閃乱カグラ 少年少女達の希望と絶望の軌跡   作:終末好きの根暗

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皆様、超絶お久し振りです。

平成が終わり、令和最初の投稿になります。

最近リアルが忙しく、スランプに陥る事もあったりと色々ありましたが、漸く半蔵編を投稿出来ました(更にリアルが忙しくなりそうですが……)


飛鳥達サイドが読みたかった方々、お待たせして申し訳ございませんでした。

アニメ一期とburstの半蔵編の要素、そしてオリジナル要素を混ぜたストーリーですので、その点はご了承下さい。

それから長らく考えていましたが、この半蔵編では今作のオリキャラの一人と忍達の生き様の半蔵編の主人公である佐介の二人を主人公とします(でも魂転身やシナリオの都合上は佐介メインの方が多いかも知れません)

一応、時系列的には忍達の生き様の半蔵編第1話となりますので、そちらも宜しければご覧になって下さい。

では、どうぞ。

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国立半蔵学院編
第1話 善忍の忍達


「――やぁ、此方では初めましてかな?」

 

 何処かの世界、何処かの空間。

 

 その空間では、無数の時計と無数の本棚、そして無数の本が置かれており、そこに一人の青年が本を持ちながら椅子に腰を下ろしていた。

 

 その青年は、自身が持つ一冊の本を開き、その内容を読み上げていく。

 

「――この本によれば

 

国立半蔵学院(こくりつはんぞうがくいん)

 

1919年に開校し、もうすぐ開校100年を迎える普通科の高校であり、全校生徒は約1000人のマンモス進学校である。

 

そして半蔵学院には、表と裏の二つの顔がある。

 

マンモス進学校を表の顔とし、忍育成機関、通称『忍忍学科(しのびがっか)』を裏の顔としている。

 

 

半蔵学院の忍学生、その中の選抜メンバーは現在6()人。

 

そして間も無く、7人目が転入する。

 

――後の8人目、そして9人目が加わる事で彼等の地獄の物語は始まる。

 

これより始まる物語は、忍学生の少年少女達の長きに渡る戦いの軌跡であり、絶望の中でも生き抜いた彼等の生きた証を記す物語である。

 

彼等の道の先に何が待っているのか……

 

 

 

 

 

それはまだ、誰にも分からない――」

 

 

 そこまで読むと、青年は本を閉じる。

 

 すると、何処からか別の本を取り出した。

 

「今回はサービスとして、君達の知らない6人目について少しだけ説明しよう」

 

そして、青年は再び本を読み上げていく。

 

「その少年は、嘗ては独眼竜と呼ばれ、善忍も悪忍も問わずに名が知れ渡っていた。

しかし、三度に渡る大敗と自身の相棒と呼べる存在を失った事で、その名は地に堕ち、今では復讐の道を走る様になる。

 

果たして、その少年はどうなるのか――?」

 

 そこまで読むと、青年は再び本を閉じる。

 

「さて、その先を知りたければ、君達自身の目で確めてみたまえ」

 

 そして椅子から立ち上がり、何処からか時計の様な丸い物質を出す。

 

「このウォッチ型のデバイスが何なのか、心当たりがある人は案外いるんじゃないかな?」

 

 そして青年は薄い笑みを浮かべ――、

 

「では、少し先の時間でまた後で会おう」

 

 何処かへ消えていったのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ある日、一人の少年は夢を見ていた。

 そしてそれは、少年に取って拭い難く、忌まわしい大きな敗北の記憶だった。

 

 一度目は三年前のあの日――

 

 

 

 

SHLTT(シット)!!!  ……ハァ……ハァ……』

 

『これがお前の実力か……?』

 

 相棒や仲間と共に、とある忍学校に挑んだのだ。

 しかし、六爪流も相棒との連携も何一つとして通じずに敗北した。

 

 相手の選抜メンバーの筆頭だという黒髪の少女に手も足も出ずに敗北したのだ。

 

 一対一や二対二と言った状況ならばまだ言い訳は立っただろうが、数百対一、それでいて相手の少女は忍術を使うこともなかったのだが、掠り傷の一つすら負わせられずに敗北した。

 

 部下の殆どが命を落とし、相棒も倒れている。

 

『……ハァ……ハァ……クッソ……! 』

 

『一つ教えよう。 確かにお前は強い。 だが、お前と私とでは強さの追求に対する動機が違う。

――私は真に倒すべき敵を殲滅するという目的の為に強くなった。 ……対してお前はどうだ? 強くなって成し得たい明確な目標はあるのか?』

 

『…………ッ』

 

『志だけでは何も守れ無い。 一方で、志を持たない者はどれ程強くなれても限界がある。 そしてお前は完全に後者だ。

……もう分かったろう? コレがお前の限界だ』

 

 

 

 その言葉を聞いた時、何も返せなかった。

 

 ――だが、理屈よりも本能が動いたのか、既に勝てない相手だと分かっていても、刀を持って全力で斬り掛かったのだ。

 

 

『……クッ……! うおおぉぉぉ!!!!』

 

 そして相手の少女は、鞘に納めたままの刀で、少年の動きを見もせずに防ぎ切り、少年に視線を移すと鞘から黒刀を抜き、少年を空中に斬り上げる。

 

『――うあぁぁぁっ!!!!』

 

 

 

 斬り上げられた勢いのまま地に落ち、その際の衝撃で意識を失ってしまい、その後に何があったのかは分からない。

 

 

 

 

 ただ一つ、相棒が死んでいた事を除いては――

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――そして、次に思い出すのは二度目の大敗。

 この時は一度目と違って偶然の遭遇だった。

 

