BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星 作:ティア
(本小説の評価欄を確認中……)
……知らない間に評価ついていたんですが。
それも、0とか1(よくて2)ならまだしも、9だって!?マジで!?
もうありがとうございます……本当に。評価なんてつけていただいた事ないので、純粋に喜んでました。しかも9なんて……気に入ってもらえて何よりです。
お気に入りも増えていたので、そちらも感謝を。20人超えるなんて、つながり(作者が投稿している小説の一つ)でもかなり時間かかったからなぁ……。
さて、今回はあの子のメイン回。と言うか、彼女の要素しかない。地味にオリジナルだったりするね。
では、どうぞ。
香澄がバンドへの決意を固め、まずは有咲を誘うと言う目標を立てた日の昼休みの事。俺は少し腹に痛みを感じて、花を摘みに行っていた。登山家かよ。
香澄は沙綾と中庭で昼飯を食うみたいで、今からそっちに向かうつもりだ。結構立派な中庭で、ちょうどいい木陰もある。昼休みを過ごすにはうってつけな場所だ。
「香澄もガチでやる気って感じだな。俺も何かできる事は協力してやるか……」
こっちにはこっちでやることもあるが、まだ動く時じゃないしいいだろう。それに、このまま香澄が行き詰まるのを見ているのも俺が嫌だ。
まぁ……もしかしたら、直接的ではないとしても、少しは俺の目的を達成するためにもなるだろうし。
「だとしても、まずは本当にメンバー探しか。って言っても、クラスの人しか知らな……ん?」
と、花摘みから戻った俺は、廊下に見慣れた人影がある事に気づく。彼女は確か……。
「よう、りみ。1人か?」
「あっ、し、翔君!」
牛込りみ。俺と同じA組の生徒で、かなり大人しい。って、今更言うのもなんだけどな。自己紹介の時に緊張でうまく話せなかった生徒が、この子だ。
けど、俺は嫌いじゃない。むしろ好きだ。何故かと言われると、少し長くなるんだが……。
「こ、これからお昼にしようかなって。飲み物買いに行くところなんだ」
「自販機こっちだったよな。それはいいけど、学校だからってそんなにオドオドする必要はないぞ?」
「そう、だよね。ごめんね、翔君」
少し照れ臭そうにしながら、りみは俺の名前を呼ぶ。学校と言う事もあってか、まだ少しぎこちないように見えるけど。
と、こうして互いに下の名前で呼び合っているわけだが……実は知り合ってからそう時間は経っていない。と言うより、明確に互いの事を知ったのは昨日の話だ。
なら、俺たちはどうやって仲良くなったのか。それは、昨日のSPACEのライブ。香澄が有咲を追いかけてSPACEを出て行った後の話にさかのぼる。
***
「ごめん、なーくん!先帰ってて!私は、さっきの……市ヶ谷さんを追いかけるから!」
「ちょ、おい香澄!?」
香澄も出てった……。付き合わせておいて、普通に置いて行かれてしまった。この場に残されてしまったのは、俺と見覚えのある少女だけ。
深めの青色をした、ショートヘアの女子。つい最近見たはずなのに、どうして思い出せないんだよ。くそ、俺の記憶力を呪いたい。
「あっ、あの!」
「……はい、何でしょう?」
「さっきはその、ありがとうございました……成川君」
「俺の名前……」
うん。知り合いだよね、完全に。え、マジで誰だっけ?このままだと、向こうに失礼でしかないんだが。
「あ、あれっ?違いましたか?花女の1年A組、成川君ですよね?私、同じクラスの牛込りみですけど……」
そうだ、牛込さんだ!自己紹介でうまく話せなかった、あの子か!だから見覚えがあったのか。
てか、クラスメイトの顔忘れるとか……物覚え悪すぎるだろ。
「い、いや合ってるよ。俺はただ、牛込さんがライブ会場にいるなんて思ってなくてさ……」
