BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!いきなりですが、お気に入りが80件を超えました!ありがとうございます!

もう少しでUAも9000を超えますし、それだけ読んでいただけてるのは本当嬉しいです!これからもよろしくお願いします!

さて、今回は少し原作とは話がずれますね。進めろよとは思うんだけど。でも次の話も書き始めてるし、いいペースで投稿できそうです。

では、どうぞ!


phrase22 邂逅

「有咲、りみりん!昨日は練習行けなくてごめん!」

 

翌日の昼休みの事。香澄は昨日の件で練習に行けなかったことを謝っていた。場所はもちろん中庭。もはや、俺たちの定位置となりつつある。

 

「う、ううん。大丈夫だよ」

 

「まぁ、そうなる予感はしてたしな」

 

二人は大して気にしてないみたいだな。香澄の事だから、仕方ないと割り切っているのかもしれないが……。俺も行けないだろうとは思ってたし。

 

「あんな大きいの作るから……」

 

「でもさーや~ケースの袋作りたかったんだも~ん」

 

「気持ちは分かった。で、完成はしたのか?」

 

「そ、それが……」

 

おい、雲行きが怪しい言い方だぞ。まさか、今日も居残りなんて言い出さないだろうな……?

 

「また、今日も居残りなんだよね~……あはは」

 

おいおい。そんな調子で大丈夫なのかよ。このままだと、いつまで経っても練習できなくなるぞ?有咲もりみも待ってるのに。

 

「あははじゃねーだろ。こっちだって、暇じゃねーんだから。待ってやる方の身にもなってくれよ」

 

「おっ?何か有咲が珍しく素直だな」

 

「一言余計だ!」

 

いや、訂正。やっぱりいつもの有咲だったな。

 

「あ、でもねなーくん!おたえと仲良くなったよ!」

 

「おたえ……あぁ、たえの事か。あいつと仲良くなれたのか」

 

「誰だよ?」

 

「花園おたえちゃん!うちのクラスの!」

 

あいつも居残りだったな。ギターの件もあるし、仲良くなってくれたのならこっちも嬉しい。キャラと言い、どこか似ている二人だからな……。

 

「おたえって……香澄もなかなかなネーミングだよね」

 

「えー?そうかな?おたえも喜んでたよ!おたえって名前!」

 

「有咲のために言っておくけど、本名は花園たえ、だからな。おたえはこいつが勝手に呼んでるだけ」

 

「ふーん。別に私、そいつの事知らねーからどうでもいいけど」

 

何その辛辣コメント。もしたまたま会って、何も知らずにおたえなんて呼ぶことになったらどうするんだよ。

 

と言うか、おたえって名前は俺もどうかと思うがな……。俺もなーくんだし、りみはりみりん。たえは、その……なんだ。おたえって何だよ。

 

でも、本人は普通に気に入ってそうだけどな。香澄とはどこか波長の合いそうな面もあるし、すんなりOKしたに違いない。

 

「おたえってすごいんだよ!音聞くだけでチューニングしちゃうし、演奏も上手なんだ!」

 

「あいつの演奏聞いたのか。かっこよかっただろ?」

 

「うん、すごかった!上手く言えないけど、胸の中でこう……グワーッと何かが溢れて止まらないって感じで!」

 

どういう事かは全然わからないが、何となく言いたいことは伝わってきたからよしとする。これ以上追及すると、香澄語ばかりで余計にややこしくなりそうだし。

 

「花園さんって、SPACEでバイトしてたよね、翔君」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「あぁ。りみの言う通り、たえとはバイト仲間なんだ。この前香澄がきらきら星歌ったグリグリのライブの時も、一緒に仕事してたんだけど……気づかなかったか?」

 

「全然だよ!」

 

何だ。SPACEのバイトの事は、まだ香澄には言ってなかったのか。仕事の時のたえの姿、できる事なら見てほしいくらいだ。

 

いつもの天然はどこに行ったのかと疑いたくなるほど、真面目で頼りになるからな。手際はいいし、まさに縁の下の力持ち。もう別人だからな。

 

「つーか、あの時は周りなんて見てる余裕もなかったっつーの」

 

「カスタネット叩くのに必死だったからか?」

 

「そうじゃねーよ!無理矢理ステージに立たされて、すげー恥ずかしかったんだぞ!?」

 

それでも逃げ出さずに最後までステージに立っているところを見ると、有咲も無関心ってわけじゃないんだろうな。だから必死になれるし、こっちの事も見えていなかったんだと思うし。

 

