BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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上手く時間取れたので、連日投稿です。

さて、まずはお礼を。またお気に入り登録して下さった方が増えていて、感無量です。ありがとうございます。
ガルパもイベントやってますので、見かけたらよろしくです。フェス限の蘭をセンターにしてるので。

今回はあの子が登場。もう少し早く出すつもりだったはずなんですが、前回のオリキャラ紹介で手間取った(失敗)

さぁ、前置きはこの辺にしましょうか。


phrase4 星の導き

「う~ん、今日もキラキラすること見つからなかったなー」

 

香澄たちが花咲川女子学園に入学して、1週間近くが経とうとしていた。香澄も翔も学校生活に慣れ、友達もできた。順調なスタートを切っているように見えているが、香澄にとっては違う。

 

まだ、キラキラドキドキできることが見つかっていない。翔にも付き添ってもらい、部活見学にも足を運んでいるのだが、どうも納得行く部活がないのだ。

妹の明日香の所属する水泳部も、求めているイメージとは違っていた。

 

高校生になった。新しい日々が始まった。なのに、自分の中でくすぶる熱の居場所を見つけることができていない。焦ってはいなかったが、ウズウズとした興奮が香澄を駆り立てていた。

 

そして放課後。特にやることもないまま、香澄は家に帰る途中だった。明日香は部活。沙綾は家の手伝い。翔は……。

 

「お~い、香澄!」

 

「……あっ、なーくん!」

 

香澄の後ろから声をかけてきた。香澄と同じく一人だったが、そこでふと疑問に思う。

 

「あれ?今日はみーちゃんと一緒に帰るって言ってなかったっけ?」

 

「そのつもりだったんだけどな。クラスの友達と遊んでくるって言ってな。さすがに引き留めるのも悪いし、俺だけ帰ることにしたんだ」

 

美羽の体調の事もあるが、美羽にだってプライベートな時間はある。そこは俺も割り切ってるし、大切にしないといけないと思っているからな。少し心配ではあるんだけど。

 

「で、香澄は?今日は部活見学は良かったのか?」

 

「見学はもういいかな~って。ちょうどいいから、なーくんと一緒に帰ろっかな……あれ?」

 

並んで歩き出す香澄だったが、何かを見つけて駆け出してしまう。すぐ近くの電柱の脇にしゃがみ込むと、そのままジーっと動かなくなってしまった。

 

何に惹かれたのか。俺も香澄に倣ってしゃがんでみることにした。ちらりと俺の方を見た香澄は、その視線の先を指さして……。

 

「ねぇ、なーくん。これって……」

 

「こいつは……星のシール?何で地面なんかに落ちてるんだ?」

 

アスファルトの地面に、可愛らしいラメ入りのシールが一つ貼られている。星型で、爪でこすってもはがれそうにない。前からここにあったのか?

 

と言うか香澄の奴、星に反応しただけじゃないだろうな……。ただのシールだし、これって子供が喜ぶような奴だろ……。

 

「えへへ。キラキラしてて可愛いね~。こんなところで星に出会えるなんて、いいことありそう!」

 

やっぱりかよ。どうせ、あの時の星空の事を考えているんだろうな。さすがに香澄の思考パターンも、そこまで単純だとは思えないけど。

 

「星って、シールだろ。あの時みたいな星空とは、ちょっと違うんじゃないか?」

 

「かもしれないけど、何かあるかもしれないじゃん!あれ、こっちにも貼ってあるね?」

 

「ん?本当だな。向こうの方にも見えないか?」

 

「うわ~!星がいっぱいだね!ちょっと追いかけてみようよ!」

 

「え、ちょっとかす――」

 

おい、マジかよ。反対しようとしたが、そんな暇もなく香澄に手を引っ張られたため断念。キラキラの笑顔を振りまきながら、香澄は俺を振り回す。まぁ、楽しそうだからいいかな……。

 

にしてもだ。この星のシール……さっきの電柱もそうだが、ガードレールや壁に至るまで、とにかく目に付くところに貼ってある。しかも数が多い。子供のいたずらか何かか?