「お姉ちゃんがグリグリのギターボーカルなんです。だから、今日のライブはどうしても見たくって」
そう言えば、グリグリのメンバーの中に牛込って人がいた気がするな。その人の妹が、この子だったのか。とてもボーカルで激しく歌っていた女の子の妹とは思えないほど、性格が物静かと言うか……。
「そうなんだ。お姉さん、かっこよかったよ」
「あ、ありがとうございます。成川君」
そんなに畏まらなくてもいいのにな。歳が離れているならわかるけど、俺たちは同級生。しかもクラスメイトだ。もっと気軽に接してくれてもいいんだけどな。
「あの、成川君はどうしてここに?市ヶ谷さんと、戸山さんも一緒だったよね?」
「あー……それは、話すと長くなるんだけど……」
ライブも終わり、スタッフたちがステージの片付けに入った。このままここで話していては、片付けの邪魔になってしまう。それに、SPACEも閉められない。
「せっかくだし、今から飯でも食いに行かないか?俺、腹減っててさ。ここも閉まるだろうし、牛込さんも何も食べてないんじゃないか?」
「え、そんな!私はいいですよ!一緒にご飯なんて……」
グ~……。
「「…………」」
キュルキュル……グゥ。
「う、うう……」
「体は正直なんだから、遠慮なんかしないでさ。あ、俺と一緒ってのが嫌なら無理強いはしないけど」
「そ、そんなわけないやん!うち……あっ、関西弁!?」
ハッと口を押えてごまかそうとしていたが、時すでに遅し。俺に関西弁を聞かれたことで、余計に恥ずかしさを募らせていた。
「うぅ……やっぱり出ちゃうな。関西弁……」
「出身が関西なのか?」
「うん……。中学の時にこっちに引っ越してきて、関西弁はなるべく使わないようにしてるんだ」
「そうなのか?俺はいいと思うけどな。変じゃないし」
それに、俺は関西のノリって面白いし、好きだと思ってるけど。まぁ、本人が気を付けてるのなら無理強いする必要もないよな。
「とりあえず、場所を変えよう。この辺りだと……近くにファミレスがあったな。そこに行くか」
「あ、ありがとう成川君。何か、恥ずかしいところ見られちゃって……」
「いいって。俺も腹減って仕方ないしな。じゃ、行くか」
***
「……ってことでな」
「だから戸山さんもいたんだ……」
俺はファミレスに入った後、適当に料理を頼んでから今日の話を説明する。星のシール、そして星型のギター。そのきっかけを作ったのが、牛込さんが『市ヶ谷さん』と呼んだ少女だと言う事も。
牛込さんは俺の話に真剣に耳を傾けていた。性格が真面目なのもあるかもしれないが、あの場に俺たちがいた理由も気になっていたのだろう。時々相槌を打ってもらいながら、何とか一通り話を済ませた。
にしても、緊張するな……。異性と二人きりで食事とか、初めての事だからな。
香澄とはあるけど、あいつは異性と呼ぶにはちょっと違うし。美羽は家族だしな。牛込さんも、ほんのり頬を染めているみたいで、緊張はあるようだった。
「戸山さん、バンドするってことなんですか?」
「だと思う。ただ、俺はメンバーとしては協力できないからな。別の人を探せとは言ったけど」
香澄なら、その点は心配ない。まだ1ヶ月も経っていないが、同学年の人脈は広いはずだからな。俺が知らない間に、顔も知らない奴とバンド組んでそうだな、あいつ。
「ガールズバンド規定法があるから、ですよね」
「おっ、よく知ってるな」
ガールズバンド自体がまだまだ認知度が低いからな。その事を、我らがライブハウスSPACEのオーナーも嘆いていた記憶がある。
「私もお姉ちゃんの影響で、音楽は好きなんです。ベースもちょっとだけ弾けるんですよ」
「へぇ、ベースやってるんだな」
「成川君は楽器は何かやってますか?」
「翔でいいよ、牛込さん。俺は――」
