BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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どうも、ティアです!まずはお礼から。

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まだ1年も経っていないのに、もうUAも20000超えようとしているし……こんなに多くの人に読んでもらえて、嬉しいです!

さて今回は……ついにあの話。1期のストーリーでは一つの山場と言っても過言ではありません!

では、長くなりましたが、どうぞ!


phrase43 決めつけないで

さっき楽器屋さんで聞いた話が、私の頭の中で繰り返される。

 

さーやが中学生の時、なっちゃんと一緒にバンドをやっていた事。でも、何かがきっかけでバンドを止めてしまった事。そのせいで、今苦しんでいる事。

 

どうして、さーやはバンドを止めてしまったのか。一度バンドをしていたなら、私が感じているキラキラドキドキを、さーやだって感じているはずなのに。

 

 

こんな気持ちになれるバンドを、自分から止めてしまう理由が……私にはわからない。

 

 

「……着いた」

 

楽器屋さんから走り続け、ようやく私はやまぶきベーカリーに来た。もう日が暮れ始め、本当なら今からでも練習を始めないといけないけど……。

 

話さないといけない。今一番大切なのは、さーやと話す時間だから。

 

「あれ、香澄!?何でこんなところにいるの!?練習は!?」

 

「あ……さーや」

 

私が店の中に入る前に、さーやが私を見つけて出てきてくれた。今頃練習してると思っていたはずだし、まさかいるなんて思わないよね。

 

「もしかして、何か文化祭の準備でトラブルでもあった?」

 

「ううん。そうじゃなくて……」

 

「あっ、もしかして練習中に小腹空いちゃったとか?売れ残りしかないけど、それでよかったら……」

 

「そう言う事でもないんだけど……」

 

いざ目の前にすると、話を切り出しにくい。言いたくない事だから、さーやだって自分から言わないし、隠しているんだ。

 

それなのに、全く事情を知らないはずの私から、いきなりバンドの事について聞かれたら……いい気はしないと思う。

 

だから、切り出せない。でも、このまま何も言い出せないままなのも、さーやにも迷惑かけちゃうし……。

 

「どうしたの?香澄、何か変だよ?」

 

「え、えっと……」

 

迷っている時間はない。なーくんにだって、背中を押してもらったんだ。ここで立ち止まっていたら、意味ないよね……!

 

「さ、さーやが……」

 

「えっ?」

 

「さーやがバンドやってた事、聞いちゃって……。それで、さーやと話がしたくなっちゃって……」

 

「……っ!?」

 

『バンド』と言う言葉に、さーやは明らかに動揺していたみたいだった。けど、すぐに事情を察し、表情が硬くなる。そこにはどことなく陰が見えた。

 

「……そっか。ナツと話したんだ」

 

「なっちゃん、心配してたよ?」

 

「……そう」

 

「さーや、何も言ってくれないって。一人で抱え込むって、今のままじゃ……嫌だなって」

 

「…………」

 

「ね、文化祭、やっぱり一緒に出ようよ!私、さーやがドラム叩いているところーー」

 

「ストップ」

 

と、言葉を続けようとする私を止める。チラリと後ろを見て、店の中を確認したさーやは……。

 

「部屋行こう。話……聞かれたくないから」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それで……聞いちゃったんだ。私がバンドやってた事」

 

「うん……」

 

ちょうど忙しくない時間帯だったみたいで、私はさーやの部屋に案内してもらえた。夕日が射し込む空間で、話は着々と進んで行く。

 

「さーや、楽しそうにバンドやってたって。でも、自分から止めちゃったって……」

 

「……そうだね」

 

「ねぇ、何でバンド止めちゃったの?私今、バンドやっててすっごく楽しい!なのに、止めちゃう理由がわからない……」

 

「…………」

 

「やっぱり私、さーやと一緒に文化祭ライブ出たいよ!この前一緒にライブやろうって、約束したよね!?」

 

「…………」

 

「ベランダで星を見ながら、いつかライブやりたいって……!さーやにドラム叩いてもらって、一緒に歌いたいんだよ!」

 

「…………っ」

 

「ねぇ、さーや!」

 

何も話そうとしないさーやに対して、私は可能な限り言葉を続ける。答えてくれないからって、こっちが諦めちゃいけないよね。

 

