BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!予告通り、あまり間を空けずに投稿できました!

お気に入り登録もありがとうございます!110件超えてるなんて……夢みたい。

最近バンドリの曲を聞いていると、早く進めたいな〜って気持ちが溢れて仕方ないので、恐らくこのモチベーションは続く……はず。

では、どうぞ!


phrase30 隔たり

「沙綾ちゃん、こっちの方のアクセサリーどうかな?」

 

「おっ、いいかも。私が欲しいくらいだったりして」

 

「ねぇねぇ、有咲!これなんかどうかな?」

 

「お前は星型のもんにしか目がいかねーのかよ」

 

放課後。俺は香澄たちと一緒に、美羽のお見舞いに行くことになっていた。最初は有咲も渋っていたけどな。

 

その道中、昼休みの時に出た香澄の提案で、美羽に持っていくプレゼントを買う事に。何を買うかは決まっていなかったが、とりあえず沙綾の行きつけの店に行き、そこで決める事にした。

 

りみは沙綾と、香澄は有咲とペアで買うものを探しに行き、俺は残ったたえと一緒に店の中を回っている。そんなたえが見つけるものと言ったら……。

 

「はい、これ」

 

「何だよ、こいつ」

 

「可愛いでしょ、ウサギの置物」

 

「木彫りの熊貰うレベルだぞ」

 

「ダメ?……じゃあ、パンダの置物にする」

 

「まず置物から離れようか」

 

たえはウサギが好きだからな。聞いた話だと、何匹もウサギを飼っているらしい。実際に見たことはないんだけど。

 

けど、その着地点がパンダってどうだ。まさかこいつ、色だけで決めてないだろうな。

 

「だったらシロクマの置物は……」

 

「話を聞いていたのか」

 

やっぱり色だけで決めてるだろ。てか、置物は貰ったところで置いておく場所に困る。コンパクトなものだとしても、やはりストラップだとか、手軽に身につけられるような物の方が好まれるんだと思う。

 

と、内心語っている俺だが、実はあまり余裕がない。と言うのも……。

 

「…………」

 

「どうしたの?もしかしておなか痛い?」

 

「いや違う。てか、どこから腹の話が出たんだ」

 

「変な顔してたから」

 

それを真顔で言うな。どこでどう結び付けたんだよ。

 

「別に、何って事もないんだけど……。俺、こういう店って初めてだから、緊張してな」

 

「ここってそんなに大人な店だったの?」

 

「誤解を招くような発言は止めてくれ」

 

ここは、女の子のアクセサリーや小物などを取り扱っている店。男が入るような店ではない。もちろん、他の客や店員も見渡す限り女性だ。

 

何か、恥ずかしくてソワソワする。女性しかいない店内に、男が1人。しかも隣には(見た目だけは)美人の女子高生。色々と好奇の目を向けられている事だろう。だったら学校もそうだが、また話が違う。

 

そんなわけで、最初は外で待っていようとしたんだが……せっかくだからと沙綾の手で強引に店の中へ。女の子の好みもわからないし、戦力にはならないと思うんだけどな……。

 

「大丈夫だよ。私もここに来るのは初めてだから」

 

「いや、たえは女の子だろ。男の子がこんな店とか、入ることなんてないし……」

 

可愛い装飾の施された店内で、どうしても男の俺は存在が浮いてしまう。変な注目を浴びるのだけは、ちょっと恥ずかしくて嫌だった。

 

「う~ん……だったら、女装してみる?」

 

「何でだよ!余計に目立つから!」

 

「目立つのが嫌なら、私の後ろに隠れる?」

 

「……逆に目立つだろ」

 

「それじゃあ……手、つなご?」

 

だからどうして着地点がよくわからないところに繋がっていくんだよ。手なんかつないだところで、どうなるって言うんだ。

 

「……理由は?」

 

「こうしていれば、きっと翔の事も……私の彼氏に見えるんじゃないかなって」

 

「いや、彼氏に見えたところで、どうなるって言うんだよ」

 

「翔が自分から入ったんじゃなくて、彼女の買い物に付き合ってる男の子って感じになれる」

 

なったところで、今度は違う注目浴びそうなんですが。そうやって力説してるたえは、何故か表情が強張っていたが。

 

