風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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第13局 勝負

――福路美穂子

 

 視点移動、手癖、性格、得られる情報は捨て牌以外にも山のようにある。

 

 私のリーチをかわして、40符3翻の手を70符2翻に変えた。

 奇跡のような確率なのにプラマイゼロの麻雀を達成した宮永さんは、ちっとも楽しそうじゃなかった。

 

 そこには勝ったときの喜びも、負けたときの悔しさもない。

 とても難しい作業が終わって、ほっと一息といった表情を見た。

 

「わたしだって……おこる」

 

 手配が開かされて、ロンできた{五筒}のスルーに気付いた対木さんが怒るのも分かる。

 私達は同じ卓を囲んでいたにも関わらず、彼女だけが「勝負」をしていなかった。

 

「そうですね。麻雀は勝利を目指すものです」

 

「福路キャプテン……」

 

「わたしたちを……みてない」

 

 対木さんの言う通り宮永さんはプラマイゼロという点数しか見てなかった。

 

「全国の舞台を目指すなら、麻雀は勝つために打つんだし!」

 

「でも、それが……できなくて……監督??」

 

 助けを求める宮永さんに読川監督が答える。

 

「勝負しても良いし、無理なら今まで通りプラマイゼロで打てばいい。

 どうやら対木は宮永さんをトバすつもりみたいだし、池田はいつも勝つつもりで打ってる。

 キャプテンの福路にはプラマイゼロが崩せるか試してみろと言ってある」

 

 そう。監督から与えられた私の課題。

 私も勝つために打ってはないけど、宮永さんと真剣な勝負していた。

 

「周囲は気にせず、宮永さんは、宮永さんの麻雀を打って下さいね」

 

「……はい」

 

「あとは麻雀で答えてもらいますから」

 

「みてくれないなら、わたしがたおすよ」ゴッ!!

 

「本気でいきます」

 

「まだ負けてないし!」

 

東 池田華菜(二年) :13700(-16)

南 対木もこ(一年) :30500(±0)

西 宮永咲(一年)  :29600(±0)

北 福路美穂子(三年):26200(-4)

 

 

 

――宮永咲

 

[南一局] (親) 池田

 

 もこちゃんが怒っている。お姉ちゃんに怒られたときのような「怖い」感じ。

 もこちゃんは私に負けたわけじゃないのに……どうして?

 違う。これはお年玉をかけた家族麻雀じゃないんだ。

 別にプラマイゼロにする必要はないって分かってたはずなのに、ずっと私は相手を見ずに点数ばかり気にしていた。

 

「……」 宮永 {七筒}(in)→{白}(out)

 

「……ポン」 対木 {白 横白 白}

 

「えっ!?」

 

 もこちゃんの鳴きに誰かが声を上げる。私も驚いた。

 いつも対子だけを集めていたのに刻子をつくるなんて初めてみた。

 

「もらう……ポン」 対木 {中 横中 中}

 

 もこちゃんの打ち筋(スタイル)が明らかに変わった。

 私が牌山から引いてきたのは{發}牌は手放せない。

 

「……」 宮永 {發}(in)→{四萬}(out)

 

「ひとつ……たりない」

 

「え?」

 

「けど、ロン」

 

対木 {二萬 二萬 二萬 四萬 四萬 發 發} {白 横白 白} {中 横中 中} {四萬}

 

対々和(トイトイホー)混一色(ホンイツ)小三元(ショウサンゲン)、ドラ3、役牌2 3倍満の直撃で24000」

 

「まじっすか?」 「すごい」

 

 桃ちゃんと文堂さんの歓声が聞こえる。

 3倍満の直撃なんて何年ぶりだろう。

 

「役満だったら終わってたし」

 

「……」ゾクッ

 

 そうだ。私はトバされるところだったんだ。

 

 対木 +24000 宮永 -24000

 

 

[南二局] (親) 対木

 

「……ポン」 対木 {白 横白 白}

 

 また三元牌を鳴いて刻子をつくる。

 前半と違って明らかに大きい手を狙ってる。

 

「本気……なんだね」

 

 もこちゃんの麻雀からは強い「意志」を感じる。

 点数ではなくて、私の麻雀を見て欲しいと……。

 

 手牌に対子や刻子が増え、順子が作りづらくなる。

 対局の卓が「対子場(トイツバ)」に支配されている。

 

「ツモ、対々和(トイトイホー)三暗刻(サンアンコウ)、役牌1 4000オール」

 

対木 {四萬 四萬 四萬 七索 七索 七索 八索 八索 八索 發} {白 横白 白} {發}

 

 対木 +12000 他 -4000

 

 

[南二局 一本場] (親) 対木

 

 残りは1600点。対子場で刻子が増えて誰もが高い手が作りやすくなってる。

 もこちゃんだけでなく、他の二人に上がられてもトバされてしまう。

 

 負けたくない。自分の力で和了らないと!

