閃乱カグラ 少年少女達の希望と絶望の軌跡   作:終末好きの根暗

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皆様、超絶お久し振りです。

3月中に投稿出来ず、申し訳ありませんでした。

リアルが多忙且つ、話のストックを溜めていた為に時間が開いてしまいました。

そして、大変申し訳無いのですが、予定していた話を変更致します。

全く関係無いという訳ではなく、今回は焔の過去に入る前の繋ぎ程度に考えて頂ければ幸いです。

あっ、因みに気付いていらっしゃるかも知れませんが、小説タイトルを少しだけ変更致しました。

理由としましては、作品の構成を練っていく内にもっと良いタイトルがあるかな?っと思い、前回の話の様に暗いタイトルをイメージして今に至ります。

では、どうぞ

**********************


第4話 けじめの付け方

春花と別れて以降、蒼鬼はそれまで以上の素早さで書類の整理を行った。

 

しかし種類の記入ミスは一切無く、書く内容も今まで以上に細かく、それでいて分かりやすく記入しており、残りは後数枚にまでなっていた。

 

そして――、

 

「――選抜メンバー筆頭の焔さん。 六本の刀を扱う六爪流の使い手であり、パワー、スピード、テクニックなどの能力バランスは極めて高く、当然の事ではあるが現在の蛇女子学園ではトップクラスの実力者でもある。

 

――任務の経歴などは歴代の蛇女子学園筆頭の中でも()()()の功績であり、二年生である事から上回る可能性もある。

 

――今後の課題点は、合同任務の際に単独行動を起こす事もある為、チームワークなどの連携力を付ける事にある。

 

――ふぅ……これで終了です」

 

焔の書類のチェックを終えて、蒼鬼は道元から指示された書類のチェックを達成した。

 

時計を見ると時刻は11時を刺していた。

 

「まだ一時間はありますね。 これなら――」

 

本来の予定時間よりも一時間程早く終える事が出来たのは、蒼鬼にとっては嬉しい誤算だった。

 

何故なら――、

 

「これで私も直接修行する事が出来ます!」

 

蒼鬼は先程までの仕事中に分身を使って修行を行っていたのだが、蒼鬼はやはり自分自身が修行を行うのがベストだと考えている為、修行を行える時間を得られた事を好運だと考えたのだ。

 

そして修行に向かおうとした蒼鬼だが、ふと立ち止まって書類の方を向き直す。

 

「――とはいえ、取り合えずは理事長室までこの書類を届けなくてはなりませんね」

 

そう呟くと、蒼鬼は書類の山を運び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 

「――さてと、漸く辿り着きました」

 

数分後、蒼鬼は書類の山を両手に持ちながら理事長室の前までやって来た。

 

途中で一枚も落とさずに8万枚の書類を運び出すという離れ技をこなした蒼鬼だが、汗一つ掻かずにドアの前に立っている光景は何処かシュールである。

 

そんな事を気にしていない蒼鬼は、手短に用を済ませる為にドアをノックする。

 

「道元様、失礼致します。 監督生蒼鬼、指示された書類8万枚のチェックが終了致しましたので、お届けに参りました」

 

 ―――。

 

 ―――――。

 

 ――――――――。

 

 

「? 道元様?」

 

 道元の返事を待つ蒼鬼だったが、数分待っても返事が返ってこない。

 

 ――先ず初めに浮かんだのは大きな立場と多忙な仕事の忙しさ故の取り込み中だったのだが、恐らくそれはないだろう。

 

 道元は忙しい時には仕事の邪魔が入らない様に必ず護衛用の忍を最低でも数名は配置しているのだが、その忍の姿も見えなければ、忍の気配もまるで感じないのだ。

 勿論、自分が未熟者故に分からないという事もあり得なくはないのだが、道元の場合は基本的に護衛用の忍の使い方が統一されている。

 

 正面には目に見える凄腕の忍を配置し、道元により近い位置には姿も気配も消した凄腕の忍を配置するという二段構えで備えているのだ。

 

 ――しかし今回は、そのどちらでも当てはまらないのだから、次第に答えは絞られる。

 

「外出中、という事でしょうか?しかし何も知らせずにとは、あの道元様がそんなミスをするというのも考えにくいですし……」

 

 蒼鬼は道元が単純に留守なのだという考えは浮かんでいたのだが、普段の道元は任せた仕事の結果が届く前に緊急の用が出来たら自身で伝えるか部下に伝えさせるかの二択で必ずこちらに伝えていた。

 

 しかし、今回はそれもない。

 

これは()()()()()()ケースだ。

 

 

 

 

 

 

「ん?――珍しい?」

 

 蒼鬼は自分の考えに疑問を抱いた。

 

 そう言えば、以前にも二回程同じ事があった様な気がするのだが……

 

「……思い出せません」

 

 蒼鬼は昔から幾つか記憶が抜けている。

 自分で言った言葉の意味を後になって考えるも結局何も分からず仕舞い。

 

 今回もその例の様で何も思い出せないのだ。もっとこう、ヒントでもあれば良いのだが――

 

 