 

「どこかに続いているのかな?何かキラキラすること、始まりそうな気がする!」

 

「始まろうが何だろうが、俺は構わないんだけどさ……本当にこのシール追っていくのか?」

 

「そうだよ?この先に何があるのか、気にならない?」

 

「気にはなるけど……」

 

俺はスマホで時間を確認する。まだ遅い時間帯じゃないし、このまま香澄を放っておくと、どこまで行くかわからない。

 

と言うより、香澄が俺の腕をがっちりホールドしているせいで、抜け出すのも困難だ。無理に離れようとすると、何かふくらみが当たって健全な男子にはよろしくないもので……。

 

しかも、香澄はちょうど上目遣いで俺を見上げる立ち位置。前にもこんなことあったが、この手のやり口には俺は弱い。香澄の上目遣いは見慣れているはずなんだけど、放っておけないオーラが出ているんだよな……。

 

「……あ~もう、わかった!やるよ!付き合えばいいんだろ!?」

 

「やったー!ありがとっ、なーくん!だーいすきっ♪」

 

抱き着く力が強くなった。俺はどぎまぎしながらも、香澄を引きはがして先に進む。後ろでグダグダ言ってたが、俺の羞恥心は限界なんだ。

 

あ、俺の反応見て勘違いしてもらった困るから一応言っておくが、俺は別に香澄が好きだとかそう言うんじゃないからな?ただ心配してるだけだし、幼馴染くらいしか今の香澄のブレーキ役はいないしな。

 

そう。こいつはあくまでも幼馴染。こんなぶっ飛んだ奴を好きになるなんてことは、絶対にない。そのつもりだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

星のシールを辿り、俺たちは歩き続けて10分ほど。さっきまで無数に見つけていたシールも、ここに来て急に途切れた。

 

「シール、シールは……あれ?」

 

「なくなったな。向こうは来た道だし、こいつで最後ってとこだな」

 

「え~!?お終い~!?」

 

シールがなくなったことで、香澄は駄々をこね始める。本当に子供みたいだが、付き合った俺としても、こんな結果は不本意だ。完全に時間を浪費しただけになる。

 

てか、ここはどこなんだ。もう日も暮れ始めているが、このままじゃ帰り道もわからない。またシールを辿って元の道に戻るにも、時間がかかりそうだ。

 

「これで終わりなんてやだよ~!このままじゃ、何もキラキラドキドキしない~!」

 

「そうは言っても、仕方ないだろ。いくら探しても、もうシールはないんだ。諦めよう」

 

あるのは、少し古びた店くらいだ。カーテンが閉まっていて、もう閉店した後みたいだが。どっちにしてもアウトか。

 

「でも、星のシールが――」

 

「うるさいな!大体、星のシールを見つけて、キラキラがどうとか言って追いかけ始めたのはどこの誰だ?そいつに無理矢理付き合わせた人の気持ちも、少しは考えてほしいんだけど!?」

 

「ひ、ひはいよ、ふぁーふん!ふぉめ、ふぉめ~ん!」

 

俺はさすがにムカついてきたので、香澄の頬を軽くつねる。手に伝わる柔らかい弾力とは裏腹に、香澄は痛そうに俺の手を引きはがそうとするが、そんなの知らん。

 

「ふぇ、ふぇもふぁーふん!ふぉんふぉうひふぉふぉままふぇいーの!?」

 

それに、何言ってるのかもわからないしな。解読できた奴、俺に教えてくれ。

 

「何言っても、ダメなものはダメだ。もう遅いし、シールが見えなくなる前に帰らないと」

 

「うう……」

 

ようやく香澄も大人しくなったか。せめてあの店が開いていれば、少しは珍しい物でも見て帰ることができたかもしれないのにな。

 

その前に、まず何屋だここ。名前は……『流星堂』?質屋みたいだな。なら、本当に掘り出し物とかもあったかもしれないのか。もう少し早く来ていれば……。

 

「……ん?」

 

「ふぇ?」

 

「いや、今あの店の裏手の方、何か光った気がしてな」

 

香澄の頬をつねる手を離し、俺は光る何かを確かめるために店の方へ。やはり店は閉まっていたが、奥に続く通路には入れるみたいだった。

 

「光ったって……もしかして、さっきのシール!?」

 

「わからないけど……あ」

 

見つけた。さっき見つけた、謎の光の正体を。

 

「星のシールだ!うわ~キラキラ!」

 

それは、通路の壁に貼られていた、さっきの星型のシール。しかも、何個もペタペタと貼ってある。続いていないと思っていた道だったが、ゴールが見え始めてきたか。

 

「けど、ここ人の家だぞ?勝手に入って――」

 

「わぁ、すごい!蔵がある!」

 

はい、俺は無視ですか。そうですか。何も気にせずに奥まで入っていくため、俺は香澄の後について行くことに。やっぱりブレーキ役は必要だったってことだ。

 

遠慮がちに通路を進む俺だったが、すぐに視界が開けて明るくなる。そこには、時代劇に出てくるような派手な蔵が建っていた。まるで星のシールに導かれて、タイムスリップしたかのように。

 

「こいつは驚いたな……」

 

「あの蔵、少し開いてるね。誰かいるのかな?」

 

「開いてるね、じゃない。もうこの辺にした方が――」

 

「あ、何だろ、あのケース?」

 

また無視かよ。どうなっても知らないからな?

