BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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またお気に入り増えてた……。本当にありがとうございます。これでやる気倍増です。

そのやる気のおかげか、今回はいつもよりかなり長いです。進めるところまで進めようと思ったので。

では、どうぞ。


phrase6 夢への道標

「有咲、待って~。市ヶ谷さん!」

 

「市ヶ谷じゃない!ついてくんな!」

 

翌朝。香澄は速足で歩く金髪の少女を追いかけていた。なぜか少女は、ムスッとして不機嫌マックスな状態だったが。当然、それにも理由はあるわけで……。

 

「てか、何なの?朝から人んちに押しかけてきて!部屋にまで入ってくるとか、マジであり得ないんだけど!?」

 

目が覚めたら、そこには昨日ギターを巡って騒動を起こした少女の姿が。特徴的な髪、鬱陶しい性格。全てが記憶の中にあるままだったが、そもそもなぜ香澄が彼女の家にいたのか。

 

「だって、一緒に学校に行こうと思っておうち行ったら、まだ寝てるから起こしてきて~って、おばあちゃんが」

 

「ったく、そう言う事かよ……。言っとくけど、ばあちゃんが許可しても私は許可してねーからな!?」

 

そんなわけで、彼女は早めに支度を済ませると、逃げるように家を飛び出してきた。もっとも、すぐに香澄も彼女を追いかけ、ものの数分で現在の状況になってはいるが。

 

「つーか、有咲って……!何で私の名前知ってんだよ!」

 

「おばあちゃんがそう呼んでたから!有咲って言うんだよね!有咲っ♪」

 

「何から何までばあちゃんの仕業かよ……」

 

一応香澄と話を合わせてはいるが、当の本人は何とか香澄を巻こうと必死だった。速足で逃れようとする有咲だったが、香澄も負けじと着いてくる。

 

なかなか思うようにいかない。有咲はため息を漏らしながら、どうにか隙を作ろうと様子を伺う。

 

「そういや、昨日の奴はどうしたんだよ。一緒じゃねーのか?」

 

「なーくんは多分、今頃学校に向かってるんじゃないかな~。みーちゃんも一緒だと思う!」

 

「なーだとか、みーだとか、んな事言っても知らねーし。ってか、ならお前は何でここにいるんだよ」

 

「昨日の話の続き!」

 

「昨日って、あの話の事かよ……」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

時は遡って昨日の事。SPACEで行われていた、グリグリのライブが終わってからの話だ。

 

「すごいキラキラ!バンドバンド!バンドやろうよっ!!」

 

香澄はライブを観たことで、幼い時に感じた何かが芽生え始めていることに気づいていた。その原動力であるバンドを、行動力のある香澄が実行に移さないわけがない。すぐに香澄は、俺に翔に話を振っていた。

 

「バンドって、今日のライブで興味出たって事か?」

 

「うん!なーくんと、それに――」

 

「って、私もカウントしてんじゃねーよ」

 

俺は自然と頭数に含まれているんですね……。香澄がそうしたいのは山々だが、それは無理な相談だ。

 

「俺もできたら協力してやりたい。けどな……残念だが、香澄とはバンド出来ないんだ」

 

「えっ、どうして?」

 

「ガールズバンド規定法って知ってるか?」

 

それは、女性でも気軽にバンドの世界に足を踏み入れてほしいとの思いから成立した、一般的なバンドと女性のバンドを明確に区別するためのルールみたいなものだ。

 

規定法と言っても、そこまで複雑なものじゃない。大雑把に言ってしまうと、ガールズバンドは、構成員が全て女性である必要があるって話だ。まぁ、男性が混じったらその時点でガールズバンドとは呼べないしな。

 

「そのうち改正されるって話は聞くが……その規定法がある以上、俺をバンドのメンバーとして数えるわけにはいかないだろ」

 

「う~ん、そっか……」

 

まぁ何を言っても仕方がない。とにかく俺は、直接バンドとして香澄をサポートすることはできないってだけだ。あくまでも、直接の話だが。

 

「大丈夫。練習くらいなら俺にも協力できるし、メンバー探しだって手伝えるさ。けどまずは、香澄とこいつの二人でメンバーを集めるところから始める必要があるな」

 

