BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!

今回は完全にオリジナル!かなり書くのに苦労したんで、話がよくわからなくなってるかもですが……暖かく見てください。お願いします。

それでは、どうぞ!


phrase27 君の声

あなたは、いつになったら笑ってくれるのか。

 

 

ベッドに横たわるあなたの横顔は、何も変わらない。どこを見ているのか、何を考えているのか、あたしにはわからない。

 

「美空……」

 

声をかけても、何も答えてくれない。あの真っ直ぐで、明るくて、あたしを広い世界に連れ出してくれたあなたは……いなくなってしまった。

 

 

あたしは今でも、あの事件を忘れたわけじゃない。

 

 

全てが180度変わってしまって、これまで当たり前だった関係が、知らない間に崩れていく。

 

「…………」

 

透き通った銀髪を、あたしは掬って撫でてみる。サラサラとして、綺麗で……そこから覗く美空の目を見るのが、あたしは辛い。

 

あの時、あたしはどうしたらよかったのか。今でもわからなくなる時がある。

 

「こころ様、そろそろお時間です」

 

「……もう少し、待ってくれないかしら。すぐ行くわ」

 

きっと黒服ね。夜中まで美空に付き添えるように協力してもらってたけど、ここまでみたい。

 

 

だから、最後に一つだけ。

 

 

「……笑ってよ、美空」

 

あなたの笑顔が見たい。そのためにあたしはバンドを作った。あなたの教えてくれた音楽で、世界を笑顔にするために。

 

そんな音楽の力を教えてくれたのも、あなただったのに。

 

「……あら?」

 

そんな時だった。一台の救急車が、サイレンを鳴らしながらこの病院に向かって来ていたのは。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

俺たちは、すぐに病院へと向かった。

 

遅い時間帯だった事もあり、すぐに救急車を呼んだ。美羽の付き添いには俺と、香澄も来てくれた。

 

三人で救急車に乗り込み、病院へと向かう。香澄の家族も、事情を理解したのか病院まで来てくれることに。

 

前に運ばれた病院と同じだったため、医師もすぐに状況を理解してくれた。検査が行われ、俺たちは待合室へと移動する。

 

そこから母さんも合流。仕事で疲れ切っているだろうが、そんな様子は一切見せずに美羽の無事を祈る。香澄の母さんと明日香も、俺たちと一緒に検査が終わるのを待っていてくれた。

 

「……くそ」

 

俺は何もできず、待つことしかできない。不安な気持ちをどうにかしたくて、俺は待合室を離れて深夜の病院を歩いた。

 

大丈夫だ。これまでだって、何とか乗り越えてきたんだ。今回だって……。

 

「……美羽」

 

ダメだ。そんな気持ちで割りきれるものじゃない。俺は結局、別の待合室でじっと時間を過ごしていた。

 

患者たちも病室に戻り、シンと静まった待合室。ただ、時間だけが過ぎていく。暗い室内と静寂が、俺の中で不安を広げて希望を押しつぶしていく。

 

「美羽」

 

じっとしていられない。すぐにでも立ち上がり、駆け出し、美羽の元に向かいたい。声をかけて、返事が聞きたい。今すぐに、美羽の笑い声が聞きたい。笑顔が見たい。

 

「美羽……!」

 

どうして、美羽だけなんだ。俺も美羽と、病気の苦しみを分かち合いたかった。いや……そもそも俺じゃダメだったのか。

 

音楽が大好きで、明るくて。友達からも好かれて、いつも学校の事を俺に楽しそうに話してくれて。

 

ちょっとふざけてからかってくる事もあるけど、悪い所なんて何一つない。見つけたくても、何も見つけられない。

 

ギターなんて、独学で上手くなったくらいの努力家なんだぞ。好きな事には一途に取り組む集中力があって。

 

 

なのに病気は、どうして美羽を……ふざけるな……っ!

 

 

俺を苦しめろよ。俺を痛めつけろよ。美羽が無事なら、俺はどうなってもいい。

 

なぁ……何で俺を選ばなかったんだよ?何で美羽が病気で苦しまないといけないんだよ!?