 雑魚妖魔の殲滅任務を任されていたのだが、同様の任務を引き受けたという銀髪の少年と出会い、善忍の手助けなど必要ないと単身で妖魔を片付けた。

 

 ――そして少年はこう言った。

 

『――貴様はこの世の何処にも要らない。志無き惰弱な魂を持つ者など必要ない』

 

 その言葉を聞いた途端に激怒して挑んだが、まるで歯が立たずに敗北。

 一分も持たずして部下を全て失い、逃げる様な敗走を余儀無くされた。

 

 そしてあの少年は最後に――、

 

『貴様は何の為に忍になった?自分の原点すら思い出せないのであれば、貴様は本当に救い難い愚か者だな』

 

 失望した様な声でそう告げた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、最後の三度目の大敗の記憶。

 

 二度の大敗で上からの信用を失い、嘗ての名は文字通り地に落ちたのだ。

 

 それからは問題行動を起こさずにいたが、相棒を失った一度目の大敗で自分を倒した黒髪の少女の所属する忍学校の場所を知った事で、単身その学校に向かっていった。

 

 その学校に辿り着いてからは、黒髪の少女を探しながらも途中で襲い掛かる生徒を倒しては黒髪の少女の居場所を聞き、知らないと答えた者を一人残らず殺していった。

 

 そんな事をしていたからか、青い髪の小柄な少女が殺気を纏って現れた。

 

『貴方をあの人に近付かせる訳にはいきません。

そして何よりも、生徒達を殺した貴方を見逃す訳にはいかないんです』

 

 そうして、戦うに至る。

 黒髪の少女や銀髪の少年よりはマシだが、それでもあの青い髪の少女は強かった。

 

 ――そして、敗北した。 結果として、再び敗走する事になってしまった。

 

 その際にあの少女はこう言った。

 

『……貴方のその目は怒りや恨み、そして後悔に満ち溢れています。 貴方の過去に何があったのかは知りませんが、恐らく今の貴方には何も見えていないのではないですか?』

 

 その言葉を聞き、何も返せなかった。

 

 黒髪の少女や銀髪の少年とはまた違う、何処か悲痛な言葉の様にも聞こえた。

 

 そしてあの少女は最後に――、

 

『もし再び会った時にその目のままであれば、その感情は私にぶつけて下さい。 他の生徒を貴方の恨みで傷付けたくないというのもありますが、私が貴方にしてあげられる事はこれ位しかありませんから……』

 

 その言葉を最後に、自分は逃げ出した。

 

 あの青い髪の少女は見逃す訳にはいかないと言っていたが、それでも生きているという事は、殺す価値も無いと見下されたか、慈悲深いかのどちらかだろう。

 

 

 尤も、今となっても興味はないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――そして、少年は目を覚ます。

 

「夢か……」

 

 我ながら情けない話だ。 数年前の敗北の過去の記憶を未だに乗り越えられないのだから……

 

「……俺は俺だ。

その時にしか会ってない敵だった奴等の言葉なんざ真に受ける意味はない……それが分かっている筈だってのに……クソッ……!」

 

 どうしても言われた言葉を忘れられない。

 まさか納得しているとでも言うのか……

 

 ――だが、一つだけ確かな物はある。

 

「……志だと? それがあるとすれば、アンタ達を倒す事だけだ……!!」

 

 少年は拳を握り、そう誓うのだった。

 

 

 ――これは、一人の少年が半蔵学院に転入する前日の夜の出来事。

 

 

 その少年との出会いを切っ掛けに、少年、政宗(まさむね)の物語は動き出す――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「――半蔵学院。 此所に来ると帰って来たって感じがするなぁ…… おっと、懐かしんでないで早く手続きを済ませておかなきゃ」

 

 

 半蔵学院の校門。

 その前には、好青年の雰囲気を漂わせた少年、佐介(さすけ)が立っていた。

 

 彼は今日からこの学院に転入するのだ。

 と言っても、他の生徒の通う普通科ではない。

 

 半蔵学院が持つ裏の顔である忍学科にだ。

 

 そして、佐介は気配を完全に消しながら行動しているので、一般の生徒に気付かれる事なく、それこそ生徒の間を通って学院に入る事だって容易に可能である。

 

 

「――ん? 今の気配は……」

 

 すると佐介は、足を止めて近くの木を眺めた。

 

 理由としては単純、一瞬だが佐介が視線を向けている木から微かな気配がしたからだ。

 

 と言っても、その気配は佐介に向けた物という訳ではなく、単に隠し切れていなかったというだけだ。

 

「多分他の生徒の方だと思うけど、もしかして訓練上がりだったのかな?」

 

 それならば多少気配を感じやすくても理解出来る話ではある。

 

 ――尤も、それでも気配を感じやすいのは忍としては致命的ではあるが……

 

「――いや、それよりも早く行かないと! 早くしないと先生方にも迷惑を掛けてしまう」

 

 多少気にはなったが、佐介は少し駆け足気味で目的の場所である忍部屋に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「――何だか久しぶりだなぁ。 離れて一ヶ月位しか経って無いのに……」

 

 佐介が半蔵学院に到着する数分前。

 

 一人の少女が半蔵学院に辿り着いた。

 

 年の頃は16~17歳程であり、年相応の可愛らしさを持った比較的優れた顔立ちの美少女である。

 

 長い黒髪を白いリボンによって結い上げたポニーテールの髪型は、少女の明るい顔立ちと相まってより活発な印象を与える。

 

