Rebirth of the Flesh   作:utcm

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第一話 レッド・ランタンズ

1995年9月。

 

ロシア・モスクワ東部の行政区画に位置する地域、ゴルヤノヴォ。

95年当時、沢山のブラトヴァ―――要するにロシアン・マフィアが占拠していたその地区は、お世辞にも治安が良いとは言えなかった。

勝浦周は、そんな地区に存在する風俗店Красные фонари―――「レッド・ランタンズ」に入店したところだった。

 

 

 

入り口の用心棒と目が合う。マフィアの溜まり場のような地域とはいえ、一応店外にいるからなのかきちんとスーツを着用していた。

身だしなみに隠されてはいるが、用心棒としてきちんと鍛えた身体。その辺の不良では勝負にもならないだろう。

 

 

そんな男が、勝浦を認識した瞬間に頭を下げた。

 

 

 

「アマネ様、お帰りなさいませ」

 

 

「家でもなんでもないんだけどねえ」

 

 

 

軽口を叩きながらフロアに入る勝浦。ナイトクラブとしての形態も強いこの「レッド・ランタンズ」では、性的なプレイを目的とした客と酒を飲み仲間と語らうために来た客とがコミュニケーションを取ることもできる。もっとも、会員制であるために来店する客は経営者であるブラトヴァの知り合いしかいないのであるが。

今日はSM好きの客が多いのか、ところどころで鞭の振るわれる音が聞こえる。流血している客もいる。よほどハードなプレイが好みらしい。

 

 

体中を真っ赤に染めた男と目が合った。大半はロウソク責めによる蝋のようだが、鞭で流れた血も混じっている。

 

 

 

「おうアマネちゃん、いいトコに来てくれた。ご自慢の怪力で一発叩いちゃくれねえか」

 

 

「・・・見た感じ、なかなか強靭そうで。女王様の鞭じゃ満足行かなかったかな」

 

 

「おう、如何にも。なぁ頼むよ」

 

 

 

傍から見ればマゾヒスト全開のこの男だが、よく見ると体中に刺青を入れている。筋肉も分厚く、並の腕では満足できなかったらしい。

そんな男を見ながら、勝浦は彼を責めていた女王様から鞭を受け取る。こちらも普通の鞭ではなく、皮膚に的確なダメージを残すようにグリップから先端まできちんと改造してある。SM用というよりはむしろ、拷問用・殺傷用と言っても良いぐらいだった。

 

 

 

その鞭を右手に構え、勝浦が興奮しきった男を見据えた。

いつの間にか、店内の視線は彼女に集中している。

 

 

 

右肩を固定したまま、肘から先を動かして鞭を握った右手首を自らの首の横に添える。

 

 

ともすれば鞭が落ちてしまうのではないかというほどの脱力の後、目に見えないスピードで彼女の右手が男へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

パァン!! と音が響き、男の腎臓が飛び散った。

 

 

 

 

「流石は "グニェフ" ってとこか」勝浦が呟く。

 

 

店内は悲鳴と驚嘆に包まれ、両の腎臓を割られた男の顔は感動に満ちていた。




地元住民の名誉のために追記しておきますが、90年代にゴルヤノヴォ地区の治安が悪かったということを示す資料はありません。

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