風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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ステルスモモ 「……」
キャプテン 「見えますよ」
監督 「見えるね」
もこ 「みえないけど、においでわかる」
ステルスモモ 「えっ!?」


第11局 入学

――福路美穂子

 

「……これは難しいですね」

 

「意図的なプラマイゼロですか?」

 

「ええ、監督からの課題です」

 

「そんなの普通に無理だし!」

 

「たしかに勝つことだけを考えて打つより難しいですよね」

 

「そうですね。色々と計算することが増えて大変です。

 ですが私の麻雀スタイルの技術向上には合っているとは思います」

 

 春季大会の後、読川監督から与えられた課題。

 それが意図的にプラマイゼロを狙って打つようにすること。

 

 おかげで今まで以上に場の状況を完璧に把握することが求められる。

 それこそ常に右目を開いておかないといけないくらいだ。

 

「でも、おかげでキャプテンの綺麗な瞳が毎日見れるのは嬉しいです」

 

「そ、そう? オッドアイってヘンじゃない?」

 

「何言ってるんですか! 漫画とかのキャラみたいでカッコいいですよ」

 

 その褒められ方は、からかわれてた頃を思い出すので少し微妙です。

 もう閉じること癖になって意識しないと開けない右目。

 私は以前に比べて両目を開く機会を増やしている。

 

 麻雀のときだけなく、日常から右目も開いて他人を観察する。

 すると捨て牌だけでなく、様々な場の情報が、麻雀に関わっているのだ気づく。

 対局者の僅かな表情の変化、牌を並べたり掴むときの所作から読み取れるものが増える。

 

 今まで片目だけだと見えてなかった景色が少しずつ見えるようになった。

 間違いなく他家を掌の上で操り支配する技術が向上している。

 それでも毎回プラマイゼロを安定して続けることは難しい。

 

 見学会で宮永さんが行った三連続プラマイゼロ。

 監督は確信してたけど、本当に意図的なものなだろうか。

 

 そして、もしも本当であるなら……彼女の瞳には、どんな景色が見えているのだろう。

 

 

 

――宮永咲

 

 高校に進学し風越女子での新しい生活が始まった。新しい学校。新しいお友達。

 お父さんは寮に入っても良いよと言ってくれたけど、二人暮らしだったから家事や掃除洗濯が不安で少し遠いけど家から通うことにした。お母さんとお姉ちゃんと別れたときに、お父さんは私と一緒にいてくれたんだから独りになんてできないよ。

 

 附属の寮には麻雀部の同級生が二人いる。

 

「……おはよ」ペコリ

 

 トレードマークのリボンを巻いてる彼女の名前は対木もこ。

 

 マイペースな彼女は生活能力が皆無に近いので、いつの間にか私がお世話する感じになってた。

 もこちゃんは、私以上の人見知りで、背丈も声も小さいけど、仲良くなった人には懐っこくてとても可愛い。

 

 けど麻雀を打ってるときは、ガラッと雰囲気が変わっちゃうみたい。

 まだ一緒に打ったことはないけど、お姉ちゃんと同じで「少し怖い感じ」がした。

 

 麻雀部の見学を通して知り合った桃ちゃん、もこちゃんとは残念ながら別々のクラス。

 

 お昼は同じクラスで席が隣になった文堂(星夏)さんと一緒に食堂へ向かう。

 池田先輩がオススメしてたのは日替わりのレディースランチ。たしかに美味しそう。

 

「わたしも…おなじの」チョン

 

 いつの間にか、もこちゃんが近くにいて催促してくる。

 声が小さいから注文するのが苦手みたい。仕方ないなぁ。

 

「はい。もこちゃんのレディースランチだよ」

 

「……ありがと」ガチャ

 

「あ、飲み物こぼしたよ」フキフキ

 

「おおう、咲っちは世話焼きのお嫁さんになりそうっすね」

 

 あ、やっぱり桃ちゃんも近くにいたんだ。

 すご~く影が薄いのが特徴的な彼女の名前は東横桃子。

 もこちゃんと同じで、彼女も寮に入った同級生だ。

 

 私は監督やキャプテンと違って「見つける」ことはできない。

 もこちゃんは「見えない」けど、「匂いで分かる」らしい。ちょっと怖い。

 二人は同じクラスになったみたいだ。うらやましいなぁ。

 桃ちゃんは基本的に「気付いてくれる」人の傍にいることが殆ど。

 