 

「…………」

 

まだ検査が終わる気配はない。長引いているのか。何かトラブルでもあったのか。

 

ここまで時間をかけなくてはいけないほど、美羽の容態は深刻なものなのか。

 

 

もしかしたら、助からないのか。

 

 

「……っ!?」

 

 

嫌だ、怖い。何を考えているんだ。そんな事、あっていいはずがない。俺はかぶりを振り、ネガティブな思考を振り落とす。

 

だが、時間が経てばたつほど、募っていく想い。耐えきれるかどうかも、時間の問題だった。

 

「俺は……何もできないのか」

 

「あなた……前にもこの病院で会ったわね?」

 

突如聞こえた声に、俺は現実へと引き戻される。どこか聞き覚えのある声。それは、前に一度だけ会った金髪の女の子。名前は……。

 

「弦巻さん、だったか」

 

「こころでいいわよ。翔、だったかしら」

 

「あぁ。……けど、何でこころがここにいるんだ?もう面会時間は終わっているだろ」

 

俺のような事情があるならともかく、こころにも何か事情があったりするのか?家族の身に何かあったとか……。

 

「黒服に頼んで、夜中まで面会させてもらってるの。美空、心配だから……」

 

だからと言って、そんなわがままが通るようなものなのか。権力でもない限りは……ん?今、黒服とか言わなかったか?

 

「……こころって、何者なんだよ」

 

「何者って……あたしはこころよ?」

 

「そうじゃなくて。名前は知ってるからさ。弦巻――」

 

と、そこまで言って、俺はようやく気がついた。この女の子の正体に。

 

「な、あんた……弦巻コーポレーションの関係者か!?」

 

「えぇ、そうよ?それがどうかしたの?」

 

弦巻コーポレーションと言えば、世界有数の大富豪じゃないか……。そりゃ、ちょっとした権力くらい持っててもおかしくない。

 

ってか、何で気づかなかったんだよ。深夜の病院じゃなかったら、もっと大声出していたところだ。

 

「……何でもない。って事は、さっきまであの子の所に?」

 

「えぇ。今日も、笑ってはくれなかったけど……」

 

俺もできるだけ、あの子のお見舞いには行くようにしている。その日何があったか、今は何が流行なのか。答えはなくても、俺は声をかけ続ける。

 

けど、何も心を開こうとはしてくれなくて。誰に対しても感情を閉ざして、1人の世界に沈み込んでいく。

 

それじゃダメだ。いつまでも、静かに時が流れていくのを病室で感じるだけの人生なんて。

 

 

その事を悲しむ人は、何人もいるのだから。

 

 

「それで、翔はどうしたの?」

 

「俺は、まぁ……ちょっと家族が病気でな。さっき家で倒れて、救急車呼んで……今は検査の途中だ」

 

「そうだったのね」

 

俺の隣に、こころが腰かける。ギシリと長椅子の軋む音が、暗い廊下を伝う。

 

「待つ事しかできないって……辛いわよね」

 

「……あぁ。不安とか、怖さとか、そう言うので押し潰されそうで……。今も、正直どうにかなりそうだ」

 

最悪の可能性しか考えられない。安心できる結果を望んでも、そう考えていたとしても、すぐに真っ黒に塗り潰される。

 

頭が割れそうに痛い。これは悪夢だ。現実になんて、なって欲しくない。

 

「大丈夫よ、翔。辛いなら、あたしがしばらく側に居てあげるわ」

 

「え……?」

 

「同じ苦しみを知ってるから……そう言う苦しい時こそ、側に居て支えてあげたいの。美空だって今、苦しんでるから……」

 

俺が今感じている苦痛を、こころも同じように感じている。あの美空と言う女の子が、精神的に傷を負った時に。

 

それこそ、こころには何もできなかったんだろう。壊れていく様を見る事しかできず、こころは……悪夢を見た。

 

 

その悪夢は、現実へと変わってしまって……。

 

 

「……強いな、こころは」

 

「そうかしら?あたしは、笑顔の人が増えて欲しいだけよ。そのための力をくれたのは……美空だけど」

 

「そうか。……俺には、そんな強さなんて何もないよ。だから、苦しんだ事だってある」

 

何もできない事を嘆き、そこで止まる事はなかった。こころは美空から教わった事を糧に、前に進もうとしている。

 

俺は……今、何かできるのだろうか。あの学校に強引に入学したとは言え、その結果何か成し遂げられたのか。

 

普通の青春を捨て、そうして得た高校生活。それが本当に、正しかったのか。あの苦しみへの抑止力になるのか。本当に、変われたのだろうか。

 

 

何もできなかった、あの時の自分から。

 

 

「無力だった。大切な人が、苦しんでいたのに。側で支える事ができなくて……そんな経験を、俺は前にした事がある」

 