「はぁ!?おい、ちょっと待てよ!何で私がこいつとバンドする前提なんだよ!さっきも言ったけど、私はやらねーからな?」

 

グイグイと俺に詰め寄り、今にも胸倉をつかみそうな勢いだ。香澄の心には響いたみたいだが、彼女にはうるさい雑音にしか聞こえなかったというわけか……。

 

てか、この下から見上げられてる体勢、少し危ないんだが。彼女も小さいし、それに割とふくらみがあって、谷間が服の間から見えてたりするんだが……。てか、若干当たってる。

 

「お、おい落ち着けって……」

 

「ふん、バンドとか勝手にしてろよ。私、もう帰るから!」

 

目のやり場に困っていたが、彼女が自分から離れてくれたおかげで助かった。だが、バンドの事に関しては何も助かってない。

 

「あ、待ってよ!」

 

「だからどうでもいいんだって!バンドだか何だか知らねーけど――」

 

「きゃっ!?」

 

香澄が彼女を呼び止めた時だった。振り返ったことで前に注意が向いていなかった彼女は、思い切り観客の一人とぶつかってしまった。

 

彼女には怪我がなかったが、相手は尻餅をついて倒れてしまう。香澄や金髪の彼女よりも背は低く、やや幼い印象を受ける、深い青色の髪をした少女だった。

 

……倒れた衝撃で、白い布が見えてしまっていることには触れないでおくが。

 

「あっ、すみません!前見てなかったので……」

 

「かなり勢いよくぶつかったな……大丈夫か?」

 

「ばっ……べ、別に心配しろなんて頼んでーー」

 

「お前じゃねーよ。そっちの……えと、怪我とかないか?」

 

やっぱ直視できないんだけど。俺はわざとらしく目を泳がせながらも、倒れた彼女の身を案じる。

 

「あ、はい……大丈夫です」

 

「そうか、ならよかった」

 

「おい、ちょっと待て!怪我無かったのはいいとしても、お前のさっきの発言は悪意あるだろ!?」

 

人を倒しておいて、何言ってんだ。まぁ、こいつに非があったわけじゃないし、責めるつもりは何もないけどな。

 

倒れた少女は俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がった。ようやく彼女と正面から目を合わせた俺だったが、この子……どこかで見たことがあるような気がする。

はっきりとは知らないが、俺は確かにこの少女の事を知っている。

 

それが一体どこで見た記憶だったのかは、思い出せないんだけどな……?

 

「え、あれ……?市ヶ谷、さん……?」

 

「市ヶ谷……?」

 

と、金髪の少女を見た彼女が、驚いたような反応を示す。名前も知っている辺り、もしかして知り合いなのか。

 

「……っ!か、返して、ギター!」

 

「えっ……あ!ちょっと!」

 

市ヶ谷さんと呼ばれた彼女は、香澄から強引にギターを引ったくる。観客の間を上手くすり抜け、そのまま会場を出て行ってしまった。

 

「待ってよー!えっと、市ヶ谷さん!」

 

「ちょ、おい香澄!?どこ行くんだよ!?」

 

「ごめん、なーくん!先帰ってて!私は、さっきの……市ヶ谷さんを追いかけるから!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

そんな事があって、香澄は保留になってしまったバンドの話をするために、朝から有咲の家まで向かったというわけだった。

 

一緒に登校する間に、少しでも仲良くなって話がしたい。香澄は有咲のペースに何とか合わせて、どうにかきっかけを作れないかと積極的に話を続けた。

 

「あれからすぐにお店出て、追っかけたんだけど……暗くてシール見えなくなっちゃった」

 

「シール?」

 

「うん。あ、ほら見て。ここにも貼ってある。星のシール」

 

そう言えば、このシールは誰が貼ったのか。ふと香澄の頭によぎった疑問だったが、考えても答えは出ない。知っている人もいるのかどうか怪しいくらいだ。

 

「そのシール、マジで星の……はっ、今だ!」

 

「えっ、あれ有咲?」

 

香澄がしゃがみこんでシールに気を取られた一瞬を、有咲は見逃さなかった。すぐに走り出し、香澄との距離を広げることに成功した。

 

