BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!

最近1期の配信がYouTubeで始まって、見返しながら小説書いてます!

いや〜いいね。早く最後まで書きたいな〜と思いながら、話の構想考えてます!

それでは、行きましょうか!


phrase39 星の瞬きの中で

「市ヶ谷さんも牛込さんも、歌詞の案出してくれたんだって?」

 

「うん、2人の案をまとめて、歌詞にするんだ!」

 

「大丈夫か?責任重大だぞ?」

 

「でも、頑張らないと!」

 

俺が沙綾の家の風呂に入ってから少し経った。沙綾も風呂に入り終え、全員が体を温めた。2人の寝間着姿に、俺はここにいてもいいのかとドギマギしてしまいそうになったが。

 

そんな事を考えていた時もあったが、いよいよ歌詞作りを始める事に。沙綾の部屋のテーブルにノートを広げ、準備は万端だ。

 

香澄の話だと、一から全てを作るわけではないらしい。りみや有咲の意見をヒントにして、歌詞を考えていくと言う事だ。それなら、漠然としていなくていいのだが……。

 

「本当に大丈夫なんだろうな?中学の時のテスト勉強の事を思い出すんだが……」

 

「テスト勉強の時って?」

 

「香澄、すぐに寝落ちしてさ。俺が起こしても、全然起きなくて。で、次の日に泣いて勉強教えてくれって頼んでくるんだよ。それの繰り返し――」

 

「わー、もういいよ、なーくん!その話はほら……えと、昔の話!今の私は、前の私とは一味違う!」

 

違っていたら、俺も苦労しなくて済むんだけどな。

 

「ほ~う?だったら見せてもらおうか。香澄の本領発揮ってやつを」

 

「もっちろん!戸山香澄、歌詞作りに全力で頑張ります!」

 

「フフ。あ、牛込さんのくれたメモ見て。『香澄ちゃん、ファイト』って書いてある」

 

「りみりぃん、嬉しいよ~!よーし、頑張るぞー!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「うぅ、頭パンパン……」

 

1時間ほどが経った。沙綾と俺もアドバイスを出しながら、香澄は真剣に歌詞を考えていく。

 

候補を書き上げ、その度に唸り、違うと思ったら斜線を引いて、また候補を見つけていく。その繰り返しだった。

 

が、さすがに香澄も疲れたんだろう。テーブルに頭を突っ伏して、今にも魂が抜けていきそうになっている。それは、ノートの並々ならない書き込みが物語っている。

 

「やるじゃないか、香澄。ここまで集中できるとは思ってなかったぞ?」

 

「あー!なーくん、酷いよ!私だって、やる時はやる!」

 

「だったら、期末テストの時もそれくらい頑張ってもらいたいな?」

 

「うっ、べ、勉強はちょっと……なーくん、お願い?」

 

「可愛く言っても、やるのは香澄だからな」

 

「そんなぁ~!」

 

ま、その時が来たら勉強に付き合ってやるけど。でも、今年からは俺の出る幕はないだろう。

 

何たって、学年トップが近くにいるんだからな。あのツンデレに、たっぷり教えてもらってくれ。

 

「でも、少し疲れたよね?二人とも、ちょっと休憩にしよっか」

 

「だな。香澄も頑張ったし、少しくらいはいいだろ」

 

「なーくん、一言余計だよ~!」

 

ム~っと頬を膨らませる香澄だが、全然怒ってるように見えない。むしろほほえましく見える。

 

「ハハ、悪かったって。しばらく休もうか」

 

「やった~休憩だ~!あ、ねぇさーや!ベランダから星見てもいい?」

 

「え?いいけど、どうして?」

 

「今日は星がよく見えるし、星を見たら何か思い浮かぶかも!」

 

「アハハ、キラキラドキドキできるかもね」

 

香澄らしい気分転換だな。あの時も、満天の星空が香澄に何かを与えてくれたんだから。とか言ってる俺も、あの時の星空に影響を受けているんだけど。

 

「…………」

 

バンドか。香澄みたいに、俺もあの時の興奮を体験したいって気持ちはあるんだよな。クライブを通じて、少しはわかったような気はしたんだが……それでも、まだ足りない。

 

 

もっと感じていたい。できる事なら、やってみたい。

 

 

けど、今は香澄たちの文化祭ライブが控えているからな。そこで足を引っ張らないように、俺も頑張らないといけない。

 

「ありがと!さーやもなーくんも、一緒に見ようよ!」

 

「お呼びみたいだな、沙綾?」

 

「翔もね。行こっか」

 