 

「――ここに居ましたか。 蒼鬼監督」

 

 そんな事を考えていた蒼鬼だったが、突然背後から声を掛けられた。

 

 振り返るとそこには一人の少女が立っていた。

 角の様な二本の癖っ毛、野良猫を連想させるかの様な鋭い目付きが特徴的で、優れた顔立ちは充分に美少女と呼べるだろう。

 因みに茶髪なのだとそう聞いた(・・・・・)

 

そしてその少女を見た蒼鬼は――

 

 

「―― おや、千歳(ちとせ)さん。 何かご用ですか?」

 

 少し意外そうな表情をするも、直ぐに切り替えて自分への用件を訪ねる。

 

 

 

 

 彼女は千歳(ちとせ)

 

 秘立蛇女子学園の一年生にして選抜メンバーの一つ下の階級、選抜候補メンバーの一人である。

 

 選抜候補はその名の通り次の選抜メンバーの候補、つまり選抜メンバーに最も近い者の事だ。

 

 現在の選抜候補メンバーは千歳を含めて計()()

 

 千歳はその中でも上位の実力者であり、群れる事を好まない一匹狼の様なクールな性格だ。

 

 普段から余り人と関わっておらず、話し掛けられても大抵は無視する為、蒼鬼は昔の焔や今の光牙と似たような部分を僅かに感じている。

 任務でも実力が高い故か余程の事が無ければ連携に参加しないで単体で任務達成を目指すという部分があり、立場が上の者にも余り頼ろうとしないのだ。

 

 そんな千歳が自分に何の用だろうか?

 

「今訓練場で焔先輩と籠鉄先輩が昨日の傷が完治しないまま喧しく戦っています。

 

私では止められない上に絡まれても面倒なので、止めてくれそうな蒼鬼監督を探していたんです」

 

「――――」

 

 予想外の答えが帰って来た。

 千歳が面倒嫌いなのは知っていたのだが、まさか厄介払いの為に呼ばれるとは……

 

「光牙先輩には拒否され、真司蛇先輩は先程道元様と共に遠出に行くと言っていたので……」

 

「――え? 真司蛇君がですか?」

 

 これまた予想外の言葉に素っ頓狂な声が出る。

 道元が居ない事に真司蛇が関係していたとは。

 

「知らなかったのですか? しかし、幾ら聞かされていなかったとはいえ、真司蛇先輩は道元様の養子なので、家族関係の用事と思えばそれ程可笑しな話ではないと思うのですが」

 

「いえ、少し意外だと思っただけです。 正直に言えば道元様はそう言った情を持ち合わせる人には見えないものでして……」

 

「まぁそうでしょうね。 私もあくまで常識的に考えればの話をしただけで、私個人としてはとても情がある様には見えません」

 

千歳は容赦なく毒を吐く。

 

千歳は目上の者に対しても敬語を使う以外の態度は基本的に悪い。

 

ある意味では問題児とも言えるだろう。

 

「――それで、蒼鬼監督は何をしていたのですか? ……まぁその資料の山を見れば、理事長への用事だったのは分かりますが……」

 

「ハハ……」

 

千歳の呆れる様な視線に蒼鬼も思わず苦笑する。

 

――すると、千歳から思わぬ提案が出た。

 

「では、私が代わりに鈴音先生にでもお渡ししておきましょうか?」

 

「……えっ?」

 

「勿論、只とは言いません。 その間に焔先輩達を止めておいて下さい。

 

――というか、元々私は蒼鬼監督に先輩達を止める事を頼みに来たんです。 その交換条件としては五分と言った所ではないでしょうか?」

 

「で、ですが……」

 

――それでも納得がいかないのか、蒼鬼はまだ首を縦には振らない。

 

それを見た千歳は――

 

「……何時も無理なさっているでしょう? その変に詰め込もうとする癖は悪い所だと思います」

 

――蒼鬼は理解した。

 

これは千歳なりの気遣いでもあるのだ。

 

千歳は何かしら理由を付けて距離を取ろうとしたりする物の、実際は不器用なりに人を気遣えるだけの優しさを持ち合わせている。

 

特に同じ選抜候補の芭蕉には弱かったりするので、彼女とも何時かは分かり合えると蒼鬼は考えている。

 

それに先程、春花から困った時は頼ってと言われたではないか。

 

頼り頼られる関係が仲間であり、今自分は頼られているのだから、自分も頼ってみよう。

 

そう考えた蒼鬼は納得する事にした。

 

「――分かりました。 そちらはお願いします」

 

「頼みましたよ。……余りに五月蝿くて不愉快だったので、此方も気晴らしにはなるでしょう」

 

「……ハ、ハハ……」

 

――尤も、千歳と分かり合うにはまだまだかなりの時間が掛かりそうだ。

 

そうして向かおうと思った蒼鬼だったが――、

 

「蒼鬼監督。 伝え忘れていた事があります」

 

「? はい。 何でしょうか?」

 

「昨日のチーム戦と焔先輩達の戦いの影響で訓練場が既にボロボロなので、修理の書類書きと修理費の費用は恐らく全て監督に回ってくると思いますけど、まぁ頑張って下さい」

 