「だから、どうかな?手、つなぐ?」

 

「……別に、つなぐ必要ないと思うのは俺だけか?」

 

「うん」

 

即答かよ。

 

「……わかったよ。繋いだらいいんだろ?」

 

「……!う、うん!じゃあ、次はあっちの方に行こっ!」

 

「うぇっ!?お、おい、たえ!?」

 

たえと手をつなぎ……と言うよりは、手を引かれて別の売り場に場所を移す。焦りながらたえの横顔を見ると、さっきまで強張っていた表情が嘘のようにほぐれ、頬をほんのり染めながら笑顔を浮かべていた。

 

で、こっちはこっちとして……あいつらはどんな感じだ……?

 

「う~ん、なかなか決まらないね~?」

 

「どうすんの?あんまり時間かけても、面会時間だって限られてんだろ?」

 

「市ヶ谷さん、行きたがってなかった割には、色々考えているんだね?」

 

「……うぅっ、山吹さん!!///」

 

どうやら、向こうも決まっていないみたいだな。けど、いつまでも長居はできない。時間もあるし、俺のメンタルが耐えられるかの問題もある。

 

「てか、たえ。この手って、いつまで繋いでるつもりだ?」

 

「死が二人を分かつまで」

 

「結婚でもするのかよ!?とりあえず、この店出るまでだからな」

 

「……ごめん。聞こえなかった」

 

「絶対聞こえてただろ」

 

「翔って手汗すごいんだね」

 

話を逸らすな。んで、手汗は緊張と、一応女の子の手を握っているからな。もう心臓が破裂しそう。

 

「翔君、おたえちゃん。何かいいものは見つか……って、な、何で手繋いでるの……?」

 

「翔が恥ずかしがってたから」

 

「微妙に見当違いなことを言うな」

 

俺たちの様子を見に来たのか、りみが声をかける。俺がたえと手をつないでいるのを見て、少し泣きそうになっていたけど。

 

変に誤解されても困るので、俺は簡潔に、どうしてこうなったのかを説明する事にした。

 

「そ、そうだったんだ……。お、おたえちゃん、そう言う事なら、手を離してもいいんじゃないかな?」

 

「この手は離さない」

 

「いや、離してくれよ」

 

「あ、アハハ。……それならよかった、かな」

 

「うん?りみ、何か言ったか?」

 

「うぇっ!?う、ううん!な、何も言ってないよ!大丈夫!///」

 

何の大丈夫かはよくわからなかったが、とりあえずアタフタしているりみが可愛かったとだけ言っておく。

 

「じゃあ、一旦みんなと合流するか。俺も闇雲に探し回るよりは、向こうの意見とか聞きたいし」

 

「私の意見は?」

 

「謎の置物チョイスしかしないセンスのお前を頼ると思うか」

 

「ブーブー」

 

「豚か、お前は」

 

「ウサギの鳴き声だよ?」

 

ややこしい。ここに来て、またウサギを推すな。と、色々あったが、俺たちはりみに連れられて香澄たちと合流。手をつないでいた件については、当然のように触れられた。適当に説明して、すぐに話題転換したけど。

 

「それじゃあ、そっちでもいいのは見つからなかったんだね」

 

「ウサギの――」

 

「却下。で、そっちも特に何もなし、と」

 

「うん……。ねぇ、どうしよ~なーくん!みーちゃんの好きな物って何だっけ~!?」

 

同じ女子の香澄でも、美羽が好きそうな物を見つけるのに難儀してるんだ。兄とは言え、俺が美羽の好みを把握しているわけがないだろう。

 

「好きな物か……。つーか、こういう小物とか、そう言う女子の好きそうな物ってよくわからないんだよな……」

 

「妹の事だろ?そう言う話とかしないわけ?」

 

「しなくて悪かったな」

 

もし何の前触れもなく話したら、絶対ドン引きされる自信がある。

 

「あっ……でも、みーちゃんと言えば音楽だよね」

 

「ギター弾いてるって、昼休みの時も言ってたよね」

 

「あぁ。それに、あいつは音楽に愛されてるからな。音楽に触れている間は、容態も安定して落ち着くんだよ」

 

