BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
しかも、UAが1000を超えている……だと!?
もう本当に感謝の言葉しかありません!ありがとうございます!作者の小説としては、この短期間でこれだけ読んでもらえるのは異例です(悲しいけど本当)
そんなわけで、連日投稿。感謝の気持ちをこれでもかと詰め込みました。
まだアニメ1期の1話のストーリーすら終わってないので、これからも応援よろしくお願いします。オリジナルもそのうちね。
長々と話しましたが、どうぞ。
「ふんふんふーん♪ライブハウスはどっこかな♪」
「うっさい。今調べてるから」
香澄がギター片手に逃走(?)してから数分後。俺は何とか香澄に追いつくことに成功し、例の少女も後から息を切らして追いついてきた。もう日は暮れ、夜になっている。
家に帰る時間もあるし、ギターは諦めて返すように話を進めていたはずだったのだが……。
『待って!本当に後少し!このギターに、私何か感じたの!キラキラドキドキできること!!』
と言いだして聞かない。そうなればキリがない。俺は幼馴染のキャリアから、この状況をこっち側に傾けることは不可能だと悟っていた。
なので、もう香澄の気のすむまで付き合うことにする。美羽にはメールで、遅くなるとだけ伝えておいた。
話し合いでどうにもできないとわかった少女も、仕方なく香澄と行動を共にする。適当にその場を凌げばそれでいい。そう割り切って、ライブハウスを調べているところだった。
「私がいなかったら、本当に泥棒だよ?わかってる?」
「うん!一緒にいてくれてありがとう!」
はぁ……と大きなため息を吐く少女。さすがに申し訳ないので、俺から謝っておく。本当は香澄も謝らないといけないはずだが、こんなの慣れっこだ。一々腹を立てていては、香澄とはやっていけない。
「本当に悪いな。香澄が迷惑かけて……」
「そう思うなら、あんたもちゃんと止めてくれよ」
いくら何でも、ギター持ってどこか行くなんて、さすがに俺にも手に負えない話だよ。
「優しいね!何だかあっちゃんみたい!」
「は?何?あっちゃん?おい、誰の事だよ」
「こいつの妹。しっかり者で、こんな騒ぎ起こす奴とは大違いなしっかり者」
「そんな言い方ひどいよ~!」
「ひどくなんかないからな!?俺が香澄にどれだけ振り回されてきたと思ってる!?小学3年の遠足の時に、おやつ忘れてきたからって半ば無理矢理奪ってきたりとか、中学2年の時なんか――」
「う……。その、ごめんなさい……」
珍しくシュンとしおれる香澄。言い寄られてた時も、目が泳ぎまくってたからな。言おうと思えば他にもエピソードはあるが、それはまたの機会だ。
「うっせー。何勝手に盛り上がってんだよ。どうでもいい」
「盛り上がってなんかないよ~!なーくんが私の悪口行ってくるだけだも~ん!」
指さして泣きつくとか、マジで小学生だな……。
「知らねー。それに、これは優しさじゃねーからな?私はただ巻き込まれただけだし、そもそもお前が素直にギター返してくれたら、こんなことにはならねぇんだっつーの」
正直、俺もそう思うんですが。
けど、素っ気ないな……。気がない発言は目立つが、それでも香澄に付き合ってる辺り、何だかんだでいい奴なんだよな。ライブハウスの場所も探してくれてるし。
だが、この近辺でライブハウスって言うと、俺の記憶の中に思い当たるのは……あそこしかないんだよな。
「……あ、あった」
「ここ?えっと、ライブハウス『SPACE』……?」
***
ギターを抱えたままドアを開け、香澄たちはライブハウスの中へ。そんな一行を出迎えてくれたのは、何人ものお客さんの視線だった。ロビーはほぼ満員で、何かを待っているようだ。
香澄はすぐに受付のスタッフを見つけると、グイグイ話を進めていく。物怖じせずに積極的になれるのは、香澄の長所だな。