案外、香澄に頼まれたからって理由だけかもしれないけどさ。こいつチョロいし、香澄の事好きだからなぁ……。

 

「居残りの時に聞いてみよっかな!おたえがSPACEでバイトしてる事!」

 

「香澄、花園さんと話すのはいいけど、課題の方もちゃんとしないとダメだよ?市ヶ谷さんたちだって、待たせているんだから」

 

「そうだぞ、香澄。今日こそは練習、来られるんだろうな?」

 

「うん!今日は課題終わらせて、絶対練習行くから!」

 

そう自信たっぷりに言い切る香澄だったが、俺は……いや、恐らくこの場にいる全員が同じことを考えていたはずだ。

 

 

こいつ、絶対に課題終わらせる気がないと。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「香澄ちゃん、遅いね……」

 

「あいつ、今日も来ないつもりかよ」

 

「かもな……。けど、何となく予想はしてただろ」

 

「それはまぁ……どうせ香澄だし」

 

やっぱりか。ま、逆に来てたら驚いてたくらいだ。どうせあいつは、たえと話し込んでちょっとギターでも弾いてるんだろう。もう目に見えてる。

 

で、今は放課後。俺はりみと一緒に、有咲の家の蔵に来ていた。地下室へと案内され、俺たちはソファでくつろいでいたところだ。

 

「だ、大丈夫だよ。今日で課題終わらせるって言ってたし」

 

「だといいんだけどな……」

 

「って言うか、そもそも何でお前は普通にうちにいるわけ?」

 

「居たら悪いのかよ」

 

今日は特に用事もないし、練習に付き合うつもりで来たんだけどな。香澄にはバンドの練習は協力すると言ったし、その手前、他のメンバーのサポートも必要だと思ってな。

 

「香澄はいないけど、俺たちだけでも練習はできるだろ。ま、俺はバンドとは関係ないから、二人のサポートって感じになるけど」

 

「サポートって、何するってんだよ。この人数じゃ、できる事なんてたかが知れてるだろ?」

 

「音合わせ……とかはさすがに無理か。とりあえず、個々の演奏技術を向上させるために、俺が手助けする……的な?」

 

「何だそれ」

 

「あ、後確かめておきたい物があるんだ。確かこの前、蔵を掃除してた時に見つけた気がしてさ」

 

質屋に出されたり、捨てられたりしてたらアウトだけどな。でも、まだあれから時間もたってないし、残っているとは思うんだけど……。

 

「何の事だよ?」

 

「それを今から探したいんだ。有咲、悪いけど蔵の中漁るぞ」

 

「はぁ!?おま、何言ってんだよ!せっかく掃除したのに、また散らかすのかよ!?」

 

「そんなに汚く漁らないから安心しろ。その探し物が終わったら、俺も練習の方に合流するから!」

 

「何勝手に決め……おい、翔!私の許可を取れ!!」

 

有咲はプリプリ怒らせておく程度でちょうどいいから、無視して地下室を上がる。整頓された蔵の中から、あいつがどこにあるのかを見つけなくてはいけない。

 

無理に探すこともないんだが……あれば練習が楽になる。山積みになった物の中からでも、あいつはすぐに見つかるはずだ。

 

「ったく、翔の奴……。んで、どうするよ牛込さん。練習するならしてもいいけど」

 

「せっかくだし、そうしようかな。本当は、香澄ちゃんと練習したかったけど……」

 

「そうなるといいけどな。けどま、その花園って子とおしゃべりして、手が止まってるんじゃねーの?」

 

「そ、そんな事ないよ。……多分」

 

と言いつつ、りみですら先の展開が何となく予想できてしまっているのだが。有咲はハァ~っとため息をつきながら、ふと疑問を感じる。

 

「そういや、その花園さんってどんな人?今日の話聞いてたけど、全然そいつの事わかんなかったし」

 

「花園さん?うーん、あんまり話したことはないかな?けど、ちょっと不思議な感じかも」

 

「不思議って……」

 

「あっ、でもいい人だよ!きっと!」

 

「きっとかよ……。って事は、牛込さんもよく知らないって事なんだな」

 

「うん……。ご、ごめんね有咲ちゃん。ちゃんと答えられなくて……」

 

「べ、別にそんな事で謝らなくてもいいっつーの……」

 

花園たえ。結局どんな人なのかの情報は手に入らず、謎が深まる一方のままに終わった。そもそも有咲は、直接会ったことすらない。完全にイメージ像に頼るしかないのに、そのイメージすらつかめていないのだ。