「へぇ……。あっ!だったら、さっきいい感じの物見つけたんだけど」

 

すると、沙綾が何か思いついたようで、小走りである売り場に向かう。そこは、ヘアアクセのコーナー。そこから商品を一つ選び出すと、俺たちに持ってきた。

 

「ほら、これ。音符の形してて、結構かわいくない?」

 

黒と白のツートーンカラー。音符をモチーフに、そこから二色の翼が飛び出している。可愛くもあり、少しクールな印象を与えるアクセサリーだった。

 

確かに、美羽には似合いそうな気がする。買っていくものは、この音符のアクセサリーで決まりだろう。

 

「いいじゃん、さーや!それにしよう!」

 

「私もいいと思うな。きっと喜ぶよ」

 

「ありがと、香澄。牛込さん。じゃあ私、お会計済ませてくるね」

 

沙綾は鞄から財布を取り出し、レジに並んでいた。あっちは任せるとして、俺はいそいそと店を出る。これ以上は、もう周囲の視線が耐えられない……。

 

「あぁ、恥ずかしかった……」

 

「翔君、大丈夫?疲れてない?」

 

「心配してくれてありがとな、りみ。つーか、いつまで俺の手握ってるんだよ、たえ。そろそろ離してくれ」

 

「もうちょっと」

 

「駄々をこねるな」

 

強引にたえの手を引きはがして、俺たちは沙綾を待つ。たえはマジマジと、握っていた手を見つめていたけど。そんなに手汗がひどかっただろうか。

 

「みーちゃん、喜んでくれるよね!」

 

「あぁ。俺たちで選んだんだ。きっと喜ぶさ」

 

「えへへ~!なーくんが言うなら、絶対大丈夫だよね!」

 

そろそろ、患者たちに弾き語りでもしている時間だな。上手く行けば、美羽の演奏しているところも見られるかもしれない。

 

「あっ、そう言えば私、有咲ちゃんとこういう店に来たの初めてかも」

 

「有咲って、普段から引きこもってるからな」

 

「その言い方止めろ、翔。てか、どっかに寄り道とか、初めてなんだよな……。何か、女子高生みたいって言うか……」

 

「あれ?有咲、何だか嬉しそう!」

 

「はっ!?い、いやそんな事ねーし!別に、その、こういう放課後にみんなで寄り道して、ワイワイしてみたかったとか、そう言うんじゃねーから!」

 

見事な模範ツンデレだな。聞いてもないのにズバズバと自分から口を滑らせていくんだから。

 

「ま、そう言う事にしておくよ。有咲?」

 

「何かムカつく……。それに、何ニヤニヤしてんだよ!」

 

「有咲って、本当奥手だな~って思ってな」

 

「何を――」

 

「有咲の手って、奥の方にあるの?」

 

「って、いきなり会話に参加してくんな!」

 

そして炸裂する花園節である。奥手ってそう言う意味じゃねぇんだよ。

 

「……って待った」

 

「ん?どうかした?」

 

「お前、その手に持ってる奴、何だ」

 

見ると、さっきまでは持っていなかった紙袋。側面にはこの店のロゴがついている。もちろん、袋だけ持っていたわけではない。さっき初めて来たと言っていたはずだからな。

 

「……何買った」

 

「気になる?」

 

「えっ、おたえ何か買ったの!?」

 

「いつの間に買ってたんだ……?」

 

俺たちが4人で話している間に、こいつ店の中に戻っていたんだな。さっきから会話に混じろうとしてなかったが、そう言う事だったんだな。

 

「てか、何で沙綾より先に戻って来てるんだよ」

 

「沙綾、自分が欲しい物も買いに行くって言ってたから。それで先に買ってきた」

 

こいつと遭遇した時の話だな。たえが何か買うのを見て、沙綾もせっかくならと自分の分も商品を取りに行ったって事か。

 

って、何で俺が補足してんだよ。たえの説明は端折りすぎなんだよ。

 

「それでおたえちゃん。何買ってきたの……?」

 

「一目見た時から、私にはこれしかないって思って……」

 

「私のランダムスターみたい!」

 

「ランダムスターは売ってなかったけど……はい、これ!!」

 