だが……その願いは多分、聞いてくれないと思うんだよな。
「こんばんは!ギター弾きたいんですけど!」
「えっ?ギターを弾きに来たの?え、えーと、ここはね……」
思った通り、スタッフも相当困っているな。香澄も意地で押し切ろうとしているし、このままではどうなるかわかったものじゃない。
仕方ない。ここは助け舟を出してやろうか。
「ここは練習スタジオじゃないよ」
「あっ、オーナー!」
俺が口を開く前に、このSPACEのオーナーである、おば……ゴホン。人生経験の豊富な女性が仲裁に入る。バンドに対する情熱は、人一倍持っている人だ。
受付のスタッフも、わかりやすく安堵している。と、そこでオーナーがちらりと俺に視線を向けてきた。
「……ん?何だ、成川もいたのかい」
「お疲れ様です。今日ここに来たのは、本当に偶然なんですが」
「えっ、なーくん知り合いなの?」
「知り合いも何も……俺、ここでバイトしてるんだけど」
だからすぐにSPACEの事が思い当たったし、ここが練習スタジオじゃないこともわかっていた。ちなみに、香澄が声をかけたスタッフは、互いに顔見知りだ。
「ふーん。あんた、ここでバイトしてんだ」
「まぁな。中学の時から、手伝いをさせてもらってる」
そんなわけで、この辺りの事は香澄よりはわかってたりする。SPACEの近辺に流星堂なんて質屋があるのは知らなかったけど。
小声で話す彼女と俺をよそに、オーナーは香澄に近づいていく。迫力ある存在感に圧倒されながらも、香澄は星のギターをギュッと抱え込み、オーナーと向き合った。
「ステージに上がれるのは、オーディションに合格した奴だけだ」
「そう、ですか……」
「練習ならよそでやりな。ここはライブハウスなんだ」
「…………」
さすがに言い返すことはしなかった。わきまえるところはわきまえる。それくらいの線引きは、香澄にだってできる。
「ほら、やっぱダメなんだって。帰ろうって……!」
「こいつの言うとおりだ。これ以上は迷惑になる。オーナー、いきなり押しかけてしまい、すみませんでした」
「そう謝ることはない、成川。どうだ、せっかくだし見て行くかい?ライブ」
「確か今日は、Glitter*Greenのライブでしたよね」
Glitter*Green(グリッターグリーン)――通称グリグリは、俺たちの通っている花女の生徒で構成されたバンドだったはずだ。全員先輩で、この頃SPACEで人気を集めているバンドの代表格だ。
「ライブぅ?おい、ヤバいって。何か頭振ったりするんだろ?」
「見てもいないうちから決めつけるんじゃないよ」
「そうだぞ。お前が思っているような、ヘビーでロックなものじゃないからな」
露骨に嫌がる少女だったが、すかさずオーナーが口をはさむ。なので、俺も一応加勢しておくことにした。
「大丈夫だって。俺も最初はそう思ってたけど、食わず嫌いなだけだったし。それに、どうせここまで来たんだ。見ないで帰るのも損だと思うぜ?」
俺も最初は、彼女が言ったみたいなハードな印象を持っていたしな。人を選び、万人に受け入れられるかと言ったら違うような、俺もあまり手を出そうとは思えないものだった。
けど、このSPACEのバンドは違う。スタッフとしてライブを何度も見ているが、どれも熱く胸がたぎるものばかり。あの星空の興奮に通じるものが、もしかしたらあるのかもしれない。
「……じゃあ、確かめてやる!あんたがそこまで言うならね!」
よし、決まりだ。香澄は言わなくても見るだろうし、そこは放っておいても問題ない。
「んで、チケット代いくら?」
「高校生かい?」
「違いますー」
「ん?でもさっき、俺たちと同じ花女の生徒だって……」
「言ってねぇ」
いや、言ってた気がするんだが……本当にいいのか?俺、親切に教えてやろうとしてるんだけどな……。
「1200円だ」
「くっ、高ぇな……」
「あの、高校生は……」
「600円」
「なんでわざわざこんなことに1200円も……って、はぁ!?」