空を指さして、香澄は手招きして俺たちを呼ぶ。子供っぽい仕草に苦笑しながら、俺った位は夜のベランダへと身を乗り出した。

 

風が少し冷たいが、見上げた先にある星空は、俺の中にある熱を呼び覚ました。幼い時の空には遠く及ばないが、それでも綺麗な景色が広がっている。いい星が見られた。

 

「……それで、どう?行けそう?」

 

「うん!名曲の予感♪」

 

「おいおい。まだ歌詞も全然できてないだろ。曲だって完成してないのに」

 

「それはわかってるよ?けど……みんながいるから」

 

俺と沙綾を交互に見つめ、それから香澄は空に視線を戻す。今はここにいなくても、自分の力になってくれる人たちの事を思いながら。

 

「最初は一人でワーってなってたけど、なーくんがいて、有咲とりみりんがいて、おたえも一緒で!」

 

「香澄……」

 

 

「それに……さーやも!」

 

 

「えっ、私も?」

 

「もちろん!私は、多分一人のままだったら、こうして歌詞を考える事も出来なかったと思うんだ。でも、みんなのおかげで、バンドやりたいって願い、叶えられそう!ギターも弾けるようになった!私、それが本当に嬉しいんだよ!」

 

始まりは、何となくだった。小さな星のシールを見つけて、ランダムスターに出会って。そこから、夢が生まれて。

 

その夢が、後少しで叶うところまで来ている。5人目のメンバーを見つけ、バンドを結成し、SPACEのステージに立つと言う夢が。

 

それも、一人じゃ決して成し遂げられないものだった。香澄だけなら、絶対にできなかった。

 

「全く……よくそんな恥ずかしいことを、香澄は平気で言えるよな?」

 

「う~ん、恥ずかしいのかな~?私、思ったことをそのまま口にしただけだよ?」

 

「だったら、その気持ちをそのまま歌詞にすればいいんだよ。難しく考えないでさ」

 

「難しく、考えないで……」

 

行き詰まっていた歌詞作りのヒントは、香澄自身のふとした言動によってもたらされた。考え込む必要はない。むしろ自然体だからこそ、見えてくるものもある。

 

香澄の中で、行くべき道が見えてくる。そんな香澄に対して、沙綾はさらに言葉を投げかける。

 

「香澄、ドキドキしてる?」

 

「うん……私、ドキドキしてるよ!みんなで歌って演奏したら、絶対キラキラになれる!全部楽しい!走り出したい!!」

 

「その気持ちを歌詞にして、まっすぐ歌に込めたら伝わると思うよ」

 

「そうかなっ?」

 

「大丈夫さ。香澄が言ったんだろ?みんながいてくれるって。後は、俺たちが整えてやる」

 

「さーや、なーくん……。そうだよね!私が歌いたい事、みんな詰め込んだらいいんだ!」

 

俺も沙綾に便乗して、つい香澄に助言してしまった。その言葉に励まされたのか、香澄の中でやる気の炎が燃え上がる。

 

だが、その炎はすぐに勢いを弱める。どうしたのか。そう思う俺の前で、何かを意気込んだように沙綾に向き合って……。

 

「……あのね、さーや。私、ずっと考えてたんだけど、さーやも一緒に文化祭で歌わない?」

 

「あ……」

 

ちらりと、俺の方を見る沙綾。前にした話が現実のものとなり、少し戸惑いの色が見えている。

 

けど、それは一瞬。沙綾は、すぐに香澄に向き合ってその気持ちを受け止める。

 

香澄は、ただ沙綾と一緒にライブがしたいだけだ。純粋に、そう願っていただけだ。だから、適当に流してしまうのは、香澄に失礼だと……沙綾はそう思ったのかもしれない。

 

沙綾はいつも店の手伝いで忙しく、バンドには参加できない。だからこそ、香澄は沙綾と歌いたい。文化祭の時だけでもいいから。ほんの少しでいいから。

 

「文化祭、一日だけでも。バンドに入るとかじゃなくてもいいから、さーやと一緒に歌いたい!」

 

「香澄……」

 

その願いに、沙綾は少し言葉を詰まらせた。香澄の頑張りも知っている。だから、協力したい気持ちも沙綾にはあるはずだ。

 

「……いいかもね。すっごく楽しそう」

 

あぁ、そうだ沙綾。バンドとしての形だけじゃなくても、誰かと一緒に音を合わせる事は、楽しいって思える事なんだ。俺も、香澄たちの助っ人としてライブを経験して、バンドの楽しさを実感したんだ。

 

