BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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お気に入り登録者数がまた増えている……だと?


しかも、UAが1000を超えている……だと!?


もう本当に感謝の言葉しかありません!ありがとうございます!作者の小説としては、この短期間でこれだけ読んでもらえるのは異例です(悲しいけど本当)

そんなわけで、連日投稿。感謝の気持ちをこれでもかと詰め込みました。

まだアニメ1期の1話のストーリーすら終わってないので、これからも応援よろしくお願いします。オリジナルもそのうちね。

長々と話しましたが、どうぞ。


phrase5 湧き上がる熱情

「ふんふんふーん♪ライブハウスはどっこかな♪」

 

「うっさい。今調べてるから」

 

香澄がギター片手に逃走(?)してから数分後。俺は何とか香澄に追いつくことに成功し、例の少女も後から息を切らして追いついてきた。もう日は暮れ、夜になっている。

 

家に帰る時間もあるし、ギターは諦めて返すように話を進めていたはずだったのだが……。

 

『待って!本当に後少し!このギターに、私何か感じたの!キラキラドキドキできること!!』

 

と言いだして聞かない。そうなればキリがない。俺は幼馴染のキャリアから、この状況をこっち側に傾けることは不可能だと悟っていた。

 

なので、もう香澄の気のすむまで付き合うことにする。美羽にはメールで、遅くなるとだけ伝えておいた。

 

話し合いでどうにもできないとわかった少女も、仕方なく香澄と行動を共にする。適当にその場を凌げばそれでいい。そう割り切って、ライブハウスを調べているところだった。

 

「私がいなかったら、本当に泥棒だよ?わかってる?」

 

「うん!一緒にいてくれてありがとう!」

 

はぁ……と大きなため息を吐く少女。さすがに申し訳ないので、俺から謝っておく。本当は香澄も謝らないといけないはずだが、こんなの慣れっこだ。一々腹を立てていては、香澄とはやっていけない。

 

「本当に悪いな。香澄が迷惑かけて……」

 

「そう思うなら、あんたもちゃんと止めてくれよ」

 

いくら何でも、ギター持ってどこか行くなんて、さすがに俺にも手に負えない話だよ。

 

「優しいね!何だかあっちゃんみたい!」

 

「は?何?あっちゃん?おい、誰の事だよ」

 

「こいつの妹。しっかり者で、こんな騒ぎ起こす奴とは大違いなしっかり者」

 

「そんな言い方ひどいよ~!」

 

「ひどくなんかないからな!?俺が香澄にどれだけ振り回されてきたと思ってる!?小学3年の遠足の時に、おやつ忘れてきたからって半ば無理矢理奪ってきたりとか、中学2年の時なんか――」

 

「う……。その、ごめんなさい……」

 

珍しくシュンとしおれる香澄。言い寄られてた時も、目が泳ぎまくってたからな。言おうと思えば他にもエピソードはあるが、それはまたの機会だ。

 

「うっせー。何勝手に盛り上がってんだよ。どうでもいい」

 

「盛り上がってなんかないよ~!なーくんが私の悪口行ってくるだけだも~ん!」

 

指さして泣きつくとか、マジで小学生だな……。

 

「知らねー。それに、これは優しさじゃねーからな?私はただ巻き込まれただけだし、そもそもお前が素直にギター返してくれたら、こんなことにはならねぇんだっつーの」

 

 

正直、俺もそう思うんですが。

 

 

けど、素っ気ないな……。気がない発言は目立つが、それでも香澄に付き合ってる辺り、何だかんだでいい奴なんだよな。ライブハウスの場所も探してくれてるし。

 

だが、この近辺でライブハウスって言うと、俺の記憶の中に思い当たるのは……あそこしかないんだよな。

 

「……あ、あった」

 

「ここ?えっと、ライブハウス『SPACE』……?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ギターを抱えたままドアを開け、香澄たちはライブハウスの中へ。そんな一行を出迎えてくれたのは、何人ものお客さんの視線だった。ロビーはほぼ満員で、何かを待っているようだ。

 

香澄はすぐに受付のスタッフを見つけると、グイグイ話を進めていく。物怖じせずに積極的になれるのは、香澄の長所だな。

 

だが……その願いは多分、聞いてくれないと思うんだよな。

 

「こんばんは!ギター弾きたいんですけど!」

 

