BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
もう少しでUAも9000を超えますし、それだけ読んでいただけてるのは本当嬉しいです!これからもよろしくお願いします!
さて、今回は少し原作とは話がずれますね。進めろよとは思うんだけど。でも次の話も書き始めてるし、いいペースで投稿できそうです。
では、どうぞ!
「有咲、りみりん!昨日は練習行けなくてごめん!」
翌日の昼休みの事。香澄は昨日の件で練習に行けなかったことを謝っていた。場所はもちろん中庭。もはや、俺たちの定位置となりつつある。
「う、ううん。大丈夫だよ」
「まぁ、そうなる予感はしてたしな」
二人は大して気にしてないみたいだな。香澄の事だから、仕方ないと割り切っているのかもしれないが……。俺も行けないだろうとは思ってたし。
「あんな大きいの作るから……」
「でもさーや~ケースの袋作りたかったんだも~ん」
「気持ちは分かった。で、完成はしたのか?」
「そ、それが……」
おい、雲行きが怪しい言い方だぞ。まさか、今日も居残りなんて言い出さないだろうな……?
「また、今日も居残りなんだよね~……あはは」
おいおい。そんな調子で大丈夫なのかよ。このままだと、いつまで経っても練習できなくなるぞ?有咲もりみも待ってるのに。
「あははじゃねーだろ。こっちだって、暇じゃねーんだから。待ってやる方の身にもなってくれよ」
「おっ?何か有咲が珍しく素直だな」
「一言余計だ!」
いや、訂正。やっぱりいつもの有咲だったな。
「あ、でもねなーくん!おたえと仲良くなったよ!」
「おたえ……あぁ、たえの事か。あいつと仲良くなれたのか」
「誰だよ?」
「花園おたえちゃん!うちのクラスの!」
あいつも居残りだったな。ギターの件もあるし、仲良くなってくれたのならこっちも嬉しい。キャラと言い、どこか似ている二人だからな……。
「おたえって……香澄もなかなかなネーミングだよね」
「えー?そうかな?おたえも喜んでたよ!おたえって名前!」
「有咲のために言っておくけど、本名は花園たえ、だからな。おたえはこいつが勝手に呼んでるだけ」
「ふーん。別に私、そいつの事知らねーからどうでもいいけど」
何その辛辣コメント。もしたまたま会って、何も知らずにおたえなんて呼ぶことになったらどうするんだよ。
と言うか、おたえって名前は俺もどうかと思うがな……。俺もなーくんだし、りみはりみりん。たえは、その……なんだ。おたえって何だよ。
でも、本人は普通に気に入ってそうだけどな。香澄とはどこか波長の合いそうな面もあるし、すんなりOKしたに違いない。
「おたえってすごいんだよ!音聞くだけでチューニングしちゃうし、演奏も上手なんだ!」
「あいつの演奏聞いたのか。かっこよかっただろ?」
「うん、すごかった!上手く言えないけど、胸の中でこう……グワーッと何かが溢れて止まらないって感じで!」
どういう事かは全然わからないが、何となく言いたいことは伝わってきたからよしとする。これ以上追及すると、香澄語ばかりで余計にややこしくなりそうだし。
「花園さんって、SPACEでバイトしてたよね、翔君」
「えっ、そうなの!?」
「あぁ。りみの言う通り、たえとはバイト仲間なんだ。この前香澄がきらきら星歌ったグリグリのライブの時も、一緒に仕事してたんだけど……気づかなかったか?」
「全然だよ!」
何だ。SPACEのバイトの事は、まだ香澄には言ってなかったのか。仕事の時のたえの姿、できる事なら見てほしいくらいだ。
いつもの天然はどこに行ったのかと疑いたくなるほど、真面目で頼りになるからな。手際はいいし、まさに縁の下の力持ち。もう別人だからな。
「つーか、あの時は周りなんて見てる余裕もなかったっつーの」
「カスタネット叩くのに必死だったからか?」
「そうじゃねーよ!無理矢理ステージに立たされて、すげー恥ずかしかったんだぞ!?」
それでも逃げ出さずに最後までステージに立っているところを見ると、有咲も無関心ってわけじゃないんだろうな。だから必死になれるし、こっちの事も見えていなかったんだと思うし。
案外、香澄に頼まれたからって理由だけかもしれないけどさ。こいつチョロいし、香澄の事好きだからなぁ……。
「居残りの時に聞いてみよっかな!おたえがSPACEでバイトしてる事!」
「香澄、花園さんと話すのはいいけど、課題の方もちゃんとしないとダメだよ?市ヶ谷さんたちだって、待たせているんだから」