だから沙綾……どんな事情を抱えているのかは、俺には正直よくわからない。その答えを聞き出す時が、今じゃないんだって事も察している。

 

 

……けど。そんな風に。

 

 

悲しい目で、香澄を見ないでやってくれよ……。

 

 

「うん、絶対!ライブって、すっごく楽しいんだ!」

 

「……そうだね。文化祭は、まだわからない。でも……」

 

そこで沙綾の言葉が止まり、会話が途切れる。続きをじっと待つ香澄と、続きを探す沙綾。そんな二人を見ていると、無性に悲しくなる。その何かが、見えない隔たりを作っているようで。

 

「……いつか。いつか、きっと。香澄と一緒に、歌うよ」

 

「うん!約束だよ、さーや!」

 

星空の下で、二人の少女は約束を交わす。その願いが果たされるのは、いつの話になるのか。まだ、知る由もない。

 

「そう言えば、バンド名は?結局どうなったの?」

 

「確かに。有咲が中心に考えてたんだよな?」

 

「フッフッフ。それは明日のお楽しみだよ!楽しみにしててね!」

 

何だよ、もったいぶるのかよ。自信があるみたいだけど、どんな名前なんだろうな?まぁ気にはなるけど、そこは明日までお預けって事で。

 

「…………」

 

さっきの約束が……いつか。本当に叶う日が来るのなら。

 

その時は、あんなに悲しそうな顔を、沙綾にさせるのは止めてやってほしい。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「じゃーん、見て見てさーや!私たちのバンドのチラシ、作ったんだ~!」

 

翌日の事。俺たちは休み時間を利用して、学校中を回っていた。自分たちのバンドを紹介するチラシを貼って、アピールしていくためだ。

 

枚数制限はあるが、基本はどこに貼っても問題ない。他にも参加するバンドのチラシも、廊下の壁などに何枚も見られた。

 

「へぇ、文化祭のためにこんなのも用意してたんだ」

 

「まぁな。でも、チラシに関しては、俺たちはほとんど手伝ってないよ。りみと有咲、それにたえが作ってくれたんだ」

 

チラシの最終チェックしかしてないからな。それ以外の事は、全て3人の実績だ。イラストからバンド名、構成までやってくれたし……本当に助かる。

 

「そうだったんだ。可愛くできてるじゃん」

 

「ど、どうも……」

 

「有咲、照れてる?」

 

「うっせーぞ、花園さん。別に照れてねぇし」

 

とか言いながら明後日の方向見るの止めろ。そんなところには何もないからな。

 

にしても、よくできている。色遣いやイラストも可愛いし、目につきやすい。後は貼る場所も考えていかないとな。

 

「アハハ、このイラストも可愛い。市ヶ谷さんが描いたの?」

 

「あー、それは……」

 

「それはりみりんの力作だよっ!」

 

「いきなり出てくんな!」

 

さっきまで違う場所にチラシ貼りに行ってたはずなんだが。いつの間に戻って来てたんだよ。

 

「そうなの?牛込さんのイラスト、すごくいいよ!」

 

「えへへ、ありがとう~」

 

沙綾も太鼓判だな。りみも褒められて、誇らしげにチラシを見つめていた。

 

「それで、バンド名は……『Poppin’Party(ポッピンパーティー)』?」

 

「それ、有咲が考えたんだってさ。だろ?」

 

「い、一応提案しただけだし。それに、山吹さんがその……いいって言ったから」

 

これでようやく、香澄たちのバンド名が決まった。ポッピンパーティー。女子高生らしい明るくリズミカルな名前で、香澄たちにはぴったりだ。

 

晴れて自分たちのバンドの名前を名乗れる……。そんな感慨に包まれていると、俺はチラシの中のあるものに目が留まる。

 

「……あれ?」

 

最終チェックの時には気が付かなかったが、よく見ると不思議な点がある。このチラシには、文化祭ライブには存在していない6人目のメンバーの名前が載っていたからだ。

 

「それと、さーや……メンバーのところ見て」

 

「メンバー?……えっ?こ、これって……私の名前……!?」

 

「昨日はあんな風に言われたけど……やっぱり私、さーやと一緒に文化祭ライブに出たいんだ。さーやも、私たちのメンバーだよ」

 

そこには、確かに沙綾の名前があった。曖昧にごまかされても、香澄の思いは強かった。チラシに刻まれた、その名前を見たらわかる。

 

喜んでいるのか。それとも、勝手にメンバーに加えられて、怒っているのか。ここからだと、沙綾の様子は伺うことができない。

 

俺は恐る恐る移動し、沙綾の表情が見える位置まで近づくと……。

 