私は、さーやとバンドがやりたい。さーやに、ドラムを叩いて欲しい。さーやに、バンドを続けてほしい。

 

 

さーやに……笑っていてほしい。

 

 

「……無理だよ。翔がいるんじゃないの?」

 

「なーくんは、ドラムが見つかるまでの間だけ、代わりにドラムに入るって……。だから、さーやがいてくれたら、なーくんだって喜ぶよ!」

 

なーくんは、ドラムができる人がいないかどうか、ずっと気にかけていたんだ。私たちのバンドに、男の俺がいるのは邪魔でしかないだろうって。

 

SPACEのオーディションに出たいなら、そんな中途半端なバンドは認めてくれない。5人揃って、バンドとしての形を作っておきたかったみたい。私は、なーくんとバンドやりたかったけど……。

 

「……気持ちは嬉しいけど、私は無理。練習してないし、迷惑かけるだけだって」

 

「いいよ!私だって、さーやにたくさん迷惑かけた!文化祭の準備だって、ライブで忙しい私の代わりに、全部進めてくれて……。だから――」

 

 

「やだよ。私、もうバンドなんてやるつもりないから」

 

 

冷たく、そう言い切った。鬱陶しく聞こえる私の言葉を振り払うように、さーやはきっぱりと断った。

 

でも、ここで折れるつもりはない。まだ何も変わってないから。

 

「……どうして?」

 

「どうしてって……」

 

「教えてよ、さーや。私、さーやの事知りたい。だから今、こうしてさーやと話してるんだよ?」

 

畳みかけ、さーやの事情を探り出す。それが、さーやがバンドを止めた理由を解決して、もう一度バンドができるようになる事に繋がるかもしれないから。

 

「…………」

 

「さーや……」

 

しばらく、さーやは黙っていた。このまま時間が過ぎたらいいと思っていたのか、それとも言葉を見つけているのか。ためらいがあるのかもしれなかった。

 

私には、どれが本当の理由なのかはわからない。けど、何も言わないって事は、それだけさーやの抱えている物が、大きいんだって事はわかった。

 

一緒に抱えたい。一人で背負い込む事なんて何もないって、さーやに教えてあげたい。私だって、誰かに支えられてなかったら、今この場所にはいない。

 

 

有咲、りみりん、おたえ、なーくん。それに……さーやだって。

 

 

「……帰りが遅くなるの、嫌なんだ」

 

さーやが、ようやく話し出した。決心がついたのか、静かに語りだす。

 

「私がいないと、お母さん無理しちゃうから……」

 

「お母さん、体悪いんだよね?」

 

「その話も聞いてたんだ……。昔から、身体弱くてね。なのにお母さん、家の事は全部自分ひとりでしようとして……。私、お母さんが倒れるまで、その事に気づいてあげられなかった」

 

「それで……バンド止めちゃったのって……?」

 

「……これ以上、お母さんに迷惑はかけられない。だから、バンド止めたんだ」

 

「……っ!」

 

さーやがバンドを止めたのは、お母さんを助けようとしていたから。体の悪いお母さんの支えに、少しでもなるために。

 

 

そのためにさーやは、続けたかったはずのバンドを……犠牲に……。

 

 

「バンドの事ばかりで、私は自分の事しか見てなかった。見えてなかった。もう自分の都合だけで、親不孝な真似なんかできない。店も手伝って、家の事も……」

 

「それなら、お店が忙しい時は私も手伝う!みんなで協力すれば、さーやがバンドする時間だって――」

 

「ごめん。他の人探してよ。それまでは、翔がいてくれるんでしょ?」

 

頑なに、さーやはバンドを拒み続ける。先回りして捕まえようとしても、すぐに逃げられちゃう。どうしても、さーやの中で譲れない気持ちがある……。

 

でも、力になりたい。一人で我慢して、バンドやらないなんてもったいない。

 

「何でダメなの?」

 

「…………」

 

「バンドしている時のさーや、すっごく楽しそうだったって。なっちゃんがそう言ってくれたんだ」

 

「…………」

 

「どうして……っ?そんな風に、なっちゃんだって言ってくれてるのに……。バンド、嫌いになっちゃったの!?」

 

「……っ!」

 

そうじゃなかったら、バンド止めるなんて辛くて仕方ないはずだよ……!?私だって、バンド止める事になっちゃったら、悲しくて怖くて、止めたくない。嫌だよ!