「そうだぞ、香澄。今日こそは練習、来られるんだろうな?」
「うん!今日は課題終わらせて、絶対練習行くから!」
そう自信たっぷりに言い切る香澄だったが、俺は……いや、恐らくこの場にいる全員が同じことを考えていたはずだ。
こいつ、絶対に課題終わらせる気がないと。
***
「香澄ちゃん、遅いね……」
「あいつ、今日も来ないつもりかよ」
「かもな……。けど、何となく予想はしてただろ」
「それはまぁ……どうせ香澄だし」
やっぱりか。ま、逆に来てたら驚いてたくらいだ。どうせあいつは、たえと話し込んでちょっとギターでも弾いてるんだろう。もう目に見えてる。
で、今は放課後。俺はりみと一緒に、有咲の家の蔵に来ていた。地下室へと案内され、俺たちはソファでくつろいでいたところだ。
「だ、大丈夫だよ。今日で課題終わらせるって言ってたし」
「だといいんだけどな……」
「って言うか、そもそも何でお前は普通にうちにいるわけ?」
「居たら悪いのかよ」
今日は特に用事もないし、練習に付き合うつもりで来たんだけどな。香澄にはバンドの練習は協力すると言ったし、その手前、他のメンバーのサポートも必要だと思ってな。
「香澄はいないけど、俺たちだけでも練習はできるだろ。ま、俺はバンドとは関係ないから、二人のサポートって感じになるけど」
「サポートって、何するってんだよ。この人数じゃ、できる事なんてたかが知れてるだろ?」
「音合わせ……とかはさすがに無理か。とりあえず、個々の演奏技術を向上させるために、俺が手助けする……的な?」
「何だそれ」
「あ、後確かめておきたい物があるんだ。確かこの前、蔵を掃除してた時に見つけた気がしてさ」
質屋に出されたり、捨てられたりしてたらアウトだけどな。でも、まだあれから時間もたってないし、残っているとは思うんだけど……。
「何の事だよ?」
「それを今から探したいんだ。有咲、悪いけど蔵の中漁るぞ」
「はぁ!?おま、何言ってんだよ!せっかく掃除したのに、また散らかすのかよ!?」
「そんなに汚く漁らないから安心しろ。その探し物が終わったら、俺も練習の方に合流するから!」
「何勝手に決め……おい、翔!私の許可を取れ!!」
有咲はプリプリ怒らせておく程度でちょうどいいから、無視して地下室を上がる。整頓された蔵の中から、あいつがどこにあるのかを見つけなくてはいけない。
無理に探すこともないんだが……あれば練習が楽になる。山積みになった物の中からでも、あいつはすぐに見つかるはずだ。
「ったく、翔の奴……。んで、どうするよ牛込さん。練習するならしてもいいけど」
「せっかくだし、そうしようかな。本当は、香澄ちゃんと練習したかったけど……」
「そうなるといいけどな。けどま、その花園って子とおしゃべりして、手が止まってるんじゃねーの?」
「そ、そんな事ないよ。……多分」
と言いつつ、りみですら先の展開が何となく予想できてしまっているのだが。有咲はハァ~っとため息をつきながら、ふと疑問を感じる。
「そういや、その花園さんってどんな人?今日の話聞いてたけど、全然そいつの事わかんなかったし」
「花園さん?うーん、あんまり話したことはないかな?けど、ちょっと不思議な感じかも」
「不思議って……」
「あっ、でもいい人だよ!きっと!」
「きっとかよ……。って事は、牛込さんもよく知らないって事なんだな」
「うん……。ご、ごめんね有咲ちゃん。ちゃんと答えられなくて……」
「べ、別にそんな事で謝らなくてもいいっつーの……」
花園たえ。結局どんな人なのかの情報は手に入らず、謎が深まる一方のままに終わった。そもそも有咲は、直接会ったことすらない。完全にイメージ像に頼るしかないのに、そのイメージすらつかめていないのだ。
「てか、あいつは何してるんだよ。探し物って言ってたけど」
「まだ探してるのかな?翔君、何を見つけようとしてるんだろう?」
りみたちがそんな事を考えている一方、蔵の中を捜索している翔はと言うと。
「思ったよりも物が多いな……。つか、暗いし埃も多いし……ゲホッ、ゴホッ!ちゃんと掃除してるんだろうな!?」
思いのほか苦戦していた。もう少し早く見つかると思っていただけに、俺は落胆しながら物の山をかき分けていた。その度に埃が舞い、激しくせき込む。
もう捨てられてしまったのか。前に見た時に、有咲に頼んで残してもらえばよかったかな……?
