BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
さて今回は……少し展開があるね。アニメ1期を見ている人なら、今回何をするのか想像がついてるから面白くない――。
……なんて、言わせるような展開にはならないよ?(え)
ある意味急展開と言うか……前回の終わりに予告みたいな形で言ってたんだけど。
とにかく見てください。どうぞ。
「えっ、香澄練習来ないのかよ?」
「うん。家庭科の授業で居残りになっちゃって。終わったら行くって言ってたけど……」
「……ふーん」
放課後。正門前で有咲と合流した俺たちは、香澄が遅れるかもしれないことを伝える。特に気にしてないように振る舞っているが、明らかに不自然な間があったことを俺は見逃さない。
「何だ?香澄が来なくて寂しいのか?後で教えてやろう」
「ばっ、止めろ!そんなんじゃねーからな!私は別に、香澄の事なんか全然、これっぽっちも気にしてねーし!」
言えば言うほど、気になっているようにしか聞こえないんだよな……。ここまでわかりやすくツンデレなのも、俺の周りじゃ有咲くらいだぞ。
あ、沙綾は先に帰っていった。手伝いってのも忙しそうで大変だよな……。家事の事を褒められたばかりだが、沙綾には敵わないと思うよ。
「あの、私たちだけでも練習しに行ってもいい?」
「練習って……牛込さんはまぁ仕方ねーけど、こいつもセットかよ?」
「こいつって言うな。練習くらい、俺にも見学させてくれてもいいだろ……って言いたいんだけどな。今日は用事があるから、俺は行かない。りみ、悪いけど有咲の面倒見てやってくれ」
「どういう意味だ、おぉい!?」
やっぱ、有咲をからかうの楽しいな。こりゃ、沙綾が茶化したくなる気持ちがよくわかる。
「翔君、用事ってバイトの事?」
「そうじゃないけど……。ちょっと行かないといけない場所があってな」
「そうなんだ……。だったら、仕方ないよね」
よかった。深く追求されたら、どうしようかと思ってたからな。俺としては、できるだけ公にはしたくない話だし。
が、その様子を見ていた有咲が……。
「ふーん?何か怪しいじゃん?彼女とデートでもするのかよ?」
「……はぁ?」
「えっ!?し、翔君に、か、かの……彼女っ!?///」
なんて事を言い出すから余計にややこしくなるし。と言うか、そこまで驚かなくてもいいだろ、りみ。しかも顔を真っ赤にして、何だか落ち着きがないように見えるし。
「何を言い出すんだよ。俺に彼女はいないからな?」
「へぇ、言い逃れか~?」
「いや、違うから」
弱みを握ったような気になりやがって……。違うものは違う。いくら突いたところで、何も出てこないのは俺が知ってる。
「は、はわわ……翔君に、彼女が……」
「って、りみもいつまでそうしてるんだよ。俺に彼女はいないからな?」
「……えっ!?ほ、本当に!?」
「あ、あぁ。俺に彼女なんかいるわけないだろ?」
「よ、よかった……」
何がよかったのかは全く見えてこないが、りみは俺以上に安堵していた。もし俺に彼女がいたら、何か不都合な事でもあったのか……?
「つーか、香澄はどうなんだよ?幼馴染なんだろ?」
「……違うからな?」
「何だよ、その不自然な間は」
け、今朝の一件がまだ頭に残ってるみたいだ……。本当、美羽の奴帰ったら覚えてろよ!?
「ま、香澄は有咲のものだからな。仕方ない」
「……はぁ!?ちょま、それってどういう意味だよ!?」
そのままの意味だけどな。
「それに、俺に女っ気があるように見えるか?そもそも、俺って女の子に好かれてると思うか?自分じゃよくわからないけど」
「……ふーん?」
「何だよ、その反応」
「別に?翔って、予想通りに鈍感なんだと思ってな」
「予想通りに!?」
俺って鈍感なのか……?自覚はないし、そもそも俺は鈍感キャラだって認識だったのかよ……。
「だって……なぁ?牛込さん」
「えっ!?い、いや、私はちが……あ、有咲ちゃ~ん!///」
で、りみもまたソワソワし始めるし。理由が全く分からないんだけど……あ、これが鈍感って事なのか……?何か嫌だな、それ。
けど、今の俺にはこれ以上こいつらに構っている暇はない。そろそろ行かないと、間に合わなくなってしまう。
特にこいつらには、まだ知られるわけにはいかないからな。
「悪い。時間なくなるかもしれないから、俺はもう行くよ」
「う、うん!じゃあまた明日!」
「おう!有咲の事、適度にかまってやれよ!」
「う、うん……?」
「って、私の事を何だと思ってんだ!それに牛込さんも、あいつの言う事に悪乗りしなくてもいいからぁ!!」
***
「縫っても縫っても、全然終わんない……。うぅ、今日中に完成なんて無理だよ~!」
切って、縫っての繰り返し。二人だけの家庭科室で、私は終わりの見えない作業を続けていた。花園さんは、黙々とナップザックを作っているけど……。
「はぁ……。ちょっとギターで気分転換しようかな」
私には無理だよ!何にもキラキラしないし、同じことの繰り返しで飽きちゃうよ~。よく花園さんは続けられるよね~……。
「よいしょっと。ふんふんふ~ん♪」
やっぱり、ギター弾いてる間は落ち着くよね~。楽しいし、キラキラするし。まだ始めたばかりだけど……。
でもいつか、有咲やりみりんや……まだ集まっていないメンバーの子と一緒に、ステージに立ってライブしたいな。このギターで、キラキラする演奏ができたらいいな。
私にも、誰かを勇気づけることが、できたら――。
「それ、音変だよ」
「……ひゃぁぁっ!?」
心臓止まるかと思った!え、だって花園さん、さっきまで真剣にナップザック作っていたはずじゃ……!?いつの間に私の後ろにいたの!?
