BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星   作:ティア

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またお気に入り増えてました。ありがとうございます。この短期間で20人超えは本当初めてだな……。2年やってるつながりと同じ人数だよ?


あ、新イベント始まりましたね、ハロハピの。


クールか……。と言うか、ハロハピ自体そんなにメンバーが揃っていない。星4も薫とはぐみだけだし、星3も全然だし……。


……うん、クールポピパだな(え)


センターはフェス限のりみで行くので、見かけたらよろしくお願いします。あれ、ガルパの話になったな(おい)

こっちもどんどん進めていくので、よろしくお願いします。


phrase8 踏み出す君の背中を押すのは

そんなわけで、俺はSPACEでのライブ後の一時を経て、牛込りみと仲良くなることができた。

 

まだ昨日の今日だし、元々後ろ向きな性格な事もあって、少しぎこちなくはなっているんだけどな。もっと昨日みたいに話していたいとは思ってる。

 

「りみはこれから昼なのか?」

 

「うん。飲み物買ったら、1人で屋上に行くつもりで……」

 

「だったら、俺と一緒に食べようよ。香澄に、同じクラスの山吹沙綾もいるけど」

 

「えっ、いい……の?」

 

「当たり前だろ?きっと香澄や沙綾も、喜んで迎えてくれるって」

 

俺はりみを昼食に誘い、香澄たちの待つ中庭へと向かう。その途中に自販機もあるし、りみはそこで飲み物を買っていくことにした。

 

「それで、戸山さんはどうなったの?」

 

「あぁ。市ヶ谷さんをバンドに引き込むんだ!って意気込んでてさ。俺も何かしらのサポートはしてやりたいんだよな」

 

「そうなんだ。バンド、か……」

 

ん?この反応、もしかして脈ありか?まだ決断はできていないみたいだが、もしかしたらメンバーになってくれるかもしれないぞ。

 

「やっぱり興味あるのか?お姉さんもバンドしてるし、りみだってベースやってるんだろ?」

 

「う、う~ん……。バンドに興味はあるけど、私……どうだろ……。やりたい気持ちは、あるって言えばあるけど……」

 

ないと言えばないって事か?何とも微妙な回答に、俺はどう返したらいいのかわからない。

 

「あ、ごめんね。何か、あいまいな返事になっちゃって……」

 

「いや、いいよ。無理にバンドさせるのも、りみに悪いしな。もしやる気があるなら、その時は香澄と一緒にバンドしてやってくれ」

 

「うん、そうだね……。あ、私飲み物だけ買いに行っていいかな?」

 

いつの間にか、もう自販機前に着いていた。俺はりみの抱えていた紙袋を持ち、りみは制服から財布を取り出しながら自販機へと向かう。

 

そういや、この紙袋の中身って何だ?何だかいい匂いがするし、それにこの紙袋のロゴ……やまぶきベーカリーのか。へぇ、初めて見たな。

 

とすると、中身はパンか。俺はちらりと中をのぞき、何のパンを買ったのか拝見。メロンパンか?クロワッサンか?いや、りみはチョコ好きだって言ってたし、確か昨日も言ってたはず。チョココロネが大好物だって――。

 

 

 

(って、それにしても大好きすぎないか!?チョココロネばっか……いや、チョココロネしかない!?)

 

 

 

数まではわからなかったが、紙袋の中にはチョココロネが詰められていた。それ以外の種類のパンはない。もっと色んなパンを買えばいいのに、マジでチョココロネだけかよ……。

 

俺はりみのチョココロネ好きにある意味感心しながら、ふと自販機に目を向けて――。

 

「――ひゃあ!ああっ、えっと……!?」

 

「牛込さん、昨日いたよね!バンドやってるの?いつから?何弾くの?歌?ライブいつ!?」

 

おい、待て。なぜりみが香澄に絡まれている。そして矢継ぎ早に質問をするな。ただでさえ臆病なのに、香澄について行けてないだろ。

 

「ちゃう!あっ、しま……じゃなくて、あのっ!」

 

「関西弁!?可愛いっ!こっちに引っ越してきたの?」

 

「う、え、えと……」

 

「こら、香澄。少しは抑えろ」

 