「…………」

 

 冗談抜きで笑えない話だった。

 どうやら早く止めろという警告らしい。

 

 蒼鬼は急ぎ足で訓練場に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 ――同時刻の蛇女子学園訓練場では、焔と籠鉄が激しい戦いを繰り広げ、火花を散らしていた。

 

「ハァッ!!」

 

「オラァッ!!」

 

 焔の六爪を籠鉄は槍で的確に弾き、チャンスがあれば槍で突き上げるも、焔も素早い動きで回避していく。

 一進一退の攻防だが、籠鉄は拮抗している状況を変える為に秘伝忍法を使う。

 

「秘伝忍法・――【烈火激槍(れっかげきそう)】――!!」

 

「ッ!」

 

 籠鉄は目にも止まらぬ速度で槍を振るう。

 それも高速で長距離を移動しながらだ。

 

 ――しかし、避けられない程ではない。

 そう考えた焔だったが、異変は起こり始める。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアッ!!!!」

 

(威力も速度も上がっている……?)

 

 時間が経過する毎にその速度は上がり、連れる様に威力も上昇していく為、少し頬を掠めただけでもかなりの血が流れる。

 

 まともに喰らえば絶望でしかない。

 

 ――しかし、本当に恐るべきは威力や速度などよりもそれを連続で使用しながらも全く呼吸を乱さない籠鉄の無尽蔵のスタミナだ。

 このまま続けば、間違いなく焔は負ける。

 

 ――だが、焔もこのまま黙ってはいない。

 

 焔は下がりながら六爪を鞘に納め、変わりに七本目の太刀である『炎月花(えんげつか)』を構えて全身の気を爆発させる。

 

「秘伝忍法・――【炎蛇(えんい)】――!!」

 

 すると焔の全身から炎の気が出現し、焔の頬や腕から蛇の鱗が鎧の様に纏われ、更に瞳も炎の如き紅色に染まる。

 

 ――これはチーム戦で光牙が見せた秘伝忍法の【雷光(らいこう)竜腕牙(りゅうかいが)】を参考に焔が開発したドーピング秘伝忍法だ。

 

 あの戦いで光牙よりも先に戦線離脱してしまった焔だったが、体は動かなくとも光牙達の戦いをしっかりと観察していた。

 

 ――そして悟った。 自分の未熟さを、弱さを、あの戦いで思い知らされた。

 

 チームワークを高める為の修行で籠鉄に囮として爆発させるという醜態を晒した事もそうだが、自分自身の力不足を感じ取ったのだ。

 

 蒼鬼の指導による修行の成果で光牙に奥の手の抜き足を使わせた事によって光牙との距離が縮まったと思い込んでいた。

 

 ――しかし、まさか光牙にあれ程までに強力な奥の手があるとは思っていなかった。

 

 更に言えば、その状態の光牙に蒼鬼がドーピング無しの忍転身のみで勝利するなど、それこそ欠片の想像すらしていなかった。

 

 近い内に光牙を越えるつもりでいたが、予想を遥かに越える大きな壁だった。

 

 正直に言えば、今の自分ではあの状態の光牙には先ず勝てない。

 

 ましてや光牙に勝った蒼鬼には無理だ。

 

 ――本音を言えば、とても悔しかった。

 

 気に入らない話だが、光牙とは年齢差故の経験の差がどうしてもある為、力の差はまだ納得出来る。

 

 しかし、蒼鬼は別だ。

 

 同期でありながら、その実力は自分よりも遥かに上だった。

 

 更に言えば、自分と蒼鬼の能力相性から考えて、間違いなく蒼鬼が蛇女最大の壁だ。

 

 自分よりも上の二人との差は大きい、例えるなら大きな山場だ。

 

 

 

(――あの二人は私よりも遥かに早い速度で一歩を進んでいた。という事なんだろうな)

 

 一歩でも二人に近付く為には、今までのやり方ではまだ足りない。

 

 少しでも早く追い付くには、同じ速度で一歩を進んでいては駄目なのだ。

 

 

 ――だからこそ考えた。

 

 一歩で足りないなら、二歩でも三歩でも多く進んで行くしかない。

 そしてその為の姿がこれだ。

 

 

 

「ハァッ!!!!」

 

 焔は籠鉄の槍の速度を見切ったのか、一瞬で懐に入り込み、炎月花で槍を弾く。

 

「グアッ!?」

 

 籠鉄も激しい速度からの急激な停止故か、思わず後ろに下がり、膝をつく。

 

 ――しかし、それを見逃す焔ではない。

 

 直ぐ様炎月花で籠鉄を叩き付け、周囲の木々まで勢いよく吹き飛ばす。

 

 更に六爪を構えて追撃を狙う。

 

 しかし――、

 

「ッ!? がぁ――っ!?」

 

 突如として焔の体が炎に包まれ、それと同時に全身に激痛が走った。

 100度は優に上回る程の熱と骨が折れるかの様な激痛が全身に回り、激しく体力を奪われる。

 