 少女は半蔵学院の裏の顔である忍学科の選抜メンバーの一人であり名を飛鳥(あすか)と言った。

 

 彼女は半蔵学院が名を冠する伝説の忍、半蔵(はんぞう)を祖父に持っている。

 

 先日まで飛鳥には試験が課せられていた。

 

 何の事は無い、忍としての実力を示す為の試験である昇段試験(しょうだんしけん)があったのだ。

 

 忍の世界ではランクと段位が存在しており、忍のランクは任務の実績か試験での段位で決まる。

 

 飛鳥は試験に合格した事で現在六段であり、ランクも最下位の下忍(げにん)から下から二番目の中忍(ちゅうにん)へと昇格した。

 

 尤も、半蔵学院のメンバーの中では段位もランクも下から二番目が現在の彼女ではあるが……

 

 ――兎も角、試験から帰った飛鳥は久し振りに半蔵学院の門を潜るのである。

 

 途中で気配を消し忘れた事により、普通科の生徒に見付かってしまうというミスを冒してしまったのだが、一般人に忍を捕まえろというのは土台無理な話だ。

 

 飛鳥が目指しているのは、現在は使われなくなった半蔵学院の旧校舎だ。

 

 忍学科は旧校舎の中に存在しており、普通科の生徒は立ち入りが禁止されている為、学院で最も安全な場所なのだ。

 

 飛鳥は旧校舎に到着すると、念入りに発信器や盗聴器、監視等が無いかの確認をして中に入る。

 そして、校舎の床の間に飾られている掛け軸に背を向けると飛鳥の姿が消える。

 

 世間で言う所の隠し扉と呼ばれる物だ。

 忍の世界ではこう言った仕掛けは多く存在する。

 

「――|飛鳥、只今帰還しました!」

 

 飛鳥は障子戸の自動ドアを開きつつ、部屋中に響き渡る大声で帰還を告げる。

 

 

「――お帰りなさい、飛鳥さん。 それから、昇段試験の合格の件、おめでとうございます」

 

「あっ、斑鳩(いかるが)さん。 ありがとうございます」

 

 椅子に腰掛け、優雅な姿勢でお茶を啜る黒髪の美少女は飛鳥の先輩に当たる三年生の斑鳩。

 段位は飛鳥よりも二つ上の八段にして、ランクは飛鳥よりも一つ上の上忍(じょうにん)である。

 

 飛鳥の帰還と試験の合格を祝いながらも、次第に鋭い視線で飛鳥を見る。

 

「……ですが、忍でありながら一般の生徒に気付かれていたのは戴けませんね。 気配を消すのは忍としての基本中の基本ですよ? それを呑気に校門から走ってくるなんて……」

 

「うっ……、見ていたんですか?」

 

「良いですか飛鳥さん?忍学生(私達)は本校の生徒にして生徒に在らずですよ。基本がなっていません」

 

「……はい、すみません。 油断してました……」

 

 斑鳩は飛鳥の登校時のトラブルを欠片の容赦も無くダメ出しする。

 

 しかし飛鳥は、言葉こそ厳しいがそれは斑鳩なりの後輩への気遣いでもあるのだと思っている。

 

 

 斑鳩は最上級生の三年生にしてクラス委員というメンバーのまとめ役故に、後輩への指導も行っている。

 斑鳩のダメ出しは厳しいが、その分褒める時はしっかり褒める。

 

 勿論、ランクもそうだが立場に伴う実力も持っており、斑鳩は飛燕(ひえん)という名刀を駆使した神速の居合いを得意としている。

 更に座学の成績も極めて高く、正しく優等生の大和撫子と呼ぶに相応しい人物だ。

 

 そんな斑鳩だからこそ飛鳥は尊敬しており、一ヶ月振りの斑鳩の説教も何処か懐かしく感じた。

 

 ――だからこそ、気が緩んでしまった。

 

「隙あり!!」

 

「きゃああああっ!?」

 

 飛鳥の背後に突然現れた金髪の美少女が、勢いよく飛鳥の胸を鷲掴みにする。

 

 彼女の名は葛城(かつらぎ)と言い、斑鳩と同じく半蔵学院の三年生だ。

 

 誰もが一目見ただけでも活発な印象を覚えるのだろうが、それ以上に大きな特徴がある。

 

「落ち込むなんてお前らしくねぇな……よし! アタイが気持ちを楽にしてやるよ!」

 

「ちょっと葛姉(かつねえ)!手当たり次第にセクハラしてくるのはやめてよおおっ!!!!」

 

「イッシシ! 嫌だねぇ……こんな天然物、触らないなんて人生の大損だ!!」

 

 

 ――見ての通りセクハラ好きのオッサン心を持った大が付く程の変態少女である。

 忍学科の女子は勿論、極希に目立たない様にしているとはいえ、一般人にも目を付けているらしい。

 

 ……普通なら逮捕一直線である。

 

 とはいえ、決して良い所が無い訳ではない。

 

 葛城の長所を一言で表現すならば、頼りになる姉御肌の人間である。

 実際、重い気持ちを振り払う為にセクハラや手合わせを行っては元気付けた事もあるのだ。

 

 故に飛鳥も親しみを込めて、葛城姉さん=略して葛姉という渾名で彼女を呼んでいるのだ。

 

 因みにだが、彼女の段位は八段、そしてランクは上忍と斑鳩とは五分の実績だ。

 それでもリーダーが斑鳩なのは、斑鳩の人と成りを見ていた教師陣の推薦と葛城自身が斑鳩の方が良いと言ったからである。

 