それから俺たちは、音楽の話で盛り上がった。どんなジャンルが好きなのか、弾いている楽器の話など。俺は音楽の知識はそれなりにある方だが、牛込さんもなかなかだった。話も合うし、普通に楽しい。もう緊張はどこかに行ってしまった。
話が弾むと、音楽以外の話もするようになった。趣味だったり、好きな食べ物の話になったり。牛込さんがホラー好きだと知った時には、正直驚いたけど。
「俺、こう見えて甘い物とか好きなんだよな。スイーツとか、また食べに行きたいなって」
「そうなんだ。私も、チョコが好きで……」
「お、牛込さんとはとことん気が合うな。俺もチョコ系は大好きだ」
「本当!?うち、チョココロネ大好きなんだ!特にやまぶきベーカリーのは最高で、め~っちゃおいしいんだ~♪」
やまぶき、って……沙綾の家のパン屋か。そう言えば、まだ行ったこともない。どんなパン屋なのか、興味あるな。
「あっ、また関西弁!うぅ……///」
「ははっ、いいじゃん関西弁。何か今の牛込さん、すごく生き生きしてるよ」
「え……そ、そうかな、翔君」
「あぁ。音楽の話してる時も、他の話してる時も、牛込さん楽しそうだった。教室でも、もっと積極的になったらいいのに」
内気なのかもしれないが、こうして俺と打ち解けてくれたんだ。きっかけさえあれば、牛込さんはきっとクラスのみんなとも仲良くなれるだろう。それこそ、香澄なんかとはいい関係になれそうなんだけどな。
「あ、ありがとう。そんな風に言ってくれたの、翔君が初めてだな……」
「別にお礼を言われることじゃないって。ただ、牛込さんと話しているのが楽しかったからさ。自分から話題振ったり、話を進めたりしてたから、今の姿を学校でも見せたらいいって思ったんだよ」
「うん……。でも私、緊張して上手く話しかけられないし、ビクビクしてしまうから……。引っ越してきたこともあって、本当に友達もいなくて……」
「なら、俺が友達第1号ってことでいいじゃん。ここから友達、増やしていこうぜ?」
「……っ!」
俯いて後ろ向きな発言を繰り返していた牛込さんだったが、俺の言葉にハッと顔を上げる。何か光明を見出したような、力の籠った眼差しを俺に向けていた。
「さて、もう少し話していたいところだけど……そろそろ帰るか。時間も遅くなってきたしな」
「えっ、あ……本当だ。私も帰らないと」
ライブを観た後にそのままファミレスに入って話し込んでいたからな。いつの間にか、時間の事をすっかり忘れてしまっていた。
俺たちは会計を済ませて、ファミレスを後にする。牛込さんが自分の分は払うと言っていたが、そこは男だ。女の子にお代を持たせるわけにはいかないし、俺が二人分支払うことに。店員からニヤニヤされてしまったのは少し恥ずかしかったが。
「うっ、寒っ……。風が冷たいな」
「あの、何から何までありがとう、翔君。でもやっぱり、迷惑じゃ……」
「何言ってんだよ。牛込さんと一緒に居られて楽しかったから、そのお礼も兼ねて、な?」
「あ、た、楽しいって……えっと、その……ありがとう///」
さっきから『ありがとう』としか聞いてない気がするな。でも、この『ありがとう』は少し違ったニュアンスを含んでいるように聞こえた。平たく言えば、前向きな感謝。
「どういたしまして……なのかな?でも、本当に楽しかったよ。また明日からも、学校でいろんな話してほしいな」
「う、うん!もちろんだよ!むしろ、私の方から頼むくらいなのに。それに……」
「それに?」
そこで言葉がいったん途切れた。言葉を探していると言うよりは、言葉を出そうと頑張っているような空白。指を絡めて、もじもじと俯いている牛込さんは、小動物のようにか弱く見えた。
暗くて顔は良く見えないが、かすかに見えた頬は少し赤みを帯びている。待つこと数十秒。牛込さんはようやく前を向き、途切れた言葉を絞り出した。