 痛みの理由は単純、時間切れだ。

 

 持続した時間は5秒前後と言った所だろう。

 

 光牙が5分以上維持していた事を考えると、やはり一日で編み出した未完成の技と長年の修行で鍛え上げてきた完成した技との差は大きい。

 

 だが――、

 

「それが、どうした……!!」

 

 容易に出来る技ではない。

 

 そんな事は初めから分かりきっていた事だ。

 

 寧ろ5秒とはいえ、威力と速度が常に上昇状態の籠鉄を圧倒する事が出来たのだ。

 

 ならば、今はそれで良い。

 持続力が問題なら、今後の修行で体力を付けるなりで幾らでも改善の方法はある。

 

 それよりも、今は籠鉄との戦いだ。

 

「――フン!」

 

 焔は炎を振り払い、構えを取る。

 

 一方、籠鉄も既に立ち上がっていた。

 

「痛ってぇ…… でも、流石は焔って所だな」

 

「褒めても何も出ないぞ?」

 

 軽いやり取りをする二人だが、直ぐに動き出す。

 とはいえ、どちらもダメージは少なくない。

 

 やはり先程よりも動きが鈍い。

 

 ――故に第三者の乱入に気が付くのに遅れた。

 

『ッ!?』

 

 二人の前に鉄球が出現し、二人は慌てて回避する。

 長い鎖で繋がれた鉄球の使い手と言えば――、

 

 

 

「……お二人供、そこまでです」

 

 千歳の頼みでやって来た蒼鬼だった。

 

 二人も相手が監督生である蒼鬼では歯向かおうとはせずに、動きを止める。

 

 ――すると蒼鬼は軽く溜息を吐き、困った様な表情で二人を見つめる。

 

「昨日の怪我は完全には治っていないのだから、安静にしていて下さいと言った筈です」

 

「ぅ……けどよ……」

 

 籠鉄は納得がいかない、とまではいかずとも、やはり戦いを続けたいらしい。

 

 籠鉄も焔も好戦的な性格である故に、戦いを途中で止められる事が歯痒くて仕方が無いのだ。

 

「――任務で敵は待ってはくれません。 休める内に休んでおかないと、取り返しのつかない事態を引き起こしかねないので、休んで下さいと言っているんです」

 

「それは……」

 

「……」

 

 籠鉄と焔の間に言い様の無い感情が生まれる。

 蒼鬼の意見は尤もだ。 今でもそうだが、忍になってからの命駆けの任務等多々あるだろう。

 

 その任務で回復不足で死んでしまった、等と言ったら笑えない話にも程がある。

 

「――悪いな、蒼鬼」

 

 しかし、二人も簡単には引けない。

 

 その理由は、

 

「これは昨日のチーム戦での、私なりのけじめの付け方なんだ。 籠鉄を利用したと批難されても仕方無いとは思うが、籠鉄は戦ってくれればそれで良いと言ってくれたのでな。

――甘いかも知れないが、私にはこれしかない」

 

「俺も上手くは言えねぇんだけど、鈴音先生の言葉の意味を考えるには、先ずはモヤモヤした気持ちを吹き飛ばさなきゃなんねぇよな! って考えて、そのモヤモヤを吹き飛ばすには、やっぱ戦いしかないと思ってよ」

 

「……」

 

 二人の言葉に、蒼鬼は返答出来なかった。

 

 ――正直に言えば、二人の戦いの理由は純粋に戦いたいが為だけだと考えていた。

 

 しかし、二人も二人で正当と取れなくはない理由があったのだ。

 

 ただ戦いたいというだけなら、多少強く言ってでも止めようとしたのだが、理由が理由なので余り強くは否定出来ないのだ。

 

 ――しかし、状況や理由が分かればそれなりに事態の対処法はある。

ふと近くの時計を見てみると、時刻は11時30分になっていた。

 

 残りの時間から考えて、今思い付いた事を試すには十分だろう。

 

 蒼鬼は二人に、一つの解決策を提案する。

 

「――では、私がお二人のお相手をしましょう。 制限時間内に私が持つこの鈴を取るか、私を倒せればお二人の勝ち、鈴を取れない、倒し切れない、若しくは逆に倒されれば私の勝ち。 制限時間は10分。

チーム戦でのけじめをつけたいのであれば、同じく連携が必要な状況で行うのが最適でしょう。

――どうしますか?」

 

 蒼鬼が提案したのは、チーム戦の反省を活かす為のルールの戦いだ。

 

 これで二人のけじめもつけやすくなるだろうし、必要な物を奪還する任務の修行ともなるだろう。

 

 勿論、これだけで解決するとは思わないが、この二人に限ってはこれが一番だろう。

 

 すると二人は笑みを浮かべ――、

 

「望むところだ! 光牙に、そして私達に勝ったお前なら、修行相手に相応しい!!」

 

「俺も同感だ!それに俺達は蒼鬼との能力相性も悪いから、そういう意味でももってこいだ!」

 

 蒼鬼の提案を受け入れた。

 どうやら二人にとって、蒼鬼が光牙を倒したという事実は予想以上に大きい事らしい。

 