「……そう」

 

「だから美羽には、もうこれ以上苦しんで欲しくはない。そのためなら、俺はできる事は何でもする……!」

 

誓ったんだ。美羽が少しでも、笑顔でいられるように。そのためにできる事なら、どんな事でやってやろうと。

 

例え、それが茨の道だったとしても。美羽の苦しみや恐怖に比べたら、大した事なんてあるものか。

 

「美羽……それが、翔の大切な人なのね」

 

「あぁ、そうだ。……何か似ているな。美羽と美空って、名前の響きが」

 

「本当だわ、よく気づいたわね?」

 

もしかしたら、仲良くなれたのかもしれない。美空も、音楽は好きだったと聞いている。美羽とは話も合っただろうに。

 

そんな彼女が……どうして、感情を閉ざしてしまったのか。俺は、その辺の話も少し聞いた。

 

恐ろしく、そして悲しい……。ニュースにも取り上げられる程の話だった。

 

 

けど、その話を口にするには、まだ早い。

 

 

ただ、彼女は何も悪くない。被害者でしかないとだけ……言っておこう。

 

「じゃあ、あたしはもう行くわ。そろそろ、黒服の所に戻らないと」

 

「そうか。……結局、また暗い話しかできなかったな」

 

前に別れた時、今度は楽しい話をしようと約束していた。俺もこころも、楽しみにしていたはずだったのに。

 

……その約束は、今果たされることはなかった。

 

「今度は、楽しい話ができるといいわね。……そうだ、翔」

 

長椅子から立ち上がり、出口へと歩き出すこころ。と、こころは途中で振り返り、ニッと口元を緩めて、

 

「翔は強いわよ。美羽のためにできる事、やれるかどうかなんて考えないで、やってみようとしてるじゃない」

 

「……そう言ってくれたら、嬉しいよ」

 

そう言い残し、こころはいなくなった。しばらく足音は聞こえていたが、それも完全に聞こえなくなった。

 

こころの肯定の言葉は、少しだけ頭の中に響いていた。

 

「……今は、何もできないけどな」

 

また、俺は1人になった。暗闇の中に取り残された。

 

待つことしかできない。こころと話していて紛れかけた意識が、1人になったことで戻ってくる。

 

美羽が心配で、呼び起こされた感情が、恐怖を伴って俺の胸を締め付ける。

 

 

怖い。

 

 

辛い。

 

 

痛い。

 

 

苦しい。

 

 

美羽……!

 

 

 

 

「……なーくん」

 

 

 

 

その時、ふと聞こえた俺を呼ぶ声。そこには、香澄がいた。さっきまでは、明日香たちといたはずなのに。

 

「……香澄」

 

「なーくん、こんな所にいたんだ」

 

「母さんは?」

 

「向こうで待ってる。私のお母さんたちと一緒だよ」

 

こころが腰かけていた場所に、今度は香澄が腰かける。フゥ……と、香澄は息を吐く。

 

「検査、まだ終わらないね」

 

「あぁ……」

 

「大丈夫だよ。みーちゃんなら、きっと」

 

「そうだな……」

 

「なーくん、飲み物欲しい?私、買ってくるよ?」

 

「……いや、今はいいよ」

 

次から次へと、香澄は俺に言葉投げかけてくる。周りが静かだからか、余計に香澄の声が目立つ。

 

その全てに、俺は気のない言葉を返すことしかできなかった。今は美羽の事だけが気がかりで、とても香澄の相手はできなかった。気を散らして、ごまかす事なんかできない。

 

香澄の気持ちはわかる。申し訳ないとも思っているさ。けど、ダメなんだよ。美羽が……もし美羽がいなくなってしまったら、俺はきっと立ち直れない。たった1人しかいない、大切な妹だから。

 

だから悪いけど、そっとしておいてほしい。美羽の事だけを考え、その無事を祈らせてほしい。優しさを切り捨てるような真似をして、本当にすまない、香澄……。

 

「……私、何にもできないね。誰かを励まして、勇気づけて、力になる事なんて……何も」

 

「香澄……?」

 

「みーちゃんが苦しんで、なーくんも辛いのに……私はここで何してるのかなって。一緒のように待つしかできないなんて、私嫌だ。私の成りたかった私は、そうじゃない」

 

声色を変えて、香澄は独り言のようにつぶやいた。俺はどう答えたらいいのかわからず、香澄の言葉を聞く一方だった。

 