「は、花園さん……!?ビックリしたよぉ……」
「えっ?何かあった?虫でもいたとか?」
「うえぇ!?む、虫っ!?どこどこ!?取って取って!!」
もう軽くパニックだよ……。椅子が倒れるのも気にしないで、私は花園さんに抱き着く。花園さんは驚いていたみたいだけど、そのまま周りに虫がいないかを探し始めた。
「……いないみたい。気のせいじゃないかな?」
「ほ、本当!?うぅ、脅かさないでよ~!」
私は倒れた椅子を直して、ギターを構えなおす。と、さっき花園さんが何か言いかけていたことを思い出した。
「あ、そう言えば、さっき何か言おうとしてなかった?」
「うん。音が変って言ったの。チューニング、ずれてると思う」
音がずれてる?私は何回か音を鳴らし、どこがずれているのかを確認してみると……。
「あ、本当だ……!」
さっきまでは気づかなかったのに、今聞いたらちょっと違う!でも、さっき少し鳴らしてただけなのに、あの一瞬で音のずれがわかるなんて、花園さんってすごい……!
「聞いただけでわかるの?絶対音感?」
「うん、絶対音感。これ、ちょっと言ってみたかったんだ」
「あはは、教えてくれてありがとう!えっと、チューナーは……あ、あった!」
「ケースに入れるだけでずれるから。自動でしてくれるギターもあるけど」
へぇ~そうなんだ。花園さん、ギターの事よく知ってるんだなぁ……。経験者なのかな?みーちゃんもそうだけど、花園さんはどれくらいやってるんだろう?
聞きたい気持ちはあるけど、まずはチューニングだよね。集中しないと、上手くできないからね。
「……よし、できた!それじゃ、もう1回――」
「待って。私も弾く」
花園さんは、作業用の机に立てかけていたギターケースを持ってくる。その中には、私のランダムスターとは違った、青いギターが入っていた。私の赤もいいけど、花園さんの青もキラキラしててかっこいい……!
「わぁ、それ花園さんのギターだよね!?青い!かっこいい!キラキラする!」
「うん。戸山さんのギターは、変態って感じだよね」
うっ、また変態って言われた……。ランダムスターのどこが変態なんだろう……?