こんなつもりではなかったのに、と蒼鬼は苦笑しつつも、印を構える。

 

 

 

「――では、忍結界を貼ります」

 

 蒼鬼の言葉に二人はキョトンとした表情をし、疑問を抱いた焔が尋ねる。

 

「? 何故忍結界で戦うんだ? 此処は訓練場なんだし、態々結界でなくても良いんじゃないか?」

 

「俺は正直どっちでも良いけど、蒼鬼が態々結界でやるって事は何か理由があるんだよな?」

 

「……」

 

 二人の言葉に、蒼鬼は苦い表情をする。

 二人は蒼鬼の表情に疑問を抱くが、蒼鬼は重い口を開いて語り出す。

 

「え、ええっとですね。 ……その、大変申し訳難いのですが……」

 

『?』

 

「昨日のチーム戦と先程のお二人の戦闘で、既に訓練場はかなりの損害を受けています。 それに他の生徒の皆さんからも、暑苦しいし、使い難くて仕方無いという苦情を受けておりまして……」

 

『え……?』

 

蒼鬼は申し訳なさそうに顔を下げ――、

 

「生徒の不満が余程多い場合は、修理も含めて改装する可能性があります」

 

「も、もし改装する事になったら……?」

 

「先ず生徒に何が不満で何を希望するのかを聞いて回る所から始まります。 そしてそれを終えた後に書類に必要事項や希望事項を記入します。

その書類を学園に提出して、学園の許可が降りたら改装費と修理費のどちらも私が出します」

 

『は……?』

 

「監督生は生徒関係で学園の施設に損害が出たら基本的に費用を出す決まりですから。 まぁ、その為に皆さんより多く援助費を頂いている様な物なので、ある意味当然の事です」

 

『…………』

 

「? どうかしましたか?」

 

『……何でもない。 忍結界で始めよう』

 

「? 分かりました」

 

 蒼鬼は二人の態度に疑問を抱く蒼鬼だが、二人は同じ事を考えていた。

 

 ――蒼鬼にこれ以上負担を掛けては不味いと。

 詠や未来、春花辺りは黙っていないだろう。

 

 それに蒼鬼は無理して詰め込む癖がある。

 態々無理させる必要はない。

 

 そう考えた二人は忍結界での戦いに応じた。

 

 

 

 

「では、行きますよ。 忍結界――!」

 

 蒼鬼が印を結び、空間が変化する。

 忍結界は、術者の実力が高ければ術者の思考が空間に反映される。

 

 今回は何処かの田舎の里だ。

 蒼鬼は里に思い入れでもあるのだろうか?

 

 そんな事を考えていた二人だが、蒼鬼が武器を構えている事に気付くと、自分達も構える。

 

「それでは、始めましょう」

 

『ッ!!』

 

 蒼鬼の言葉を合図に、戦いは始まった。

 焔と籠鉄は二人共前衛型だ。

 故に左右から同時に攻め、互いが互いの背後をカバーするという戦法で戦う。

 

 焔の刀が避けられば籠鉄の槍で攻める。

 

 逆に籠鉄の槍が避けられば焔の刀で攻める。

 

 その方法で攻め立てる二人だが、蒼鬼は慌てる事なく的確に回避し、隙を突いていく。

 

 焔との籠鉄の攻撃を動とするならば、蒼鬼の攻撃は静と言った所だろう。

 

 二人が力で押しても、蒼鬼は技でいなす。

 

 まるで、心を読まれているかの様な、圧倒的なまでの回避力は、とても同学年とは思えない。

 

 その状態が4分程続いてしまい、二人は僅かに焦りの感情を抱く。

 

「――クッソ……! このままじゃ……」

 

「籠鉄。 私が秘伝忍法で先攻している間に鋼の術で蒼鬼の移動範囲を狭めてくれ」

 

「! 分かった!」

 

 焦りを隠せない籠鉄に焔は的確に指示を出す。

 戦い方や性格から勘違いされる事が多いが、焔は決して馬鹿ではない。

 

 寧ろ座学でも上位に入る程に頭が良く、順位にすれば10位前後の学力だ。

 

 指揮や統率と言った能力ならば蒼鬼や光牙、春花に軍配が上がるだろう。

 

 しかし、指揮能力の強みは何も状況判断に限った話ではない。

 居るだけで隊員を安心させられるだけの信頼の力も必要なのだ。

 

 焔の強味はそれだ。

 

 隊に取っての精神的主柱となる焔は、隊が追い詰められた時でも、焔が居れば立て直せるだろう。

 

 それを見た蒼鬼は――、

 

「これが焔さんなりのチームワークですか。 確かに焔さんらしいですね」

 

 僅かに微笑みながら、刀を構える。

 そして、焔も秘伝忍法の構えを取る。

 

「秘伝忍法・――【(さきがけ)】――!!」

 

 焔は高速状態でジグザグに斬りかかる。

 

「秘伝忍法・――【黒刃(くろば)】――!!」

 

