地球防衛軍~駆け抜ける強風~   作:東部雲

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昨夜から続けての投稿です。

ところで最近、世間で興味深いニュースが流れましたね。例えばゴジラ検定。過去に公開されたゴジラ映画についてどれだけ詳しいかを測るものですが、ゴジラファンにとっては腕試しと言う人もいれば、受けなきゃというファンゆえの衝動で受け付けに並ぶ人と様々でしょう。

ちなみに、僕は受けれませんでした(血涙)
東京と大阪に試験会場を置いていたので、自宅がほぼ中間地点の東海在住の社会人には難しかったです。-jgz

しかも当日は僕がこの話を執筆してる最中だったので、少々ゲンナリしました。取り敢えずこの話投稿してからまた執筆なので、次こそはゴジラ検定に駆け付けたいところです。

今回は前回とは異なり世界観の一部と超能力者について説明していく回となります。なので前回の倍近い文字数です。


第3話 超能力者

 

 人類と怪獣の生存競争が繰り広げられる日本を中心とする世界の歴史において、超能力者の出現は突然だった。

 

 今から6年前、2007年にこれまでになく強力な超能力者を行使する少年少女が確認された。

 当時は国連による怪獣がもたらす災害

──特災に対応するため特災対策センター(通称特対)と地球防衛軍(通称EDF)を発足したばかりで、皮肉にも特対は彼らの保護に各方面へ干渉、EDFはその護送が最初の任務になってしまった。

 

 超能力者の問題はそこに留まらなかった。彼らを巡って二つの勢力が誕生したのである。

 

 片や超能力者を怪獣と同列の存在と見なし、排除しようとする排斥団体。

 片や怪獣を神聖な存在として崇め、超能力者は『選ばれし子供達』と呼ぶカルト教団を母体とする信奉者団体。

 

 両者は思想の違いから対立は必至で、世界各地でそれぞれが衝突するなど社会問題に発展した。

 それだけならまだ良かったのだが、排斥団体にも派閥が存在するらしく、まだ幼い超能力者を拉致、洗脳して少年兵とする事態が発生したのだ。

 

 そう言った超能力者を悪用するケースが確認されてからは、特対とEDFは特災対処の一環で超能力者についての強い権限を有することとなった。

 

 そうした世界規模の混乱が収まって暫くの間、超能力者は特対のサイキックセンターで保護されていたのだが、今から2年前に一人の人物がある計画を推進することで状況は更に動いた。

 

 その人物の名は黒木 翔(くろきしょう)特務少佐。元陸上自衛隊の幹部自衛官にしてヤングエリートと呼ばれた彼は特殊戦略作戦室の室長だったが、95年のデストロイア戦以降は予算が降りなくなり防衛省で勤務していた。

 それから17年後、EDFからスカウトされた彼は渡りに船とばかりに、すっかり埃を被っていたスーパーX3と特殊戦略作戦室ごと日本支部に転属した。

 

 彼が計画を発案したのはその後だった。超能力者の強力な念力(テレキネシス)精神感応(テレパシー)、特定の事象を意図的に発生させる特異能力は重火器に匹敵する武器だと考え、超能力者を戦力として編入するよう総司令部に具申し、受理されると計画責任者として彼らを訓練したのだ。

 

 当時の俺もその一人だった。国連に保護されてからの2年間、サイキックセンターで過ごしていた俺はある日訪問してきた黒木特佐から説明を受け、迷うことなく志願した。

 俺の能力は他の超能力者と違いかなり特殊だが兵士として適性があり、後で受けた九式機龍の操縦システム『M C L(Machine Control Link)』の適性検査でもランクA(上から二番目の数値)を叩き出したこともあってEDF陸軍の精鋭部隊『機龍隊』に鳴り物入りの入隊となった。

 

 それから2年経った現在、最初の半年で教育を終えた俺は残り一年と半年間を八王子基地で過ごした後、先日のギャオス討伐戦の際にアルビノタイプを撃破して帰投。葉山少佐から唐突に転属を知らされ今に至る。

 

 その俺が今何をしてるかと言えば。

 

 

『勝一っ、いい加減数を増やしても良いんだぞ!? 標的の数がこの程度では練習にならん!』

 

「できるか! 君の発火能力(パイロキネシス)は全力でやれば部屋が崩壊しかねない! 地下の広大な空間だからと許可しない! それと俺は君の上官だ、苗字に少尉をつけろ!」

 