「いつも誰かに助けてもらってばっかりで、支える事なんてできなくて。もっと、なーくんみたいになりたいのに」

 

「俺みたいに?」

 

「私の事、いつも支えてくれる。力になってくれる。ずっと昔からそうだから。そんな風に、私もなりたいって思ってるんだ。本気で」

 

「香澄……」

 

「でも、全然だね。私、1人じゃ何もできない。今だって、なーくんの力になることもできなかった。私、頼らないと何もできないんだね……」

 

自分には何もできない。だから何かしたい。できるようになりたいと、そんな言葉だけが香澄の口からは漏れ出していく。

 

 

俺みたいに、か。

 

 

「…………」

 

俺にできる事なんて、どうって事なんかない。できない事の方が多くて、美羽の苦しみに寄り添う事も、あの時にはできなくて。

 

そんな俺が、今の香澄にどう言葉をかけてやればいい?そもそも、俺は香澄を支えてやれているだけの力なんて━━。

 

 

『翔は強いわよ。美羽のためにできる事、やれるかどうかなんて考えないで、やってみようとしてるじゃない』

 

 

「……っ!」

 

「なー、くん?」

 

俺が何かできるとすれば……それは、俺だけの力でどうにかなるものなんかじゃないんだ。

 

何もできないかもしれない。けど、何かできるかもしれない。

 

そのための原動力や勇気は、きっと━━。

 

「……それでいいだろ」

 

「えっ……?」

 

「1人でできる事なんて、限られるさ。何でも1人で考えて決めつけて、それで何かが解決するわけじゃない」

 

「でも、なーくんは……」

 

「俺なんかに何かできる力なんてない。支えてくれる人がいて、一緒に何かしてくれる人がいるから、行動を起こせるんだ」

 

誰かのために。その気持ちが、俺を突き動かしている。何もできない俺に、力を与えている。

 

そうだ。俺にそんな力があるのなら、美羽だって、美空だって……。

 

 

誰かの心に寄り添うって、難しい事なんだよな……。

 

 

 

「それに、香澄はバンドやりたいんだろ?バンドは、1人でやるものじゃない。1人で何かやろうなんて気持ちで、成り立つものじゃないはずだ。だから、周りの力も頼っていいと思うんだ」

 

「バンド……」

 

「ってか、香澄はもっと自分の行動力を考えろよ。あの行動に、救われている人だっているんだぞ?何もできない、なんて言葉が香澄にふさわしいとは思えない」

 

有咲、りみ、それに俺だって……。これから先だって、香澄に助けられる人はきっと……いると思うんだ。

 

「……そっか。ありがと、なーくん」

 

「お礼なんていらないさ。これくらいの聞き役なら、いつでもするよ」

 

「えへへ……ちょっと寒くなってきちゃった。なーくん……もう少しだけ、そっちに寄っていい?」

 

「あぁ、いいよ」

 

「ありがと。……翔君」

 

「え……っ!?」

 

香澄は俺に身を委ね、手を重ねてくる。肩にかかる香澄の温もり、そして香澄の横顔がほんのりと赤い。普段抱き着かれているはずが、どうしてこうもドギマギするのか。

 

 

それに何よりも……。

 

 

「成川美羽さんのお母さんですか?今、検査が――」

 

待ち望んでいた、第三者の声。看護師の声だ。検査が終わったとの報告が、俺の耳にも届く。

 

「悪い、香澄。検査が終わったみたいだから、俺行かないと」

 

「あ……うん。じゃあ私も、お母さんのところに戻るね」

 

触れていた香澄の温度が離れ、香澄の家族がいる方へと歩いて行く。残された俺も、検査の結果を確認するために立ち上がる。

 

美羽の容態はどうなのか。入院は必要なのか。美羽の事が頭の中を渦巻いている中、俺はどうしても、気になっていた。

 

「…………」

 

 

最後に呼んでくれた、俺の名前。普段は絶対、下の名前で呼ぶことはないのに。

 

 

「香澄……さっきのは……?」

 

聞き慣れた自分の名前。だが、俺にはずっと、香澄が名前を呼ぶ声が残り続けていた。

 









たえを震えさせるためのライブに向け、動き出す香澄たち。





オーディション。そしてSPACEのレベルの高さを、香澄たちはその過程の中で改めて知る事になる。





一方、翔は1人、ある場所へと向かう。そこは……。





次回『目指す先、その高みは』




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