たえが紙袋から取り出した物体を見て、香澄は目を輝かせる。……『香澄』は。

 

りみは明らかに苦笑しているし、有咲に関しては得体の知れないものを見る目を向けている。俺なんか、もう色々と言いたくて仕方なかったが……一言だけ、こう叫んだ。

 

「……お前の頭の中は、ウサギしかねぇのかよ!?」

 

それはまさに、さっきからしつかく主張してきた、ウサギの置物だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「香澄ちゃん。美羽ちゃんって、普段はどんな子なの?」

 

「う~んとね。いつもキラキラしてて、楽しそうで。たまに心配になってキューってしちゃうけど、私の事を応援してくれて!ドキドキが伝わってくるような、そんな子!」

 

「いや、わっかんねぇ。香澄語じゃ無理」

 

「私はわかった」

 

「どんな理解力だよ!?」

 

沙綾が会計を済ませ、俺たちは病院へと向かい始めた。

 

戻ってきた沙綾は、美羽用のヘアアクセの他にも自分用の……シュシュだったか。それを何個か買っていた。沙綾はちょっと恥ずかしそうにしていたが、女の子らしくていいと思うけどな。

 

それにしても、賑やかだ。香澄たちはもちろんだが、たえもあいつらの中に馴染んできている。こいつらを見て、美羽は一体どんな反応を示すんだろうな……。楽しみだ。

 

「何か保護者みたいな顔してたよ~?」

 

「ん、沙綾か」

 

気が付くと、俺の隣には沙綾がいた。その前を、香澄たち4人が歩く。病院まではまだ少し距離があり、しばらくはこんな感じの時間が続くだろう。

 

「保護者って……俺を何だと思ってるんだよ」

 

「香澄たちのお父さん?フフッ」

 

「あのなぁ……」

 

「アハハ、冗談だよ」

 

こうしてからかってくる沙綾を見るのも、何だか久しぶりの事みたいに感じる。放課後は、沙綾は店の手伝いで忙しいからな。

 

「今日は付き合ってくれてありがとな。店の手伝いはないって言ってたけど、そんな貴重な休みを潰してしまったから……」

 

「いいよ、私は大丈夫。たまにはみんなと出歩くのもいいし、私も楽しいよ?」

 

「新しいシュシュってのも買えたからか?」

 

「アハハ、そうかも」

 

こうして沙綾と放課後に一緒になることもほとんどないからな。いつもは香澄に、有咲に、りみの3人で……。最近は、そこにたえが一緒になって。それまでは、バイトで会う事が多かったけど。

 

「家の人には、何か連絡したか?」

 

「一応ね。遅くなるかもしれない、とは言ったんだけど……そしたら、何だか嬉しそうにしちゃって」

 

「……嬉しそう?」

 

遅くなるのに、喜ぶってどういうことだ?沙綾も年頃の女の子だし、遅くまで外出させるのを喜ぶ親なんていないと思うんだけどな……?

 

どうも引っかかったが、沙綾も特に気にした様子もなく話すから、別に深い意味はないんだろう。毎日手伝いしてるし、たまの休みくらいは遅くまで羽を伸ばしてほしいとでも思っているのかもしれないしな。

 

「早く美羽ちゃんに会ってみたいな。翔の妹がどんな子なのか、本当気になってるんだ」

 

「楽しい奴だよ。一緒にいると、こっちまで笑顔になるくらいだ。それくらい、美羽から笑顔が消える事ってないからな」

 

「そうなんだ。ますます会うのが楽しみになったかも」

 

いつも楽しそうで、元気で。だから、あいつから笑顔を奪う病気が憎い。

 

これ以上、あいつから笑顔を消したくはない。発作が起きて、病気に苛まれ、笑顔が消える瞬間を……増やしたくはないんだ。

 

「ところで、翔も何か楽器とかしてるの?ほら、美羽ちゃんはギターやってるって言ってたし、翔もギターとか弾いてたり?」

 

「俺は……ギターはやってないよ。弦も多いし、難しくてさ」

 

「へぇ。じゃあ翔は、楽器は全くやってないの?」

 

「いや、やってるよ。沙綾には話してなかったけど……俺、実はドラムやってるんだ」

 

「ドラム……!?」

 

と、沙綾は並々ならない反応を示す。俺がドラムをしていると知った途端、さっきまでの落ち着いた態度が一変していた。冷静さもどこにも見られず、ただ驚くばかり。

 

いや、ただ驚いているだけではない。ふと落とした視線は、どこか物悲しげに。だが、その口元はわずかに緩み、どこか嬉しさを募らせているようにも見える。

 

 

『ドラム』と言う言葉の裏に、一体何があるって言うんだ……?