 

「てか、あいつは何してるんだよ。探し物って言ってたけど」

 

「まだ探してるのかな?翔君、何を見つけようとしてるんだろう?」

 

りみたちがそんな事を考えている一方、蔵の中を捜索している翔はと言うと。

 

「思ったよりも物が多いな……。つか、暗いし埃も多いし……ゲホッ、ゴホッ!ちゃんと掃除してるんだろうな!?」

 

思いのほか苦戦していた。もう少し早く見つかると思っていただけに、俺は落胆しながら物の山をかき分けていた。その度に埃が舞い、激しくせき込む。

 

もう捨てられてしまったのか。前に見た時に、有咲に頼んで残してもらえばよかったかな……?

 

「もう探せる場所も限られているが……おっ!」

 

見つけた。一部だが、確かに俺が探している物が見えている。捨てられていなかったことに安堵しながらも、俺はその物に近づいて状態を確認する。

 

「思ったより問題なさそうだな。所々使い込まれているが……ここで使う分なら、別にこれくらいのボロがあっても大丈夫だろ」

 

俺は周りの物をずらし、地下室までの一直線の道を作る。そうしないと、こいつは運べないからな。それなりに大きいし、重量もある。

 

ひとまず道を確保し、俺は少しずつ運び出す。重労働はしているから、重さ自体はそこまで苦じゃないけどな。どこかにぶつけてしまわないかの方が問題だ。

 

「……よし、着いた」

 

俺は時間をかけて地下室の前まで来ると、扉を開けて中の有咲を呼ぶ。こいつを1人で下まで持っていくのは無理だ。折角手伝ってくれる人がいるなら、協力してもらおう。

 

「おい、有咲!ちょっと手伝え!」

 

「戻ってきていきなり何だよ!私はお前の召使いじゃねーし!」

 

「探してたものが見つかったんだ。けど、そいつを持っていくには下から支えてもらう方がいいんだ。だから手伝ってくれ」

 

「んだよそれ……。はぁ、都合のいい奴だな……」

 

と言いながら、重い腰を上げて協力してくれる有咲。何だかんだで優しいからな、有咲は。今言ったら、絶対にツンデレ発動して殴られそうだけど。

 

「あ、あの翔君。私も何か手伝う事ないかな?」

 

「いや、りみはいいよ。女の子には重たいだろうし、そこで待っててくれよ」

 

「翔君……!」

 

「って、何で牛込さんは良くて私には手伝わせるんだよ!」

 

どっちかって言ったら、有咲の方が力ありそうだったからな……。ただそれだけの理由だったんだけど。

 

「牛込さんもなんかうっとりしてるし……もう、仕方ねーな!」

 

「さすが有咲だ。話が早くて助かる」

 

「他に誰もいねーんだからしょうがねーだろ!……って、おい翔。こいつって……」

 

「俺の専門分野だ。それに、バンドの練習するんだったら、欠かせなくなってくるだろ?」

 

ここまでもったいぶる事ではないが、恐らく何のことか想像はついているだろう。俺は有咲と協力して、地下室の中にそいつを運び入れる。空いている一角にセッティングし、準備は万端だ。

 

「つーか、よくそんな物見つけたな」

 

「前の掃除の時に見つけてな。多分使えそうだったから、あったらいいって思っていたんだ」

 

「これって……ドラム、だよね?前に叩けるって言ってたけど……」

 

「マジか?お前、ドラム叩けるのかよ?」

 

「りみには話した事があったな。昔から趣味で、それなりには叩けるんだ」

 

そう。俺が探していたのは……バンドにおいてはリズムの要とも言える楽器、ドラムだ。

 

俺がドラムと出会ったのは、小学校高学年の時。たまたまテレビで見たドラムの演奏に心惹かれ、俺はお金を貯めてドラムを買った。それからは独学でドラムを勉強し、美羽とギターでセッションを行う事も多かった。

 

だから、ドラムに関してはそれなりに詳しいし、技術もあると思っている。バンドをするならドラムが必要だと考えた俺は、ドラム役が見つかるまでの代役になれないかと考えていた。

 

そこで蔵で見つけたドラムの出番だ。使い込まれてはいたが、音はしっかり出る。練習程度に使う分には、特に何の支障もないはずだ。使っていて壊れたら知らないが、ないよりはマシだ。

 

りみには初めて会った時に、ファミレスでの会話の時に言ってたからな。

 

「いつ使い始めるかはわからないけど、必要になった時に使えるようにはしておきたくてな」

 

