメだよな……。
「今日からお世話になります!ほら、なーくんも!」
「わかったって。……よろしくな、花女」
香澄に制服の裾を掴まれ、俺も香澄に倣って挨拶を済ませる。やはり過ぎ去っていく生徒の視線は痛いが、今は始まりの余韻に浸っていよう。
挨拶をしなくてはいけない人は、他にいるからな。
「そうだ、クラス!何組かな~」
「掲示板は……お、あったぞ」
「さすが、なーくん!よ~し、行こう!」
強引に腕を引っ張られ、俺は香澄に連れられて行く。足元がおぼつきそうになるが、何とか香澄に合わせて歩き出す。
ただでさえ珍しい男子だ。それを入学初日から女子生徒に振り回されているとなると……もう周りを気にしていたら負けなレベルだ。変な噂が立たないといいんだけどな……。
「よし、とうちゃ~く!」
「わかったから、もう放してくれよ。色々と痛い……」
掲示板の前は、既にクラスを確認する生徒でいっぱいだった。あの中に入って名前を探すのかよ……。接触不可避だな。大丈夫か?
「えーと、なるかわは……おい、香澄。俺の名前も探してくれ」
「一緒に探してるよー。とやまになるかわ……あ、あった!」
指さして俺に教える香澄。クラスを見ると、A組らしい。しかも、どうやら俺と香澄は同じクラスみたいだ。これは幸先がいいな。
その事に気を取られるあまり、近づいてくる人影がいたことに俺たちは気づくことができなかったが。
「……わっ!」
「おっと、大丈夫か?悪い。こっちの不注意だったな」
「あ……」
香澄にぶつかる女子生徒。そのはずみで、よろけて倒れそうになってしまう。俺はとっさに手を伸ばし、背中から腕を回して受け止めた。
「怪我とかないか?立てるか?」
「あ、えと……うん。こちらこそ、ごめん。掲示板見てて、横見てなかったから」
桃色の髪をポニーテールにまとめた、今日の青空のような澄んだ瞳を持つ少女だった。
だが、頬は対照的に赤く染まり、空色の瞳もチラチラと俺を映すばかり。どこか恥ずかしく、照れ臭そうにしているようだった。
「そ、それよりも彼女の方は大丈夫?私は何ともだけど……」
「あぁ、こいつは大丈夫。ほら、香澄も謝れ」
「うん。こっちもぶつかってごめ――あれ、いい匂い?」
「「えっ?」」
謝れと言ったはずなんだがな、俺は。だが、香澄の言う通りいい匂いが漂ってくる。この匂いって……。
「これって、パンか?」
「そう、パン!すっごい、いい匂いした!」
と、そんな食欲をそそる体験をした香澄は……。
グ~グキュルル……。
俺たちの目の前で、盛大におなかを鳴らしたのだった。
「うぅ、朝ごはん食べてないの思い出しちゃった……」
「朝飯食べてないのかよ。俺と一緒の時間に家出たんじゃなかったのかよ」
「だって、楽しみで仕方なくて……。それに、あっちゃんが始業式明日って言うから……」
顔を赤らめ、恥ずかしそうにする香澄。この辺は女の子らしい。
あ、香澄の言ってた『あっちゃん』の話は、今はしないでおこう。そのうち話す機会もあるだろうしな。
「フフッ……。うちパン屋だから。1ついる?」
「えっ?パン!?」
「飴玉。パンじゃないけど」
違うのかよ。今の流れは絶対にパンだった。この子、狙ったな……?