「えっ?ギターを弾きに来たの?え、えーと、ここはね……」

 

思った通り、スタッフも相当困っているな。香澄も意地で押し切ろうとしているし、このままではどうなるかわかったものじゃない。

 

 

仕方ない。ここは助け舟を出してやろうか。

 

 

「ここは練習スタジオじゃないよ」

 

「あっ、オーナー!」

 

俺が口を開く前に、このSPACEのオーナーである、おば……ゴホン。人生経験の豊富な女性が仲裁に入る。バンドに対する情熱は、人一倍持っている人だ。

 

受付のスタッフも、わかりやすく安堵している。と、そこでオーナーがちらりと俺に視線を向けてきた。

 

「……ん?何だ、成川もいたのかい」

 

「お疲れ様です。今日ここに来たのは、本当に偶然なんですが」

 

「えっ、なーくん知り合いなの?」

 

「知り合いも何も……俺、ここでバイトしてるんだけど」

 

だからすぐにSPACEの事が思い当たったし、ここが練習スタジオじゃないこともわかっていた。ちなみに、香澄が声をかけたスタッフは、互いに顔見知りだ。

 

「ふーん。あんた、ここでバイトしてんだ」

 

「まぁな。中学の時から、手伝いをさせてもらってる」

 

そんなわけで、この辺りの事は香澄よりはわかってたりする。SPACEの近辺に流星堂なんて質屋があるのは知らなかったけど。

 

小声で話す彼女と俺をよそに、オーナーは香澄に近づいていく。迫力ある存在感に圧倒されながらも、香澄は星のギターをギュッと抱え込み、オーナーと向き合った。

 

「ステージに上がれるのは、オーディションに合格した奴だけだ」

 

「そう、ですか……」

 

「練習ならよそでやりな。ここはライブハウスなんだ」

 

「…………」

 

さすがに言い返すことはしなかった。わきまえるところはわきまえる。それくらいの線引きは、香澄にだってできる。

 

「ほら、やっぱダメなんだって。帰ろうって……!」

 

「こいつの言うとおりだ。これ以上は迷惑になる。オーナー、いきなり押しかけてしまい、すみませんでした」

 

「そう謝ることはない、成川。どうだ、せっかくだし見て行くかい?ライブ」

 

「確か今日は、Glitter*Greenのライブでしたよね」

 

Glitter*Green(グリッターグリーン)――通称グリグリは、俺たちの通っている花女の生徒で構成されたバンドだったはずだ。全員先輩で、この頃SPACEで人気を集めているバンドの代表格だ。

 

「ライブぅ?おい、ヤバいって。何か頭振ったりするんだろ?」

 

「見てもいないうちから決めつけるんじゃないよ」

 

「そうだぞ。お前が思っているような、ヘビーでロックなものじゃないからな」

 

露骨に嫌がる少女だったが、すかさずオーナーが口をはさむ。なので、俺も一応加勢しておくことにした。

 

「大丈夫だって。俺も最初はそう思ってたけど、食わず嫌いなだけだったし。それに、どうせここまで来たんだ。見ないで帰るのも損だと思うぜ?」

 

俺も最初は、彼女が言ったみたいなハードな印象を持っていたしな。人を選び、万人に受け入れられるかと言ったら違うような、俺もあまり手を出そうとは思えないものだった。

 

けど、このSPACEのバンドは違う。スタッフとしてライブを何度も見ているが、どれも熱く胸がたぎるものばかり。あの星空の興奮に通じるものが、もしかしたらあるのかもしれない。

 

「……じゃあ、確かめてやる!あんたがそこまで言うならね!」

 

よし、決まりだ。香澄は言わなくても見るだろうし、そこは放っておいても問題ない。

 

「んで、チケット代いくら?」

 

「高校生かい?」

 

「違いますー」

 

「ん?でもさっき、俺たちと同じ花女の生徒だって……」

 

「言ってねぇ」

 

いや、言ってた気がするんだが……本当にいいのか?俺、親切に教えてやろうとしてるんだけどな……。

 

「1200円だ」

 

「くっ、高ぇな……」

 

「あの、高校生は……」

 

「600円」

 

「なんでわざわざこんなことに1200円も……って、はぁ!?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ねぇねぇ、携帯で何見てるの?」

 