「へ、変態じゃないよ!」
「そう?ランダムスターはレア中のレアなギターだから、意地でも欲しいって人が多くて。だから、そんなギターを持ってる戸山さんは、ランダムスターへの執念がすごいんだな~って。ある意味、変態?」
「珍しいギターなのは知ってるけど、変態じゃないっ!」
「それに、戸山さんだって少し変わってるし。だから変態」
「か、変わってるかな……?って、違うよ!変態じゃないから!」
「大丈夫。私はそう言うの、気にしないから」
「だから~!」
花園さんが私を変態って呼ぶ理由は分かったけど、どうしよう。私、このままだと花園さんにずっと変態だって思われちゃうよ~……。そんなの嫌だな……。
「……そうだ。翔から戸山さんの事聞いたよ。最近ギター始めたばかりなんだって」
「えっ、なーくんが?」
「翔、心配してたんだ。戸山さん、情熱だけは確かだから、何か力になってやりたいんだって。それで、戸山さんにギターを教えてほしいって頼まれたんだ」
「なーくん……!」
なーくんが、私のためにそんなことまでしてくれたんだ……。バンドの事も考えてくれて、応援してくれて。私の事も、考えてくれているんだ。
昔から、私の事を助けてくれるなーくん。嫌そうな顔をすることもあるけど、私の隣にはいつもなーくんがいて。仕方ないと言いながら、力を貸してくれる。とっても優しい、私の幼馴染。
何だか嬉しくて、ドキドキしてきちゃったな……。
「どうしたの?戸山さん、笑ってる」
「……う、ううん!何でもないよ!」
「それに、何だか顔も赤いみたい。熱でもあるの?」
「な、ないよ!全然!本当に、何もないから!」
そんなにわかりやすく、顔が赤くなっていたんだ……。なーくんの事、ちょっと考えてただけなのに……。
「そ、それより、ギターを教えてくれるって言ってたけど……いいの?」
「もちろん。でも、戸山さんのやる気次第だよ?戸山さんは、ギターを弾きたい気持ち、ちゃんと持ってる?」
「……うん!やる気もあるし、引きたい気持ちもあるよ!私、キラキラドキドキしたいから、ギター上手になりたい!今はまだバンドじゃないけど……いつかバンドができた時に、ずっと探していたキラキラが見られるように!」
そのために、ギターを弾けるようになりたい。上手になりたい。まだ手探りで、走り始めたばかりな私が、少しでも前に進むために。
そんな私の言葉を聞いた花園さんは、ニッと笑って……。
「それだけやる気があれば、戸山さんは大丈夫。きっとすぐ上達するよ。ギター、頑張って教えるから、一緒に練習しよう!」
「ありがとう、花園さ~ん!私、これから頑張ります!」
こんな助っ人ができるなんて、本当に嬉しいよ!出来たら、一緒にバンドとかやってみたい気持ちもあるんだけどな~……。
「早速だけど私、花園さんのギター聞きたい!聞いてみたい!!」
「おっ、アンコールありがと~」
「あはは。花園さん、まだ演奏してないよ~!」
話したことは全然なかったけど、花園さんって面白いな。ギターにも詳しいし、どんな演奏をするんだろう?
そう思って、期待しながら花園さんを見つめていると……。
「……っ!?う、うわぁ……!」
私の演奏とは全然違う!もっと音がグワーッてなって、ジャーンってなって!とにかくかっこいい!
私も練習すれば、あんな風に弾けるのかな……!?
「すごい!すごいよ花園さん!い、今のどうやって弾いたの!?」
「う~ん……何となく?」
「な、何となくで弾けるの!?」
「頭に思い浮かんだリズムを、そのまま演奏しただけだよ」
イメージしたメロディーが、すぐに演奏できるなんてすごい……!私にはできそうにないことを、花園さんは簡単にやっているんだね……。
「それに、戸山さんだってコードを覚えたら弾けるよ」
「こーど?」
「和音の事。ドミソー、レファラー♪」
実演しながら、丁寧に教えてくれる。早速教わることがでてきた……コードか。これまでは弦の一本一本を鳴らしていただけだったけど、そうじゃなかったんだ。
私、まだまだギターの事、何にも知らないんだ。これからもっと、花園さんに教えてもらわないと!
「わぁ~!私もコード覚えたいっ!」
「うん、いいよ。まずは――」
「……戸山さん、花園さん。仲良くおしゃべりするのはいいけど、終わったの?」
「「あ……」」
つい夢中になって、先生が教室に来たことに全然気づいてなかった。私たちは苦笑を浮かべながら、ナップザック作りを再開した……。
***
静かな廊下に、俺の靴が地面と触れ合う音が響く。
学校から少し距離のある場所に建つ病院。りみたちと別れた俺は今、その病院の中にいた。看護師に部屋の番号を確認し、俺はその部屋を探して歩いている。
俺がここに来たのは、ある人に会うためだ。
「…………」
美羽の事?いや、それは今は関係ない。と言うのも、見方を変えたら嘘になるのかな?だが、美羽は今家にいるし、お見舞いなら病院じゃなくて家に戻るべきだ。
俺の中で、美羽と同等に重要となる人物が、この先にはいる。
「……ここか」
さっき看護師に聞いた番号。そして、部屋の前にかかっているネームプレートの名前。
一致している。この部屋で間違いない。
「…………」
俺は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。俺も、この部屋に入るのは初めてだ。それに、この中にいる人と会うのも初めてだ。向こうだって、俺の事なんか知りもしない。
緊張する。だが、そろそろコンタクトを取り始めなくては。こんな事しかできないのはわかっていても、行動に移さなくては。
時間は、過ぎていく一方なのだから。
「……あら?」
「……え?」
だが、俺がノックして中に入ろうとする前に、中から人が出てきた。少し高そうな服装の、金髪をなびかせた物悲しそうな少女。泣き腫らしたような跡があり、瞳はわずかに濡れていた。
俺の聞いた話だと、今から会う人は金髪じゃない。なら、お見舞いにでも来ていたのだろうか?あの人の友達なのか……?