***
「ねぇねぇ、携帯で何見てるの?」
「この店の情報。一応調べておこうと思って」
「隣にこの店のバイトがいるのに」
「別にいーだろ!自分で調べる!」
開演まで5分を切った。裏ではもう準備を済ませて、グリグリがスタンバイしている頃だろう。
てか、今日は客としてライブを観ることになるんだな。何気に初めてで、ちょっとワクワクしてる。
「……え、ここがガールズバンドの聖地?何で?」
「俺が教えてやろうか?」
「……っ、い、いらねー!」
頑固だな。どことなく、香澄に似ているような気もする。
「お客さんすごいねー!みんなライブを観に来た人かな?」
「うへぇ、知らないバンドばっかだな……。何でこんな人いんの?」
「それも俺が教えてやろうか?」
「いらないっつってんだろ!」
「はいはい、わかった。だったら口で言うより、実際に観てもらった方が早い気がするな」
「あ?それってどういう――」
そう言いかけた彼女の言葉を遮るように、ステージ裏から4人の少女が姿を見せる。会場の熱気は急上昇し、歓声が俺たちの話し声をかき消した。
彼女たちこそ、Glitter*Green。出ただけでこの盛り上がりだ。人気の高さは、容易にうかがえる。
それぞれが自分の担当楽器の前に立ち、軽く試し打ちをする。準備が終わったところで、ボーカルを務めている少女がマイクに向かって叫ぶ。
「SPACE!遊ぶ準備はできてますかー!?」
「わぁ、あの人たち、すごい人気だね!まだ演奏始まってないのに、みんなテンション高いよ!」
「それがあのバンド……Glitter*Greenだ。彼女たちのライブは、とにかくすごいぞ?」
「ふーん」
本当にどうでもいいって感じだな。もう少し興味を持ってくれよ。一緒になって盛り上がる香澄とは大違いだな。
「オッケー、盛り上がってるね!それじゃあ行くよ!」
観客の興奮が冷めやらないまま、早速演奏に入っていく。それぞれの音が重なり、一つの音を紡ぎだす。その音色は、観客の心を掴んで魅了する。
「……っ!」
香澄の表情が変わったのは、演奏が始まってから間もない頃だった。
「やっぱグリグリのライブは安定感があるな~。……ん、香澄?」
「綺麗……!とっても、キラキラしてる……!」
あの時と同じだった。幼い頃、森の奥で星を見上げた時に見た、心が奪われた表情と。そして今も大事に持っている、星型のギターを見た時と。
(すごい!ペンライトの光がいっぱい!まるで……あの時の星空みたい!!)
翔の考えていたことは、まさにその時香澄が考えていたことと同じだった。星空から感じた鼓動。ずっと探していたキラキラドキドキが、今目の前に広がっている。
無数のペンライト。そして観客を惹きつけるライブ。答えは、バンドの中にあった。
「うえぇ……何だよ、この盛り上がりは……」
「すごい、すごいよ!なーくんが言ったとおりだった!」
「だろ?だから言ったんだ。観た方が早いってな」
このライブを観たことは、香澄にとっては大きな影響を与えるきっかけになっただろう。それも、間違いなくいい方向に。
記憶の中でしか見ることができなかった香澄の表情が、今も隣で輝いているのだから。
「はぁ、何?聞こえない!」
「すごいんだってよ、このライブが。どうだ?お前もライブ観て何か感じないか?」
「んなの全くねーよ!こんなのに夢中になるとか、何考えてんだっつーの!」
「どうだか?少なくともこいつは、ここにいる誰よりも心を奮わせているぜ?」
こっちの声が一切聞こえなくなるほどに、香澄だけは彼女たちの作り出す音の世界にのめりこんでいた。心を奪われ、抑えきれない衝動が興奮へと転じていくのを、俺は隣で感じ取っていた。
「見つけた……!私が、キラキラドキドキできるもの……!!」
この時、香澄はようやく出会うことができた。ずっと追い求めてきた瞬間に。
そして今、香澄の中で全てが始まろうとしていた。
夢を撃ち抜く瞬間が。