「飴だ!いいの?ありがと~!」
質問しておいて自分で完結させるな。だが、香澄も我慢の限界だったらしく、女子生徒から飴を貰うと、すぐに舐め始めた。もごもごと何かしゃべっていたが、わからないので放っておく。
そんな香澄を横目に、彼女は俺に視線を向けてくる。と言っても、少しぎこちなかったが。
「どうした?さすがに俺も、女の子にじろじろ見られるのは恥ずかしいんだけど」
「ううん。何でもない……ってこともないかな。さっきからずっと気になってたんだけど、あなたって……」
「あぁ、そう言う事か」
なら、見られても仕方ないわけだ。目立って仕方ないしな。
「あなたって、男の人だよね?何で女子校なのに、この学校にいるのかなって思って」
「やっぱりか。ま、今日の入学式の時に説明されると思うんだが……特務生として入学することになったんだ。正真正銘、この学校の生徒だ」
本日二回目の説明。これから話しかけるたびに、今みたいな説明をしないといけないのかよ……。大変だな。
「へぇ、何組なの?」
「俺は――」
「A組!私と一緒!」
「おい、こら。割り込むな」
しかも飴舐め終わってるし。腹の足しにはなっている……と思いたい。
「そうなんだ。私もA組なんだよ。山吹沙綾」
「やまぶき……あった!私はね~戸山香澄!で、こっちが幼馴染のなーくん!」
「フルネームで紹介してくれないか!?」
そのやり取りを見て、山吹さんは口に手を押さえて笑い出す。そのしぐさは、年相応の女子が見せる可愛らしいものだった。
てか、普通に可愛いぞ、この子……。って、待て。いきなり何を考えてるんだ、俺は。まずは俺の自己紹介をしておかないと……。
「俺は成川翔。香澄が言ったように、俺もA組だ。これからは同じクラスってことになるな」
「成川君に、戸山さんか。戸山さんは中学で見た事ないし、外部生だよね?どうしてうちに来たの?」
「えっとね!妹がここの中学に通ってて、楽しそうだなーって!あとね、いっぱいあるんだけど……あ!制服好き!」
香澄には一つ下の妹がいる。それも、姉妹で性格が正反対の。香澄は明るくてお調子者だけど、妹の方はしっかり者だ。どっちが姉なのか、わからなくなることもよくあるな。
「あはは。大事だよね、制服」
「うん!それで花女に決めたんだ!」
「いいね、そういうの。私、内部生だから。半分は中学からの持ち上がりだし、中学そこだし。制服も一緒だから、何も変わらないって言うか……」
内部生ならではの事情か。俺には上手く理解できないが、確かに新鮮味に欠けるとは考えてしまう。
「でも、高校生だよ!何か始まる感じしない?」
「え?何かって……」
「ほら、もう始まってる!新しい友達、できちゃったし!」
屈託のないキラキラとした笑顔を、香澄は山吹さんに向ける。そのまっすぐな姿勢に思わず苦笑してしまった山吹さんは、
「友達認定早いね」
「え、早すぎた!?」
「まぁ、この行動力が香澄のいいところでもあるからな。嫌いにならないでくれよ?」
受け入れない人には受け入れられないキャラだからな……。俺は幼馴染だし、そうじゃなくても気にしてないからいいんだけどな。むしろ好きだし。
「そんなつもりないよ。よろしくね、戸山さん。それに成川君も」
「香澄でいいよ!」
「俺も、翔って呼んでくれ。同じクラスになるんだし、堅苦しいのはなしってことで」
約1名、ずっと名前を呼んでくれない元気な幼馴染がいるんですけどね!
「そっか。なら私も、沙綾でいいよ。香澄に……翔、だね。改めてよろしく」
「うん!それじゃあ、なーくんにさーや!早くA組の教室に行こうよ!」
「あー、悪いんだけど先に二人で行っててくれないか?」
「「えっ?」」
「俺、特務生だからさ。一応、学園長とかに挨拶しておかないといけないんだ」
***
俺は香澄たちと別れ、学園長の部屋の前にいた。高級感のある木製の扉をノックし、俺は学園長の部屋に入る。ここは本当、何回来ても慣れないな……。
「失礼します」
「ん……?おや、君は確か……」
「今日から、特務生としてこの学校に入学することになった、成川翔と言います」
丁寧に挨拶を済ませ、俺は立派な椅子に腰かける初老の男性と目を合わせる。彼こそが、この花女の学園長。俺の入学を特別に認めてくれた張本人だ。
「わざわざ挨拶に来てくれるとは……そこまで畏まる必要はないんだよ?」
「とんでもない。あ、先日はどうもありがとうございました」
「私の方こそ、感謝しているよ。こちらとしては、本当にありがたい話だったからね」
「いえ……感謝するのはむしろ、俺の方ですよ」
この学校に入学し、生徒として過ごすことができる。それだけで、俺はありがたかった。俺の理不尽な要求を呑んでくれたのは、まさに奇跡としか言いようがないからな。もう足を向けて寝ることはできない。
「……わかっているとは思うけど、くれぐれも『あの条件』だけは守ってもらいたい」
「もちろんです。俺には、この学校に入学する目的がありますから」
香澄に語った、この学校に入学した理由……。あんなもの、全てでっち上げた嘘だ。
家から近い?家計を助ける?そんな都合だけで女子校には入れるのなら、女子校の意義を再確認する必要がある。
俺には、この学校に入学しなくてはいけない理由がある。だが、普通に考えたら無理だ。そこで、とある条件と引き換えに、学園長はこの異例の入学を認めてくれた。
「……もう、あんなことは繰り返したくありませんから」
「私も、君と同じだ。目指す場所は違っても、過ちを犯したくない思いは一緒だからね」
女子校の中に、たった一人の男子生徒。完全にアウェイな環境に足を踏み入れ、普通の男子とは道を離れることになったとしても……やるべきことが俺にはある。
あの悲劇を、再び起こさないように……。