「うわぁ……!翔君、ありがとう!」

 

「気持ちはありがたいけど、お前がやる気になってどうするんだよ。バンドには入らねーんだろ?」

 

「あくまで代役だ。それに、やる気なのは有咲も同じじゃないのか?」

 

ビクッと有咲の肩が弾む。りみも笑っているし、わかりやすい奴だな……。まぁ一応、そう判断した理由はあるんだけどさ。

 

「な、何言ってんだよ?私がバンドやる気?ふん、そんなのありえないっつーの」

 

「なら、あそこに置いてあるキーボードは何だ?」

 

「……げっ!?」

 

だから反応がわかりやすいんだよ。隠し事とか全然できないな、こいつ。

 

そこにあったのは、新品同然のキーボード。最近買ったばかりのやつだろうな。いくら何でも綺麗すぎるし、鍵盤も使い込まれた跡がない。こいつはもしかしなくても、バンドのために買ったキーボードだ。

 

「私も、昨日来た時はビックリしたんだ。でも、有咲ちゃんもバンドやりたいんだなって思ったら、嬉しくて」

 

「ちょま、牛込さん!」

 

「いいじゃないか。香澄も喜ぶだろうし」

 

「……っ!///べ、別にあいつとバンドがしたいわけじゃねーよ!ただ、これ以上アイツにしつこくバンドに誘われるのがうぜぇだけだ!わかったか!?」

 

「はいはい。有咲が香澄とバンドがしたいって事がよ~くわかりましたよ」

 

「だから違う!」

 

本当、素直じゃないよな。でも、有咲がバンドに前向きになってくれてよかったよ。香澄も、この事を知ったら喜んで抱き着くだろうな。そしたら有咲がまた照れ隠しでうるさくなって……目に見えている。

 

「あっ、香澄ちゃんから連絡来たよ」

 

「本当か!?」

 

「マジで香澄好きだな、有咲」

 

「ず、ずっと待ってるのも退屈だし、早く来てほしいと思っただけだ!」

 

「わかったから。で、香澄は何て言ってるんだ?」

 

「え、えっと……。遅くなったから、今日も行けないって……」

 

「「…………」」

 

期待を裏切らない奴だな、本当。ま、そのつもりではあったけど。

 

「そ、それで有咲。そのキーボード、どのくらい弾けるんだ?」

 

「まだ始めて1週間も経ってねーよ。ピアノは習ってたけど、感覚とかもちげーし。だから、まだまだって感じだ」

 

「饒舌だな」

 

「うるせーな!」

 

となると、このドラムはまだ使えないか。香澄がいたところで、まだ基本練習の段階だからな。音を合わせるほどのレベルじゃないか。

 

「あ、あの翔君」

 

「ん?どうしたんだ、りみ」

 

「その……翔君がドラム叩けるって話は前に聞いたけど、私翔君がドラム叩いてるところは見た事ないかな~って……」

 

「確かにな。ドラム叩けるって言っておいて、下手だったら笑いもんだしな~?」

 

有咲の奴、好き放題言ってくれるな。だったらちょうどいい。せっかくだから、俺のドラムを見せてやろうか。香澄もどうせ来ないし、このままだと各自で練習するだけになりそうだしな。

 

「……わかった。じゃ、二人ともソファにでも座っててくれ」

 

ちょうどソファの正面にドラムを置いたからな。りみは期待して、有咲は腕を組んでお手並み拝見と言わんばかりに。

 

「…………」

 

俺は自分の趣味としてドラムを叩いていただけだ。当然、人前で演奏したことはこれまでにない。せいぜい美羽の前くらいだ。香澄にだって、よくよく考えたら聞かせたことがない。

 

緊張する。たった二人とは言え、俺の演奏を聞いてくれる人がいるんだ。少し落ち着かなくては。

 

深呼吸し、軽くドラムを叩いてコンディションを確認。ドラムの方は問題ない。俺の方も、リズムを刻んだことで気がまぎれた。

 

まさか、こんな風にドラムを叩くことになるとは。何が起こるかわからないものだな。

 

「……行くぞ」

 

「うん……!」

 

「もったいぶってないで、いつでもいいぞー」

 

俺は気合を込めて、スティックを振り下ろした……!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「す、すごかったね翔君!ドラム、めっちゃかっこよかったよ!」

 

「何回目だよ。さっきからずっと言ってないか?」

 

「だって、翔君がかっこよかったから……!」

 

その日の帰り道。俺は駅までの道を、りみと一緒に帰っていた。もう日も暮れて、少し冷え込んできた。

 

で、りみはずーっと俺の事をべた褒めしている。有咲も別れるまでは悔しそうに褒めてたし、思ったよりもいい評価で嬉しいんだが。けど、りみはいつまで俺を褒めたら気が済むんだ?