『細かいこと気にするな! 爆風なら念力(テレキネシス)の応用で防げる!』

 

「そういう問題でもない! 修繕費はただじゃないんだ、弁えろ!」

 

 地下のモニター室で能力訓練中の藤宮准尉に無線で怒鳴り付けていた。

 

 なんでこうなったのかと言えば、あれは今から20分ほど前のことだ。

 

 

 俺が藤宮准尉とサイキックセンター以来の再会を果たし、特殊訓練区画はメインである地下を案内してもらった。

 特殊訓練区画は超能力者が本格的な能力訓練する為に建設された場所で、俺も含む超能力者はここの地下フロアを利用する。

 なんで訓練するのに地下なのかと言えば、地上に設けるにしろスペースを確保できないのもあるが、単純に一般の隊員と訓練を一緒に出来ないからだ。

 

 理由は例えば藤宮准尉の発火能力。彼女はそれを応用する得意技に爆熱圏(ムスペルヘイム)と言うものがあるが、これは広範囲に及ぶ爆発現象を引き起こすものだ。

 しかも爆心地があるわけではなく、彼女が認識できる範囲なら何処にでも爆発現象を引き起こせるため、例えばカメラ越しに目標さえ認識できればあとは大体の場所を教えることで攻撃できる。彼女の認識範囲=射程距離という大袈裟な図式が成り立ってしまうのだ。

 

 以上の理由から、超能力者の訓練する専用の区画が設けられることとなった。と言うのがここに来るまでに超能力者担当の教官から聞いた話だった。

 

 藤宮准尉が居るのは俺がインカムを付けてオペレーティングしているモニター室ではなく、本格的な能力行使を想定して設置された地下訓練場だ。今頃天井で這い回る仮想標的を発火能力などで粉々にしているだろう。

 

 コン、コンッ。

 不意に部屋のドアからノックする音が聞こえてきた。

 

 

「入ってくれ」

 

 ノックしてきた相手に入室を促した。

 

 

「失礼します」

 

「失礼……します」

 

 入ってきたのは俺と同じEDF下士官用の制服を着た二人の少年少女だった。それぞれ抱えたトレーに湯飲みを載せていて、藤宮准尉と同じ俺の知り合いのようだ。

 

 

「鞍馬准尉と川浪准尉じゃないか、久しぶりだな。元気だったか? あれから背も伸びたみたいじゃないか」

 

「はい。神山少尉がサイキックセンターを離れてからはしばらくはそこで過ごしてたんですが、その後何人かとここに士官候補生として配属されたんです」

 

「わたしは、機龍……科。ここでは多分、最年少の超能力……者」

 

「川浪准尉は機龍科なのか、大したものだな。やっぱり超能力者だから適性を買われたんだな?」

 

「ん。適性レベルはAだから、鳴り物……入り。神山少尉と、同……じ」

 

 無表情を顔に張り付けながら、言葉の端々で途切れ途切れに話す川浪准尉はどこか自慢げだった。

 

 

「そうか。取り敢えずお茶を頂くよ。折角だし藤宮准尉に訓練を切り上げさせ……ッ!?」

 

 言葉が最後まで続かなかった。いきなり強い振動と何かが爆発したような音がしたからだ。

 慌てて室内の端末を操作した。すると大型ディスプレイに地下訓練場の様子が写し出される。て、ちょっと待て!

 

 

「こちらモニター室! γ 1(ガンマワン)、お前またレーヴァテインを使ったのか!」

 

『レーヴァテインはまだ制御しきれないから練習する必要がある! 複数の目標を吹き飛ばすのに使った』

 

「許可した覚えはないぞ! それに回りを見ろ! 可燃物に燃え移ってるじゃねえか!」

 

 大型ディスプレイの映像は訓練場のあちこちで燃え盛る標的だった残骸を写していた。標的は可燃物であるため燃焼時に出る煙が吹き出し、室内に充満しようとしていた。

 

 

「能力で炎が広がるのを押さえろ! 俺は職員に知らせる」

 

 インカムを叩き付けるようにしてテーブルに置くと、内線の受話器を取った。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 

「初日からこんなに疲れるとは……」

 

 藤宮准尉の設備破壊事件から一時間後、俺は職員寮の食堂でテーブルに突っ伏していた。

 

