BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!最近、調子がいいみたいです!

さて今回は……少し展開があるね。アニメ1期を見ている人なら、今回何をするのか想像がついてるから面白くない――。





……なんて、言わせるような展開にはならないよ?(え)

ある意味急展開と言うか……前回の終わりに予告みたいな形で言ってたんだけど。

とにかく見てください。どうぞ。


phrase21 虚ろな瞳が映す世界は

「えっ、香澄練習来ないのかよ?」

 

「うん。家庭科の授業で居残りになっちゃって。終わったら行くって言ってたけど……」

 

「……ふーん」

 

放課後。正門前で有咲と合流した俺たちは、香澄が遅れるかもしれないことを伝える。特に気にしてないように振る舞っているが、明らかに不自然な間があったことを俺は見逃さない。

 

「何だ?香澄が来なくて寂しいのか?後で教えてやろう」

 

「ばっ、止めろ!そんなんじゃねーからな!私は別に、香澄の事なんか全然、これっぽっちも気にしてねーし!」

 

言えば言うほど、気になっているようにしか聞こえないんだよな……。ここまでわかりやすくツンデレなのも、俺の周りじゃ有咲くらいだぞ。

 

あ、沙綾は先に帰っていった。手伝いってのも忙しそうで大変だよな……。家事の事を褒められたばかりだが、沙綾には敵わないと思うよ。

 

「あの、私たちだけでも練習しに行ってもいい?」

 

「練習って……牛込さんはまぁ仕方ねーけど、こいつもセットかよ?」

 

「こいつって言うな。練習くらい、俺にも見学させてくれてもいいだろ……って言いたいんだけどな。今日は用事があるから、俺は行かない。りみ、悪いけど有咲の面倒見てやってくれ」

 

「どういう意味だ、おぉい!?」

 

やっぱ、有咲をからかうの楽しいな。こりゃ、沙綾が茶化したくなる気持ちがよくわかる。

 

「翔君、用事ってバイトの事?」

 

「そうじゃないけど……。ちょっと行かないといけない場所があってな」

 

「そうなんだ……。だったら、仕方ないよね」

 

よかった。深く追求されたら、どうしようかと思ってたからな。俺としては、できるだけ公にはしたくない話だし。

 

 

が、その様子を見ていた有咲が……。

 

 

「ふーん?何か怪しいじゃん?彼女とデートでもするのかよ?」

 

「……はぁ?」

 

「えっ!?し、翔君に、か、かの……彼女っ!?///」

 

なんて事を言い出すから余計にややこしくなるし。と言うか、そこまで驚かなくてもいいだろ、りみ。しかも顔を真っ赤にして、何だか落ち着きがないように見えるし。

 

「何を言い出すんだよ。俺に彼女はいないからな?」

 

「へぇ、言い逃れか~?」

 

「いや、違うから」

 

弱みを握ったような気になりやがって……。違うものは違う。いくら突いたところで、何も出てこないのは俺が知ってる。

 

「は、はわわ……翔君に、彼女が……」

 

「って、りみもいつまでそうしてるんだよ。俺に彼女はいないからな?」

 

「……えっ!?ほ、本当に!?」

 

「あ、あぁ。俺に彼女なんかいるわけないだろ?」

 

「よ、よかった……」

 

何がよかったのかは全く見えてこないが、りみは俺以上に安堵していた。もし俺に彼女がいたら、何か不都合な事でもあったのか……?

 

「つーか、香澄はどうなんだよ?幼馴染なんだろ?」

 

「……違うからな?」

 

「何だよ、その不自然な間は」

 

け、今朝の一件がまだ頭に残ってるみたいだ……。本当、美羽の奴帰ったら覚えてろよ!?