俺は香澄の頭をコツンと殴り、一旦話を止めさせる。香澄は痛そうにしていたが、りみは安心したような目を向けてきた。

 

「いたた……叩かなくてもいいのに~!私は牛込さんとお話ししてただけだよ!」

 

「だったらもっと落ち着いて話せ。そんなに一度に質問したら、りみが答えられないだろ」

 

「あ……そっか。ごめんね、牛込さん」

 

律儀に謝った後、香澄はりみの隣の自販機でオレンジジュースを買っていた。りみはイチゴオレだったけど。

 

「う、ううん。大丈夫だよ。戸山さんが話しかけてくれるなんて思ってなかったから、ちょっと嬉しいな」

 

「えっ、本当!?ありがと~牛込さん!」

 

で、テンションが上がって抱き着くと。うん、いつも通りだな。じゃない。

 

「ひゃあ~!?え、戸山さん!?」

 

「だから止めろって。お前は事あるごとにハグしないと気が済まないのか」

 

「えへへ……つい、ジャーン!ってなっちゃって……」

 

ジャーンって何だよ。俺わかんねぇよ。頼むから、日本語で説明してくれ。

 

「いや、そもそも……お前中庭で沙綾と一緒にいたんじゃないのかよ」

 

「ちょっと飲み物だけ買いに行こっかな~って」

 

あぁ、はいはい。状況はわかりましたよっと。

 

「でも、なーくん。さっき牛込さんの事、下の名前で呼んでたけど……」

 

「お前が俺を置いて帰った後に、色々あったんだよ。それで仲良くなっただけだ」

 

「え~?なーくんだけズルいよ~!」

 

「ズルいとか言うな」

 

香澄が俺を置いて行ったのが悪い。俺にとっては楽しい時間だったから悪い気はしないが。

 

「でも、牛込さんもライブとか観に来るんだね!私は昨日が初めてだったんだ!」

 

それもりみには話したけどな。

 

「お、お姉ちゃんがグリグリのギターで……」

 

「えっ、そうなの!?お姉さん、すごいかっこよかったよ!」

 

「う、うん!」

 

「すっごいキラキラしてた!」

 

「うん……!」

 

「ライブやりたいよー!」

 

「うん……」

 

「わぁ!やろー!」

 

「う……ん?」

 

「「……えっ!?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「バンドやるんだ、牛込さん」

 

「りみりんすごいんだよ!えと……何だっけ?」

 

「ベースだろ?」

 

「そう、ベース!」

 

俺たちは沙綾を待たせていた中庭に向かい、バンドの話をしながら昼食を取っていた。話の流れでいきなりバンドに加入させたときには驚いたが、りみも断る素振りは見せていない。

 

「翔、牛込さんと仲良かったんだ」

 

「昨日香澄とライブ観たって言っただろ?その後、香澄が勝手に帰ってな。それから、りみとファミレス行って色々話したんだ」

 

「いいな~。なーくん、私がいない間にそんなことしてるんだもん……」

 

「やらしいことしてるみたいに言うなよ!?」

 

とんだ被害者だ。沙綾にも笑われてるし……くっ、何と言うか、可愛くて様になってるな。言い返そうにも言い返せない。

 

「でも、ちょっとだけだよ……。私、お姉ちゃんみたいにベース上手くないし……」

 

「ちょっとでもすごいよ!それに、お姉さんはお姉さんだよ!」

 

「そ、そうだよね……」

 

うん?どうも歯切れが悪い気がするな。協力してやってくれとは言ったが、どうも本調子じゃなさそうだ。まだ迷っているのか?

 

 

もしかして……無理に付き合っている、なんてことないよな……?

 

 

「牛込さん、嫌なら断ってもいいんだよ?」

 

と、先に沙綾が助け舟を出してくれた。りみの様子が少しおかしいことには気づいていたみたいだな。にしても、マジで沙綾は空気を読むのが上手い。ナイスフォローだ。

 

「ひどーい、りみり~ん!」

 

「ひどくない。りみの気持ちだって優先するべきだ。香澄は、嫌な奴にバンドを無理やりさせてまでキラキラドキドキしたいのか?」

 

「そ、それは……」

 

自分の発言が軽率だったと気づき、香澄は黙り込む。確かに自分の求めた気持ちのために、バンドはやりたいと思っている。だが、そのために手段を選ばないやり方を行使するのは、間違っているはずだ。そこは香澄にも理解してくれたみたいだ。

 

「嫌やない……あっ、嫌じゃないよ。戸山さんが誘ってくれて、私……。それに、翔君も」

 

「俺も?」

 

「戸山さんの力になってくれって。一緒にバンドしてほしいって、言ってくれたから……。だから私、勇気だしたの……」

 

そうか。俺の言葉が、もう一押しを決めるきっかけになったのか。てか、今ちょっと関西弁になりかけたよな?