 一応、俺は監督役としてオペレーティングしていたが、彼女の無茶はこ こ(アカデミー)だと日常茶飯事らしく、特殊訓練区画の管理人はお咎め無しにしてくれた。

 ちなみに事件を聞き付けた特殊訓練担当者の熊坂教官が来たんだが、正直言ってすごい怖かった。

 普段気儘な性格で武人然りと言った口調の藤宮准尉が何も反論できないくらい威圧感を発していたのだから、彼女がああなら誰も逆らえないだろう。

 

 熊坂教官については色々都市伝説めいた噂も幾つかあった。

 曰く、上空で飛び回るギャオスを撃ち落とした。

 曰く、地上に降りたギャオスの喉を握り潰した。

 何れも普通なら眉唾物だが、裏付け出来る映像が存在するため嘘とは言い切れない。そう言った認識が広まっているため、誰もが彼を畏怖しているのだ。

 

 

「人間かどうかさえ疑われてるしなぁ 「誰が疑われてるって?」 ッ!? 熊坂大尉!」

 

 ぼそりと呟くと噂をすればなんとやらで本人が話し掛けてきて驚き、慌てて姿勢を正し敬礼した。

 

 

「そう堅くなるな、楽にしてくれ」

 

 答礼しながら苦笑して言った。

 

 

「疲れてるところ悪いが、午後もやって貰うことがある。昼飯を済ませたら第2格納庫に言ってくれ」

 

「そこで何をすれば?」

 

「お前の受け持つ候補生の小隊や整備科との顔合わせだ。君は機龍科だから特に連携するのはその支援部隊であるが、兵器全般を扱う整備科も重要だ。今後のためにも第一印象から始めてくれ」

 

 第一印象、ね。俺の場合、士官としての意味だけではないんだろうな。

 

 

「了解しました。ただその前に、一度部屋に戻ってもよろしいですか?」

 

「何故だ?」

 

「自分は昨夜遅くからここに転属しました。その時はベッドメイクだけしてから寝たので、持ってきた荷物はまだ解いてないのです。それを片付けてから向かいたいのですが」

 

「そう言うことなら構わん。16:30(ヒトロクサンマル)までに第2格納庫に入るなら許可する。他に何かあるか?」

 

 良かった。時間は思ったより余裕がありそうだ。持ってきた私物はお気に入りのプラモデルもあるし、それを飾りたいな。

 

 

「いえ、ありません」

 

 時間があって私物を配置することが出来る、俺から文句など無い。有っても目の前の人物に対して口を出せるはずはないが。

 

 

「結構だ。それと俺からはもう一つ」

 

 これで終わりかと思えば熊坂教官の話は終わってないようだった。

 

 

「お前、超能力者なんだよな?」

 

「ええ。他の子供達と比べるとかなり違う種類ですが、そうです」

 

 用件は俺の能力らしい。

 

 

「一応資料には目を通したが、如何せん要領を得なくてな。それを確かめるためにも、実演してくれないか?」

 

「実演ですか? と、申されましてもどちらで?」

 

「この食堂でいい。ほら、あの隅に観葉植物があるだろ。あれで試してくれ」

 

 指差した方を見ると人気の少ない入り口から向かって左側の隅に置いてあるのが見えた。縞模様の斑が入った長い葉を伸ばした植物、サンセベリアだ。

 

 

「熊坂教官。俺にさせたいのはV Oですよね? まさかあれを成長させろ(・・・・・)とか言うんでは」

 

 V Oとは俺の能力の略称だ。

 Vitality Operation、それが意味するのは生命力操作。長いから略してV Oなんて呼ばれているが、これが俺の能力だ。

 能力の概要は以下の三つだ。身体能力 強化(フィジカルブースト)成長 促進(グロースプロモーション)、エネルギー放射だ。

 

 名称だけ言ってもピンと来ないだろうから順番に説明するが、まずこの能力は現状俺しか使えない。というより、使える能力者は他に確認されていない。

 

 俺は生まれつきの体質として生命力が強い。それも、異常と言う他無いレベルでだ。そのせいか、傷を負ってもすぐに治ってしまう。

 

 4年前のあの時もそうだった。東京を無数のギャオスが襲ったあの日、危機を乗り越えるためやむを得ず使用したのはエネルギー放射。俺の生命力を一度に放出させ、爆発現象を引き起こす攻撃でギャオスの撃破に成功した。それと引き換えに国連に存在を知られてしまったが、後悔はしていない。

 

 教官の要求について話を戻すが、つまりは俺の生命力をサンセベリアに流して成長させろと言うのだ。

 

 

