BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです。わざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます。

さて、今回は少し長くなりました。ある程度話を進めたいと思ったので、字数を取ることに。とか言って、あまり進んでないのは秘密。

ちなみに前に話したドリフェスの結果ですが、フェス限の薫と蘭、この前の紗夜日菜イベの紗夜、シュシュの沙綾に夏祭りイベの沙綾の計5体でした。被った星4もいたけどね……。

では、行きましょうか。


phrase2 求める輝き

音楽には、力がある。その事を意識し始めたのは、いつの事だっただろう?

 

 

 

誰かを笑顔にしたり、幸せを運んだり。

 

 

 

そして、勇気をくれるもの。

 

 

 

幼いときから側にあって、当たり前のように触れて。

 

 

 

小学生の時には、ベースを弾けるようにもなった。

 

 

 

「あなた、とっても上手に演奏するのね!」

 

 

「え……?」

 

 

 

音楽を通じて、友達もできた。誰かと喜びを共有できる幸せを手に入れた。

 

 

 

「私と一緒に、やりましょうよ!音楽!」

 

 

 

「君と……?」

 

 

 

「そうよ!私、歌は得意なの!あなたの演奏に合わせて歌えば、最高に楽しいと思うの!」

 

 

 

音楽には、力がある。今でも、その事を信じている。

 

 

 

「あ、まだ名前言ってなかったわね!私は――」

 

 

 

「知ってるよ。同じクラスだし、いつも明るくて。それから、家がお金持ちって話だよね」

 

 

 

「それなら話は早いわ!さぁ、一緒に音楽を奏でましょう!」

 

 

 

「もちろんさ。けど……『自分を笑顔にするため』に音楽をやるのとは違うよ?」

 

 

 

「どういう事?」

 

 

 

「音楽は……『誰かを笑顔にするため』にあるんだから」

 

 

 

 

音楽には、力がある。彼女との出会いは、まさにすべての始まり。次第に新たな出会いを運び、音楽がより一層好きになった。

 

 

 

 

 

 

でも……。

 

 

 

 

 

 

それがいつも前向きな感情ばかり与えてくれるとは限らない。

 

 

 

その事を、痛感した。

 

 

 

音楽は、なくてはならないものだった。

 

 

 

そのはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、今の自分じゃ――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、誰かを笑顔にすることはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それじゃあ、自己紹介しましょうか。もう高校生ですから、自己PRであることを意識してくださいね」

 

入学式も終わり、俺たちは今A組の教室に戻っていた。担任の先生が教壇に立ち、これから自己紹介を始めようとしている。

 

「では、牛込さんから」

 

「は、はい!牛込りみです。……えと、その……うう……っ」

 

かなりの引っ込み思案だな。もじもじと周りの視線を気にして、何も話せなくなっている。自己紹介とは言え、深く思いつめすぎているんだな。

 

こういう子は、かえって新鮮だったりして。どっかの誰かとは、全くの正反対だからな。

 

「……へっくしっ!」

 

「こら、そこの……確か、戸山さんね。集中して、クラスメイトの自己紹介を聞きましょうね」

 

「は、はい……」

 

噂したくらいでくしゃみするなよ。まぁ、みんな笑ってるし、空気も軽くなった。今自己紹介している彼女にしてみても、結果オーライだろう。と、思っていたのだが……。

 

「……あ、うう」

 

こいつは、相当後ろ向きだな。深めの青色をした短めの髪を揺らしながら、やはりオドオドとした様子で言葉を詰まらせている。

 

「……よ、よろしくお願いします」

 

結局、この一言しか話せないまま、彼女……牛込さんの自己紹介は終わった。だが、彼女なりの頑張りを賞して、クラスメイトからパチパチと拍手が送られていたけどな。

 

にしても、自己紹介か……。人の心配しているのはいいが、俺は何話そう?こんなアウェイの状況で、さすがに男受けを狙うようなことは話せないしな……。

 

「PRって、アピールってことだよね。アピール……なーくんはどう思う?」

 