 

 

「そ、そうなんだ。ドラム、始めてから長いの?」

 

「我流で中学の時の始めたんだ。だから、実力はよくわからないな。前にりみたちに見せた時は、絶賛されてたんだけど」

 

「……そう、なんだ」

 

どことなく、含みのある言い方だった。沙綾とは打ち解けていると思うが、まだ溝のある部分も多い。他の4人とは、少し踏み込めない一線がある。

 

音楽の事を話す時、沙綾は決まって、少し暗い表情を見せる。その一線が、沙綾にとって何か深いものなのかもしれない。

 

「お~い、さーや!なーくん!遅いよ、早く~!」

 

と、考え事をしている俺の耳に、香澄の声が届く。いつの間にか、あいつらとかなり距離が開いてしまったようだ。ちらりと横を見ると、苦笑していた沙綾がそこにはいた。

 

「よし。じゃあみんなで競争しよう」

 

「何言いだしてんだ。おい、香澄もなんか言ってやれよ」

 

「いいじゃん、おたえ!やろうよ、競争!」

 

「便乗すんな!」

 

「遅かった人には罰ゲームね」

 

「えぇっ!?ほ、本当にやるの!?」

 

おい、何か始めようとしているんですが。病院までもう少しのところまで来たが、それでもここから競争は疲れるぞ。

 

絶対俺たちも巻き込むつもりだろうし、俺はそんなの嫌に決まっている。ここは一つ、ガツンと言ってあいつらを止めてやらないと……。

 

「こら、香澄!この辺り車も多いから、走ったら危ないよ~!」

 

「うっ、確かにさーやの言う通りかも……」

 

と、先に沙綾が香澄を止める。おかげで俺の出る幕はなくなったとさ。

 

「競争はなし?」

 

「たりめーだ。こっちの事も考えろ」

 

「よ、よかった……」

 

りみも一安心しているな。前に体育の時間に、持久走でへとへとになっていたくらいだ。お見舞いに行く前に、りみの元気がなくなるところだった。

 

それにこの反応だと、有咲も運動苦手っぽいか。香澄やたえは、逆に運動が得意なんだけどな。むしろセーブしてほしいくらいだ。

 

沙綾は運動ってできたっけ?そんな事を考えていた中で、ふと思ったことが。

 

「……ところで、沙綾」

 

「どうしたの?まさか、翔まで走りたいって言いだすんじゃ……」

 

「沙綾の方こそ、俺以上に保護者面してたな~って思って」

 

「あ……っ」

 

さっきの言葉のお返しとばかりに、おれは沙綾を冷やかす。向こうもしてやられているとわかり、少し気分を損ねる。

 

「むぅ~……前もこうしてからかわれた気がするな~……」

 

「その時に、いつか仕返しするって言ってたのは、どこの誰でしたっけ?」

 

「~~~~っ!!」

 

プリプリと怒っている姿も可愛いな。つい調子に乗ってしまったが、こういう面は案外子供っぽくて、まだまだ高校生らしいって思う。そんなこと考えてる俺だって高校生なんだけどさ。

 

「悪かったって。ほら、機嫌直してくれよ」

 

「知~らない!翔のバ~カ!」

 

何だそれ。余計に可愛くなったんだが。本人は自覚なくないだろうけど、ついほほえましくて笑ってしまう。

 

「…………」

 

こうしていると、溝なんて何もなさそうなんだけどな……。

 







美羽との出会い。そして訪れる、美羽との交流の時。



言葉を交わす香澄たち。翔もまた、美羽たちとの時間を楽しんでいた。



だが……現実は、無常にも翔を追い詰める。



そして翔は、自分にできる事を見つめ直す――。



次回「伝えたい言葉」
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