「そのまさかだ。俺としても、部下の能力は詳細に把握しておきたいからな。勿論、機龍隊としての実力も今後見せてもらうからな?」

 

「……分かりました」

 

 尤もな理由だったのでそう応えると、食堂の隅にある植物目掛けて歩み寄る。

 近くで見ると配置されてからそれなりに時間が経った植物のようだった。天井に向かって伸びる長い葉は所々が小さく、茶色に変色していた。

 

 ……この状態だと“マナ”が読み取りづらいだろうな。ただでさえ市販の観葉植物は品種改良されていて、自然物から遠ざかってるから生命力を流しにくいんだが。

 

 と内心で呟きながら目の前の植物に手を触れる。

 

 超能力者が超能力者と呼ばれる所以は一般的には通称通りだが、厳密にはもう一つ理由が存在する。

 

 それは、俺を含む超能力者がマナと呼ばれる、自然界にはごくあり触れたエネルギーを操作する人間だからだ。

 

 超能力には二つの方式が存在する。

 ひとつは自分のうちに存在するマナを介し、特定の能力を行使する方式。これは精神感応(テレパシー)や|念力が該当する。

 もうひとつは空気中のマナに干渉し、事象を発生させる方式。これは藤宮准尉の発火能力がそれに当たるが前者とは異なり、空気中のマナに干渉して微小な燃焼物質を加熱、爆発現象を引き起こすのが一連の過程だ。

 

 俺の能力は基本的に前者に当たる。俺の生命力を資本とする能力なので当然だが、生命力で自分の身体能力を強化したり、植物を成長させたり攻撃手段のエネルギー放射は俺みたいに桁外れの生命力があって成り立っていた。

 一方で他の超能力者と違い柔軟性はない。同じ超能力者同士で精神感応を使い、意思の疎通が容易に出来るわけではないし、念力を応用して編み出す防御手段が使えるわけでもない。

 寧ろ能力行使する度に生命力を消費するため、常に一定のリスクを伴うから普段は使用を控えていた。

 

 手を触れたサンセベリアに意識を集中、内側にあるマナを直視する。

 内包するマナは弱いが無い訳じゃない。これなら生命力を流し込むのには充分だろう。

 

 更に意識を集中する。自分の思い描く事象をイメージすると、淡い黄金(こがね)色の光が溢れて俺の体を包む。

 

 その光の本質はマナだ。それに俺の生命力を乗せて、サンセベリアに流し込むイメージを強くする。

 

 直後、光は螺旋状に回転してサンセベリアを包み込む。

 それから起こった変化は劇的だった。徐々に大きくなり始め、更に変色した部分も比例して小さくなっていく。1分と経たないうちにサンセベリアは葉が天井に届いてしまったので、そこで生命力を流すイメージは止めた。

 

 

「これがお前の能力、V Oか。こうして見ると凄いものだな」

 

 いつの間にかすぐ後ろまで熊坂教官が近寄っていた。興味深そうに見上げている。

 その後ろでは食堂にいる職員達が注目していて、多くが呆気に取られるか珍しいものでも見るような表情を浮かべていた。

 

 

「これが俺の能力でできる内容の一つです。応用すれば負傷した人間の治療も可能だろうとサイキックセンター時代に言われたので、このサンセベリアを見ても検証する価値は有りそうですが」

 

「怪我人を融通するのは難しいな。負傷兵を実験台にすることの倫理的問題もあるが、リスクが不明だ」

 

「俺もそう思います。用件は終わったと思います。そろそろ下がっても宜しいでしょうか?」

 

「構わないぞ。こんなこと頼んですまなかったな。一旦自室で荷物を整理しに戻るんだったな。そう言えば食事は摂ったか?」

 

「これからです」

 

「そうか。邪魔して悪かった。俺はこれで失礼する」

 

 お互いに敬礼を交わすと、熊坂教官は食堂から退室していった。

 

 ……そろそろ食事を摂るか。

 天井まで届くほど巨大化したサンセベリアの周りはギャラリーで賑わっていた。人集りを抜けると、食券を販売する券売機に足を向けた。

 

 




次回からは多分、以前から登場していた(亀更新なので認識は薄いかも)九式機龍とそれを運用する部隊について説明する回が2話分あると思います。ようやく物語の主要部分の一つに触れていくことになりそうです。

一応、世界観について説明する番外編を投稿する予定も有りますので、詳しいことはそちらで確認することができると思います。超能力については別となりそうです。
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