地球防衛軍~駆け抜ける強風~   作:東部雲

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大晦日から翌日明けての投稿です。


プロローグⅡ

 EDF日本支部・東日本方面司令部・八王子基地

 

 そこは日本に9ヶ所存在するEDF日本支部の基地(ベース)の一つだ。元は特生自衛隊の拠点だったが、現在は怪獣対策の最前線であるEDF日本支部として機能している。

 

 八王子市より西の丘陵地帯からそれは現れた。

 

 それは大気を震わせる騒音からしてジェット機だが、単純に戦闘機のそれではない。シルエットこそF-15等の第4世代機に似ているが、大柄な胴体を見ると空戦向きなのかは微妙だった。

 

 現れたのはそれだけではない。ジェット機はワイヤーで何かを吊るしていた。

 地味だが所々傷の付いた全身をグレーに染めた装甲。神話や伝説上の龍を彷彿とさせる頭部(メインカメラ)と鋼鉄製の尻尾。

 背中に戦闘機を連想させる主翼と双発のターボジェットエンジン、右腕に砲身が二つ並んだ火器、左腕には丸い盾のような物体を着けている。

 

 そんな二つの存在が各4機、4組で構成する集団が飛行していた。

 

 やがて基地の敷地内にある格納庫前でロボットを吊るした輸送機が到達、上空でホバリング(空中浮揚)しながら徐々に高度を下げる。

 そしてロボットの獣を思わせる爪が三本備えた両足が地面に接触した。

 

 ズゥゥーーーーン・・・

 

 重い振動音を鳴らし、装甲の付いた膝を曲げて姿勢制御する。そしてワイヤーが切り離されるとゆっくり直立する。他の機体も同様に着陸した。

 直立した機体から格納庫に向かって歩行による振動音を響かせながら歩き始め、他の機体も続いた。

 

 格納庫は降り立ったロボットと同様の機体が他にも待機しており、それらを整備する騒音に満ちていた。それぞれの駐機スペースに移動させ、膝を曲げるとそれまで唸り続けた駆動音が収まっていった。

 

 

 

           ◇◇◇

 

「ふぅ…」

 

 ヘルメットを脱ぎ、肺に溜まった二酸化炭素を吐き出すように一息。

 

 

「第3小隊が帰投した! 点検作業かかれ!」

 

「准尉の機体はこれから忙しい、早めに終わらせるぞ!」

 

 格納庫に響き渡る整備隊の叫びを横目で見ながら、報告書に書く内容を考えつつ梯子を降りる。

 

 俺の機龍(・・)が忙しいとか、そんな言葉が聞こえたがどういうことだろうか。

 

 

『第2格納庫に連絡事項です。倉田 直哉(くらたなおや)少尉、神山 勝一准尉。16:30(ヒトヨンサンマル)に基地司令室まで出頭してください』

 

 格納庫に整備隊の喧騒や装備点検による騒音とは異なる、内壁に設置されたスピーカーから電子音声が反響した。

 

 俺と少尉が呼び出し?

 

 

「……取り敢えず行くか」

 

 俺は一介の軍人だ、出頭命令には従う他ない。

 格納庫入り口で輸送機から降りて待っていた少尉を見つけ、基地司令室に出頭するべく歩き出した。

 

 

 

          ◇◇◇

 

         基地司令室

 

「倉田少尉、神山准尉。出頭しました」

 

 他と比べて明らかに重厚なドアを数回、少尉がノックした。

 

 

『入れ』

 

「失礼します」

 

 声の主から許可を得て、ドアを開けた少尉と入室した。

 

 

「先の戦闘での結果は聞いているが、一応報告してくれ。口頭で構わない」

 

「はい、葉山少佐」

 

 司令室の執務机に座る男性──葉山 進(はやますすむ)少佐が少尉に促した。

 

 

「鎌倉郊外に出現したギャオスの群れ、30匹近くを撃破しました。なかにはアルビノ型も居ましたが、神山准尉がそれの注意を引き付けました。

その間に第3小隊が群れの大多数と交戦して殲滅、准尉も激しい攻防の末に撃破。准尉については第3小隊が把握しています」

 

「そうか。ご苦労だった。特に神山准尉は19歳で初めてアルビノ型を撃破したようだな、素晴らしい戦果だ」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

 葉山少佐から褒められたので敬礼しながら応えた。

 

 

「武勲華々しい君や第3小隊には褒美の休暇でも与えたいところだが……いや、これもお前達にとっては休暇みたいなものか」

 

「? どういうことでしょう?」

 