「もう探せる場所も限られているが……おっ!」
見つけた。一部だが、確かに俺が探している物が見えている。捨てられていなかったことに安堵しながらも、俺はその物に近づいて状態を確認する。
「思ったより問題なさそうだな。所々使い込まれているが……ここで使う分なら、別にこれくらいのボロがあっても大丈夫だろ」
俺は周りの物をずらし、地下室までの一直線の道を作る。そうしないと、こいつは運べないからな。それなりに大きいし、重量もある。
ひとまず道を確保し、俺は少しずつ運び出す。重労働はしているから、重さ自体はそこまで苦じゃないけどな。どこかにぶつけてしまわないかの方が問題だ。
「……よし、着いた」
俺は時間をかけて地下室の前まで来ると、扉を開けて中の有咲を呼ぶ。こいつを1人で下まで持っていくのは無理だ。折角手伝ってくれる人がいるなら、協力してもらおう。
「おい、有咲!ちょっと手伝え!」
「戻ってきていきなり何だよ!私はお前の召使いじゃねーし!」
「探してたものが見つかったんだ。けど、そいつを持っていくには下から支えてもらう方がいいんだ。だから手伝ってくれ」
「んだよそれ……。はぁ、都合のいい奴だな……」
と言いながら、重い腰を上げて協力してくれる有咲。何だかんだで優しいからな、有咲は。今言ったら、絶対にツンデレ発動して殴られそうだけど。
「あ、あの翔君。私も何か手伝う事ないかな?」
「いや、りみはいいよ。女の子には重たいだろうし、そこで待っててくれよ」
「翔君……!」
「って、何で牛込さんは良くて私には手伝わせるんだよ!」
どっちかって言ったら、有咲の方が力ありそうだったからな……。ただそれだけの理由だったんだけど。
「牛込さんもなんかうっとりしてるし……もう、仕方ねーな!」
「さすが有咲だ。話が早くて助かる」
「他に誰もいねーんだからしょうがねーだろ!……って、おい翔。こいつって……」
「俺の専門分野だ。それに、バンドの練習するんだったら、欠かせなくなってくるだろ?」
ここまでもったいぶる事ではないが、恐らく何のことか想像はついているだろう。俺は有咲と協力して、地下室の中にそいつを運び入れる。空いている一角にセッティングし、準備は万端だ。
「つーか、よくそんな物見つけたな」
「前の掃除の時に見つけてな。多分使えそうだったから、あったらいいって思っていたんだ」
「これって……ドラム、だよね?前に叩けるって言ってたけど……」
「マジか?お前、ドラム叩けるのかよ?」
「りみには話した事があったな。昔から趣味で、それなりには叩けるんだ」
そう。俺が探していたのは……バンドにおいてはリズムの要とも言える楽器、ドラムだ。
俺がドラムと出会ったのは、小学校高学年の時。たまたまテレビで見たドラムの演奏に心惹かれ、俺はお金を貯めてドラムを買った。それからは独学でドラムを勉強し、美羽とギターでセッションを行う事も多かった。
だから、ドラムに関してはそれなりに詳しいし、技術もあると思っている。バンドをするならドラムが必要だと考えた俺は、ドラム役が見つかるまでの代役になれないかと考えていた。
そこで蔵で見つけたドラムの出番だ。使い込まれてはいたが、音はしっかり出る。練習程度に使う分には、特に何の支障もないはずだ。使っていて壊れたら知らないが、ないよりはマシだ。
りみには初めて会った時に、ファミレスでの会話の時に言ってたからな。
「いつ使い始めるかはわからないけど、必要になった時に使えるようにはしておきたくてな」
「うわぁ……!翔君、ありがとう!」
「気持ちはありがたいけど、お前がやる気になってどうするんだよ。バンドには入らねーんだろ?」
「あくまで代役だ。それに、やる気なのは有咲も同じじゃないのか?」
ビクッと有咲の肩が弾む。りみも笑っているし、わかりやすい奴だな……。まぁ一応、そう判断した理由はあるんだけどさ。