 

「ま、香澄は有咲のものだからな。仕方ない」

 

「……はぁ!?ちょま、それってどういう意味だよ!?」

 

そのままの意味だけどな。

 

「それに、俺に女っ気があるように見えるか?そもそも、俺って女の子に好かれてると思うか?自分じゃよくわからないけど」

 

「……ふーん?」

 

「何だよ、その反応」

 

「別に?翔って、予想通りに鈍感なんだと思ってな」

 

「予想通りに!?」

 

俺って鈍感なのか……?自覚はないし、そもそも俺は鈍感キャラだって認識だったのかよ……。

 

「だって……なぁ?牛込さん」

 

「えっ!?い、いや、私はちが……あ、有咲ちゃ~ん!///」

 

で、りみもまたソワソワし始めるし。理由が全く分からないんだけど……あ、これが鈍感って事なのか……?何か嫌だな、それ。

 

けど、今の俺にはこれ以上こいつらに構っている暇はない。そろそろ行かないと、間に合わなくなってしまう。

 

 

特にこいつらには、まだ知られるわけにはいかないからな。

 

 

「悪い。時間なくなるかもしれないから、俺はもう行くよ」

 

「う、うん!じゃあまた明日!」

 

「おう!有咲の事、適度にかまってやれよ!」

 

「う、うん……?」

 

「って、私の事を何だと思ってんだ!それに牛込さんも、あいつの言う事に悪乗りしなくてもいいからぁ!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「縫っても縫っても、全然終わんない……。うぅ、今日中に完成なんて無理だよ~!」

 

切って、縫っての繰り返し。二人だけの家庭科室で、私は終わりの見えない作業を続けていた。花園さんは、黙々とナップザックを作っているけど……。

 

「はぁ……。ちょっとギターで気分転換しようかな」

 

私には無理だよ!何にもキラキラしないし、同じことの繰り返しで飽きちゃうよ~。よく花園さんは続けられるよね~……。

 

「よいしょっと。ふんふんふ~ん♪」

 

やっぱり、ギター弾いてる間は落ち着くよね~。楽しいし、キラキラするし。まだ始めたばかりだけど……。

 

でもいつか、有咲やりみりんや……まだ集まっていないメンバーの子と一緒に、ステージに立ってライブしたいな。このギターで、キラキラする演奏ができたらいいな。

 

 

私にも、誰かを勇気づけることが、できたら――。

 

 

「それ、音変だよ」

 

「……ひゃぁぁっ!?」

 

心臓止まるかと思った!え、だって花園さん、さっきまで真剣にナップザック作っていたはずじゃ……!?いつの間に私の後ろにいたの!?

 

「は、花園さん……!?ビックリしたよぉ……」

 

「えっ?何かあった?虫でもいたとか?」

 

「うえぇ!?む、虫っ!?どこどこ!?取って取って!!」

 

もう軽くパニックだよ……。椅子が倒れるのも気にしないで、私は花園さんに抱き着く。花園さんは驚いていたみたいだけど、そのまま周りに虫がいないかを探し始めた。

 

「……いないみたい。気のせいじゃないかな?」

 

「ほ、本当!?うぅ、脅かさないでよ~!」

 

私は倒れた椅子を直して、ギターを構えなおす。と、さっき花園さんが何か言いかけていたことを思い出した。

 

「あ、そう言えば、さっき何か言おうとしてなかった?」

 

「うん。音が変って言ったの。チューニング、ずれてると思う」

 

音がずれてる?私は何回か音を鳴らし、どこがずれているのかを確認してみると……。

 

「あ、本当だ……!」

 

さっきまでは気づかなかったのに、今聞いたらちょっと違う!でも、さっき少し鳴らしてただけなのに、あの一瞬で音のずれがわかるなんて、花園さんってすごい……!

 

「聞いただけでわかるの?絶対音感?」

 

「うん、絶対音感。これ、ちょっと言ってみたかったんだ」

 

「あはは、教えてくれてありがとう!えっと、チューナーは……あ、あった!」

 

「ケースに入れるだけでずれるから。自動でしてくれるギターもあるけど」

 

へぇ~そうなんだ。花園さん、ギターの事よく知ってるんだなぁ……。経験者なのかな?みーちゃんもそうだけど、花園さんはどれくらいやってるんだろう?