「席が前後だからって、俺に意見を求めるなよ」

 

運がいいのかどうかわからないが、俺の席は香澄の後ろだった。出席番号順らしく、孤独は感じないが、親近感しかない。

 

「では、戸山さん」

 

「ほら、呼ばれたぞ」

 

「はいっ!えっと……皆さん、こんにちは!戸山香澄、15歳です!」

 

年齢まで言う必要はあるのか?一応受けてはいるし、まぁいいか。

 

「私がこの学校に来たのは、楽しそうだったからです」

 

やまぶ……じゃない。沙綾か。香澄、彼女にもさっき言ってたからな。

 

「中学は地元の学校だったんですけど、妹がここに通ってて。それで文化祭に来てみたら、皆楽しそうでキラキラしてて、ここしかないって決めました!」

 

俺もこの学校の話は何度も聞いている。女子校ならではの明るい雰囲気が魅力で、近所の評判も悪くない。俗に言う、お嬢様学校らしいな。

 

そんなところに入学した俺って……。まぁ、こっちにもこっちの事情があるから、そこはスルーだ。

 

「だから今、すっごくドキドキしてます!」

 

擬音語ばかりで、自己紹介になっているのかいないのか。内心苦笑する俺だったが、それも今の間だけだった。

 

「私、小さい頃『星の鼓動』を聞いたことがあって。キラキラドキドキって、そう言うのを見つけたいです!」

 

「……っ!」

 

そうか……。やっぱり、あの時の事は覚えているんだな。もう高校生だけど、俺だって忘れたことはなかった。それだけ、鮮明に残り続けるほどの体験だったからな。

 

あの時の星空と、高鳴るときめきは忘れられない。それは、まだ俺たちが幼かった頃の話で……。

 

「キラキラドキドキしたいです!!」

 

と、香澄の一際大きな声で現実に引き戻される。周りからも、良くも悪くも注目を集めているようだった。話を終え、呆然としている周りを見て、香澄は首をかしげていたが。

 

「星の鼓動って?」

 

「えっとね、星がキラキラ~って」

 

「ふふ。可愛い。戸山さんって面白いね」

 

ま、何はともあれ、香澄の自己紹介成功って感じかな?最後は結局クラス全体から笑われてたけど、悪い意味じゃないからよしとしよう。

 

さて、問題は俺の自己紹介だけど……ん?

 

「うわぁ……!」

 

香澄の言葉に魅了されたのか、さっき臆病な自己紹介をしていた子……牛込さんが、ジーっと香澄の方を見つめていた。正確も真逆だし、自分もあんな風になれたらいいのにと思っているのかな。

 

「はい、静かに。えー、では次は……成川君ですね。入学式の時にも説明がありましたが、彼は唯一の特務生として入学を許可されました。その点も含めて、自己紹介をお願いしますね」

 

「はい、わかりました」

 

俺は席を立つ。たったこれだけの事で、さっきまで雑談していたクラスメイト達が一斉に俺に注目を向けてくる。

 

うわ……こんなに大勢の女子に囲まれたことなんてない。じっと見られることも初めてだ。冗談抜きで、圧を感じる。

 

心臓も張り裂けそうなほどに高鳴ってる。ここまで緊張する自己紹介になるなんてな。俺も、さっきの牛込さんの事を笑う事なんかできないな。

 

俺は深呼吸して、気持ちを落ち着かせてから自己紹介を始めた。

 

「えっと……入学式の時にも紹介していただいた、成川翔と言います。家の都合から、特務生として入学することになりました」

 

頑張れ、俺。プレッシャーとか半端じゃないが、このままやり切るんだ!