「な、何言ってんだよ?私がバンドやる気?ふん、そんなのありえないっつーの」
「なら、あそこに置いてあるキーボードは何だ?」
「……げっ!?」
だから反応がわかりやすいんだよ。隠し事とか全然できないな、こいつ。
そこにあったのは、新品同然のキーボード。最近買ったばかりのやつだろうな。いくら何でも綺麗すぎるし、鍵盤も使い込まれた跡がない。こいつはもしかしなくても、バンドのために買ったキーボードだ。
「私も、昨日来た時はビックリしたんだ。でも、有咲ちゃんもバンドやりたいんだなって思ったら、嬉しくて」
「ちょま、牛込さん!」
「いいじゃないか。香澄も喜ぶだろうし」
「……っ!///べ、別にあいつとバンドがしたいわけじゃねーよ!ただ、これ以上アイツにしつこくバンドに誘われるのがうぜぇだけだ!わかったか!?」
「はいはい。有咲が香澄とバンドがしたいって事がよ~くわかりましたよ」
「だから違う!」
本当、素直じゃないよな。でも、有咲がバンドに前向きになってくれてよかったよ。香澄も、この事を知ったら喜んで抱き着くだろうな。そしたら有咲がまた照れ隠しでうるさくなって……目に見えている。
「あっ、香澄ちゃんから連絡来たよ」
「本当か!?」
「マジで香澄好きだな、有咲」
「ず、ずっと待ってるのも退屈だし、早く来てほしいと思っただけだ!」
「わかったから。で、香澄は何て言ってるんだ?」
「え、えっと……。遅くなったから、今日も行けないって……」
「「…………」」
期待を裏切らない奴だな、本当。ま、そのつもりではあったけど。
「そ、それで有咲。そのキーボード、どのくらい弾けるんだ?」
「まだ始めて1週間も経ってねーよ。ピアノは習ってたけど、感覚とかもちげーし。だから、まだまだって感じだ」
「饒舌だな」
「うるせーな!」
となると、このドラムはまだ使えないか。香澄がいたところで、まだ基本練習の段階だからな。音を合わせるほどのレベルじゃないか。
「あ、あの翔君」
「ん?どうしたんだ、りみ」
「その……翔君がドラム叩けるって話は前に聞いたけど、私翔君がドラム叩いてるところは見た事ないかな~って……」
「確かにな。ドラム叩けるって言っておいて、下手だったら笑いもんだしな~?」
有咲の奴、好き放題言ってくれるな。だったらちょうどいい。せっかくだから、俺のドラムを見せてやろうか。香澄もどうせ来ないし、このままだと各自で練習するだけになりそうだしな。
「……わかった。じゃ、二人ともソファにでも座っててくれ」
ちょうどソファの正面にドラムを置いたからな。りみは期待して、有咲は腕を組んでお手並み拝見と言わんばかりに。
「…………」
俺は自分の趣味としてドラムを叩いていただけだ。当然、人前で演奏したことはこれまでにない。せいぜい美羽の前くらいだ。香澄にだって、よくよく考えたら聞かせたことがない。
緊張する。たった二人とは言え、俺の演奏を聞いてくれる人がいるんだ。少し落ち着かなくては。
深呼吸し、軽くドラムを叩いてコンディションを確認。ドラムの方は問題ない。俺の方も、リズムを刻んだことで気がまぎれた。
まさか、こんな風にドラムを叩くことになるとは。何が起こるかわからないものだな。
「……行くぞ」
「うん……!」
「もったいぶってないで、いつでもいいぞー」
俺は気合を込めて、スティックを振り下ろした……!
***
「す、すごかったね翔君!ドラム、めっちゃかっこよかったよ!」
「何回目だよ。さっきからずっと言ってないか?」
「だって、翔君がかっこよかったから……!」
その日の帰り道。俺は駅までの道を、りみと一緒に帰っていた。もう日も暮れて、少し冷え込んできた。
で、りみはずーっと俺の事をべた褒めしている。有咲も別れるまでは悔しそうに褒めてたし、思ったよりもいい評価で嬉しいんだが。けど、りみはいつまで俺を褒めたら気が済むんだ?