 因みに、セクハラを行った葛城は主に斑鳩から成敗される形で止められている。

 

 しかし、当の本人には反省している様子が全く見られないので、改善の余地はゼロに近い。

 

 それ故か、飛鳥の胸を堪能したら今度は斑鳩に目を付けているのだ。

 

 勿論、斑鳩も黙って触らせはしない。

 

 忍特有のの体捌きを駆使して、葛城の魔の手から確実に逃れている。

 

 しかし、一方で葛城も忍の技術を駆使して斑鳩を狙っている為、勝負は五分と言った所だ。

 

 二人の移動速度は次第に上昇していき、遂には飛鳥ですら目で追うのがやっとな速度に到達した。

 

 二人がそんなやり取りをしていると――、

 

 

 

「あ、飛鳥ちゃん! お帰りなさい!」

 

雲雀(ひばり)ちゃん! うん、ただいま」

 

 桃色の髪、そして花の模様の入った独特な瞳が特徴的な少女がやって来た。

 

彼女は雲雀(ひばり)

 

 選抜メンバーの一年生にして、飛鳥の後輩だ。

 

 多少ドジであり、戦闘力も選抜メンバーの中では余り高いとは言えない彼女ではあるが、実際は他のメンバーと比べても圧倒的な諜報活動能力に秀でているのである。

 

「昇段試験合格おめでとう! 雲雀も早く皆に追い付ける様に頑張らなきゃ!」

 

「ありがとう雲雀ちゃん。 ……でも、私はまだまだ未熟者だよ。 ……今回の試験だってかなりギリギリだった訳だし……」

 

 ――確かに試験には合格した。

 

 しかし、余裕と言えるだけの物が無かったのだ。

 これでは、飛鳥の目指す一流の忍には程遠い。

 

 

 

 ――それに、幼馴染みの()にも届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――私の家には両親や祖父母、従兄弟が居た。

 

 特に従兄弟達は、兄妹の居ない自分に取っては本当の兄妹の様で大好きだった。

 

 そしてある時、祖父である半蔵が何処からか一人の少年を連れて来た。

 

 何でもその少年は、半蔵の弟子であったとある夫婦の忘れ形見だったらしく、他に預けられる親戚も居なかった為に引き取ったそうだ。

 

 そこから先は少し記憶が朧気だが、彼が来た当初は此方も彼方も距離を取っていた気がする。

 

 そんな状況を見かねた従兄弟の一人であり、私に取っては本当の兄である天崎翔(あまさきしょう)が彼に声を掛け、私と彼が仲良くなれる切っ掛けを作ってくれたのだったか。

 

 それからは従兄弟共々、日が暮れるまで一緒に遊ぶ様になっていった。

 

 

 

 ――そんな日々が続く中で私は気付いた。

 

 私が彼へ何らかの気持ちを向けている事、そして月日を重ねる度に彼へ向けるその気持ちが大きくなっているという事に……

 

 家族に向ける親愛? 違う。

 

 友に向ける友愛? それも違う。

 

 

それは、異性に向ける好意と呼ばれる感情だ。

 

 

 

 ――そしてそれを、長い時間を掛けてでも、何時かは伝えたいと思った。

 

 

 

 そう思った直後の事だった。

 

 

 従兄弟の家族が突如として、全員行方不明となってしまったと聞かされ、それから暫くして全員が死んだと聞かされたのだ。

 

 

 ――大好きだった家族と、もう二度と会えない。

 

 それを知った時、涙が溢れてきた。

 

 三日三晩は泣き続けていた。

 

 今まで辛い事を経験してこなかったという訳ではないのだが、あの時の様に苦しみや悲しみが心の中から何処までも広がってしまう様な錯覚を覚えた事は無い。

 

 当時の気持ちは全て覚えている。

 正直、未だに人生最大の傷と言って良い。

 

 故に、彼と共に涙が枯れ果てるまでに泣いた。

 

 

 しかし、祖父と祖母から且つを入れられ、それでいて同じ傷を負っていた彼の為、そして死んでいった兄達の為にも、泣くのは止めると決めたんだ。

 

 

 それから二年、祖母が突然居なくなった。

 

 とはいえ、大事な用が出来たから家を出ていかなくてはいけないと言っていたので、恐らく忍関係の重要な仕事だったのだろう。

 

 それからは一度も会っていないが、あの祖母の事だからきっと何処かで元気にやっているだろう。

 

 そして更に二年経った時の事だった。

 

 半蔵学院の生徒であるとある忍学生が修行の旅に向かう事になり、彼はその忍学生に弟子入りする形でその旅に付いていく事になったのだ。

 

 そして、私を彼を止めようとした。

 

 正直、彼が自分の道を進もうとしている事を分からなかった訳ではない。

 

 しかし、それでも私は彼を止めようとした。

 

 ――放っておいたら、兄の様に二度と戻って来なくなるかもしれない。

 

 そう思った私は行かせたくなかったのだ。

 

 しかし、彼は優しい笑顔で――、

 

『大丈夫だよ、飛鳥ちゃん。 僕は必ず戻ってくるって約束するよ。 だから、心配しないで』

 

『……本当…に……?』

 

『うん。 だからもう、泣かないで?』

 

 ――そう言って彼は旅立った。

 

 正直に言えば、不安はまだ残っていた。

 

 しかし、それでも不思議と、無理に引き止めようとは思わなかった。

 

 ――今にして思えば、仮にあの時、彼を引き止められたとしても止めるべきではなかったのだと思う。

 