 

「りみり~ん!ありがとぉ~!!」

 

「ひゃっ、と、戸山さん!」

 

こいつは、また抱き着いてやがる。俺は香澄の頭を叩いて、若干嫌そうにしているりみから引きはがす。このやり取り、もう2回目だからな?

 

「うぅ、痛い……。あっ、りみりん!私の事、香澄って呼んでよ!戸山さんだと、何か……息苦しい?」

 

「お前でも、息苦しいなんて難しい言葉使えたんだな」

 

「あ~今のは言っちゃいけなかったよ!もう、怒ったよなーくん!私だって、それくらいの頭はあるよー!」

 

ポカポカと俺の肩を叩く香澄だったが、正直痛くも何ともない。むしろほほえましいくらいで、沙綾とりみは止めようともしなかった。

 

「うりゃうりゃ~!観念したかー!」

 

「いや、何でだよ」

 

「あっ、そう言えばりみりん。さっきからずっと気になってたんだけど……」

 

「えっ?何だった?」

 

 

 

「……ベースって、何?」

 

 

 

「え?」

 

「あはは、香澄……」

 

「そ、そこからなのか……」

 

あまりにも無知な香澄に、俺たちは頭を抱えるしかない。俺は音楽に詳しいから知っていたが、沙綾ですら知っていたような反応だぞ?りみに関しては、聞き返すしかできなかったらしい。

 

あのギターに一目ぼれしてバンドを始めようとは言っても、演奏技術や楽器の知識があるわけじゃない。まだまだ素人同然だからな。わからなくもないが……せめて、どんな楽器があるのかは把握してほしい。

 

「てか、さっきからりみの話ばっかだけど、あの市ヶ谷とか言う奴はどうなったんだよ。お前、休み時間もどっか行ってただろ」

 

「あっ、それがね……有咲、早退しちゃったみたいで……」

 

家に帰ったって言うのか?朝は元気に走ってたのに、具合が悪くなったのか?それとも仮病?

 

あ、でも沙綾が言ってなかったか?市ヶ谷って奴、学年トップの成績を持ちながら、ほとんど学校には来ないことで有名だって。

 

 

とすると……仮病かよ。

 

 

「ねぇ、香澄?さっき教えてくれた、星のギター……だっけ?スマホで調べたけど、この中にある?」

 

「えっとね……あっ、これ!へぇ~ランダムスターって言うんだ……!」

 

「どれどれ……?何か刺さりそうだな、これ」

 

「言われてみればそうかも」

 

ランダムスター。沙綾が調べた情報によると、ネット上でそれなりの価値がついていると言う。熱狂的なファンも多くいるみたいで、現在オークションに出品されているものもあるとか。

 

その金額、何と30万近く。とても手の出せる代物じゃない。俺は委縮しながらも、それだけの価値のあるギターだったのだと感心する。

 

それ以上に、そんなギターが蔵に無造作に放置されていたという事実に、不満を覚えてもいたけどな。

 

「ね、りみりん!私、バンド初めてで、楽器も弾いたことないんだ!だから、色々教えてよ!」

 

「え、私が教えるなんて、あの……」

 

「いいんじゃないか?経験者なんだろ?」

 

「翔君まで……。あ、あの香澄ちゃん」

 

「はい、先生!」

 

「えぇっ!?や、やめてよ香澄ちゃん~!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「じゃあね、美羽~!また明日ね~!」

 

「うん!またね~!」

 

その日の放課後。美羽は友達に別れを告げて、帰路に着こうとしていた。部活にも入っていないため、帰るのは1人だ。電車通学の友達も、今はみんな部活に励んでいる。明日香も水泳部があるため、結局美羽だけ。