「優しいし、ドラムもできるし……やっぱり私、翔君の事――」
「ん?何か言ったか?」
「えっ!?な、何でもないよ!///翔君の事なんて何も言ってないから!本当の本当に――キャッ!?」
慌てて周りが見えなくなったのか、りみが誰かとぶつかってしまう。俺は二人に怪我がないか、確認することにする。
「おい、りみ。大丈夫か?」
「う、うん。あの、すみませんでした……」
「そちらも怪我はないですか?」
「私は問題ないわ。これからは気をつけなさい」
それなら一安心だ。何かあったら大変だからな。けど、この人どこかで見たことがあるような……?
「あなたたちも、バンドをやってるのね」
「は、はい。まだメンバーは揃ってないんですけど……」
「俺は関係ないですから。『も』って事は、あなたもバンドを?」
「えぇ。Roselia(ロゼリア)と言うバンドで、ボーカルをやっているわ」
「ロゼリア……!?しかもボーカルって事はあんた、湊友希那さんか!?」
「あなた、私の事を知っていたのね?」
知っているも何も、今やガールズバンド界において知らない人はいない。圧倒的な演奏技術と歌唱力で観客を魅了する実力派バンド……それがロゼリアだ。
SPACEでもライブをすることがあるし、何回か見たことがあるが……圧巻の一言に尽きる。まさかこんなところで会うとはな。りみも隣で驚いているしな。
「もちろん、知ってますよ!何回かライブ、見させてもらいました!」
「それは嬉しいわ。ありがとう」
「各パートの演奏もレベル高いですし、それらを一つにまとめる技術がすごいですよ!闇雲に練習しても身に着かないようなパフォーマンスで……何と言うか、目標が常に明確で、その芯が全然ぶれることなく保ち続けられてるって印象を受けて!あ、それから歌も――」
「し、翔君!あまり話し込んだら、困るんじゃないかな?」
しまった。つい勢いに任せて饒舌になってしまった。湊さんの事、全然考えてなかったな……。
「あっ……す、すみません……」
「構わないわ。それだけ私たちの音楽が、伝わってくれていると言う事だから。……何だか似てるわね」
「似てるって……何にですか?」
「私たちに、歌とギターを教えてほしいと頼んできた子がいたの。そんな事で寄り道している暇もないし、最初は断っていたわ」
だったら、どうして?そう尋ねようとしたが、すぐに答えは返ってきた。
「けど、その子の熱意に負けたわ。バンドが、音楽が好きなんだって伝わってきた。あなたもそうなんでしょう?今の話を聞いていれば、すぐにわかるわ」
「……はい。けど、俺よりも音楽に熱く向き合おうとしている奴もいますよ。音楽の事、全然知らないのに……バンド始めるくらいですから」
キラキラドキドキしたい。たったそれだけの理由でも、バンドの世界に足を踏み入れたくらいだから。あいつの気持ちは、誰にだって負けていない。
「そんな子もいるのね。よかったら、あなたたちの名前を教えてくれないかしら?」
「えっと、牛込りみです」
「俺は成川翔だ」
「……っ!成川……」
「……?俺の名前、どうかしましたか?」
「いいえ、何でもないわ。それじゃあ、この辺で失礼するわ。また会う時があれば、よろしく」
そう言って、スタスタと立ち去って行った。最後の反応がどうも引っかかるが、気にしていても仕方ない。また会う機会があるなら、その時に聞いてみよう。
「すごかったな、りみ……」
「う、うん。ロゼリアに会えるなんて……」
「りみも、もちろん香澄たちも、ロゼリアみたいになれるように頑張らないとな」
「えぇっ!?ろ、ロゼリアはちょっと目標が高いんじゃないかな……?」
「何言ってるんだよ。目標は高い方がいいだろ?」
「そ、それはそうだけど~!」
そんなやり取りをしている二人と別れ、一人夜道を歩く友希那は……。
「そうだったのね……。道理で、似ているはずだわ……」
意味深な独り言を残しながら、暗闇へと消えていった。