 

聞きたい気持ちはあるけど、まずはチューニングだよね。集中しないと、上手くできないからね。

 

「……よし、できた!それじゃ、もう1回――」

 

「待って。私も弾く」

 

花園さんは、作業用の机に立てかけていたギターケースを持ってくる。その中には、私のランダムスターとは違った、青いギターが入っていた。私の赤もいいけど、花園さんの青もキラキラしててかっこいい……!

 

「わぁ、それ花園さんのギターだよね!?青い!かっこいい!キラキラする!」

 

「うん。戸山さんのギターは、変態って感じだよね」

 

うっ、また変態って言われた……。ランダムスターのどこが変態なんだろう……?

 

「へ、変態じゃないよ!」

 

「そう?ランダムスターはレア中のレアなギターだから、意地でも欲しいって人が多くて。だから、そんなギターを持ってる戸山さんは、ランダムスターへの執念がすごいんだな~って。ある意味、変態?」

 

「珍しいギターなのは知ってるけど、変態じゃないっ!」

 

「それに、戸山さんだって少し変わってるし。だから変態」

 

「か、変わってるかな……?って、違うよ!変態じゃないから!」

 

「大丈夫。私はそう言うの、気にしないから」

 

「だから~!」

 

花園さんが私を変態って呼ぶ理由は分かったけど、どうしよう。私、このままだと花園さんにずっと変態だって思われちゃうよ~……。そんなの嫌だな……。

 

「……そうだ。翔から戸山さんの事聞いたよ。最近ギター始めたばかりなんだって」

 

「えっ、なーくんが?」

 

「翔、心配してたんだ。戸山さん、情熱だけは確かだから、何か力になってやりたいんだって。それで、戸山さんにギターを教えてほしいって頼まれたんだ」

 

「なーくん……!」

 

なーくんが、私のためにそんなことまでしてくれたんだ……。バンドの事も考えてくれて、応援してくれて。私の事も、考えてくれているんだ。

 

昔から、私の事を助けてくれるなーくん。嫌そうな顔をすることもあるけど、私の隣にはいつもなーくんがいて。仕方ないと言いながら、力を貸してくれる。とっても優しい、私の幼馴染。

 

 

何だか嬉しくて、ドキドキしてきちゃったな……。

 

 

「どうしたの?戸山さん、笑ってる」

 

「……う、ううん!何でもないよ!」

 

「それに、何だか顔も赤いみたい。熱でもあるの?」

 

「な、ないよ!全然!本当に、何もないから!」

 

そんなにわかりやすく、顔が赤くなっていたんだ……。なーくんの事、ちょっと考えてただけなのに……。

 

「そ、それより、ギターを教えてくれるって言ってたけど……いいの?」

 

「もちろん。でも、戸山さんのやる気次第だよ?戸山さんは、ギターを弾きたい気持ち、ちゃんと持ってる?」

 

「……うん!やる気もあるし、引きたい気持ちもあるよ!私、キラキラドキドキしたいから、ギター上手になりたい!今はまだバンドじゃないけど……いつかバンドができた時に、ずっと探していたキラキラが見られるように!」

 

そのために、ギターを弾けるようになりたい。上手になりたい。まだ手探りで、走り始めたばかりな私が、少しでも前に進むために。

 

そんな私の言葉を聞いた花園さんは、ニッと笑って……。

 

「それだけやる気があれば、戸山さんは大丈夫。きっとすぐ上達するよ。ギター、頑張って教えるから、一緒に練習しよう!」

 

「ありがとう、花園さ~ん!私、これから頑張ります!」

 

こんな助っ人ができるなんて、本当に嬉しいよ!出来たら、一緒にバンドとかやってみたい気持ちもあるんだけどな~……。

 

「早速だけど私、花園さんのギター聞きたい!聞いてみたい!!」

 

「おっ、アンコールありがと~」

 

「あはは。花園さん、まだ演奏してないよ~!」

 

話したことは全然なかったけど、花園さんって面白いな。ギターにも詳しいし、どんな演奏をするんだろう?