「あ、えっと……」
「……あなたも、美空の友達なの?」
俺を見つめる目は、寂しそうで、でもどこか嬉しそうで。俺がここに来たことを、喜んでいるように見えた。その気持ちが、今の一言にこもっている。
「友達……とは、少し違うのかな。でも、俺もあの子を放っておけないのは確かだ。だから、ここに来て少しでも……話がしたいんだ」
「……そう。嬉しいわ。美空にもまだ、そうやって思ってくれる人がいてくれるのね」
「君は……あの子の友達なのか?」
「あたしは、昔から知ってるわ。美空の事を。いつも笑顔で、眩しくて、音楽が大好きで……私に、笑顔を与えることの意味を教えてくれたの」
痛ましい。昔を懐かしみ、思いをはせる彼女の語る姿は、無理矢理傷口をえぐるかのような悲痛なものだった。だが、彼女はその言葉を止めない。
「でも……あんなことが起こって、美空から笑顔がなくなって……あたしは決めたの。もう一度、美空に笑ってほしいって。あたしは美空が教えてくれた音楽で、世界を笑顔にする。そうしたら、きっとまた……美空は……っ」
「……もういい。君の事はよくわかった」
泣き出しそうになる彼女に手を置き、先に続く言葉を止める。これ以上、辛い告白を言わせたくなかった。俺も、聞きたくなんてなかった。
「君があの子を何よりも大切に思って、そのために動こうとしていることもな。俺も、あの子のために力を尽くすつもりだ」
「……美空が聞いたら、どう思うかしら」
「それは……わからない」
素直に喜ぶほどの余裕が、彼女に残されているとは……俺にはとても思えない。
「そうだ。まだ名前言ってなかったな。俺は成川翔。これでも花咲川女子学園の生徒でな。特務生って形で入学してる」
「やっぱり……花女の生徒だったのね?」
「あぁ。って事は、君も?」
「えぇ。1年E組の……弦巻こころって言うの」
同じ花女の生徒だったのか。制服じゃなかったから、よくわからなかったな。向こうは俺が花女の制服だったから、何となく想像ついてたみたいだけど。
「そうか。なら、また学校で見かけることもあるな」
「えぇ。その時は、もうちょっと楽しい事を話しましょ?」
「そうだな。けど、俺がここに来ていることは、あまり公にしないでほしい。あの子の事、あまり広めたくはないだろ?あの子にもストレスになるだろうし」
「……そうね。わかったわ」
それじゃ、と軽く挨拶を残し、弦巻さんは帰っていった。これから用事でもあるだろうし、引き留めはしない。
さて、ここからが本題だ。
「……失礼するよ」
ノックをして、俺はゆっくりを扉を開けて中に入る。返事はなかったが、俺は遠慮なく病室の中へ。
そこは、個室タイプの病室だった。窓に平行になるようにベッドが立てつけられ、そこから夕焼けが射す。眩しさで目を細めそうになるが、ベッドに横たわる人物……幼さを残す少女は、何も反応を示さない。
俺の事を気にも留めず、窓の外の景色を眺める少女。俺は少女に近づき、ようやくコンタクトを取り始めた。
「初めまして。君の事は、色々と聞いているよ」
ようやく俺の存在に気づいたのか、こちらに顔を向ける。銀髪のショートボブが揺れ、その表情があらわになる。
すぐに俺は、胸の中に痛みが走った。こんなにも、悲しい表情をするのかと。
細い四肢は力なく垂れ下がり、髪の下から覗く目は虚ろに俺に向けられる。感情の類は一切感じられず、何かがゴッソリと抜け落ちてしまっているような、そんな印象を感じていた。
「……俺は何もしない。ただ、君の事をもっと知りたい。それだけなんだよ」
余計なことを言うのは、きっと刺激になるから。最小限の話題だけを交えて、俺は彼女に向かって話し出す。
だが、少女は何も答えない。俺は一人話を膨らませ、少女に聞かせてやる。そうするだけでいい。返事なんて無理に求めてはいない。
少女が話すらできないことも、既に聞いていたから。
「……さて、今日はこの辺にしておくよ。そろそろ日も暮れそうだ」
返事はない。元より、俺を見てもいない。
「また来るよ。次は……いつになるかはわからないけど」
待っているかは分からない。それでも、俺は足を運んでやる。
「じゃあな。体に気を付けるんだよ」
そんな心配なんて、必要ない。少女は、きっとそう思っている。
「…………」
彼女は、重い過去を背負っている。誰とも言葉を交わさず、感情をも失ってしまった。
そんな彼女を、俺は救う必要がある。
それが、俺の使命だから。