 

「……させない」ゴゴゴゴ

 

 麻雀を通じて、私はもこちゃんと意志をぶつけ合う。

 

「……いくよ」

 

 

――福路美穂子

 

 南二局の一本場は、宮永さんが対子場の支配を破る。

 

嶺上開花(リンシャンカイホウ)対々和(トイトイホー)、ドラ3 3000・6000」

 

 宮永 +12000 対木 -6000 他 -3000

 

 

[南三局] (親) 宮永

 

「……とめる」

 

「まけないよ……リーチ」

 

 対木さんとの一騎打ちになっているけど、華菜ちゃんは諦めてない。もちろん私も。

 

「ツモ、ドラ1 2600オール」

 

 宮永さんは順子を揃えた。対木さんの支配が揺らぐ。

 私は閉じていた右目をスッと開く。

 

 宮永 +7800 他 -2600

 

 

[南三局 一本場] (親) 宮永

 

西 池田華菜(二年) :4100

北 対木もこ(一年) :57900

東 宮永咲(一年)  :21400

南 福路美穂子(三年):16600

 

 此処からが勝負どころ。

 まず宮永さんには、()()()()()()()()()()()()()()

 

 対木さんは「……まだトバせる」と宮永さんに狙いを定めてる。

 

 華菜ちゃんの表情や態度は 「この逆境で諦めずに役満をつくるなんて天才だし」といったところかしら。

 

 読川監督から「表情や態度で相手に警戒されないような方法を考えろ」という課題を与えられたの忘れてないわよね。

 

 宮永さんは対木さんの直撃を喰らわないよう警戒しながら、華菜ちゃんがトバないように注意して点数調整する必要がある。

 

 そこに私が真っ向から{中}を切る。

 

「……ッ! ロン 12000です」

 

 対木さんが対々和で和了ってから、宮永さんは三元牌のポンをずっと警戒している。

 私には宮永さんが、対木さんの役満を恐れているのが分かる。

 今まで宮永さんは「プラマイゼロ」しか見えていなかった。

 そこに突然、対木さんが割り込んで来たから、必要以上に怯えているのが分かる。

 

 私は、その心理を利用させてもらう。

 

 宮永さんはあがらざるを得ない。

 先ほどは誰かが対木さんに振ったらトビ終了という状態だった。

 もし宮永さんがスルーしたとしても、私が()()()()()()()()()()()

 

 宮永 +12000 福路 -12000

 

 そして二本場、三本場と()()()()()()()不聴(ノーテン)罰符で点数を調整する。

 捨て牌を相手に印象づけて、他家を操作する。河を支配した読川監督のように――

 

「テンパイ」「テンパイです」「テンパイだし」「……ノーテン」

 

 二本場 宮永、福路、池田 +1000 対木 -1000

 

 三本場 全員ノーテン

 

 

[南四局 オーラス] (親) 福路

 

南 池田華菜(二年) :5100

西 対木もこ(一年) :54900

北 宮永咲(一年)  :34400

東 福路美穂子(三年):5600

 

 対木さんが大物手を狙うようになった。

 華菜ちゃんは大逆転を狙わなければいけない状況。

 安易な差し込みはプラマイゼロから遠のく。

 

 お年玉を賭けた家族麻雀の話は監督から聞きました。

 

 けど、プラマイゼロにまでして()()()()()()()()貴方は――

 

 もしも勝負に負けてしまったときに、次は本気で勝ちたいとは思ってくれるのでしょうか?

 

「もうすぐ海底(ハイテイ)ね。後半もプラマイゼロがつくれるかしら?」

 

 宮永さんが勝ちたいとを願うなら、きっと風越女子の新しい先鋒(エース)になれると信じて鳴く。

 

「カン!」




殆どの将棋漫画ではプロ棋士が棋譜を監修しているのですが、
麻雀漫画で牌譜をプロ雀士が監修しているケースは少ないですね。
*ミスが多すぎて誰かに闘牌の牌譜を監修して欲しい

闘牌描写の細部に関しては気にしすぎという意見もありますが、気にする方の気持ちも分かるので何とかしたいのですが対応が難しそうです。
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