BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
今回から行きますよ、文化祭!ポピパ結成の日も近づいてる!
文化祭の話は早く書きたかったし、更新頻度も上がる!はず!
という訳で……どうぞ!
文化祭の季節がやってきた。
1年に1度、学校中が華やかな色を見せる時だ。生徒たちも学業を忘れ、自分たちのクラスの出し物を成功させるために大盛り上がり。ま、それだけじゃないけどな。
他のクラスを見て回ったり、友達とワイワイはしゃいだり。文化祭でしか味わえない興奮は、いくらでもある。
年に1回と言う特別感も、文化祭を楽しみにしてしまう1つの理由なのかもしれない。
さて、そんな文化祭だが、何もクラスで好き勝手に決めていいわけじゃない。文化祭を進めるにあたって、各クラスから代表で文化祭実行委員を決めなくてはいけない。
実行委員は3名。内2名は副委員となる。各クラスの実行委員は、クラスをまとめ上げるのはもちろんの事、逐一行われる文化祭の打ち合わせに参加しなくてはいけない。
正直、リーダーシップでもない限り、引き受けるなんて面倒な役職だ。そんあ実行委員だが、俺たちのクラスから選ばれたのは……。
「……はぁ!?香澄が文化祭の実行委員!?おいおい、大丈夫か!?」
「えぇっ、何で!?大丈夫だよ!副委員はなーくんとさーやだし!」
「何だ、山吹さんが一緒なのか。なら、安心だな」
「私とさーやで反応違う!?」
まさかの香澄だった。と言うか、真っ先に香澄が立候補した、と言った方が正しいか。
当然(と言うと香澄に失礼かもしれないが)他のクラスメイトは反対。いい加減な言動も目立つし、不安要素はあったからな。
ま、結局は香澄の猛アピールで、言いくるめる事に成功したけどな。さすが香澄だ。
で、副委員だが……沙綾と、まさかの俺が選ばれた。どうせならと実行委員の推薦で決める事になったのがアウト。まず俺は一瞬で採用されたし、沙綾はどちらかと言うと、周囲の支持が強かった。
で、俺と沙綾は香澄と一緒に実行委員を務めることになり……その旨を、別のクラスの有咲に説明していると言うわけだ。場所はまぁ……いつもの中庭だ。
「有咲ちゃんも、クラスのみんなと同じ反応してる……」
「そりゃそうだろ。だって香澄だろ?とんでもないことになりそうで怖い」
「え~!?そこまで言わなくても~……」
いや、悪いが有咲の気持ちは十分わかるぞ、香澄。てか、そいつに振り回されるこっちの身にもなってくれ。
「それで、A組は何やんの?」
「うちのクラスは喫茶店だよ。うちのお店のパンを出すことになったんだ」
「へぇ、いいじゃんそれ」
「と言っても、パンを推してくれたのは牛込さんだけど」
あの時のりみの熱の入りようはすごかったな……。学者か何かの演説みたいになってたからな。クラスのみんなも、若干引いてたような気がしなくもない。
「沙綾ちゃんちのパン、おいしいから~!」
「俺も。何回か食べたことあるけど、どれもおいしいんだよな。また時間あれば、その時は買いに行くよ」
「アハハ~。そこまで褒められると、何だか照れちゃうな~?///」
やっぱり嬉しいのか、得意げな様子だ。ま、おいしいのは確かだし、俺も最近やまぶきベーカリーのパンは全然食べてないからな。この前の雨の日も、時間なくてパンもらいそびれたし。
「ね、みんな。ちょっといい?」
「どうしたの、おたえちゃん?」
「みんなに聞いて欲しい曲があるんだ」
会話に混じってこなかったたえが、いきなり曲を聞いて欲しいとせがんできた。手にはいつもの青いギター。それ以外には何も見当たらない。
「曲?たえ、ここで弾くのか?」
「そうだよ?えっと……」
何回か音を鳴らした後、たえは演奏を始める。と言っても、ワンフレーズだけの短いものだったが。
けど、なかなか聞きごたえがある。既存の曲のフレーズ……と言うわけでもなさそうだ。聞き覚えないし、オリジナルか?