 蒼鬼は刀に闇を纏わせ、焔の迎撃を狙う。

 焔の素早い斬撃を蒼鬼は最小限の動きで防ぐ。

 

 とはいえ、蒼鬼もただ防御に回る訳ではない。

 タイミングを合わせ、接近してきた焔の攻撃を屈んで回避し、ボディーブローを浴びせる。

 

「が――ぁぁっ!?」

 

 焔は凄まじい勢いで吹き飛ばされ、結界の壁に激突してしまう。

 余りのダメージから頭部や鼻からは血が流れ、殴られた腹部は痛みからの予想だが、恐らく何本か骨が折れてしまっている。

 

「何てパワーだ……詠以上か……?」

 

「……焔さん。 幾ら何でも過大評価ですよ」

 

 焔の言葉に蒼鬼は苦笑して答える。

 しかし、焔の評価は正しい。

 

 刀を使う事が多いせいで分かり難いが、蒼鬼は選抜メンバー屈指のパワーファイターである詠をも凌ぐ力の持ち主だ。

 

 恐らく重り修行の効果が大きいのだろう。

 

 どちらかと言えば小柄な蒼鬼だが、一体何処にそんな力があるというのだろうか?

 ――しかし、焔の本当の狙いは秘伝忍法で蒼鬼を攻撃する事ではない。

 

 

「秘伝忍法・――【激槍(げきそう)鉄炎雨(てつえんさめ)】――!!」

 

 炎を纏った無数の槍が、雨の如く降り注ぐ。

 その数は100や200を優に上回る。

 数にして約500。

 

 加えてかなりのスピードだ。

 これを回避するのは至難の技だろう。

 

 しかし――、

 

「速度が足りませんよ、籠鉄君」

 

 蒼鬼は危なげなく回避していく。

 何本かは見てすらいないが、それでも掠り傷一つ付かずは愚か、呼吸一つ乱さずに回避する。

 

「ヤベェ……! 一撃も当たらねぇ……!」

 

 その回避力に籠鉄は焦りを隠せない。

 

 ――このままでは、圧倒的に不利だ。

 

 だが、籠鉄は蒼鬼が回避する可能性を考え、既に別の手を打っていた。

 というよりは、此方が本命だ。

 

「秘伝忍法・――【鉄蛇尾縛(てつじゃおそく)】――」

 

 無数の槍が一ヶ所に集まり、蛇の尾の形になる。

 

「ッッ――!?」

 

 集まる槍に呑まれ、蒼鬼は拘束されてしまう。

 槍の数だけ重量が増し、脱出は困難となる。

 

流石の蒼鬼も、これだけの槍に手足が拘束された状態では自由に動けまい。

 

そう考えた籠鉄は、拘束力を上げる。

 

「――よし! 焔!! 今がチャンスだ!!」

 

「鈴は貰った!!」

 

動けない蒼鬼の隙を狙い、焔は鈴の奪還を狙う。

 

焔が鈴を掴もうとしたその時――、

 

「ハァッ!!」

 

蒼鬼は咄嗟に鉄球を出現させ、辛うじて動く手で手足を縛る槍を破壊する。

 

更にそのまま籠鉄の槍を凄まじい勢いで破壊し、向かってくる焔を真上に蹴り上げた。

 

「ぐああああああっ!?」

 

「マジかよ……!!」

 

――強い。

 

追い詰めたつもりでいた二人だが、やはり蒼鬼は油断ならない相手だ。

 

恐らく同じ手は二度と通じないだろう。

 

「――危ない所でした」

 

蒼鬼はそう言いながら、刀と鉄球を構える。

 

しかし、妙だ。

 

拘束からの回復も早いが、槍の拘束を受けた以上は傷は付く筈なのに付いていない。

 

幾ら忍転身の忍装束が鉄壁と言えるだけの固い防御力を持っているとはいえ、秘伝忍法で形成された鋼の槍を受けて傷が付かない筈がない。

 

――いや違う。

 

よく見れば蒼鬼の忍装束は所々破れており、服には多かれ少なかれ血の跡がある。

 

医療忍術の回復? 幾ら何でも早過ぎるし、何時行っていたのかも見えなかった。

 

一体何だ? この能力は……?

 

すると蒼鬼の体を闇が包み込み、闇が晴れると蒼鬼の忍装束の傷は元に戻り、血の跡も消えた。

 

「――残り1分。 次はどうしますか?」

 

「まだ手はある! 籠鉄! 頼んだぞ!!」

 

「任せとけ!」

 

すると籠鉄は、即座に印を結ぶ。

 

蒼鬼も合わせる様に素早い動きで印を結ぶ。

 

火遁(かとん)豪火球(ごうかきゅう)の術!!」

 

水遁(すいとん)水陣壁(すいじんへき)!!」

 

籠鉄は最大球の火遁を放つが、蒼鬼の水遁がそれを完全防御する。

 

すると籠鉄は、槍を構えながら猛スピードで蒼鬼に向かっていく。

 

蒼鬼は黒刃を展開して迎撃を狙う。

 

そして、籠鉄は急ブレーキを掛ける様に蒼鬼の目の前で止まり、炎を纏わせた槍を構える。

 