「……っ!?」

 

驚愕で目を見開き、愕然とチラシを見つめている沙綾が、そこにはいた。喜びや怒りはない。信じられない、受け入れたくはないと言う、強い否定の感情。明らかな動揺と焦燥感だけが、今の沙綾からは感じ取れた。

 

「沙綾、大丈夫か?」

 

「…………」

 

「おい、沙綾?」

 

「……っ!え、ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃって」

 

ここまで周りが見えなくなるほど、沙綾にとっては衝撃的だったのか。冷や汗が頬を伝い、心なしか顔も青ざめているように見える。

 

「……沙綾、やっぱり何かあるんだろ」

 

「そ、そんな事ないよ。私は大丈夫」

 

「嘘つくな。俺、前に言ったはずだよな。もし何かあるなら、俺に相談してくれって。一人で悩むなって」

 

「……うん。でも、平気だから。気にしなくてもいいよ」

 

どうしても、沙綾は口を閉ざしてしまう。そうやって封じ込めてしまっては、貯まりこんだものが膨れ上がって、やがて空気のいっぱいになった風船のように……破裂するだけだぞ。

 

「よし、チラシ貼り頑張らなくっちゃ!行こう、りみりん!おたえ!」

 

「って、おい香澄!私を置いて行くんじゃねーよ!」

 

香澄は俺たちを放っておいて、別の場所にチラシを貼りに行ってしまう。りみたちも香澄の有智を追いかけてしまい、残ったのは俺と沙綾だけ。

 

「……それは、俺にも知られたくない事なのか?」

 

「だから、何もないよ」

 

「今なら、俺と沙綾の二人だけだ。他の人に聞かれる心配はしなくてもいい。それに俺は、ここでの事は絶対に口にしないって約束する」

 

「…………」

 

「今なら、俺が力になってやれる。言いたくないのはわかるが、このままだと、沙綾は強引に、何かに引きずられたままライブを迎えることになってしまうんだぞ。それでいいのか?」

 

「それはーー」

 

「沙綾」

 

と、緊迫した俺たちをよそに、沙綾に声をかける女子生徒が。香澄ではない。有咲にりみでも、たえでもない。

 

いや……そもそも俺は、こいつの事を知らない。初めて見る顔だ。クラスメイトの顔くらい、さすがに覚えているからな。だが、こいつはそのどれでもない。

 

「っ、な、ナツ……!」

 

「知り合い、なのか?」

 

「……うん。まぁね」

 

互いに顔見知りなのか。中学の時に同じクラスだったとか、そう言うつながりか……?

 

「何か……久しぶり。って、同じ学校なのに変だけど」

 

「……そうだね」

 

けど、どうも気まずい空気だな。前の同じクラスだっただけなら、喜んで懐かしそうに話し出すと思うんだけど。

 

この二人はその逆。顔を合わせにくそうにして、話し方もぎこちない。部外者の俺でも、過去に何かあったのだと確信できる。

 

「……そのチラシ、沙綾バンドやるの?」

 

「えっ?」

 

「よかった。やる気になって――」

 

「やらない」

 

彼女の言おうとした言葉を、沙綾は冷たく拒否する。こんなにも突き放した態度の沙綾は、初めて見た。

 

いつもの沙綾はもっと、明るくて優しいはずなのに。沙綾の抱えているものは、一体何なんだ……!?

 

「友達が勝手に書いちゃって……ごめん」

 

「あっ……お、おい沙綾!?」

 

そのまま彼女と距離を置くように、沙綾は足早に去っていく。残された彼女の事を、沙綾は見向きもしなかった。

 

「あ……えっと」

 

「行ってあげて?沙綾の友達なんでしょ?」

 

「……あぁ、悪い。また会った時は、少し話をさせてくれ」

 

「……うん、わかった。私、B組の海野夏希。A組の成川君でしょ?」

 

「そうだ。海野さん……だな。覚えておくよ」

 

俺は沙綾を追いかけるため、海野さんと別れて走り出す。去り際の悲しそうな顔が、やけに鮮明に脳裏に残る。

 

沙綾に隠されたもの。その手掛かりになるかもしれない、女子生徒。

 

文化祭に向けて少しずつ動きが見える中で、何か大きなものもまた、動き出そうとしていた。

 







沙綾に隠された何か。



そこには、想像よりも重く切ない過去があった。



友を。



バンドを。



全てを切り捨てて、選ばなくてはいけない道があった。



その最中、翔はある人物の元へ向かう。



同じように、何かを切り捨てようとする人の元へと。



そんな選択を、止めるために。



次回「時間の重さ」
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