 

「正直女子ばかりで、この先上手くやっていけるかどうかも不安です。ですが……俺は皆と何一つ変わらない高校1年生です。気軽に楽しく、高校生活を過ごしていきたいと思っています。以上です」

 

拍手が鳴り響き、俺はすぐに席に座る。やり切ったと言う達成感と、緊張から解放された事による疲れが、俺の中を満たしていた。

 

「ありがとう、成川君。みなさん、仲良くしてくださいね。では次は……」

 

よし、やり切ったぞ。もうあんなに緊張する自己紹介は正直体験したくはないんだけどな……。とにかく、次の自己紹介が始まってるし、そっちに集中するか。

 

「……成川、翔」

 

ただ……牛込さんの視線が俺にも向けられていたことを、この時は知る由もなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……何か、今日は帰ったらすぐにでも眠れそうな気がする」

 

「お疲れ様。あんなに質問攻めされるなんてね」

 

自己紹介が終わり、ホームルームも何とか終わった。とりあえず、波は超えたかと思ったのだが……その直後が問題だった。

 

俺はその珍しさから、クラスメイトの女子にすぐに声をかけられる。しかも、何人も詰め寄られて、次から次へと質問を受けていた。

 

一つ一つ質問に答えてはいたのだが、女子のテンションの高さにはついていくのが大変だった。後は、大勢の女子を相手にして、かなりメンタルを削られたとだけ言っておく。

 

「なーくん人気者だね!いいな~」

 

「よくねぇよ……。てか、香澄も何人かと話してただろ」

 

「あれは私から話しかけたんだよ~。そうじゃなくて、もっとなーくんみたいに黙ってても声かけてくれるようなのがいいんだよ!」

 

いや……香澄が黙り込むってのが想像できないんだけどな。

 

「それって、香澄みたいに自分から話しかけるんじゃなくて、翔みたいに向こうから話しかけてほしいってこと?」

 

「そうそう!さすが、さーや!」

 

「おい、沙綾。それだと俺が自分から積極的に行けない奴みたいに聞こえるんだが」

 

「アハハ。そんなつもりないって。言葉のアヤだよ」

 

本当かね?こうやって気さくに話してはいるが、まだ知り合って1日も経ってないし、沙綾の事はよくわかっていないんだよな。

 

「そう言えば私、変な事言ったかな?自己紹介」

 

「あー……」

 

「それは、な?」

 

「なっ、て……二人とも、やっぱり変だった?」

 

変ではなかったんだけどな。少し周りから浮いていただけってだけで。

 

「私はいいと思ったよ。真っすぐで、よかったな」

 

「おっ、ナイスフォローだな沙綾」

 

「え、それってなーくんは私の自己紹介が……」

 

しまった。余計なことを言わなかったらよかったか。

 

「大丈夫。翔もいいと思ってるよ。だよね?」

 

「……本当?なーくん?」

 

「あ、あぁ。高校になって新しい環境になったんだ。何か始めてみるのも悪くないんじゃないかと思うんだけどな」

 

香澄の上目遣いに少しドキリとしながら、俺は何とか弁解する。途端に笑顔を取り戻したようで、本当にわかりやすかったけどな。

 

後は沙綾、マジでナイスフォロー。俺は沙綾に目配せすると、向こうもウインクで返してきた。その反応が可愛かったのは、俺の心の中の秘密にしておく。

 

「そうだよね!じゃあ明日から部活見学、一緒に行ってくれる?」

 

「あー、ごめん。部活は……無理かな。放課後はうちの手伝いがあるから」

 

「うちって、今朝言ってたパン屋の事だよな?」

 

「うん。お客さんも多いし、結構忙しいからさ。少しでも助けになりたいって思って、ずっと手伝いは続けているんだよ」

 

しっかりしてるんだな。それに優しいし、かと思えば年相応の無邪気さを見せることもある。何となく、目の前の山吹沙綾と言う少女の事を掴んできたのかもしれない。

 

「そっかぁ……じゃあ仕方ないね。なーくんと行くよ」

 

「俺かよ。言っておくけど、俺は部活には入らないからな」

 

「えー!?どうしてなの!?」

 

「放課後はダメなんだ。俺にだって用事がある」

 

香澄には悪いけど、部活には一人で入ってもらう事になるな。でも、香澄の社交性ならやっていける。幼馴染がそう言うんだし、大丈夫だろ。

 