 

「今日はお兄ちゃんもバイトだし、帰ったら何しよっかな~?」

 

ギターでも弾こうか。今練習している曲もマスターしたいし、新しく弾きたい曲もある。今日は特に予定もないから、遠慮なく自分の時間に費やそう。そう思いながら、美羽は足を進める。

 

「あっ、みーちゃんだ!」

 

と、そんな美羽を呼び止める声。親し気に、みーちゃんと呼ぶ人は記憶の中では1人しかいない。

 

「香澄さん!今から帰りですか?」

 

「ううん。ちょっと行きたいところがあるから、まだ帰らないよ。みーちゃんは?」

 

「私は暇なんで、帰ってギターでも弾こうかなって」

 

身体の前でギターをかき鳴らすような仕草をしてみせる美羽。その動作を見た香澄は、バンドをはじめようとしていることを美羽に教える。

 

「あっ、そうだみーちゃん!私ね、バンドしようかなって思ってるんだ!」

 

「え、バンド!?」

 

「うん!まだメンバーは1人しか集まってないんだけど……これから集めるんだ!」

 

香澄がバンドを始めると聞き、美羽も黙ってはいられない。つい先日、美羽はギターの演奏を香澄に見せたばかり。その時の影響を受けたのなら、美羽にとっても嬉しい話だったからだ。

 

「香澄さん、バンドやるんですね!何の楽器にするんです?」

 

「ギター!昨日、赤い星のギターを見つけて、キラキラドキドキしたんだ!」

 

「星のギターって……もしかして、ランダムスターですか?」

 

「うん。そんな名前だった気がする」

 

「え、それってすごくレアなギターじゃん!何かのイベントの開催記念に作られたギターで、全国に500台しかない限定品なんだよ!しかも赤い星型のタイプは、中でも数台しか生産されていないレア中のレア!もうギター好きなら黙ってなんかいないよ!?」

 

今となっては幻のギター。それもかなりのレア物だ。美羽の熱も上がり、あの香澄ですら圧倒されてしまうほどの饒舌ぶりを見せていた。

 

「そ、そうなの!?みーちゃん、詳しいね!」

 

「もっちろん!私だって、ランダムスター欲しかったんですよ……。ネット通販もすぐに売り切れ。オークションで出されていないか色々調べてみましたけど、それでもダメ。何とか見つけたんですけど、もう値段が80万くらいで……」

 

「は、80万……」

 

とても手の出せる代物ではない。社会人ですら、購入をためらってしまうほどの金額だ。子供なら、なおさら手が届かない。

 

「まぁ、ランダムスターの話はまた別として……香澄さんがバンドかぁ……。それも、ギターするなんてね」

 

「あっ、そっか!みーちゃんもギターやってるんだ!何だかお揃いって感じするね!」

 

「お揃いかぁ……。私としては、楽器なんか全然やったことなかった香澄さんが、私の大好きなギターに興味を持ってくれたってことが、本当に嬉しいんだよね」

 

「みーちゃん……」

 

同じ世界に立てることが嬉しくて。ギターに触れ、そこからバンドと言う世界に踏み出そうとする香澄を、美羽は祝福していた。今の言葉は、美羽なりのそんな思いが込められていた。

 

香澄も、美羽が自分の事のように喜んでくれていることに、笑みを浮かべずにはいられなかった。口元が緩み、それを見た美羽もまた、にこりとほほ笑みかける。

 

 

 

 

その笑顔が崩れたのは、一瞬の事だった。

 

 

 

 

「……う、ぐっ……ゴホッ!が……ぐ、ぅ……!」

 

「みーちゃん!?」

 

 

美羽の抱える重い病。その発作が、今起こった。

 

 

美羽は胸を押さえ、苦しさで歪む視界が余計気分を悪くする。固い地面に膝を打ちつけるのも気にせず、美羽は荒い息遣いのままうなだれる。

 

「みーちゃん、大丈夫!?しっかりして!」

 

「あ、ぐぁ……ぐ!ゴホッ!!」

 

「みーちゃん……」

 

香澄は美羽の背中をさすり、声をかける事しかできない。咳はひどくなるばかりで、香澄にはどうすることもできなかった。

 