「秘伝忍法・――【千両花火(せんりょうはなび)】――!!」

 

「ッ!!」

 

籠鉄は渾身の一撃を蒼鬼に放つ。

 

蒼鬼は黒刃で上手く防御するも、触れた瞬間に大爆発が発生し、数メートル先まで後ろに下がる。

 

しかし、逆に言えばそれだけだ。

 

籠鉄の渾身の一撃も、蒼鬼は防ぎきった。

 

「――だったらこれだ!!」

 

籠鉄は目にも止まらぬ凄まじい速度で炎の槍を蒼鬼に向けて突き刺す様に振るう。

 

焔との戦いでも使った技だが、今度は籠鉄の今ある有りったけのチャクラを込めて放つ。

 

「秘伝忍法・――【烈火(れっか)大絶槍(だいぜっそう)】――!!」

 

焔の時とは威力も速度も桁違いに上がった炎の超速の槍の連撃。

 

これならば流石の蒼鬼も――、

 

「……」

 

蒼鬼は冷静だった。

 

一切慌てる事なく、この技さえも避け切った。

 

そして――、

 

「ハァッ!!」

 

「ガハッッ!!!!!?」

 

蒼鬼の拳を腹部にもらい受け、籠鉄は結界の壁にまで吹き飛ばされる。

 

籠鉄は今の術でかなりのチャクラを消耗し、体力も限界近いのに対して、蒼鬼は体力もチャクラもまだ充分余裕がある。

 

それに、今の一撃で骨が何本か折れたらしい。

 

思わず吐血してしまう。

 

 

 

――本当に大きな実力差なのだと痛感する。

 

もしこれが、一体一の戦いでルール無用の殺し合いであったならば、籠鉄に勝ち目など万に一つも無かっただろう。

 

だが、それは一人の場合だったらの話だ。

 

今の自分は、頼れる仲間が居る。

 

だから――、

 

「後は頼むぞ焔!!」

 

「ッ!!」

 

蒼鬼が火遁を防ぐ間に、焔は準備をしていた。

 

それは先程の籠鉄との戦いで試みるも失敗したドーピング型の秘伝忍法だ。

 

先程は咄嗟の状況で発動したが、それなりにチャクラを溜められる時間があれば、もしかしたら持続時間を引き伸ばせるかもしれない。

 

そう考えた焔は、炎月花を構えて籠鉄に合図を送っていたのだ。

 

そして、それに気付いた籠鉄は焔の為に時間稼ぎの囮役を引き受けたのだ。

 

 

 

 

 

 

――本当に籠鉄はお人好しだと思う。

 

昨日のチーム戦で自分を利用した相手を、どうしてそこまで信じられるのだろうか。

 

本当に損をする性格をしている。

 

――だが、だからこそ思う。

 

その期待に応えてみても良いと。

 

今度こそ、蒼鬼に勝ってみせると。

 

強い仲間と共に切磋琢磨出来るだけの強さを持つ自分でありたいのだと。

 

これが()()私なりの仲間に対する答えだ。

 

 

 

 

 

――そして、準備は整った。

 

「秘伝忍法・――【炎蛇(えんい)】――!!」

 

焔の全身を炎が包み、腕や脚、頬に赤色の蛇の鱗が鎧の様に出現し、アーマーとなる。

 

瞳も紅蓮の赤に染まっており、先程との最大の相違点は赤い蛇の鱗がマスクの様に口許を隠している事と六爪が炎の気を纏っている事だろう。

 

これこそ秘伝忍法【炎蛇】の完全な姿だ。

 

そしてドーピングが整うと、焔は一瞬で蒼鬼の目の前に移動し、六爪で蒼鬼に斬り掛かる。

 

「ハァッ!!」

 

「グゥッ!!」

 

辛うじて黒刃で防御した蒼鬼だったが、刀の重さが今までとは段違いだった。

 

焔の火力に蒼鬼も少しずつ押されていく。

 

だが、蒼鬼もただ押されている訳ではない。

 

つばぜり合いの状態から力を抜き、体勢が崩れた焔に蹴りを入れる。

 

「――ぐああっ!!」

 

「水遁・スイレイハ!!」

 

蒼鬼は即座に印を結び、焔を追撃する。

 

しかし、焔は一瞬で体勢を建て直し、蒼鬼の水遁を目にも止まらぬ速度で回避する。

 

そして、焔は秘伝忍法で勝負を駆ける。

 

「秘伝忍法・――【(ひびき)】――!!」

 

「ガッ!? アアアァァアッ!!!!!?」

 

焔は連続で蒼鬼を斬り付けていく。

 

その速度に蒼鬼ですら上手く防御が出来ず、防戦一方の状態だ。

 

そしてそれを見た焔は――、

 

「――よし、今だ!!」

 

蒼鬼が持つ鈴を目指し、全速力で駆ける。

 

「ッ! させません!!」

 

そして攻撃が止んだ事で、蒼鬼もまた迎撃の体勢を整えて焔に向かう。

 