「見学ぐらいならつきあってやれるけど……香澄としては、何かやりたいことってないのか?」

 

「私がやりたい事か……。う~ん……」

 

腕を組み、香澄は真剣に考えだした。こっちの声が聞こえなくなるくらい、何かをぶつぶつとつぶやきながら。

 

「キラキラドキドキできるような、何か新しいことを始めてみたいんだよね……。あの時みたいな気持ちになれる何か……う~ん……?」

 

「……ねぇ翔。あの時って、さっき自己紹介で言ってた話?」

 

「あぁ。俺も、その時のことは覚えてるんだ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

香澄の邪魔をしては悪いと思ったのか、沙綾は俺に耳打ちしてくる。俺は懐かしく思いながら、その時の事を話し出す。

 

「まぁ、話せば何てことないんだけどな。小さい時に、香澄と星空を見たってだけ」

 

「それが、香澄の言ってる『星の鼓動』?」

 

「……あぁ」

 

たったこれだけのこと。でも、その記憶は今でも胸に残り続けてる。その星空から何かがあふれ、冷めない熱となって満たす感覚も。

 

「忘れられないんだよ。それだけの事でも、俺たちにとっては特別な事だった。沙綾にも多分あるだろ?何気ないことでも、自分にとっては特別な出来事に感じる事ってさ」

 

「……それは」

 

「となりの席の子に消しゴムを借りる。それだけの事でも、当事者にとっては思い出になったりするだろ?その隣の子が気になってた異性のクラスメイトなら、話ができただけでも嬉しかったりとかさ」

 

周りが何と言おうとも、その人にしかわからない感情がある。香澄は、その感情の答えを求めている。どこに行けば、見つけられるのか。また感じられるのか。

 

簡単な事じゃない。それでも香澄は、今こうして探し続けている。俺だって、その答えを知ることができたらと、そう願っている。

 

その思いが、沙綾に少しは届いてくれただろうか。隣にいる沙綾は、ふわりとした表情のまま。何を考えているかはわからないけど……何か感じてくれると嬉しいな。

 

 

だが……沙綾の表情に、一瞬影ができたのを俺は見逃さなかった。

 

 

「……ふ~ん、翔ってそう言うシチュエーションが好きなんだ。翔って女の子みたい」

 

「なっ……!?ちょ、沙綾まで香澄みたいな事言うなよ!?」

 

「フフッ。翔って可愛いね。そんなに慌てちゃってさ」

 

「さ、沙綾……」

 

おい、いきなりからかわれたぞ。沙綾って、こういう一面もあるんだな……。

 

「……あ~ダメだ~!全然わかんないよ~!」

 

「いきなり大声出すなよ、香澄……」

 

「それで、答えは出たの?」

 

「ううん。考えたら考えるほどモヤモヤしてきて、グワーッてなって、よくわかんなくなっちゃって……」

 

だから擬音語ばっか使うなって。

 

「アハハ……私も一緒に考えてあげたいけど、そろそろ時間みたい。もう帰らないと」

 

「ん、そっか。店の手伝い、大変だな」

 

「そうかもしれないけど、やりがいはあるからね。苦労だけじゃないんだよ」

 

「へぇ~。すごいな、沙綾は」

 

「そ、そうかな?ありがとね、翔」

 

やりがいなんて言葉を口にできるんだから、大したものだ。照れ臭そうにしていたが、そこは立派だと思うな。

 

「じゃあ……また明日ね」

 

「おう。またな」

 

「さーや、またねー!」

 

俺たちに見送られ、沙綾は荷物を持って教室を出ていく。だが、沙綾は扉のすぐ外で立ち止まり、こっちを振り返る。

 

何か忘れものか?そう思っていた瞬間、静かに口を開いて……。

 

「……今朝はありがとう。まだお礼、言ってなかったからさ。それじゃあね、翔」

 

頬をかすかに染めながら、沙綾は笑顔で帰っていった。

 

 

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