 

「優しいし、ドラムもできるし……やっぱり私、翔君の事――」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「えっ!?な、何でもないよ!///翔君の事なんて何も言ってないから!本当の本当に――キャッ!?」

 

慌てて周りが見えなくなったのか、りみが誰かとぶつかってしまう。俺は二人に怪我がないか、確認することにする。

 

「おい、りみ。大丈夫か?」

 

「う、うん。あの、すみませんでした……」

 

「そちらも怪我はないですか?」

 

「私は問題ないわ。これからは気をつけなさい」

 

それなら一安心だ。何かあったら大変だからな。けど、この人どこかで見たことがあるような……?

 

「あなたたちも、バンドをやってるのね」

 

「は、はい。まだメンバーは揃ってないんですけど……」

 

「俺は関係ないですから。『も』って事は、あなたもバンドを?」

 

「えぇ。Roselia(ロゼリア)と言うバンドで、ボーカルをやっているわ」

 

「ロゼリア……!?しかもボーカルって事はあんた、湊友希那さんか!?」

 

「あなた、私の事を知っていたのね?」

 

知っているも何も、今やガールズバンド界において知らない人はいない。圧倒的な演奏技術と歌唱力で観客を魅了する実力派バンド……それがロゼリアだ。

 

SPACEでもライブをすることがあるし、何回か見たことがあるが……圧巻の一言に尽きる。まさかこんなところで会うとはな。りみも隣で驚いているしな。

 

「もちろん、知ってますよ!何回かライブ、見させてもらいました!」

 

「それは嬉しいわ。ありがとう」

 

「各パートの演奏もレベル高いですし、それらを一つにまとめる技術がすごいですよ!闇雲に練習しても身に着かないようなパフォーマンスで……何と言うか、目標が常に明確で、その芯が全然ぶれることなく保ち続けられてるって印象を受けて!あ、それから歌も――」

 

「し、翔君!あまり話し込んだら、困るんじゃないかな?」

 

しまった。つい勢いに任せて饒舌になってしまった。湊さんの事、全然考えてなかったな……。

 

「あっ……す、すみません……」

 

「構わないわ。それだけ私たちの音楽が、伝わってくれていると言う事だから。……何だか似てるわね」

 

「似てるって……何にですか?」

 

「私たちに、歌とギターを教えてほしいと頼んできた子がいたの。そんな事で寄り道している暇もないし、最初は断っていたわ」

 

だったら、どうして?そう尋ねようとしたが、すぐに答えは返ってきた。

 

「けど、その子の熱意に負けたわ。バンドが、音楽が好きなんだって伝わってきた。あなたもそうなんでしょう?今の話を聞いていれば、すぐにわかるわ」

 

「……はい。けど、俺よりも音楽に熱く向き合おうとしている奴もいますよ。音楽の事、全然知らないのに……バンド始めるくらいですから」

 

キラキラドキドキしたい。たったそれだけの理由でも、バンドの世界に足を踏み入れたくらいだから。あいつの気持ちは、誰にだって負けていない。

 

「そんな子もいるのね。よかったら、あなたたちの名前を教えてくれないかしら?」

 

「えっと、牛込りみです」

 

「俺は成川翔だ」

 

「……っ!成川……」

 

「……?俺の名前、どうかしましたか?」

 

「いいえ、何でもないわ。それじゃあ、この辺で失礼するわ。また会う時があれば、よろしく」

 

そう言って、スタスタと立ち去って行った。最後の反応がどうも引っかかるが、気にしていても仕方ない。また会う機会があるなら、その時に聞いてみよう。

 

「すごかったな、りみ……」

 

「う、うん。ロゼリアに会えるなんて……」

 

「りみも、もちろん香澄たちも、ロゼリアみたいになれるように頑張らないとな」

 

「えぇっ!?ろ、ロゼリアはちょっと目標が高いんじゃないかな……?」

 

「何言ってるんだよ。目標は高い方がいいだろ?」

 

「そ、それはそうだけど~!」

 

 

そんなやり取りをしている二人と別れ、一人夜道を歩く友希那は……。

 

 

「そうだったのね……。道理で、似ているはずだわ……」

 

 

意味深な独り言を残しながら、暗闇へと消えていった。

 

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