 麻雀部に入る為に進学先を鶴賀学園から風越女子の変更したけど大変だったみたい。

 家から学校まで遠いし、附属寮での生活になる。

 麻雀部の監督さんやコーチが自宅まで足を運んで親を説得したんだとかなんとか。

 私は通学区内だったし、普通に試験を受けての合格で家からの通学だ。

 それでもスカウトしたんだからと、監督さんは親に挨拶しに家まで来てくれた。

 

 よく見ると……桃ちゃんって私と違ってスタイルもいいよねー。

 鶴賀学園は共学だから、もしも男子が見つけたら、モテてたんじゃないかなって思うよ。

 だって京ちゃんが好みそうなおもちの持ち主だし

 

「……」ゴゴゴゴ

 

「咲っちが何故か黒いオーラを発しているっす」

 

「……こわい」

 

 わっ、もこちゃんだけじゃなくクラスメイトの文堂さんにまで怯えられてる!

 

「二人とも初日の授業が終わったら麻雀部に行くの?」

 

 ちょっとだけ強引に話を変更。各部活の正式なスタートが今日からだ。

 新入生の勧誘や見学が始まったばかりで、部活動は本格的に決めてない人が殆ど。

 私は麻雀部に入ることは決めてるけど、初日から押しかけるのはちょっと恥ずかしい。

 

「もちろんっす!」

 

「‥…」コクリ

 

 ちょっと恥ずかしいと考えてたのは私だけだったみたい。

 京ちゃんにも引っ込み思案だから、もう少し積極的になった方が良いって言われてたっけ。

 

「え! 皆さん麻雀部に入るんですか?」

 

「文堂さん?」

 

「麻雀部に入るために風越女子を受けたっす」

 

「さらわれた」

 

 もこちゃん、そこは「誘われた」の間違いじゃないのかな?

 

 話を聞いてみると文堂さんは、麻雀のプロリーグのファンらしい。へー、プロ雀士カードとかもあるんだ。

 麻雀は打たないけどプロの試合を観るのが好きって人たちも大勢いて「観る専」と言うらしい。知らなかった。

 せっかく麻雀部が有名な風越女子に入学できたから、麻雀部に入って高校デビューしようかと悩んでるそうだ。

 

「私みたいな初心者が入っても大丈夫ですかね?」

 

「わたしも麻雀部デビューは高校が初めてっす! リアルの麻雀は初心者っす」

 

「……わたしも、はじめて、いちねんたってない……しょしんしゃ」

 

 もこちゃんはインターミドルの東海王者って聞いたけど、それは初心者っていうのかな?

 私も家族麻雀しか打ったことないから……ほぼ初心者なのか?

 

「部員も大勢いたし、大丈夫だと思うよ?

 入学前に見学に行ったけど、キャプテンや先輩たちも優しい人たちだったし」

 

 監督さんは顔立ちはふつーで割と何処にでもいそうな男の人。

 コーチの人は、ちょっとキツイ感じがしたけど美人さんだった。

 二人とも私がイメージしてた強豪部活の指導者と違ってかなり若い。

 おにーさん、おねーさんって言ってもヘンじゃない年齢。

 まだ二十代の半ばくらいだと思う。新任の先生って感じがする。

 

「そうっすよ。入部は大歓迎っす」

 

「めんつは、おおいほうがいい……っていってた」

 

「それじゃあ放課後に四人で麻雀部に行こうよ」

 

 新しい生活への不安と期待があったけど、風越女子なら私でも楽しんでやっていけそうだ。

 同じように麻雀も楽しむことができるのだろうか……うん、きっとできるはずだ。

 

 監督との約束を信じて頑張ってみよう。




モモ 「リアル麻雀、初心者っす(麻雀ウォーズのガチゲーマー)」
もこ 「しょしんしゃ……おぼえて、いちねんたってないし(五カ月で東海王者)」
咲 「私も家族麻雀だけだから、初心者かな?(家族は全員が雀畜)」

文堂 「皆さんも、麻雀初心者なんですね(安心)」

モモ 「ロン」
もこ 「チートイツ」
咲  「リンシャンカイホウ」

文堂 「ぐぬぬ。初心者とはいったい」

監督 「これは見事な初心者詐欺」

風越女子、新一年生の状況

咲×もこ 非保護者と被保護者 咲はもこの寮に遊び(掃除)に行ったりしてます
モモ×もこ 寮が一緒でクラスメイト もこは匂いでモモを発見して傍にいる
咲×文堂 クラスメイト ふつーの話題ができる間柄
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