昔からそうだった。美羽が病気で、苦しんでいることも知っている。この発作も、どれだけ見てきたのかわからない。

 

そのたびに、香澄は自分の力のなさを痛感する。励まそうと言葉を並べても、苦しみを取り除くことはできていない。薬で痛みを消し去ることは簡単だ。香澄だって、それくらいの事はしてやれる。

 

 

でも、苦しみを肩代わりすることはできない。

 

 

ただ見ているだけ。外面上でしか、力にはなることができない。そんな情けない自分を見るのが、どうしても香澄は辛かった。苦しむ美羽を見る以上に、誰かを勇気づけるだけの力がないのだと痛感してしまうから。

 

「か、すみ、さ……かば、ゴホッ!前、の……ケット……ゴホッ!!」

 

「鞄の前ポケットだね!待ってて!!」

 

それでも、今この場で助けることができるのは、香澄しかいない。言われた通りにポケットを漁ると、すぐに薬は見つかった。

 

「これだよね、みーちゃん!」

 

「あり、がと……」

 

カプセル状の薬を口に入れ、美羽は水で流し込むこともせずに飲み込む。それだけ切羽詰まっていたのだろう。と、徐々に発作は収まり、落ち着きを取り戻した。

 

「……はぁ。ごめんね、香澄さん。見苦しい姿を見せちゃって」

 

「そんなの、全然いいよ!私だって、みーちゃんの力になりたいよ……」

 

「その気持ちだけでも十分ですよ。それに、香澄さんは今、私の力になってくれました。1人だったら、どうなってたかわかりませんね……アハハ」

 

その言葉だけで、香澄は少し救われた。そんな気がした。

 

「じゃあ、私は早めに帰ってちょっと休みます。ギターでも弾いて、気分落ち着かせますよ」

 

「私も一緒に帰るよ!みーちゃん、また発作が起こったら……」

 

「心配してくれてありがとう、香澄さん。でも、私なら大丈夫。鼻歌でも歌いながら帰ったら、発作なんて怖くも何ともないです」

 

音楽を聴いている時、歌っている時。美羽は病気に苛まれることはない。その不思議な体質を香澄はもちろん知っていた。

 

けど、それで安心できるかと言われたら違う。今の状態の美羽を1人で返すわけにはいかない。香澄にだって、それくらいはできるはずだ。

 

「でも――」

 

 

「香澄さんには、香澄さんのやることがあるでしょ?」

 

 

続けようとした言葉は、凛とした美羽の言葉でかき消される。怒っているわけではない。ただ優しく、そして強く諭すように。

 

「そ、それは……」

 

「バンドのメンバー集め。今から行くところがあるって、そう言う事なんじゃないの?」

 

「え、どうしてわかったの?」

 

「そりゃあ……女の感?」

 

「みーちゃん、そんなものあるの?」

 

「いや、ないよ。真に受けないでよ。まぁ、でも……幼馴染だから、ですかね?」

 

さっきと何も変わらない、いつもと同じ笑顔。美羽は鞄をかけ直しながら、香澄に向かって微笑んで見せた。

 

 

もう大丈夫だから、と。

 

 

「行ってくださいよ。私、香澄さんがバンドするの、すっごく楽しみなんです!」

 

「みーちゃん……」

 

「どんな人が香澄さんとバンドして、一緒に演奏するのか……考えただけでもワクワクするんですよ!だから私、これから香澄さんの事応援します!バンド、本当に頑張ってくださいね!」

 

目を輝かせ、美羽は香澄に精一杯のエールを送る。バンドと言う世界に踏み出し、そこでどんな音色を奏でるのか。その旅路に、思いをはせて。

 

 

そんな美羽の熱い気持ちは、香澄を動かすには十分だった。

 

 

「……ありがと、みーちゃん!私、絶対にバンドやるよ!そして、みーちゃんもキラキラドキドキさせて見せるから!」

 

「そうしてよ!香澄さん、ファイト!」

 

「うん!じゃあ、私行ってくる!」

 

「頑張ってね、香澄さ~ん!!」

 

 

強い思いに背中を押され、香澄は走り出す。後ろから聞こえる美羽の声に、笑みをこぼしながら。

 

 

 

その先に待つ、赤いギターと少女の元へ。

 

 

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