 

そう思って、期待しながら花園さんを見つめていると……。

 

「……っ!?う、うわぁ……!」

 

私の演奏とは全然違う!もっと音がグワーッてなって、ジャーンってなって!とにかくかっこいい!

 

 

私も練習すれば、あんな風に弾けるのかな……!?

 

 

「すごい!すごいよ花園さん!い、今のどうやって弾いたの!?」

 

「う~ん……何となく?」

 

「な、何となくで弾けるの!?」

 

「頭に思い浮かんだリズムを、そのまま演奏しただけだよ」

 

イメージしたメロディーが、すぐに演奏できるなんてすごい……!私にはできそうにないことを、花園さんは簡単にやっているんだね……。

 

「それに、戸山さんだってコードを覚えたら弾けるよ」

 

「こーど?」

 

「和音の事。ドミソー、レファラー♪」

 

実演しながら、丁寧に教えてくれる。早速教わることがでてきた……コードか。これまでは弦の一本一本を鳴らしていただけだったけど、そうじゃなかったんだ。

 

私、まだまだギターの事、何にも知らないんだ。これからもっと、花園さんに教えてもらわないと!

 

「わぁ~!私もコード覚えたいっ!」

 

「うん、いいよ。まずは――」

 

「……戸山さん、花園さん。仲良くおしゃべりするのはいいけど、終わったの?」

 

「「あ……」」

 

つい夢中になって、先生が教室に来たことに全然気づいてなかった。私たちは苦笑を浮かべながら、ナップザック作りを再開した……。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

静かな廊下に、俺の靴が地面と触れ合う音が響く。

 

学校から少し距離のある場所に建つ病院。りみたちと別れた俺は今、その病院の中にいた。看護師に部屋の番号を確認し、俺はその部屋を探して歩いている。

 

 

俺がここに来たのは、ある人に会うためだ。

 

 

「…………」

 

美羽の事?いや、それは今は関係ない。と言うのも、見方を変えたら嘘になるのかな?だが、美羽は今家にいるし、お見舞いなら病院じゃなくて家に戻るべきだ。

 

俺の中で、美羽と同等に重要となる人物が、この先にはいる。

 

「……ここか」

 

さっき看護師に聞いた番号。そして、部屋の前にかかっているネームプレートの名前。

 

一致している。この部屋で間違いない。

 

「…………」

 

俺は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。俺も、この部屋に入るのは初めてだ。それに、この中にいる人と会うのも初めてだ。向こうだって、俺の事なんか知りもしない。

 

緊張する。だが、そろそろコンタクトを取り始めなくては。こんな事しかできないのはわかっていても、行動に移さなくては。

 

 

時間は、過ぎていく一方なのだから。

 

 

「……あら?」

 

「……え?」

 

だが、俺がノックして中に入ろうとする前に、中から人が出てきた。少し高そうな服装の、金髪をなびかせた物悲しそうな少女。泣き腫らしたような跡があり、瞳はわずかに濡れていた。

 

俺の聞いた話だと、今から会う人は金髪じゃない。なら、お見舞いにでも来ていたのだろうか?あの人の友達なのか……?

 

「あ、えっと……」

 

「……あなたも、美空の友達なの?」

 

俺を見つめる目は、寂しそうで、でもどこか嬉しそうで。俺がここに来たことを、喜んでいるように見えた。その気持ちが、今の一言にこもっている。

 

「友達……とは、少し違うのかな。でも、俺もあの子を放っておけないのは確かだ。だから、ここに来て少しでも……話がしたいんだ」

 

「……そう。嬉しいわ。美空にもまだ、そうやって思ってくれる人がいてくれるのね」

 

「君は……あの子の友達なのか?」

 

「あたしは、昔から知ってるわ。美空の事を。いつも笑顔で、眩しくて、音楽が大好きで……私に、笑顔を与えることの意味を教えてくれたの」

 

痛ましい。昔を懐かしみ、思いをはせる彼女の語る姿は、無理矢理傷口をえぐるかのような悲痛なものだった。だが、彼女はその言葉を止めない。

 