焔は炎月花を、蒼鬼は黒刃を構えて走る。

 

『ハアアアアアアッ!!!!』

 

二人の技が激突し、忍結界に亀裂が入る。

 

どちらも一歩も引かない攻防だ。

 

とはいえ、このまま続けば有利なのは蒼鬼だ。

 

ドーピングしている焔に対し、蒼鬼は忍転身のみであるが故に消耗が少ないのだ。

 

故に焔は、今ある有りったけの力を込める。

 

「うおおおおおおっ!!!!」

 

「…………」

 

「ッ!! ぐわっ!!!?」

 

「ゲッ!? 焔!!!?」

 

――だが、蒼鬼は力を込める所か刀をしまう。

 

その余りに突拍子の無い行動故に、焔は勢いを殺し切れずに倒れてしまい、ドーピングも切れた。

 

故に焔は蒼鬼の肩を掴み、問い掛ける。

 

「お、おい蒼鬼!! 一体何の真似だ!?」

 

「……ここまでです」

 

「何ッ!?」

 

蒼鬼の言葉に焔は目を見開いて驚愕する。

 

籠鉄も慌てて理由を尋ねる。

 

「一体どういう事だ……!?」

 

「蒼鬼。 一体どうしちまったんだ……?」

 

すると蒼鬼は申し訳なさそうに――、

 

「……時間切れです」

 

『えっ!?』

 

「……制限時間は10分と決めました。 そしてその10分は既に過ぎています。 ……私の手元に鈴が残っているので、今回は私の勝ちになります」

 

『そ、そんな!?』

 

蒼鬼は丁寧にお辞儀してそう語る。

 

焔と籠鉄はガクンと肩を落とす。

 

すると焔は――、

 

「……まぁ、負けたのは仕方が無い。 それにあのまま続けていても、勝てるかどうか分からなかったのも確かな事だからな」

 

そう言って、素直に自分の負けを認める。

 

焔からしてみれば、蒼鬼は勝ちたい相手である事に変わりはないが、同じ学校に居る内は何時でも戦える相手なので、その何時かにリベンジ出来ればそれで良い。

 

今回はチーム戦でのけじめの為に絶対に勝ちたいと思っていたが、負けてしまったのは仕方無い事だ。

 

今回の目的は勝利以上にけじめをつける事だったのだから、今はそれで良い。

 

すると籠鉄も――、

 

「まぁ、負けちまったのは悔しいけどよ。 本当につけるべきけじめはこれでついたんだ。 今はそれで満足してるよ」

 

爽やかな笑顔で焔の言葉に頷いた。

 

籠鉄は余り気にしていなかったのだが、焔や光牙達には前回の一件がかなり効いたと分かっていた為に、自分なりの方法でけじめをつけようとした。

 

そして、今は重い雰囲気無しで爽やかな気持ちでいられるのだから、今回の鈴取り戦は大成功と言えるだろう。

 

「――そう、ですか。 それなら良かった」

 

蒼鬼も顔を上げて、薄く微笑む。

 

納得してくれるかどうか、不安はあった。

 

考え方などあくまで人それぞれなのだから、反対されたとしてもそれは当然の事だ。

 

しかし、二人は見事な連携で自分を追い込み、焔に至ってはかなりの進歩を遂げたのだから、今は素直にこの結果を喜ぼう。

 

――それに内容は全く別だが、けじめをつけるというのは何も他人事ではないのだ。

 

何時かは自分もけじめをつけなければならない。

 

()()()()()()()に行く事で……

 

「では、戻りましょうか」

 

「おう」

 

「分かった」

 

3人は印を結び、忍結界から学園に戻った。

 

――こうして焔達のチーム戦の蟠りは解けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

「――どうやら上手くいった様ですね」

 

天守閣から蒼鬼達を眺める者が居た。

 

その者は、先程蒼鬼の代わりに鈴音の元に資料を運んだ千歳だった。

 

資料を運び終えた千歳は、蒼鬼がどの様な対処をするのかを一応見ていた。

 

――どうでも良さそうに、無表情で、それでいて無感情に眺めていた。

 

その虚の瞳は、光を宿していない。

 

「蒼鬼監督。 貴女は損をする方です。

だから変に詰め込まない方が良い。

 

 

――今は勿論、()()()()()()()

 

 

貴女から苦しみが消える事は無いのだから」

 

そう呟くと、千歳は誰にも気付かれずに消えた。

 

蛇女子学園の者は、生徒は愚か凄腕の教師陣でさえも、誰一人として気付く事は無かった。

 

 

 




以上になります。

焔の過去を書く前にチーム戦の一件を何とかしたかったものでして。

次こそは、焔の過去と蒼鬼の過去の一部を書こうと思いますので、ご容赦下さい。

そして、選抜候補メンバーで最初の登場を果たしたのは千歳でございます。

正直、総司や芭蕉も早く出したいのですが、最優先で一番好きな千歳を登場させました。

では、次回も楽しみにして下さると幸いです。

焔の仲間に対する考えを改める時期は

  • 原作より早めが良い
  • 原作と同時期で良い
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