で、置いて行かれた香澄は……。

 

「え、待って!何で急にダッシュするの!?ちょ、置いてかないでよ~!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「体調の方は大丈夫か?」

 

「うん!最近は発作も落ち着いてきてるし。薬だってちゃんと持ってるからさ。心配しなくても平気だよ?」

 

「何言ってるんだ。これでも俺は、美羽の兄貴なんだ。少しくらい心配させてほしいし、頼らせてくれよ」

 

SPACEでライブを観た翌日。俺は早朝から仕事に向かう母を見送り、美羽と一緒に学校まで登校しているところだった。

 

始めの数日は登校中にも声をかけられることはあったものの、今では少しづつ落ち着きを取り戻している。こうして美羽と並んで登校できるのが、何よりの証拠だ。

 

「何それ、かっこつけちゃってさ。そこまでガチガチに構えられると、こっちが息詰まりそうなんだけど?」

 

「い、いいだろうが。兄貴にだって、兄貴なりに思う事はあるんだよ」

 

「ふ~ん?でもね、私だって妹なりに迷惑かけたくないって思ってるんだよ?本当に心配してくれてるなら、少しはこっちの気持ちも尊重してよね」

 

「美羽……」

 

「私は、大好きなお兄ちゃんがず~っと変わらないでいてくれたら、それで満足だから。ピリピリしてるお兄ちゃんなんて、私見たくないんだよ」

 

美羽の気持ちを尊重しろ、か……。あぁ、それくらいわかっているさ。今さら言われることでも何でもない。

 

 

わかっているから、辛いんだ。

 

 

「……これからは気を付けるよ。でも、美羽には俺がついているって事だけは、忘れないでほしい」

 

「またかっこつけちゃって……。けど、ありがと。やっぱり私、お兄ちゃんの事が大好きみたい!」

 

美羽にそう言ってもらえると、俺も嬉しいよ。今ここにいる事に、確かな意味が生まれている気がするからな。

 

「そう言えば美羽、お前イヤホンはどうした?」

 

「今日はいいかなって。イヤホン付けてると、周りの目が気になるし。それに、声も聞き取りにくいからさ。発作も最近ないから、家に置いてきちゃった♪」

 

「来ちゃったって……」

 

「心配するのもわかるよ?けど、そう言う特別扱いって、あんまり好きじゃないんだ。人から浮いてるみたいで、1人の世界にいるみたいだからさ……」

 

音楽に関連したことをしている間は発作が起きない。美羽の不思議な性質が学校側に認知され、特別に校内でイヤホンの常時使用を許可されている。

 

だが、美羽はその配慮に甘んじようとしない。美羽が言うには、そうやって周りと違うことをして優遇されたくないという持論がある。

わからなくもないが、自分の体の事だ。素直に甘えてほしいと、兄として思うのだが……。

 

美羽の浮かべた悲しげな表情が、俺の言葉を半ばで止める。さっきも言っていたからな。美羽の気持ちも尊重してほしいって。

 

「そう言えば、香澄さんは?明日香は朝練なんだけど、知らない?」

 

「いや、何も聞いてないな。家にもいなかったみたいだし、もう学校に向かったんじゃないか?」

 

「えぇ~?あの香澄さんが?」

 

「おい、その言い方は香澄に失礼だろ」

 

「あっはは~。あ、でも香澄さんって起きるの遅くなかったか」

 

遅くないだけで、早いとも言えない時間帯だけどな。とか言っている間に、もう正門が見えてきた。もうここまで来るのにも慣れたな。

 

だが、香澄の奴どこに行ったんだ?部活に入ったって話は聞いてないし、あるとすれば……昨日のバンドの話くらいか。SPACEのライブに何かを突き動かされ、星のギター片手にバンドをやると決心し――待て。

 

「あれ、お兄ちゃん?何でいきなり止まったの?」

 

「……いや、香澄のこと考えてたら、何となくあいつの考えてることが分かった気がして……」

 

昨日の出来事。そして香澄の大胆な行動力。思い当たるとすれば、向かっている先は一つしかない。

 

「えっ、何?幼馴染パワーって奴?」

 