「でも……あんなことが起こって、美空から笑顔がなくなって……あたしは決めたの。もう一度、美空に笑ってほしいって。あたしは美空が教えてくれた音楽で、世界を笑顔にする。そうしたら、きっとまた……美空は……っ」

 

「……もういい。君の事はよくわかった」

 

泣き出しそうになる彼女に手を置き、先に続く言葉を止める。これ以上、辛い告白を言わせたくなかった。俺も、聞きたくなんてなかった。

 

「君があの子を何よりも大切に思って、そのために動こうとしていることもな。俺も、あの子のために力を尽くすつもりだ」

 

「……美空が聞いたら、どう思うかしら」

 

「それは……わからない」

 

 

素直に喜ぶほどの余裕が、彼女に残されているとは……俺にはとても思えない。

 

 

「そうだ。まだ名前言ってなかったな。俺は成川翔。これでも花咲川女子学園の生徒でな。特務生って形で入学してる」

 

「やっぱり……花女の生徒だったのね?」

 

「あぁ。って事は、君も?」

 

「えぇ。1年E組の……弦巻こころって言うの」

 

同じ花女の生徒だったのか。制服じゃなかったから、よくわからなかったな。向こうは俺が花女の制服だったから、何となく想像ついてたみたいだけど。

 

「そうか。なら、また学校で見かけることもあるな」

 

「えぇ。その時は、もうちょっと楽しい事を話しましょ?」

 

「そうだな。けど、俺がここに来ていることは、あまり公にしないでほしい。あの子の事、あまり広めたくはないだろ?あの子にもストレスになるだろうし」

 

「……そうね。わかったわ」

 

それじゃ、と軽く挨拶を残し、弦巻さんは帰っていった。これから用事でもあるだろうし、引き留めはしない。

 

 

さて、ここからが本題だ。

 

 

「……失礼するよ」

 

ノックをして、俺はゆっくりを扉を開けて中に入る。返事はなかったが、俺は遠慮なく病室の中へ。

 

そこは、個室タイプの病室だった。窓に平行になるようにベッドが立てつけられ、そこから夕焼けが射す。眩しさで目を細めそうになるが、ベッドに横たわる人物……幼さを残す少女は、何も反応を示さない。

 

俺の事を気にも留めず、窓の外の景色を眺める少女。俺は少女に近づき、ようやくコンタクトを取り始めた。

 

「初めまして。君の事は、色々と聞いているよ」

 

ようやく俺の存在に気づいたのか、こちらに顔を向ける。銀髪のショートボブが揺れ、その表情があらわになる。

 

 

すぐに俺は、胸の中に痛みが走った。こんなにも、悲しい表情をするのかと。

 

 

細い四肢は力なく垂れ下がり、髪の下から覗く目は虚ろに俺に向けられる。感情の類は一切感じられず、何かがゴッソリと抜け落ちてしまっているような、そんな印象を感じていた。

 

「……俺は何もしない。ただ、君の事をもっと知りたい。それだけなんだよ」

 

余計なことを言うのは、きっと刺激になるから。最小限の話題だけを交えて、俺は彼女に向かって話し出す。

 

だが、少女は何も答えない。俺は一人話を膨らませ、少女に聞かせてやる。そうするだけでいい。返事なんて無理に求めてはいない。

 

 

少女が話すらできないことも、既に聞いていたから。

 

 

「……さて、今日はこの辺にしておくよ。そろそろ日も暮れそうだ」

 

 

返事はない。元より、俺を見てもいない。

 

 

「また来るよ。次は……いつになるかはわからないけど」

 

 

待っているかは分からない。それでも、俺は足を運んでやる。

 

 

「じゃあな。体に気を付けるんだよ」

 

 

そんな心配なんて、必要ない。少女は、きっとそう思っている。

 

 

「…………」

 

 

彼女は、重い過去を背負っている。誰とも言葉を交わさず、感情をも失ってしまった。

 

 

そんな彼女を、俺は救う必要がある。

 

 

それが、俺の使命だから。

 

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