 そんな事をしたら、私よりも先に自分の道を進み出していた彼の歩みを止めてしまうし、下手したら彼の決心を踏みにじる行為だ。

 

 それだけは絶対にしたくない。

 

 聞けば彼は、私と同じ様に一流の忍を目指し、私の祖父を目指しているという。

 

 だったら、やる事は決まった。

 

 同じ物を目指すなら、彼が帰って来た時に隣に並んでいられる様に努力していこう。

 

 そうして彼が戻ってきた時に、私も隣に並び立って共に戦う事が出来たなら、何時かは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(――今頃は何してるのかな? ()()()……)

 

 彼が旅立ってから五年程の月日が経ったが、未だに彼は戻ってこない。

 

 しかし、幼い頃から色々な事が得意で尚且つ、旅立つ前から自分よりも強かった彼の事だ。

 

 同じ歳月を経ていても、きっと自分以上に進歩している事だろう。

 

 故に、まだまだ納得のいく結果ではないのだ。

 

 そんな事を考えていると――、

 

 

「そんな事ないよ。 飛鳥ちゃんはよく頑張ってるんだって事、雲雀は知ってるよ」

 

「雲雀ちゃん……」

 

「だから飛鳥ちゃん、自信を持って?」

 

 雲雀の言葉は有り難かった。

 元気付けてくれているとはいえ、雲雀だって決して自信があるタイプとは言えない。

 にも関わらず、自分を慰めてくれる。

 

 それが何れだけ有り難い事か。

 ならば、ここは素直に喜ぼう。

 

「……うん」

 

 ――本当なら立場は逆だろうに。

 

 しかし、気持ちが楽になったのは事実。

 

 全く持って、有り難い後輩だ。

 

 

 

 そんな事を考えていると――、

 

 

「お孫様じゃねぇか。 帰ってたのか」

 

「あ、政宗(まさむね)君。……って、そのお孫様って呼び方は止めてって言ってるでしょ!?」

 

「そうかい? 俺はアンタの爺さんに恩があるからついそう呼んでしまったもんでな」

 

「理由になってないよ!」

 

 

 黒髪の少年が声を掛けてきた。

 

 顔立ちはかなり整っており、イケメンと呼んでも過言ではないだろう。

 

 しかし、右目の眼帯がそれ以上に特徴的だ。

 彼の名は政宗(まさむね)

 

 半蔵学院の三年生にして、選抜メンバーの中でもトップクラスの実力者だ。

 

 彼は六爪流(ろくそうりゅう)の使い手であり、六本の刀を腰に差している。

 

 ランクも段位もメンバー内でトップの彼だが、実は彼が入ってきたのは今年からだったりする。

 

 何でも以前は、もっと有名な忍学校に通っていたらしいのだが、理由は聞いた事が無い。

 それに加えて彼自身が必要以上に人と関わる様子を見せないのだから、無理に聞く気にもなれない。

 

 本人曰く、cool(クール)にいこうぜ、との事。

 

 とはいえ、何時かは聞きたいと思っている。仲間としてはそれ位は知っておきたいのだ。

 

 それに、後になって取り返しの付かない事が起きる可能性も無いわけではない。

 

 それも含めて、話してくれる事を祈ろう。

 

 

「――耳に届いてるぜ。昇段試験の合格は上手くいったそうじゃねぇか」

 

「まぁ、ギリギリだったけどね……」

 

「……オイオイ。まさかこの程度でstop(ストップ)するって訳じゃないだろうな?」

 

「勿論、する訳ないよ。 じっちゃんみたいな忍を目指すなら、こんな所で立ち止まってられないよ」

 

「精々退屈させないでくれよ……?」

 

「む……そんな事言ったら、私があっという間に追い抜くからね?」

 

「……OK。やれるもんならな」

 

 

 飛鳥としては、政宗の事は苦手だ。

 

 普段は物静かで余り話さないのだが、いざ任務になると荒々しさ全快で単独行動しては任務をあっさりと達成してしまう。

 

 更に言えば、任務以外でも連携の修行等にも殆ど参加しないが、いざ連携すれば誰とでも息が合う。

 

 悪人では無いだろうが、良い人とも思えない。

 そんなよく分からない人だが、実力は認めざるを得ない確かな物だ。

 

 事実として、飛鳥、斑鳩、葛城、雲雀は彼と実戦形式の組手を行ったのだが、全く敵わなかった。

 選抜メンバーの中で唯一彼と引き分けた生徒が一人だけ居るのだが、その生徒はというと――、

 

「あっ、柳生ちゃん!おはよう!」

 

「……ああ、おはよう」

 

 彼女が政宗と唯一引き分けた生徒である柳生(やぎゅう)

 

 白髪でツインテール、そして竜空と同じ右目の眼帯が特徴的な美少女だ。

 

 天才的な実力を持っており、ランクも段位も一年生でありながら二年生の飛鳥は愚か、三年生の斑鳩と葛城をも上回る程である。

 秘伝忍法を初めとした技の扱いに長けており、持ってる術の数だけで言えば柳生の断トツだ。

 

 どうやら気配を消してはいたものの、かなり前からずっと近くに居たらしい。

 現に飛鳥は全く気付けなかったが、竜空は気付いていたらしく、雲雀も飛鳥より早く気付いた。

 

 

「――柳生ちゃん、一体何時からそこに?」

 

「気配を消すのは忍基本だ。 それに、まだ完全に気配を消した訳ではなかったんだが?」

 

 

 飛鳥の言葉に柳生は冷たい視線を向ける。

 