「俺知らないんだけど、そのパワー。いや、昨日色々あってさ。香澄がバンド始めるつもりなんだよ。その流れでちょっと、行き先思い当たってさ」

 

「な~んだ。私てっきり、幼馴染以上に親密な関係を意識し始めたからなのかと思ってね~?」

 

「……違うからな?」

 

「その間が怪しいんだけどね?」

 

うるせーな。べ、別に動揺したとかじゃないぞ。ただ、美羽がそんな事言ってからかってきたのに、ちょっと呆れただけだ。

 

「まぁ、それはそれとして……香澄さん、バンドやるんだ?」

 

「あぁ。香澄と一緒に帰ってたら、地面に星のシール貼ってあるのを――」

 

 

 

 

「待ってよー!有咲~!市ヶ谷さ~ん!!」

 

「うわぁ、しつこいな!もう学校だぞ!?」

 

 

 

 

「そうそう。そのシール追っかけたら、その市ヶ谷さんとか言う子に会って……ん?」

 

「ねぇ、お兄ちゃん!後ろから知らない人と香澄さんが走ってくるんだけど!?」

 

「……は?」

 

俺は美羽に体を掴まれて、後ろを振り返る。その先にいたのは、昨日蔵で会ったあの少女。そして、その少女を追いかける香澄。

 

「えええ、お、お兄ちゃん!?あれ、何してるの!?」

 

「いや、俺が聞きたいくらいなんだけど!?」

 

朝から何を鬼ごっこしてんだよ。だが、背景が何となく想像つくのは、やっぱり幼馴染だからなんですかね?

 

 

『てっきり、幼馴染以上に親密な関係を意識し始めたからなのかと思ってね~?』

 

 

いや、違う……と思いたい。

 

「あっ、あんた昨日の……!ちょっと邪魔!どいて!」

 

「会って早々そんな口の聞きか――うぉっ!?」

 

見知った顔と遭遇したことで、憎まれ口を叩く彼女。反論しようとしたが、強引に突き飛ばされて機会を失う。

 

男子の俺でも倒れそうになり、美羽に体を支えてもらう始末。昨日の激突を思い出し、同時にあの小柄な少女の事を思い出した。

 

「あぁ~!行っちゃった……。もっとバンドの話したかったのに……」

 

「お前は何をしてるんだ、香澄」

 

とりあえず、周りに迷惑をかけまくったわけだし、1発軽く殴っておく。

 

「うぅ、痛いよなーくん……。あっ、みーちゃんいたんだ!おはよっ!」

 

「う、うん。おはよう香澄さん。それじゃあ、私はもう行くね」

 

「おう。気をつけろよ」

 

香澄の騒動に苦笑しながら、美羽は中等部の校舎に向かって行った。さっきの彼女の姿はもう見えず、香澄は疲れ果てて俺に体を預けてきた。

 

もう少し周りの事も考えてほしいが……こいつの体力の事もあるし、仕方ない。俺は息が戻るまで、香澄を支えることにした。と言うか、密着しているから息遣いがダイレクトに伝わって仕方ないんだが。

 

 

『てっきり、幼馴染以上にs――』

 

 

違うんだって!一応俺も男子だし、香澄も一応女子だから、女子に密着されてドキドキしない男子なんていねぇってだけだ!

 

あぁ、もう!美羽が余計なことを言うから……。

 

「はあっ、あー走った!有咲ってすばしっこいんだね!」

 

「もう少し落ち着いてから話せ。で、有咲って?」

 

「市ヶ谷有咲さん!昨日一緒にライブ観たでしょ?」

 

あいつの下の名前か。てか、いつの間に名前知ったんだよ。

 

「おはよう香澄、翔。えと、香澄かなり疲れてるみたいだけど、これはどういう状況で……?」

 

「ん、沙綾か。香澄が市ヶ谷さんとか言う奴と、朝から鬼ごっこしてた。それで俺にもたれかかってる。正直周りからの視線は痛いぞ」

 

「ご、ご苦労様……。けど香澄、市ヶ谷さんと知り合い?」

 

「あ、さーやおはよう!有咲の事知ってるの?」

 

「知ってると言うか、ある意味有名人だから。中1から成績は学年トップだけど、全然学校に来ないって」

 