「すごいすごい!何の曲?」
「朝、お風呂で思いついたの」
「え、たえが作ったって事か?」
「そうだよ。私、作曲のセンスあるかも」
自分で言うなよ。だが、たえも曲を作れるとなると……強者ぞろいだな。りみも曲作ったことがあるんだしな。
「わぁ~……!素敵な曲だね、おたえちゃん!」
「花園さんも曲作れんのかよ……。すごいな」
「有咲は何かできないのか?」
「いや、できねぇよ。曲なんて、まず何をどうすればいいのかわかんねぇし」
だよな。俺も曲は作ることできないし、どんな風に組み立てていけばいいのかもわからないからな。素直に尊敬する。
「簡単だよ。自分が弾きたいメロディーを、音に乗せて奏でるの。フフン」
「フフンじゃねぇよ。調子に乗るな」
「あ、でも曲もいいけど、今は文化祭のライブに向けて練習だよね?」
「曲の話はたえから始めたんだろうが」
そう。文化祭の出し物の事や、実行委員の事で盛り上がっているかもしれないが、俺たちはそれだけじゃない。毎年有志のバンドを募って行われる、ステージライブがあるからだ。
当然、香澄は出場する。前にも言ってたしな。そのために練習しないといけないが、そこに実行委員の仕事も上乗せされてくる。香澄はともかく、俺はかなりハードな未来しか見えない……。
「……あっ、そうだ!ねぇねぇ、なーくん!」
「……何か嫌な予感しかしない」
「そんな事ないよ~!きっとキラキラするよ~!」
本当かよ。まず香澄語が出た時点で怪しさしかないが、まぁそんなことを言っても仕方ない。どうせ振り回されるのがオチなんだ。だったら腹をくくって話を聞いてやる。
「……わかったよ。で、話って何だ?」
「さっきおたえが弾いてた曲なんだけど、あの曲を文化祭で演奏しようよ!」
「「「「「えっ!?」」」」」
ほら見ろ、ロクなもんじゃない。簡単にやりたいと言うが、こいつはそれがどういうことなのかわかっているのか?
「え、えっと、香澄ちゃん……」
「それはさすがに無理あるだろ!まだワンフレーズしかなかったぞ!?歌詞は!?残りの曲は!?それを文化祭までに仕上げて、練習して、間に合わせましょうって言ってんだぞ!?」
「右に同じく」
たえは便乗するな。が、俺も有咲が大方言いたい事を言ってくれたから黙っておく。さすがはツッコミのスペシャリスト。
が、香澄はキョトンとした顔をして、
「うん、わかってるよ?だから、有咲が言ってくれたみたいに、曲を完成させて、練習すればいいんだよね?」
「いや、だからぁ……。簡単に言うけど、時間とか大丈夫なのかって言ってんの。それに、香澄は実行委員なんだろ?体持つのかよ」
「持つ!多分!!」
多分を自信満々に言い切られても困る。
「それに、私1人じゃ無理かもしれないけど……有咲にりみりん、おたえになーくんもいてくれるから!」
「うん。私も手伝う」
「いや、他力本願かよ……。ま、仕方ないか」
「私も、この曲をみんなで、文化祭で演奏したいな!」
「ったく、香澄は本当、恥ずかしいセリフを簡単に言いやがって……。わかったよ、私もやってやるよ」
「お、珍しく素直」
「その一言が余計だ!」
やっぱりいつもの有咲だった。
「じゃあ、まずは曲を作っていかないといけないな。そうじゃないと、練習をするにもできないし」
「私、キラキラでドキドキするような曲にしたい!」
「ちょっと待った!まず始まって第一声がそれってどうだよ!?先行きが思いやられるぞ!?」
「そうは言っても~。曲作りなんてどうすればいいのかわかんないし~……。有咲ぁ~!」
「ちょ、困った時に抱き着いてくんな!」
手掛かりはたえの作ったワンフレーズのみ。そこから、どのように曲を展開していくか。そのメロディーにどんな歌詞を乗せるか。そもそも、曲のコンセプトをどうするか。何をするにも、とっかかりがないからな……。
「だったら、作詞とかどうかな、香澄ちゃん?作曲なら、私とおたえちゃんがいるから」
「作詞!いいかも!!」
「いや、それは止めた方がいいって牛込さん!絶対香澄語になる!」
なりそうだな、本当。ま、そいつを後で俺たちが修正すればいいだけだし、やるだけやらせても問題はなさそうに見えるけど。
「バンド名も考えないと。ステージに出る時、私たちの事をみんなに紹介しないと」
「そっか~。おたえの言う通りかも」