 柳生の言葉は確かに正論ではあるが、もう少しだけ優しく言って欲しいと飛鳥は思う。

 

 実力はあるが、彼女は竜空以上にコミュニケーションを取り辛いというか、それこそ誰であっても一切心を開いていない気がする。

 

 唯一雲雀にはある程度気を許している様だが、それも他のメンバーよりはマシというだけであり、雲雀には冷たく当たらないという訳ではないのだ。

 

「アンタは相も変わらずcool(クール)だな」

 

「これでも必要最低限のコミュニケーションは取っているつもりだ。……それとも、お前に取って俺達は信頼に足る仲間なのか?」

 

「……NOだな。俺が仲間と呼べるだけの信頼を寄せる相手は居ねぇ」

 

「ならそれでいい。俺達は任務を行う為の形だけでの仲間だ。仲間なら必ず心を許さなければならない訳ではないからな。それに、親類を寄せる相手は限られた数人だけで良い」

 

「……二人共」

 

 

 ――この二人はよく分からない。

 

 それは恐らく飛鳥でなくても思う事だろう。

 

 本人達に仲良くしない理由を尋ねても、「教える必要は無いし、知ってどうする?」と言われてはぐらかされてしまう。

 

 しかし、希にこの二人はとても強い眼差しで何処か遠くを見る様な顔をする。

 

 恐らくだが、二人なりの目的があるのだろう。

 

 あの憎悪の様な眼差しを向ける目的が……

 

 

 

 

 ――そんな事を考えていた時、小さい球体の物体が床に落ちていた。

 

 少しすると球体は爆発し、煙が出現する。

 

 そしてその煙の中から人影が現れた。

 

「――全員揃っているな?」

 

「ゴホッ、ゴホッ……霧夜先生」

 

 その正体は、飛鳥達の教師である霧夜。

 180㎝はある長身としっかりと着こなしている黒いスーツ、そして白髪が特徴的な男性だ。

 

 因みに表向きでは半蔵学院の普通科で数学の教師をしているのだが、裏では飛鳥達に厳しい修行を行っているという二つの顔を持っている。

 

 元々は凄腕の忍だったらしいが、訳ありで教師になる時に実質忍を引退したらしい。

 

 そして霧夜は飛鳥へ視線を移し――、

 

 

「飛鳥、昇段試験ご苦労だったな」

 

「い、いえ……その……」

 

「どうやら自分で分かっている様だな」

 

「……はい。かなりギリギリでした」

 

「ならば良い。更なる精進を期待する」

 

「は、はい!」

 

 

 霧夜の言葉に飛鳥は力強く返事をする。

 

 

 ――正直、とても申し訳無い。

 

 飛鳥としては、試験に向けて個別での修行までしてもらったというのに、その結果が今回のラインギリギリの合格では申し訳が立たなかった。

 

 とはいえ、霧夜の期待の言葉も確かなので、次の試験では自他共に満足出来る結果で、それこそ合格ラインの頂点を目指すつもりだ。

 

 ――そして話が終わった事を見越した斑鳩が霧夜に今日の授業内容を尋ねる。

 

「霧夜先生、今日の授業内容なのですが……」

 

「ああ、その事についてなのだが、今日は一時限目の訓練を始める前にお前達に紹介する者が居る」

 

『紹介する者?』

 

霧夜の言葉に疑問を抱く飛鳥達だが、察しが付いたのか竜空が霧夜に尋ねる。

 

「俺と同じ転入生って訳か?」

 

「その通りだ、因みに飛鳥と同じ二年生だ」

 

「へぇ……」

 

「またメンバーが増えるのか……」

 

どうやら新たにメンバーが加わるらしい。

 

唯一の二年生だった飛鳥は同期の仲間が増える事に嬉しそうな表情をする。

 

その一方、柳生は面倒くさそうに溜息を吐く。

 

 

 

「まぁ詳しい事は本人聞け、入ってこい」

 

そう言って霧夜は隠し扉に目をやり、飛鳥達も釣られる様に視線を移す。

 

そして隠し扉が回転するが――、

 

「あれ? 誰も居ねぇぞ?」

 

扉には文字通り誰も居なかった。

 

葛城を初めとして、飛鳥達もキョロキョロと周囲を見渡し始める。

 

だが、扉は既に元に戻っており、誰かが出てくる気配はまるで無かった。

 

すると柳生が冷めた視線を飛鳥達に向けながら、冷たい声で言葉を発する。

 

「……後ろだ」

 

「えっ!?」

 

柳生の言葉に飛鳥は素っ頓狂な声を上げる。

 

どうやら柳生、竜空、霧夜は初めから気付いていた様であり、驚いた様子は無い。

 

そして、飛鳥達が背後に視線を移すと――、

 

「どうも皆さん、お初にお目にかかります」

 

そこには半蔵学院の制服を着た一人の少年が屈みながら挨拶をしていたのだった。

 

竜空と同じ黒い髪、大地の様な色の瞳、そして真っ直ぐで好青年な雰囲気を漂わせており、それでいて顔立ちも優れている。

 

その少年を見たメンバーの反応はそれぞれだが、その中でも一際目立つ反応を見せた者がいた。

 

「…………」

 

それは飛鳥だった。

 

飛鳥はその少年を見て何を思ったのか、無意識に少年の元へ歩み寄る。

 

 

 

 

 

**********************

 

 

 ――どうしてだろう。

 

 この少年からは懐かしさを感じる。

 

 そう、まるで彼の様な……

 

(――まさか、もしかして……)

 

 

 可能性は高くない。

 しかし、ゼロとも言えない。

 だから可能性を否定出来なかった。

 