学年トップ!?あの金髪ツインテールが!?あんな口悪い奴でも、頭はいいんだな……。

 

「来ないって、不登校って事か?」

 

「どうなんだろ。たまに学校には来るし、不登校……ってわけでもないと思うな。ただ……」

 

「ただ?」

 

「あんな市ヶ谷さんは初めて見たよ。普段は何と言うか、もっと大人しくて……上品?」

 

何だそれ。俺たちが昨日見た姿とまるっきり違うじゃねーか。例えるなら、猫かぶりってとこか。

 

「そうなのか。実は昨日、あいつと色々あってな」

 

「星のシールがあって、そしたら蔵があって、星のギターがグワーってなって、ライブ観てキラキラになったんだ!だから私、バンドやるの!ドキドキする!」

 

「……えっと、ごめん。話が上手くつながらないから、翔も説明してくれない?」

 

「言われなくても、そのつもりだから安心しろ」

 

説明へたくそか。沙綾も何とか理解しようとしたが、そもそも事情を知っている俺ですらわかりにくい。要領も何も得ていないので、俺が順を追って一から説明した。

 

「へぇ、そんなことがあったんだ。説明ありがとね」

 

「こいつがもっとマシな説明してたら、俺の出番はいらなかったんだけどな」

 

「わ、私がそう言うの苦手だって、なーくん知ってるでしょ?だから、その……フォローってことで……えへへ」

 

「目をそらしながら言うな」

 

ってか、俺がいなかったらどうしてたんだよ。もう詰んでるぞ、多分。

 

「それで香澄、バンドはするの?」

 

「うん!あのギターと昨日のライブの事が、頭からず~っと離れないんだ!こんな気持ちになったの、あの時以来だもん!」

 

「ま、今はメンバー集めの最中だけどな。とりあえず、香澄はさっきの市ヶ谷って奴をメンバーに入れるつもりみたいだぜ」

 

「えっ、市ヶ谷さんを?なかなか難易度高い相手だけど、大丈夫?」

 

「もっちろん!」

 

その根拠はどこから来るのか。さっきだって逃げられてたのに、あいつがしっぽを見せて捕まってくれるとは思えないんだが。

 

と言うよりも、他のメンバーはどうするかを考えないといけない。大体5人編成が基本だし、最低でも4人は欲しい。

市ヶ谷が入れば3人になるが、そもそも香澄に当てはいるのか。まぁ、俺にも当てはいないんだが……あ。

 

「そうだ沙綾。せっかくだし、沙綾も香澄のバンドに入らないか?」

 

「えっ……私も?」

 

「放課後ダメだったら、休み時間でもいいと思う。とにかくメンバーがいないと、バンドにはならないからな」

 

「それいいね!ねぇさーや、一緒にやろうよバンド!」

 

楽器ができるかどうかは、まず置いておく。問題は、香澄に協力してくれるかどうかだ。その気になれば、時間はかかっても楽器は弾けるようになるからな。

 

「……ごめん、私はいいよ。やっぱり放課後は時間ないし、他の人を当たってよ」

 

「そっか……。さーやとバンド出来たら、楽しいと思ったんだけどな」

 

だが、沙綾の都合が取れないのなら仕方ない。諦めて他の人を探すしかないだろう。

 

「でも、香澄見つけたんだ。キラキラドキドキできるもの。自己紹介の時から、香澄ずっと言い続けてたよね」

 

「うん……!私今、すっごく嬉しいんだ!ずっと探してたものが、ようやく見えてきて……目の前に広がってる!」

 

「フフッ、本当に楽しそうだね、香澄。応援するよ」

 

「ありがとー、さーや!よーし、まずは有咲だ!絶対バンドやるぞ~!!」

 

 

 

友に背中を押され、香澄は今動き出す。

 

 

 

夢の舞台への一歩は、始まったばかりだ。

 




や、やべぇ……。何か翔の思考が変態になりつつあるんだけど……?表に出さない辺り、ムッツリスケベか?(言ってる場合か)


けどまぁ……香澄たちに囲まれた学園生活だろ?



………………



…………



……



いっか、これで(おい)

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