「やる事いっぱいだな……。歌に名前に、練習まであるのかよ……」
何にせよ、これで次の目標は決まった。文化祭のライブを成功させるために、バンド活動に力を入れていく。もちろん、クラスの出し物もな。
「ん?てか、有咲にだって、クラスの出し物あるだろ?そっちはどうするんだ?」
「あぁ、別に?そう言うの面倒くせーし。やりたい奴に任せておけばいいんだって」
「でも、バンドの事は真剣な有咲って……もしかして、バンド大好きなの?」
「ち、ちげーよ!勝手に決めつけんな!///」
たえ、ナイス。んで、有咲は必ずと言っていいほどツンデレが入るな。
「……ん?」
そう言えば、さっきから沙綾が会話に一切参加してこない。黙り込んで、何かを考えているみたいだった。
「沙綾?どうかしたのか?」
「あ、ううん。えーと、みんな頑張ってるんだな~って思って」
「あぁ。色々あると思うけど……応援してくれよ」
「わかった。文化祭ライブ、楽しみにしてるね」
何事もなかったかのように、沙綾は明るく振る舞う。そのまま香澄たちの会話に戻っていったが、やはり違和感はあった。
この前の雨の日の沙綾が、どうしても頭から離れなかった。
***
「うーん……」
各クラスが文化祭に向けて動き始めた。休み時間や放課後になると、教室や廊下が文化祭一色に染まりだす。
物を運んだり、打ち合わせをしていたり。そんな景色が、そこらじゅうで見ることができた。
そんな中、有咲は1人、階段の踊り場にしゃがみ込んで、ノートを広げていた。教室は文化祭の準備で場所がない。廊下も人通りが多く、結局落ちつける場所と言えば、ここしかなかった。
「何かな……。これだって思うようなのが、全然出てこないんだよな……」
「こんなところで、何してんの?」
「うわぁっ!?」
集中しきっていた有咲は、声をかけられたことに驚いてノートを落とす。慌ててノートを拾い、誰だろうと顔を上げると……沙綾だった。
「そ、そんなにビックリしなくても……」
「い、いや、今のは驚くから!」
(え~……。私、そこまで驚かせたかな……?)
たまたま見かけて声をかけただけだったが、予想外の反応で沙綾の方も戸惑ってしまう。と、沙綾はノートに目を落とし、有咲の横に座って中身を見る。
「何してんの?歌詞考えてた?それとも、バンド名の方?」
「……バンド名の方。キラキラ何とか、とか、ドキドキ何とか、になったら困るし」
「あはは、香澄ならやりそう」
だからバンド名なのかと、沙綾は納得する。香澄は作詞、他の2人は作曲。何だかバンドみたいだ。
「…………」
バンド……か。
「ね、どんな名前考えたの?見せて見せて」
「ま、まぁ山吹さんならいっか……。まだ微妙なのしかないけど……」
「どれどれ?……なかなかいいじゃん!そんな事ないよ!」
「そ、そう?ふ~ん……」
ノートに書かれた候補を確認していくが、どれも可愛らしい物ばかり。微妙と言っているが、沙綾はそんな風には全然感じない。むしろよさそうな物も。
「ほら、これなんかいいんじゃない?ポッピンって、可愛いと思うけど」
「えっ、マジか……!へ、へえ~……」
嬉しそうにする有咲を見て、沙綾も可愛らしいと微笑みを向ける。それに気づいて慌ててごまかそうとするが、その仕草もまた、ぎこちなくて面白く感じていた。
「うん、ポップコーンみたいで楽しいかも」
「さらっと入ってくんな」
いつの間にか、たえが合流。しゃがみこんでいた2人とは対照的に、壁に背をもたれかけて有咲のノートを見ていた。
「てか、2人はここで何してんの?山吹さんって、副委員だろ?クラスに戻らなくてもいいのか?」
「あー、それはね……。あっ、帰ってきた」
階段を上ってくる、2人の人影。たえは手招きして、その人物を呼ぶ。
「香澄、お疲れ~」
「あー、みんなで何してるのー?」
「香澄ちゃんと買い出しに行ってきたよー」
買い物袋を手に抱え、香澄とりみが戻ってきた。それなりの大きさだが、有咲にはその中身を伺うことができない。
「姿が見えないと思ったら、外にいたのか。てか、買い出しって何買ってきたんだ?」
「エプロンと、後ワッペンとか缶バッチとか。はい」
たえが袋から缶バッチを取り出して有咲に渡す。イラストが星だったのは、どうせどっかの誰かさんが選んだからだろうと、有咲はそう結論付ける。