 

私の中からバンドがなくなったら、ポッカリ穴が開いちゃいそうで……。バンドを始めたから出会えた人たちとの出会いが、なかったことになりそうで……怖い。

 

「楽しいのに、気持ちいいのに!キラキラドキドキするのに!!嫌いだから、バンドから逃げたんじゃないの!?さーやは――」

 

「そんなわけないじゃん!!」

 

「……!」

 

突然の大声。それがさーやのものだとは、正直思えないくらいの大きさで。いつもの優しいさーやからは、全く想像できなかった。

 

「香澄にはわかんないよ!私、みんなに迷惑かけてまでバンドはできない!好きで、逃げたくなんて本当はなかったのに……そうするしかなかったんだよ!?」

 

「さーや……」

 

「ナツたちも、香澄と同じこと言ってくれたんだよ!?私が大変なら力になるって!手伝うって!!私の事心配して、練習時間も減らそうって!!」

 

こんなさーや、見た事ない。大声で、言葉を並べて感情的になっているさーやは。

 

でもきっと、それだけ我慢していたんだ。堪えていた気持ちが溢れ出して、どうにも止められなくなって。そのせいで、大量の涙がさーやの頬を伝って落ちる。

 

 

 

だから……今のさーやの言葉は、聞かなくちゃいけない。こんなにも必死になってまで、伝えたい事なんだから。

 

 

 

「みんな、自分の事より私の事ばっか!それで楽しいの?私だけ楽しんでいいの?いいわけないじゃん!?」

 

「…………」

 

「純と紗南だって、あの時の事がきっかけで、ずっと家にいるようになって……!不安で仕方ないの!あんな気持ち、もう二度とさせたくないの!!」

 

「…………」

 

「香澄だって、SPACEでライブしたいんでしょ!?だったら、こんな私なんか放っておいて、もっと練習しないといけないでしょ!?私の事気にして、合わせて!それでライブできるなんて無理だよ!私、足手まといにしかならない!!」

 

手で拭う事無く、ボロボロと涙をこぼし続ける。そんなさーやの姿を見ていると、何だか胸の奥がキューっとして……痛くて。

 

目の奥が、熱くなってきた。

 

「私の代わりに誰かが損して、傷ついて……。だから止めたのに……!今さら、できるわけないじゃん!!」

 

「…………」

 

「私には……バンドはできない!もう帰ってよ!放っておいてよっ!!」

 

私の事が邪魔だと感じて、手で振り払って部屋から追い出そうとする。泣き崩れ、うずくまるさーやを見て、私は言葉を失っていた。

 

さーやは、家族のために。そして、そんな自分を支えようとする誰かのために。自分を犠牲にしたんだ。

 

私たちが手を差し出そうとすればするほど、さーやにとっては負担になる。気まずくなっちゃうんだ。

 

助けたいのに、その気持ちがさーやを苦しめる。自分中心に話を進めて、周りが合わせて力になろうとする事が……さーやには耐えられない。それが迷惑だと思うから、バンドを続けていく事を拒むんだ。

 

迷惑じゃない。でも、それをどうやってさーやに伝えたらいいんだろう。今こうして力になろうとしている事だって、さーやは迷惑をかけていると感じているはずなんだから。

 

本当は違うのに。迷惑じゃないのに。力になりたいから、私がそうしたいから。

 

傷ついてもない。損してもない。自分からここに来たいと思ったのに、そこに迷惑なんてものはないんだよ。

 

 

さーや……。

 

 

「……できるよ」

 

「無理だよ。できないから」

 

「そんなの、勝手に決めつけないでよ……」

 

「決まってるの!私には、バンドなんてできないんだよ!!」

 

「できるっ!!!」

 

ハッと顔を上げて、私を見るさーや。でも、その顔はぼやけていた。視界が滲んでいた。

 

 

それでも、私は伝えたい。

 

 

「できるの!何でも一人で決めちゃうのズルい!ズルいズルいズルいっ!!」

 

「か、すみ……」

 

「一緒に、考えさせてよ……っ!」

 

一人で考えて、答えを出すしかないと思っているなら、そうじゃないって教えたい。どんな人だって、一人でできる事には限界があるから。私だってそうだから。

 