「その……名前」
「え?」
「私も翔君って、呼んでるから……私の事もその、りみ、って……下の名前で、呼んでくれないかな?」
何を言い出すのかと身構えていたが、そんな事だったのか。だが、当の本人は耳まで顔を真っ赤にして、チラチラと視線を向けてくるばかり。牛込さんにとっては、勇気のいる行動だったんだな。
まぁ、俺にとっては破壊力のあるチラ見で、ドキドキしているのが現状なんですが。
「……えと、ダメですか?」
「あ、いや。ダメじゃないよ。確かに、俺だけ他人行儀みたいに呼んでたから、ちょっと申し訳ないなって思ってただけ」
「そ、それじゃあ……!」
「もちろん。これからは、ちゃんと『りみ』って呼ばせてもらうよ」
辺りは暗いが、太陽のように明るいりみの笑顔が広がる。恥ずかしさとは違った赤みが、りみの頬を染めていた。
ただ名前を呼んだだけなのに、そんな嬉しそうな顔をされると……こっちが恥ずかしくなってしまう。俺は照れ隠しで話題を変えることにした。
「そ、そうだりみ。俺たちまだ、連絡先交換してなかったよな。今からやっておくか」
「あ……うん!」
俺はスマホを取り出し、牛込さんと連絡先を交換する。その一つ一つの行動が嬉しそうで、結局見ていて照れ臭い。香澄じゃないが、キラキラと目を輝かせ、交換した俺の連絡先を眺めていた。
「えへへ、友達出来た……♪」
うん、何と言うか……そう、キュンとする。
「じゃあ、帰ろうか。ここにいても、寒いだけだしな。う~寒い……」
「……っ、う、うん」
スマホをしまい、俺はりみと並んで歩き出す。SPACEから駅までは少し距離があるし、しばらくは二人だな。また違った緊張感に襲われながら、俺は足を進めた。
あ、でもよく考えてみたら……。
「ところで、りみって家どこだ?俺は電車通学だから、駅まで行くけど」
「私はこの辺りのマンションだから、駅まで一緒だね」
「そうなのか。ってことは、もうすぐ着くな」
歩いている間に、もう駅のすぐ近くまで来ていたみたいだった。そろそろこの時間も終わりだろう。少し名残惜しいけど、もう会えないわけじゃないからな。
「でも、今日は本当に楽しかったよ。りみと色んな話できたし、案外香澄に振り回されて正解だったかも」
「翔君は、戸山さんと幼馴染なんだよね。羨ましいな……」
「そうなのか?あいつといると、ロクな事ないぞ?」
別に何か意識しているわけでもないし、手の付けられない子供みたいなものだし。まだまだ俺がいないとダメな……って、香澄の話になってしまうところだった。
「う~ん……。私、まだ戸山さんの事はよくわからないけど……入学式の時の自己紹介聞いて、すごくかっこいいなって思ったんだ」
「そうか?あいつ、かなりぶっ飛んだこと言ってたぞ?」
「でも、自分がやりたいことをまっすぐに伝えられる戸山さんを見て、私もあんな風になりたいなって思ったんだ……!」
あの自己紹介が、りみに大きな影響を与えていたなんてな。本人は知る由もないが、その姿勢が誰かの背中を押したのは紛れもない事実だった。
俺もあんな風に、背中を押せる日が来るのだろうか……。
「あっ、もう駅に着いたね」
「ん、本当だな。じゃあ、今日はここでお別れってことになるな」
何だか短いようで長い一日だった。香澄に振り回され、金髪の少女に出会って。その結果、なぜか同じクラスのりみと飯食うことになって。
色々あったが、充実した時間だった。それも、りみがいなかったら思えなかっただろう。
「……そうだね、翔君。また明日」
「おう。これからもよろしくな、りみ」
胸の前で小さく手を振って、りみは家の方角へと帰っていく。何回かチラチラとこっちを見ていたが、いつしかその姿は消えていた。
牛込りみ。また1人、俺は花女で友達ができた。