「これからうちに集まって、喫茶店で使うエプロンを作ろうと思ってね。ほら、放課後は部活ある人もいるし、できる人で作業した方がいいかなって」
なるべく負担はかけたくないと、沙綾が提案したものだった。それに協力してくれたのが、いつものメンバーたち。
「あ、よかったら、市ヶ谷さんも来ない?」
「な、何で私も……?クラス違うんですけど……」
「お昼のメンバーが集まるんだし、市ヶ谷さんもどうかなって。都合が悪いなら、無理しなくてもいいけど……」
「べ、別に都合は悪くない!ま、まぁこのままここにいても暇だし?バンド名も思いつかねーし……」
何だかんだで有咲にも協力してもらえることになり、手伝ってくれる人が増えた。これなら、今日中には終われるだろうと、沙綾は安心して立ち上がる。
「それじゃ、決まりだね。よろしく、市ヶ谷さん」
「お、おう」
沙綾の手につかまり、有咲も立ち上がる。と、ここで香澄がある事に気が付く。
「あれ?けど、なーくんは?教室にいるの?」
「え?見てないよ?一緒じゃなかったの?」
「ううん。私たち、てっきり学校にいるのかと思ってて……」
「あいつ、先に帰ったんじゃねぇの?」
「それはない。翔、手伝うって言ってたから。SPACEのバイトも、今日はないよ」
だったら、一体翔はどこに行ったのか。見当もつかなかったが、とりあえず一旦教室へ。香澄はその間に、翔に電話する事に。
別の作業を続けている人には、沙綾の方で事情を説明し、先に帰らせてもらう事にした。香澄とりみは既に準備できていたため、たえと有咲、沙綾は荷物をまとめ始める。
そうしている間に、香澄の電話も終わったようだった。気になる翔の居場所はと言うと……。
「どうだった?」
「さっきまで先生に呼ばれて、職員室にいたんだって。出し物の音響の事で、連絡があったみたい」
「そうなんだ。それで教室にいなかったんだね」
「うん。だから、すぐに戻ってくるって。校門で待っててくれって言ってた」
翔がいないと聞いて、沙綾たちは何かあったのかと心配したが……特に何もなかったようで安心する。
別に何も気にすることもなく、5人は校門へと向かって行った。
***
「……すみません。俺、友達に呼び出されてしまったので、そろそろ失礼させてもらいます」
「いや、大丈夫だよ。むしろ、こうして直接報告に来てくれるだけでも嬉しいよ」
「いえ、何も結果が出てないのに……申し訳ありません」
「そこまで自分を責めなくてもいいよ。君がこの学校にいる条件だと言うのはわかっているが、簡単にいかない話だと言うのは、私自身よくわかっているから」
香澄が翔に電話をかけた頃、翔はある部屋にいた。職員室?いや、違う。そこは、学園長の部屋だった。
条件として課せられた、俺の使命の進行具合の報告。これまでも隙を見つけては密会していたが、まさか香澄から電話がかかってくるとは。今日はさすがにタイミングが悪かったか。
「それはそうと……さっきの話は、君の方から彼女にしておいてくれないかな?それでも意見を変えない場合は、やむを得ずにこちらでどうにかすることになるが……」
「……はい。直接、その理由を確かめてみます」
だが、俺がそれ以上に気にしていたのは、学園長から聞かされていた、ある話の事だった。あの病室の少女の事も大切ではあるが、今はこっちの方を優先させないといけない。
この話が本当だとしたら……俺は、それを止めないといけない。もし実行に移されてしまっては、その時は……。
「……では、失礼します」
「あまり、気負いすぎないようにね」
俺は外の様子に気を配りながら、学園長の部屋を出る。気遣いの言葉を投げかけられたが……そんな甘いことは言ってられない。
この学校にいる事は、本来あってはならない事だ。その事実を捻じ曲げて、俺は今もこうしてここにいる。文化祭なんて浮かれてはいるが、俺の居場所ではないはずだ。女子校なんだから。
だが……それでも俺は、ここにいる。理不尽だと、自分勝手だと、道理じゃないと。そう言いたいのなら言わせておけばいい。
俺がこの学校にいる、本当の意味は……それだけ身勝手な、自己満足でしかない。
沙綾の家に集まり、文化祭の準備を進める一行。
その一方、香澄は文化祭のライブに向けて、歌詞を作ろうと奮闘する。
そして翔と沙綾は、ある事件をきっかけに、かつての事を思い出す。
次回「当たり前のようで」