「この店の情報。一応調べておこうと思って」

 

「隣にこの店のバイトがいるのに」

 

「別にいーだろ!自分で調べる!」

 

開演まで5分を切った。裏ではもう準備を済ませて、グリグリがスタンバイしている頃だろう。

 

てか、今日は客としてライブを観ることになるんだな。何気に初めてで、ちょっとワクワクしてる。

 

「……え、ここがガールズバンドの聖地?何で?」

 

「俺が教えてやろうか?」

 

「……っ、い、いらねー!」

 

頑固だな。どことなく、香澄に似ているような気もする。

 

「お客さんすごいねー!みんなライブを観に来た人かな?」

 

「うへぇ、知らないバンドばっかだな……。何でこんな人いんの?」

 

「それも俺が教えてやろうか?」

 

「いらないっつってんだろ!」

 

「はいはい、わかった。だったら口で言うより、実際に観てもらった方が早い気がするな」

 

「あ?それってどういう――」

 

そう言いかけた彼女の言葉を遮るように、ステージ裏から4人の少女が姿を見せる。会場の熱気は急上昇し、歓声が俺たちの話し声をかき消した。

 

彼女たちこそ、Glitter*Green。出ただけでこの盛り上がりだ。人気の高さは、容易にうかがえる。

 

それぞれが自分の担当楽器の前に立ち、軽く試し打ちをする。準備が終わったところで、ボーカルを務めている少女がマイクに向かって叫ぶ。

 

「SPACE!遊ぶ準備はできてますかー!?」

 

「わぁ、あの人たち、すごい人気だね!まだ演奏始まってないのに、みんなテンション高いよ!」

 

「それがあのバンド……Glitter*Greenだ。彼女たちのライブは、とにかくすごいぞ?」

 

「ふーん」

 

本当にどうでもいいって感じだな。もう少し興味を持ってくれよ。一緒になって盛り上がる香澄とは大違いだな。

 

「オッケー、盛り上がってるね!それじゃあ行くよ!」

 

観客の興奮が冷めやらないまま、早速演奏に入っていく。それぞれの音が重なり、一つの音を紡ぎだす。その音色は、観客の心を掴んで魅了する。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

香澄の表情が変わったのは、演奏が始まってから間もない頃だった。

 

「やっぱグリグリのライブは安定感があるな~。……ん、香澄?」

 

 

 

「綺麗……!とっても、キラキラしてる……!」

 

 

 

あの時と同じだった。幼い頃、森の奥で星を見上げた時に見た、心が奪われた表情と。そして今も大事に持っている、星型のギターを見た時と。

 

(すごい!ペンライトの光がいっぱい!まるで……あの時の星空みたい!!)

 

翔の考えていたことは、まさにその時香澄が考えていたことと同じだった。星空から感じた鼓動。ずっと探していたキラキラドキドキが、今目の前に広がっている。

 

無数のペンライト。そして観客を惹きつけるライブ。答えは、バンドの中にあった。

 

「うえぇ……何だよ、この盛り上がりは……」

 

「すごい、すごいよ!なーくんが言ったとおりだった!」

 

「だろ?だから言ったんだ。観た方が早いってな」

 

このライブを観たことは、香澄にとっては大きな影響を与えるきっかけになっただろう。それも、間違いなくいい方向に。

 

 

記憶の中でしか見ることができなかった香澄の表情が、今も隣で輝いているのだから。

 

 

「はぁ、何?聞こえない!」

 

「すごいんだってよ、このライブが。どうだ?お前もライブ観て何か感じないか?」

 

「んなの全くねーよ!こんなのに夢中になるとか、何考えてんだっつーの!」

 

「どうだか?少なくともこいつは、ここにいる誰よりも心を奮わせているぜ?」

 

こっちの声が一切聞こえなくなるほどに、香澄だけは彼女たちの作り出す音の世界にのめりこんでいた。心を奪われ、抑えきれない衝動が興奮へと転じていくのを、俺は隣で感じ取っていた。

 

 

「見つけた……!私が、キラキラドキドキできるもの……!!」

 

 

この時、香澄はようやく出会うことができた。ずっと追い求めてきた瞬間に。

 

 

そして今、香澄の中で全てが始まろうとしていた。

 

 

 

夢を撃ち抜く瞬間が。

 

 

 

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