 今の言葉で気になった部分があったのか(もちろん俺もだが)、少尉が葉山少佐に訊いた。

 

 

「上層部から辞令が下った。倉田 直哉少尉、神山勝一准尉。お前達二人はこれからアカデミーに転属してもらう」

 

「アカデミー? EDF唯一の士官学校ですか」

 

「そうだ。二人には教官として着任することになっている」

 

 アカデミーに転属? しかも教官として、と言うのはどう言うことだ。疑問をこのままに出来そうもないため、俺は挙手した。

 

 

「……質問を許可願います」

 

「質問を許可する」

 

 葉山少佐は俺の反応を予想していたのか、冷静に対応してくる。

 

 

「ありがとうございます。ではひとつ、倉田少尉が教官に任命されるのは分かります、ですが。何故、自分を教官に?」

 

「予てより俺も含めて、EDF高官の何名かで計画していた。

 アカデミーは高校卒業が確定した男女が世界中から集まる。お前が19歳になり実戦で戦果を挙げたなら、士官候補生と教官を兼任する形で着任できるよう総司令部に申請していた」

 

「では、自分は士官候補生であり教官でもある立場としてアカデミーに?」

 

「その通りだ。既に何度も実戦を経験し、19歳の若さでアルビノ型を撃破した実績は教官として充分箔が付くだろう」

 

「だから同年代に教官面しても良いと?」

 

「乱暴に言えばそうなるな」

 

 俺の言葉はどれも予想の範疇だったのか、最後の上官に対して無礼と言える発言すら流して答える。それでも、俺の今までの立場を考えれば納得はいかなかった。

 

 

「自分は超能力者です。今の風潮を考えれば、自分が教鞭を取ることには必ず問題は生じます」

 

「それはあちらが助けてくれる。その上で、お前に乗り越えてもらいたい」

 

 俺が意見を重ねても葉山少佐の姿勢は変わらない。

 

 

「……転属の辞令、拝命致しました。命令なら従います」

 

「それでいい。直ぐに支度して、出発してほしい。先方は明後日には着任してもらいたいようだからな」

 

「了解しました。葉山少佐、今までお世話になりました」

 

 今思えば、俺は葉山少佐に恩がある。超能力者として、四年前に国連の保護下に置かれた数ヶ月。それからEDFに入って八王子で訓練した3年間は、少年兵ながら葉山少佐が面倒を見てくれたお陰で高校レベルの教養は身に付けていた。

 もしかしたら、以前から計画の一環としてそこまで手厚い待遇をしてくれていたのか?

 

 

「礼には及ばない。大人として俺からしてやれるのはこれで精一杯だからな。尤も、お前くらいの年頃には子供扱いされたくないだろうがな」

 

「いえ、それでも有り難いです。この恩は忘れません」

 

「そう言ってくれて嬉しいよ。もう下がっていい。向こうでも達者でな」

 

 今まで育ててくれた上官と敬礼をかわし、少尉と司令室を後にした。

 

 

 

          ◇◇◇

 

「行ったか……。さて」

 

 先程までいた二人が退室したのを確認した葉山は、執務机に設置された受話器をとり、番号を入力して待った。

 

 

「…………八王子基地の葉山少佐だ。そちらに二人を向かわせた。

……ああ、夜には着くだろう。九式で直接アプローチするから滑走路は空けといてくれ。

……アイツを転属させたことなら気にするな、今は束の間の学生生活を送らせたい。

……ああ、そうだな。准尉、いや。神山少尉を頼んだぞ、家城。ではまたな」

 

 こことは違う場所にいる相手との通話を終え、受話器を置いた。そして溜め息を一つ吐いて、執務机に置かれた書類の一つを閲覧した。

 

 その書類は勝一と倉田に関係する書類だが、内容は要約すると以下の通りだった。

 

『新品川EDF国際総合士官学校の第6期生編入に合わせて、以下の2名を配属するものとする。

 

 倉田 直也少尉は第2教育大隊の機龍支援科の教官、神山 勝一准尉は少尉に昇格とし機龍科の教官に任命する』

 

 

(世の中も変わったものだ。いくら常人とは違う能力を持つとはいえ、軍の正規兵に起用して、ついには教官だ)

 

 内心でそう思いながら、もう一息吐いてから書類の確認を終わらせ、承認の判子を押した。

 

 

 




この小説は前作から幾つか変更点があります。

①主人公の来歴や境遇

②九式機龍の装備

③VSモスラの有無

などです。他にも変更点はありますが、今後描写していきます。
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