 

だから……さーやは一人じゃないって、気づいて欲しい。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ん、終わったみたいだな」

 

沙綾の家に到着してから少し経った。俺たちは外で香澄の話が終わるのを待っていたところ、沙綾のお父さんが俺たちに気づき、快く中に入れてくれた。

 

さっきまでは純と紗南もいたが、沙綾の大声のせいでどこかに行ってしまった。あんな声は俺も初めて聞くし、純と紗南も、聞いたことなかったんだろうな。怖かったんだろう。

 

ここまで聞こえていたし、話の内容はある程度わかった。そして今、香澄たちが話を終え、待っていた俺たちのところに来たと言う事だった。

 

「なーくん……」

 

「お疲れ。みんなもいる」

 

「有咲、りみりん、おたえ……」

 

まだ、解決したと言うには早すぎるみたいだな。この様子だと、少しギクシャクしてしまったまま話が終わってしまったな。

 

「つか、翔はさっきから何してんだよ。スマホばっかいじってるし」

 

「ちょっとな」

 

「何だそれ。……じゃ、私たちはそろそろ行くか」

 

「えっ、で、でも……」

 

香澄の言いたい事はもっともだ。こんな状態で帰るなんて、できるわけがないって思っているんだろう。けど……。

 

「こんな状態で、これ以上香澄と山吹さんでまともな話できないでしょ。まぁ、私はどうでもいいけどさ……」

 

「おい、有咲」

 

「わかってるよ。けど……新しいメンバー、知らない人が入るよりも、山吹さんの方が私は楽かな……」

 

「私も!翔君とできないのは残念だけど、沙綾ちゃんとできたらすっごく嬉しい!」

 

「……スマホに曲のデータ送ったよ。後で聴いてみて」

 

3人も、できる範囲で沙綾の背中を押そうとがんばっている。香澄だけじゃないんだ。沙綾を心配してくれているのは。

 

「だから、無理だってば……」

 

「待ってる。さーやの事、待ってるから」

 

「…………」

 

それだけ言い残し、香澄は店の外へ。有咲たちも、香澄の後に続いて外に出ていく。

 

 

けど……。

 

 

「……悪い、香澄。俺はここに残る」

 

「えっ!?」

 

俺は、話をしないといけない。そのために、俺はここに来たんだから。

 

「おま、残るって……練習は!?ドラムがいないんじゃ、練習できねぇぞ!?」

 

「それなら心配ない。……りみ、スマホ見てみろ」

 

「え?……翔君から、メールが届いてる」

 

「りみりん、どういう事?」

 

「これって……音声データ?」

 

「ドラムの打ち込みの音源だ。これがあれば、俺がいなくても練習できるだろ」

 

こっそりとりみにメールを送っておいた。何とか間に合ったみたいだな。

 

「さっきからやたらとスマホをいじってると思ったら……こういう事かよ」

 

「そうだ。だから悪いが、俺は練習には行けない。明日のリハーサルには、何とか間に合わせる」

 

「え……それじゃあ、なーくんは?」

 

「決まってるだろ」

 

香澄が沙綾の事を心配してるように、俺だって心配している。有咲やりみ、たえのように。

 

ずっと気になっていたんだ。沙綾の抱えている物が。その事で苦しんで、助けてやる事もできなかった。

 

SOSはいくらでも出していたのに。沙綾の内側まで踏み込むことを恐れて、俺は今まで目を背けてきた。

 

 

けど、そうじゃないだろ。

 

 

今からでも遅くはない。沙綾が自分の選択で苦しんでいるなら、その選択を正してやる。

 

友達として、俺にできる事をする。何ができるかは、俺にもわかりきってはいないけど。

 

そんな俺の背中を押してくれた人がいるから。

 

そんな俺に背中を押された人がいるから。

 

「俺も……沙綾と話がある」

 

 

今度は、俺が沙綾の背中を押す番だ。

 







夜の静寂の中、向かい合う沙綾と翔。



香澄と交わした言葉を聞き、沙綾の過去を知り……翔は何を語るのか。



沙綾は、自責に駆られた過去から抜け出すことができるのか。



互いに言葉を重ねる中で、ついに明らかになる……。



翔の過去。そして、真実。



次回「決意の向かう先に」
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