 私は五年前の彼との記憶を思い出す。

 

 あの時の、彼が旅立った時の記憶を――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 

 

『――大丈夫だよ、飛鳥ちゃん。 僕は強くなって必ず帰ってくるから』

 

『……本当…に……?』

 

『うん。 だからもう、泣かないで? 僕は飛鳥ちゃんに笑ってて欲しいから』

 

 ――彼の言葉は、とても私と同い年の子の言葉とは思えなかった。

 

 しかし、彼の言葉を聞いて私は、不思議と止めようとは思わなくなった。

 

 ――寧ろ、安心して送り出す為に

 

『わ、私も……もっと強くなる! ……もうお兄ちゃんの時みたいにしない為に……じっちゃんみたいな立派な忍になる為に……』

 

 そして何よりも――、

 

『佐介君に負けない様に、私も頑張るから!』

 

 そう言って私は、自分の目標を宣言した。

 

 そして彼もまた爽やかな笑みを浮かべて――、

 

『……うん。 今ので僕も吹っ切れたよ。 僕だって飛鳥ちゃんに負けないよ! 半蔵様の様な一流の忍になってみせる!』

 

 彼はサムズアップをして、自分の目標を掲げた。

 

 そして最後に振り返り――、

 

『僕は帰って来たら旅の中で見つけた物やその時の大事な記憶を沢山話す。 だからその時には、飛鳥ちゃんの見つけた物やその時の気持ちを教えて?』

 

『……うん!』

 

『……それじゃあ、いってきます!』

 

『いってらっしゃい、佐介君!』

 

 ――そう言って、彼は旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 

 ――もし、目の前の少年が佐介君だとしたら。

 

 そう考えた飛鳥の足は、自然と少年の元へと動き出していた。

 そして、少年は自分の名を語ろうとして――、

 

「今日より皆さんと共に忍を学ぶ為に半蔵学院に転入してきました。 僕の名前は――」

 

「佐介君……なの?」

 

「えっ……?」

 

 飛鳥が自分の名前を言い当てた事に少年、佐介は驚いて思わず顔をパッと上げる。

 

 そして佐介もまた飛鳥を見た事で――、

 

「ま、まさか……飛鳥ちゃん……?」

 

『……?』

 

 驚愕しながらも飛鳥の名を呼ぶ。

 

 他のメンバーも何事かと二人を見つめる。

 

 そして飛鳥は――、

 

「さ、佐介君……! 本当に佐介君だ……!!」

 

 感情の余り、佐介に抱き付いてしまう。

 

「ッ!? ……本当に、飛鳥ちゃんなんだね……」

 

「うん……! そうだよ、佐介君……!!」

 

 

 佐介は飛鳥の突然の行動に目を見開くが、飛鳥の気持ちを察し、優しい笑顔を向ける。

 

「アハハッ、久し振りだね、飛鳥ちゃん。 半蔵学院に居たんだね! あっ、でも翌々考えてみれば当然の流れなのか。 飛鳥ちゃんは半蔵様の様な一流の忍を目指してる訳だし。 でも驚いたなぁ……」

 

「私も驚いたよ。 まさか佐介君が半蔵学院に転入する形で戻ってくる何て……」

 

 二人の会話は弾む。

 幼馴染みとはいえ、五年間も会っていなかったのは二人に取って大きかったのだろう。

 

 

 斑鳩達を置いてきぼりにして二人の世界に入りつつある事に気付かない程には……

 

 

「――あのさ、楽しそうな所で悪いんだけど、そろそろ説明してもらっても良いか?」

 

『あっ……』

 

 メンバーを代表して葛城が二人に尋ねる。

 

 そして二人は周りを忘れていた事に気付き、軽く頭を下げて謝罪する。

 

「ご、ごめんね皆。ええっと、彼は佐介君。 五年前から修行の旅に出てた私の幼馴染みなんだ」

 

「! へぇ、飛鳥に幼馴染みがいたのか」

 

 葛城は意外な事実に軽く驚くが、納得した様な表情を浮かべる。

 確かに二人の会話の内容から考えてみれば、幼馴染みというのも合点がいく話だ。

 

 

「はい。改めまして、佐介と申します。これから宜しくお願いします」

 

「中々礼儀正しい方ですね。此方こそ、宜しくお願いします」

 

 佐介の一つ一つ丁寧な動作に関心しつつ、斑鳩は早々に佐介との挨拶を済ませる。

 そんな時、政宗に気付いた佐介はメンバーで唯一の同姓であるが故か彼に話し掛ける。

 

 

「もしかして、貴方が噂のメンバー内で唯一の男性であるという――」

 

「……政宗(まさむね)だ。 それとアンタも入って来るなら唯一ってのは矛盾した話だぜ?」

 

「あっ、はい。 宜しくお願いします」

 

 竜空の言葉に佐介は安心した様な顔で頷く。

 

 一方で竜空もその表情が気になったのか、首を傾げつつも佐介に尋ねる。

 

「……? アンタ、妙に嬉しそうだな?」

 

「えっと、今まで同年代の同性の友達が殆ど居なかったものでして、つい……」

 

「……まぁ、別に良いさ。 それより――」

 

「? はい?」

 

「アンタはどの程度強い?」

 

「えっ? ……師匠からは忍学生の中では中の下程度の実力だとお墨付きは頂きましたが、まだまだ未熟だと思っています」

 

「ランクと段位は?」

 

「今は上忍で十三段ですが、近い内に隠密の称号を頂けると聞きました」

 

「…………」

 