 

「ねぇ、なーくん。ちょっと見て!」

 

「何だよ。あまり人の家覗くのは、俺も嫌なんだけど」

 

「あのケース、大きな星のシールが貼ってある……」

 

「星のシール?」

 

少し開いた蔵の入り口から、中の様子がうかがえる。段ボールや中古品らしいものが、散らかりながらも置かれていた。

 

その中でも、香澄の見つけた星のシールのケースは、一際存在感を放っているように見えた。黒色で、形は長方形。大きめのケースだったが、中に何が入っているのか全く分からない。

何となく中身の予想はついているが、質屋の蔵だし、どんなものが入っていてもおかしくないからな。

 

俺たちはもっと中を見たいと、身を乗り出して……。

 

「両手を挙げろ!」

 

「「えっ!?」」

 

後ろから何者かに脅される。そうっと振り返ってみると、そこにいたのはツインテールの金髪の少女。吊り上がった険悪な目つきを俺たちに向け、手には刃物を持っている。

 

「きゃー、はさみ!ひ、人に向けたら危ないよ!」

 

「逃走経路を確保しておかないなんて、とんだ素人ね!逃げられるなんて、そんな甘い考え通じると思うなよ!」

 

「……何で盆栽用のはさみだ?」

 

「変なとこに触れてんじゃねー!」

 

いや、気になったんだからしょうがないだろ。それはそうと、少女ははさみを持ち直して脅しをかける。女の子なのに、大した度胸だな……。じゃなくて。

 

「ったく……。で、あんたたちは何?初犯?」

 

「あ、あの、私たち星を見つけて……!」

 

「そ、そうだ。星のシール。そいつを辿って言ったら、ここに着いたって言うか……」

 

マズいよな。俺たち、完全に泥棒扱いされてる。何とか誤解を解こうと必死に弁解を試みるが、少女には全然届いていない。それどころか、さらに語気を強めて俺たちに問いただしてくる。

 

「両手!」

 

「はい!」

 

「名前!」

 

「戸山香澄です!」

 

「そっちのあんたは!?」

 

「成川翔――あっ!?」

 

勢いで名乗ってしまったじゃねーかよ!これってかなりヤバくないか!?

 

「ふん、言ってから気づいても遅ぇっつーの。つか、それ本名?責任逃れで偽名使ってんなら……止めるよ」

 

「え……お泊り?」

 

「何でそうなる!?」

 

つい突っ込んでしまっただろうが!この状況で親切に泊めてくれる展開なんてそうそうねーよ!てか、香澄はこの状況を理解しているんだろうな?

 

「違う!あんたたちを捕まえるって言ってんの!」

 

「えっ!?泥棒じゃないです!なーくん、もしかして私たち、泥棒だって思われてるの!?」

 

「当たり前だろ!てか、やっぱり気づいてなかったんだな!?」

 

この幼馴染ときたら……。

 

「……あんたも大変だな。って、その制服、花女……うちの生徒かよ」

 

「えっ、同じ学校なの!?何年生?私は高1!」

 

「おい、ちょっと香澄……」

 

何を平気で話し出しているんだよ。こいつ、本当にわかってるんだろうな?

 

「違うから!もー出てって!質屋は今日は終わりだし、こっちは全部ゴミ!」

 

「ゴミ!?あの中の物、みんなそうなのか!?」

 

「さっきそう言ったんだけど」

 

てっきり、質屋に出す商品かと思っていたんだけどな。探せばいくらでも使えそうな物がありそうなのに。

 

「ゴミってあれも?あの星の……」

 

「質流れのギターかなんかでしょ!」

 

予想通りか。あのケースに入っているのは、ギターだった。美羽のギターケースも、あれくらいのサイズだったはずだしな。

 

「壊れているのか?」

 

「さぁ?私は何も知らねぇし。興味もねーよ」

 

「見ていい?触っていい?」

 

「はぁ?お前なぁ!」

 

と言うか、もう蔵の中に若干入ろうとしているしな。これは強引だろうが、押し通すパターンだろう。

 

