この小説は作者がハーメルンで書く以前から書きたかった作品です。こだわりを持って書いていますが、興味がなければブラウザバック。そうでない方は、ぜひ見ていってください。では、どうぞ。
※2019年2月6日に一部加筆修正しました。
2009年 7月 東京
その日、首都の日常風景は惨状に変わった。
都内の至るところで火災が発生し、倒壊した建物から散乱した瓦礫とガラスが道路を埋めつくしている。道の脇には何かに押し潰された自動車もあり、住民が避難して廃墟同然になった場所もあった。
東京にこれ程の甚大な被害をもたらしたのは、一種の生命体だ。
『怪獣』
それは、通常の生物の枠を外れた超常的な存在。
半世紀以上も前、日本に上陸した最初の個体を始めとして、日本に数多く出現するようになった特殊生命体の総称。
この日、東京を惨状に変えたのも怪獣の一種だった。
『ギャオス』
14年前、あるいは5年前まで猛威を振るったゴジラとは異なる脅威。驚異的な繁殖力と環境適応力、異常な進化能力を持つ人類の天敵。
それが今日、日本に大挙して押し寄せたギャオスが東京を襲ったのだ。
その数、実に千頭以上。事前に察知した日米の海上防衛線を飛び越え、水際の対空砲火すら突破して都内を蹂躙し始めた。
上陸したギャオスの大群に対し、人類側は陸空のあらゆる戦力を動員して迎撃。予め数ヵ所設置された避難区域防衛のため市街地戦を展開した。
幸いにも、人類側が投入した新兵器の活躍もあり、戦線を建て直して撃退に成功。現在は事後処理のため、都内の至るところで被害状況やギャオスの死骸などを調査する段階に入っていた。これは東京を含め、日本では震災に遭ったときと大して変わらないくらいには、日本の国民には馴染み深いものになっている。
その上空を、二つの巨大な影が飛翔していた。
片や極彩色の昆虫を連想させる羽根と、鮮やかな体毛に包まれた胴体、大きく丸い青色の瞳が特徴的な巨大蛾。
片や全体的に黒い体色、赤と黄色で組み合わせた稲妻模様が浮かぶ羽根を揺らし、頭部には甲虫を連想させる角が幾つも生やしている。
そんな対照的と言える2羽の怪獣は、ある地点を中心に旋回していた。
◇◇◇
東京都 特別二十三区 渋谷
『もう、戻れないの…………?』
掠れるような問い掛ける声が少年の耳に届いた。
『…………ああ。もう、戻れない』
問い掛けに少年は短く答え、視線は前方の集団に向けられていた。
荒廃した道路に並べたハンヴィー、その脇で銃を持った戦闘服姿の兵士達が先程からこちらに呼び掛けている。
『私、どこで間違えたの? どうすれば君を救えたの?』
『…………』
少女の疑問に対し今度は沈黙で応えた。
別に少女の選択を責めるなど出来ないだろう。何故なら、いずれ訪れる破局が今来ただけなのだから。
『どこで間違えたとかじゃない。どのみち、こうなるだけだったんだ』
『っ、でも!』
少女は食い下がろうとするが、痺れを切らした兵士達が少年の確保に動いた。
『時間だ、そろそろ行くよ』
一方的に告げてから両手を上げて歩き始めた。後ろから呼び止めようとする叫び声が耳に届くが、すぐに兵士の一人に取り押さえられて小さくなった。
『今まで“幸せ”をありがとう。さよなら』
◇◇◇
四年後。2013年 4月
◇◇◇
懐かしい夢を見た。
俺がまだ子供だった頃のだ。まだ義務教育を受ける段階で、大人になった時の事なんて考えても見なかった。
『Bird1よりGale1。どうした? バイタルが変化したが』
ヘルメットのスピーカーから電子的な音声が響く。聴けば男性とわかる太い声の主は、俺の上官で輸送機のパイロットを勤める人物だ。
「問題ありません。少し、懐かしい夢を見てました」
『帰還するまでが任務だからな。今回は目を瞑るが』
「寝てて良いと言ったのは少尉でしょう?」
『生意気言うな、と言いたいがその通りだから言い返せんな』
上官のいい加減な返答に思わず嘆息した。
俺の名前は、
俺が特殊な能力を持った少年兵だという、ひとつの点を除けば。
『まぁ、帰投途中で寝落ちしても無理ないかもな。知ってるか? アルビノ型を撃破したのは多分、お前さんの年齢では初めてなんだぜ?』
「作戦目標のギャオスに紛れてたから仕留めただけです」
『手柄を誉めてるのに可愛くねぇのな』
「任務ですから」
そう言うと無線越しに溜め息が伝わってくる。
『まあいい。もう少しすれば八王子基地だ。詳しいことは基地司令官殿に報告しよう』
「
上官向けの挨拶で応える。マイクをオフラインにして、懐から一枚の写真を取り出した。
「俺が
懐かしむように呟く。
『EDF』
それは今俺が所属する軍事組織の名前だ。今から7年前に拡大する怪獣の脅威に対抗すべく設立された、超法規的な軍隊。
『地球防衛軍』
そう呼ばれる組織に俺は身を置いている。
写真には五人の男女が写っていた。
左にニコニコと笑顔を浮かべ、片方はまっすぐな視線でカメラを見つめる二人の女性。
右には厳つい顔つきの男性、その目の前で少年が困ったような顔をして、少女が腕を組んでいた。
「あの頃は、彼女のスキンシップに落ち着かない日々だったな」
過去の情景を思い浮かべたら、気付かぬうちに呟いていた。
だがそれも過去だ。それまで送っていた日常に終止符は打たれ、俺は彼女から離れた。
未練を振り払うように瞑目すると、俺は傍らに置いたヘルメットを被り密閉して左右の操縦桿を握った。
翌日、つまり元旦にもう一本プロローグ編を投稿します。あと、作中でこれは? という部分があるかもしれません。気付いた方は恐らく相当なゴジラ好きです。ではでは(⌒0⌒)/~~