「……えっと、これで良いでしょうか?」

 

「ああ、お陰でアンタの事は大体分かった。 精々退屈はさせないでくれよ?」

 

「……? は、はい」

 

 ――変わった雰囲気を持つ人だ。

 

 初対面の相手に実力を尋ねてくるという事は、それだけ好戦的なのかもしれないが、彼からはそう言った者が持っている特有の雰囲気を感じない。

 

 ――何と言ったら良いのか、落ち着いているというよりは無気力に近い気がする。

 かと言って、その瞳に光が無い訳ではない。

 佐介からしてみれば、今までに一度も見た事の無いタイプの人間に戸惑ってしまうのだ。

 

 ――とはいえ、これから仲間としてやっていく以上はそんな事は山程あるだろう。

 

 佐介はそう考えて、他のメンバーとの軽い挨拶を済ませていく。

 

 

 ――そして、佐介達が粗方挨拶を済ませるとタイミングを見計らった霧夜が手を叩く。

 

「挨拶はそこまでにしておけ。 そろそろ一時限目の授業に入るぞ」

 

『はい!』

 

 霧夜の呼び掛けに生徒達は元気良く応える。

 

 

 ――こうして新たなメンバーでの半蔵学院の日常が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 ――同時刻、半蔵学院から少し離れた場所にある商店街の路地裏。

 

 そこには白いフードを纏った一人の青年が柄の悪そうな大柄な女を痛め付けているという奇妙な光景が広がっていた。

 

「半蔵学院では佐介が転入したか。 そろそろ此方も始めるとするかな」

 

 そして、右手で倒れた女の首を掴む。

 

「……が……っ……」

 

「君には傀儡となってもらうよ。 ……本番までのちょっとした余興としてね」

 

 すると、青年は左手から黒が重視の丸い時計の様な物を取り出し、それを女に近付け――、

 

「うわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 時計は黒い光を放ちながら、女の中に取り込まれていった。

 その一方で女も黒い光に包まれていく。

 

 そして、その光が晴れると――、

 

 

 

 

鬼無鮫(きなさ)!』

 

「がああああああああぁぁぁ!!!!」

 

 女は巨大な鮫の様な姿に変貌していた。

 

 大きさは10メートルはあり、その禍々しい牙は全てを噛み砕くと言わんばかりだ。

 

 ――しかし、青年は恐れる所か楽しそうに笑みを浮かべていた。

 

「さて、これで準備は整ったね」

 

 青年は指をパチンと鳴らす。

 

 

「――ぐぁっ!? ……ハァ……ハァ……」

 

 数秒経過すると、女は元の姿に戻った。

 

 

「さぁ、力は与えた。 後は君の望むがままに戦うといいよ」

 

 青年は軽く跳躍して建物から女を眺めながらそう告げるが、突如として思い出した様に手を叩き、何処か遠くを見る。

 

「やぁ、先程振りだね、傍観者諸君。 さて、冒頭で言った通りの事を再び言う訳だが、君達は一体この先をどう見るのかな?」

 

 

 そう言って青年はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

「――また駄目か……」

 

 同じく、半蔵学院近くの商店街。

 

 その中の何処かで、一人の少女は溜息を吐きながら町中にカメラを向ける。

 

 そのカメラはトイカメラと呼ばれる今では珍しいタイプであり、紫色をしている。

 

 一方で少女の髪の色もまた紫。 と言っても、赤紫と黒紫が左右に分かれた珍しい髪色だが。

 

 ――その少女はただひたすら街中をカメラで映しているのだが、どういう訳か像が歪んでおり、何度やってもピンボケしてしまうのだ。

 

「……まぁ、何時もの事か」

 

 少女は尚も世界を映そうとするが、

 

「ん?」

 

 突如として動きを止めた。

 

 理由はある。

 

 シンプルに嫌な気配を感じたからだ。

 

 そして、その気配を感じ取った少女は再び大きな溜息を吐き――、

 

「……仕事か。まぁ、仕方無いよね」

 

 カメラをしまい、懐から時計の様な物を出す。

 

 その時計には何か顔の様な物が映っていた。

 

「それじゃあ――、

 

 

影月(かげつ)。 行くとしますか……」

 

 

 

 そして少女、花影月の近くから灰色のオーロラが出現し、花影月は何処かへ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――佐介達半蔵学院が本来存在しない二つの異形と出会うまで、残り五時間。

 




いかがでしたでしょうか?

蛇女編を書くよりもずっと難易度が高かった……

それに終わり方が些か強引だった様な……

因みに今作では、飛鳥と佐介が8歳の頃に翔達が居なくなり、10歳の頃に小百合が出ていき、12歳の頃に佐介が修行の旅に出たという形になっております。

そしてオリキャラの政宗ですが、半蔵編では主に政宗と佐介が中心になります。

そして政宗の衣装や戦法は、戦国BASARAの伊達政宗をモデルにしております(但し、兜はありません)

それから、柳生の変わり様ですが、それは彼女の過去に大幅な改変がある為です。

一応、仲間に対する情の厚さは持ち合わせていますが、現在は飛鳥達を仲間と思っていません。

それは雲雀であっても例外ではない為、原作のイチャつきはほぼ期待できません(そもそも私がイチャつきを書くのが苦手なので……)

そして最初と最後に現れた謎の男。

この男の行動はある作品をモデルにしています(タグの中にヒントがあります)

因みに現在の半蔵メンバーでは竜空と柳生が断トツで抜きん出ており、次点で佐介になります。

では、次回も楽しみにして下さると幸いです。
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