「ダメに決まってんだろ!それにお前、どの口が言ってんだよ!」

 

「この口!ねぇいいでしょ?ちょっとだけ!ちょっとだけだからー!」

 

「うわっ、ちょま、伸びる伸びる!服引っ張んな!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……はぁ。触ったら出てってよ。あんたも、すぐに連れて帰れよ?」

 

「わかってる。俺はこいつのブレーキ役だからな」

 

「だったら何でここに入る前に止めなかったんだよ」

 

「そ、それは……」

 

香澄が押し切るまでもなく、すぐに彼女は蔵に入ることを承諾してくれた。ついでに俺も入れてくれたところを見ると、口調は荒いが性格は悪くなさそうだ。

 

「てか、さっきから気になってたんだけど、その制服花女だろ?何で女子校なのに、あんたが花女の制服着てるわけ?男子用の制服があるのも初めて知ったけど」

 

「……ん?」

 

俺は彼女の質問に、少し疑問を抱いた。俺たちの学校を特定したことと、話しぶりから察すると、彼女も花女で間違いはないだろう。男子用の制服とは言っても、すぐに花女だと言い切って見せたのだから。

 

 

なら……どうして彼女は、俺の事について知らない?

 

 

入学式でも説明され、中等部にすら情報が行き届いている。当日休んでいたとしても、連日の騒ぎから俺の事を知っていてもおかしくはない。今でこそ、その騒ぎは落ち着いたんだけどな。

 

「言えないってか?変態紛いの行動なら、それこそ警察呼ぶけど」

 

「待て、そうじゃない!ただ――」

 

「ねぇ、ケース開けるけどいいー!?」

 

「あっ、そうか。あいつのこと忘れてた……」

 

心の底から嫌そうな顔をしながら、少女は香澄を目の前に呼ぶ。まだ少女の中では、俺たちは泥棒扱いだからな。

 

ドスンと音を立てて地面に置かれたケースは、相当重そうだ。香澄がケースに手をかけるのを見て、俺も横から中を覗き込む。少女は迷惑そうに目線だけ向けていたが。

 

「…………!」

 

その瞬間だった。香澄の表情が変わり、笑顔が消えたのは。だが、見覚えがある顔だ。そう、これはまるで、あの時の星空を見ているようで……。

 

「星の、ギター……」

 

星の形をした、赤いギター。中古品とは思えないほど、状態は良かった。弦も張り替える必要はなさそうだし、このまま使えるんじゃないか。

 

「すごい、このギター星の形してる……!見てよ、なーくん!」

 

「デザインといい、なかなかかっこいいな……。香澄が食いつくのもわかるな」

 

「……そう言うギターもあるんだろ」

 

俺たちが興味津々にギターを見ているのもどうでもいいと言わんばかりに、彼女だけは無関心だった。だから、ガラクタ同然に扱っているんだろうな。

 

そんな彼女をよそに、香澄は弦に手を置き、鳴らしてみる。ギターなんて弾いたことないはずだから、軽く弦を弾くだけ。だが、香澄にとってはこれ以上ない興奮を呼び覚ましていた。

 

「鳴った!すごい!聞こえた!?」

 

「聞こえたよ。ゴミにしておくにはもったいないギターだ」

 

「はい、終わりー」

 

と、彼女はパンパンと手を叩いて、すぐにギターを取り上げようとする。いつまでも赤の他人に騒がれるのは、我慢ならないのか。まぁ、ならないよな……。

 

「待って!もうちょっとー!」

 

「終わりっつったろー!そんなに弾きたいなら、楽器屋さんとかライブハウス行けよ!」

 

「えっ、ライブハウス!?どこにあるの!?」

 

「知らねーよ!」

 

「わかった!探してくる!」

 

そう言うと、香澄は赤いギターを持ったまま蔵の外に出て――って、

 

 

 

「「えっ?」」

 

 

 

おい、あいつ何した?今、普通にこいつらのやり取りを見守っていたが、さらっと何したんだよ香澄は。ねぇ?

 

「……おい、お前」

 

「わかってます。すみません。すぐ呼び戻します。追いかけます」

 

もう泥棒紛いでも何でもない。正真正銘の泥棒だ。普通に人のギター持って行って、完全にアウトだからな!?

 

俺は急いで香澄を追いかける。と言うか、無視はできないだろこれは!

 

「もう何なのあいつら……。この泥棒が――――!!」

 

その後ろで、怒りでわなわなと震えていた少女は、騒ぎを起こした張本人に聞かれることのない怒号を、一人発していたのだった。

 

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